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Column


第48回 新型コロナウイルス(6)
<質問>
本羅先生、こんにちは。先日、祖父母に新型コロナワクチン6回目の接種券が届きました。今のところ、私の家族や親戚、知り合いに患者さんはいませんが、祖母の通う寄合や祖父の遊び仲間では、数人が感染したようです。幸い皆さん、ワクチン接種済みだったらしく、少々寝込まれたものの、命に別状はなかったそうです。やはり、ワクチンは効くんですね。それもあって、今回も、祖父母には、必ず接種してもらうつもりです。

ところで、私は都内のアパレルに勤める仕事柄、最近、海外からのお客様が増えたことを実感しています。中国の方もそうですが、特に東南アジアの方が増えています。休憩中に、同僚とも話すのですが、国外から新しいウイルスの変異株が来ていませんか? 心配です。

一応、私は年明けに、4回目(2価ワクチン)を接種しているのですが、5回目も接種した方が良いでしょうか? もしするとしたら、どういうタイミングになりますか? それと、もうすぐ新型コロナウイルス感染症が5類になるとニュースにありました。結局、何が変わるのでしょうか?
(神奈川県 A.O.)
(2023年4月)
<回答>
A.O.さん、ご質問ありがとうございます。私も6回目のワクチン接種、早速、予約しました。A.O.さんのお身内にはおられないものの、ご祖父母のご友人様は何人かが罹られたとのこと。まずは、ご無事で何よりでしたね。ただ、この新型コロナウイルス感染症の厄介さは、感染後にも続きますので、しばらくは、体調管理に注意なさるよう、お伝えください。

やっかいな新型コロナウイルスの後遺症
これまでにも本コラムで、新型コロナウイルス感染症の後遺症について触れてきましたが、わざわざ厚労省が後遺症のことを「罹患後症状(post COVID-19 condition)」と称しているように、ただ後遺症と呼ぶには相応しくないほど顕著な、「症状」が増えているからです。

呼吸器に残る障害(息苦しさや痛み)は、本人も実感しやすいですし、「後遺症」と称して良いでしょう。そもそも後遺症とは、「(軽くなっても)病状が長引くこと」ですから。

しかし、循環器に発症する障害(心臓や血管の炎症、血栓による梗塞など)や、その他、内科系(糖尿病など)や脳・神経科系(味覚・嗅覚障害や倦怠感、記憶力・集中力減退などのブレインフォグ(brain fog))に渡る障害は、専門家でないと理解も難しいでしょうし、ご本人が実感されるときには、正に「死の数歩手前」くらいの状況もありえます。

実際、中軽症感染後の大人だけではなく、無症状ないし軽症だった子供たちに、感染回復後1~2週間から1~2か月で、MIS-C(multisystem inflammatory syndrome in children, 小児多系統炎症性症候群)と呼ばれる症例が増えています(注1)

こんなことが起きる病気を「ただの風邪だから、感染して免疫を付けた方が良い」と無責任に広めることが、如何に恐ろしいことか。今も前線で社会を支え続ける、医療従事者たちの想いを踏みにじっていると思います。
(注1) 小児多系統炎症性症候群:
PIMS(pediatric inflammatory multisystem syndrome)
と称することも。川崎病(4歳以下の小児に発症する、全身かつ多臓器に発する強い炎症性疾患)に似た病態だが、検査所見に異質な点もあり、同一(あるいは同系統)の疾患かは未解明。
参考)  https://www3.nhk.or.jp/news/html/20230427/k10014049931000.html
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さらに厄介なことに、一度の感染で終わりといかずにブレイクスルー感染(breakthrough infection)するため、感染を重ねると、より重病化のリスクや死亡率が増加する上、罹患後症状は、より酷くなる傾向にあります。

ただし、ワクチン接種者では、未接種者よりも、ブレイクスルー感染は明らかに減少します(皆無ではありませんが)。また、感染後のワクチン接種では、ワクチン接種だけの方より強い免疫反応が得られることや、罹患後症状の発症が抑えられ、発症しても緩和されることも分かってきました。

実のところ、こうした知見は、世界中で6億7千万を超える人々が感染し、688万人の方が亡くなられた末に得られたデータが基になっています(2023年3月時点)。あるいは、今も苦しまれている方の、その犠牲の下、世界中の研究者が叡智を結集して見出された、とも言い換えられます。

その上で言えることとしては、今はまだ「ワクチンをブースター接種まで行うこと」と「感染対策(三密回避と手洗い・うがい・マスク)を適切に行うこと」が重要です。これまで3年もの間、言われ続けてきたこととと、基本は何も変わりません。

ワクチン接種と「適切な感染対策」の重要性
ただ、まだ少なくない誤解のあるところなので、2つ繰り返しておきます。1つ目は「ワクチンは、罹っても重症化しないためのもの」です。もちろん罹りにくくなることも期待できますが、少なくとも、今回の新型コロナウイルスに関しては、数か月で感染予防効果は下がり始めるようです。しかし、確実に重症化は予防できています。

では、感染予防のためには? それが2つ目の「適切な感染対策を行うこと」です。こちらの誤解は、「適切な」の匙加減でしょう。特に「マスク着用」について、です。一般の方にとって、マスクは「自分が感染しないこと」よりも「人に感染させないこと」が第一の目的です。

新型コロナウイルスの一番厄介なところは、「感染しても、発症する前からウイルスを排出すること」です。誰も、たった今、自分が感染していない保証はないのです(注2)。もちろん、自分の感染する確率を下げるためにもマスクは有効です。当然のこと、「適切な」着用は、鼻から顎まで確実に覆うことが肝心です。

(注2) 感染していない保証はない:
抗体検査やPCR検査が陰性だったとしても、厳密には「検体を取得した時点」で「検査方法の感度以下」という話に過ぎない。検査時には微量だったウイルスが、検査後に増加して発症に至ることもありえるし、検査した後で感染する可能性もゼロとは言えない。もちろん、検査を否定するわけではない。以前に解説したように(第11回)、検査結果には偽陽性(感染者と誤ること)と偽陰性(感染者を見逃すこと)があり、一定の確率で間違いは起こる。本来の臨床検査は、疾患の疑わしい患者に対して「病因の除外診断や鑑別診断」から「確定診断や治療の経過観察」として行うものであり、誰かれなく無作為に「感染者の篩い分け(Screening)」を行うものではない。

話が逸れましたが、マスクについては、今年(2023年)の3月以降、「個人の判断が基本」となることが厚労省からアナウンスされています。「本人の意思に反してマスクの着脱を強いることがないように配慮する」ことが強調されていますが、逆に、店舗と客や客と客の間でトラブルを増やすような気がします。


そもそも、これまでも「いつでも、どこでも、マスクしろ!」とは、誰も言っていません。互いに知らない方のおられるところでは「換気を良くし」「大勢で騒がず」「密にならない(およそ半径2m外)」ことを意識し、特に、重症化リスクの高い方(高齢者/妊婦/慢性疾患を有する者)が近くにおられなければ、マスクが無くても問題ありません。

ここまでしろとは言ってないのです 

逆に言うと、これからも新型コロナ禍が落ち着くまでは、混み合う公共設備(特に、病院や役所)、そして公共交通機関の駅構内や車内ではマスクを推奨します。一時期、目の敵にされた飲食店では、ここのところクラスター(感染者の連鎖的な集団発生)は起きていません。正に「適切な感染対策」ができていれば、経済を回すことに支障がないことを意味しています。

これから夏に向けて、暑くなります。昨年(2022年)の夏にマスクが忌避された結果、新規感染者数の勢いが、どうなったか。第7波(26万人強)を思い出してください。デルタ株に苦しまされた第6波(6万5千人強)の約4倍、その前の第5波(2万6千人弱)からは10倍にも増えたのです。マスクを着けたくない気持ちは分かりますが、TPOに合わせて着用することは、厚労省からだけでなく、政府全体や各医学学会でも、強く発信して欲しいところです。

第8派以降の見通しは?
現時点(2023年4月末)の状況では、第8波もピークを越えて、新規感染者数は落ち着いているかのように思われますが、下がりきらずに微増です。しかし、昨年(2022年9月26日)からは感染者の全数把握が簡略化されているため、第8波以降の正確な数値は不明です(死亡者数を比較した推測では、ピークは第7波の1.45倍で38万人弱)。そして、今後は死者数の把握も2週間どころか地域によっては2ヶ月遅れになるので(後から説明します)、流行に即した正確な状況把握は難しくなるでしょう。


第45回で触れましたが、市中の感染状況を最も即時的に把握できる指標の候補として、「下水中のウイルス由来RNA濃度の測定(下水サーベイランス)」があります。今のところ、日本では、東北大学が仙台市のデータを発信しているのみですが、2023年4月24日の予報(前週分の測定)では、明確にウイルスの濃度が(前々週より)増加しているとのことで、新規感染者数は増加傾向にあると判断して間違いなさそうです。仙台市と他の大都市で、感染者数の増減傾向は、大雑把には違わないと思われますから、A.O.さんがお勤めの都内近郊でも、感染者数は増加していると考えた方が良さそうです。


また、A.O.さんがお感じになったように、昨年(2022年)9月来、訪日外国人観光客は増え続けています。日本政府観光局(JNTO:Japan National Tourism Organization、正式名称:独立行政法人 国際観光振興機構)の発表によれば、今年(2023年)3月の推計値で180万人を越えています。もちろん、この新型コロナ禍前(2019年)が月平均で250万人ほど来日していたことに比べると、7割程度ではあります。


申し訳ないことに、入国者における新型コロナウイルス感染者の統計データについては見つけることができなかったので、海外から入ってきた可能性のあるウイルスの型については、確かなことは言えません。ただし、海外から発信される各国の流行状況に、国内での解析データを加味すると、やはり新しい亜型のオミクロン株が広まっていることは間違いありません(図1)



(注3) 図1における「XBB」の割合は、「グリフォン」だけでなく、「クラーケン」と「ヒぺリオン」を除く、全てのXBB亜系統を含んでいる。

都内感染者のウイルスを解析した結果からは、前回(第45回)に解説した、アメリカで大流行中の「クラーケン(XBB.1.5)」が、感染者の半数に迫る勢いです。そして、前回には見られなかった変異系統の「ヒぺリオン(XBB.1.9.1, (注4))」が、急速に勢いを増しています。どちらも「グリフォン(XBB)」から変異を重ねた系統であり、2023年4月時点では、グリフォンの亜系統が全体の7割を占めています。

(注4)  ヒぺリオン(Hyperion): PANGOリニエージXBB.1.9.1
「グリフォン(XBB)」の変異した「ヒッポグリフ(XBB.1, (注5))」から、さらに2段階変異した亜系統。東南アジア各国で発生したと見られる。アメリカでは、クラーケンを超える勢いで広まりつつある。「ヒュペリオン」「ヒュペリーオーン」、「ハイペリオン」とも表記される。命名は、土星の第7衛星に由来する(注6)。ちなみに土星は、2022年時点で、83個の衛星が確認されており、その内の63個に固有名詞が付けられている。ヒぺリオンは8番目に大きな衛星で、1848年に発見された。その命名は、ギリシャ神話の古代神(オリュンポス12神より前の支配神達)のティターン(Titans, ティタン、タイタンとも表記)に由来する。

(注5)   ヒッポグリフ(hippogriff): PANGOリニエージXBB.1
「グリフォン(XBB)」の変異した亜系統。バングラデシュ(バングラデシュ人民共和国, People's Republic of Bangladesh)およびシンガポール(シンガポール共和国, Republic of Singapore)で発生したと見られる。「ヒポグリフ」や「ヒポグリフォ」とも表記される。グリフォンと雌馬の間に生まれた伝説の生物。ヒッポグリフの上半身(首と前脚と背に翼)は、父譲りの鷲(あるいは鷹)であるが、グリフォンの下半身が獅子であるのに対し、ヒッポグリフの下半身は馬である。グリフォンより気性は穏やかで、神々でなくとも乗馬して空を駆けることができるとされる。

(注6)   オミクロン株亜系統のニックネームは、ギリシャ神話などから(言葉を悪くすれば、適当に)命名されていたが、研究者間で「もう少し、来歴などが分かるように呼ばないか?」と議論され、2023年2月以降からは下記のルールに従って「天体の星々」から名付けるようになった。

ルール1. PANGOリニエージBA.2の亜系統には、AからHのアルファベットどれかを頭文字とする。
ルール2. PANGOリニエージBA.4の亜系統には、IかJを頭文字とする。
ルール3. PANGOリニエージBA.5の亜系統には、KからTまでのアルファベットどれかを頭文字とする。
ルール4. それ以外の各系統は、UからZまでのアルファベットどれかを頭文字とする。
ルール5. 組換え系統(複数系統が遺伝子組換えで混ざり、発生した系統)と、その亜系統には、名称の途中にRを含む。

注4のヒぺリオン(Hyperion, XBB.1.9.1)は、グリフォン(XBB)の亜系統であり、グリフォンがアーガス(BJ.1 = BA.2.10.1.1)とミマス(BM.1.1.1 = BA.2.75.3.1.1.1)の組換え系統なので、ルール1とルール5に従った命名であることが分かる。

こうした状況は、世界的に見ても同じです。おそらく、オミクロン株の中でも、グリフォンの亜系統が流行の中心を占めるようになり、アメリカやヨーロッパでもクラーケン(XBB.1.5)からヒぺリオン(XBB.1.9.1)の割合が増し、「アークトゥルス(XBB.1.16, (注7))」も増加に勢いを増しています。そして既に、さらに感染力を増した「アクルックス(XBB.2.3, (注8))」が研究者達の間で心配されています。ここまで、日本でも、世界の流行状況を後追いしてきましたから、おそらく早晩、日本でも同様に流行するのではないでしょうか。ただし、今のところ、新たに発生し続ける変異系統は、感染力を増し続けているものの、ワクチン接種による重症化予防効果は保たれているようです。

(注7) アークトゥルス(Arcturus): PANGOリニエージXBB.1.16
「ヒッポグリフ(XBB.1, (注5))」から、変異した亜系統。インドで発生したと見られ、各国で爆発的に広まっており、WHOからも注意するように広報されている。命名は、うしかい座α星に由来する。ちなみに「α星」は星座を構成する恒星で最も明るい星のこと(以下、β星、γ星と続く)。アークトゥルスは、赤色巨星で、単独の恒星としては、夜空で3番目に明るく見える。ギリシャ語の「アルクトゥーロス(Arktouros)」に由来し、「熊を守るもの」を意味する。おおぐま座の後を追って動くように見えることからの命名とされる。また、おとめ座α星のスピカと、しし座β星のデネボラを結ぶと、ほぼ正三角形となることから、この三星は「春の大三角」と名づけられている。

(注8) アクルックス(Acrux): PANGOリニエージXBB.2.3
「グリフォン(XBB)」から、2段階変異した亜系統。インドで発生したと見られる。デルタ株に類似する変異を持つとされ、インドを中心に、世界中に拡散されつつあり、感染者の増え方は、これまでで最も早いかもしれない。命名は、みなみじゅうじ座α星に由来する。アクルックスは、単純に「みなみじゅうじ座α星(Alpha star of Crux)」を縮めた名称。北回帰線付近か、より南でないと視認できず、伝統的な固有名詞を持っていなかったためである。

「5類感染症」へ移行して何がどう変わるの?
正確な数値こそ分からないものの、日本国内で日々の感染者数の増減を眺めるに、今はまだ嵐の前の静けさであるように思われます。しかしながら、第9波が始まることは覚悟するべきでしょう。ただし、結果的に波の大きさを決めるのは、私たちの感染対策次第です。日本に先んじる世界各国の状況を見る限りでは、嵐の勢い(変異系統の感染力)は、これまでよりも激しくなる可能性は十二分にあります。

折しも、感染症法の扱いが、今年(2023年)の5月8日に「新型インフルエンザ等感染症」から「5類感染症」に変わります。第45回の本コラムでは、この「類型の変更」と、それに伴う「新型コロナ禍への公的な対応の変化」について簡単に解説しましたが、4月27日に加藤勝信厚労大臣が会見され、その内容を拝見すると、概ね予想通りでした(以下、予想→会見内容)。




1. 入院調整の公的なシステムが無くなる。
 → 原則として医療機関の間で調整する。ただし、重症患者や医療機関での調整が困難な患者は行政で調整する。これまで、行政が全ての入院調整を行っている自治体では、9月末までに段階的に(軽症患者から重症患者へ)、行政による調整の範囲を縮小していく。

2. 検査・治療費の公費負担が無くなる。
 → 基本的に、検査・治療法は保険診療の自己負担。ただし、新型コロナ禍における高額な治療薬や入院治療費は期間を区切っての軽減措置を講じる。ワクチン接種については、当面、公的に保証する(自己負担なし/詳細は後述)。

3. 感染者/濃厚接触者に対する療養・待機の要請が無くなる。
 → 法律に基づく入院措置や外出自粛の要請(行動制限)は終了する。行動については個人の判断を基本とする。ただし、判断の情報は政府から提供するし、望ましい行動は推奨する。

4. 対策本部と臨時医療施設が無くなる。
 → 感染者数や死亡者数等の毎日の公表はなくなる。インフルエンザと同様に、定点医療機関からの報告に基づいた、前週月曜日から日曜日までの患者数を毎週金曜日に公表する。
ただし医療機関等情報支援システム(G-MIS:Gathering Medical Information System)を用いた、新規入院者数や病床の状況等の把握・監視は継続する。また、抗体保有率の調査や下水サーベイランス研究などは進める。空港における呼吸器感染症の海外からの流入(検疫)は、検査を継続する。自治体における受診相談機能や高齢者・妊婦のための宿泊療養施設についても期限を区切って継続する。

5. 給付金/補助金など経済支援が無くなる。
 → これについては言及なし。

1については、どのように/どれほど感染者が増加するか、実際の医療機関が、政府や厚労省の見通しに沿って動けるのか、まだ不確定要素の方が大きいと思います。入院調整の混乱は、新型コロナ禍に加えて、全ての救急医療にも影響を及ぼします。言わば、新たに全国的なシステムを作り直すわけですから、万全を期して欲しいところですが、不安しかありません。

2については、期間を区切るとはいうものの、当面は、高額な治療費を負担せずに済みそうですね。

3については、先に触れたように「適切な」マスクの着用や、これまで以上に無症状に近い感染者が市中にいることを意識する必要があります。また、第45回で述べたように、病状が急激に悪化したときの早期医療対応が無くなります。このとき、救急搬送や入院調整がスムーズにいかなければ生死をさまよう事態になりかねません。

4についても、同じく、第45回で述べたように、今でも不十分な、変異株の流行への迅速な対応が、さらにできなくなります。大臣は会見で「大きく病原性が異なる変異株が出現するなど、科学的な前提が異なる状況になれば直ちに対応を見直す」とはおっしゃられていましたが、かなりの後手になるでしょう。

というのも、会見では触れておられませんでしたが、実際のところ、医療機関から公的機関への死亡者の報告は、未だに紙ベースのところが多く、自治体によっては集計に数週間から2ヶ月かかることもあるそうなのです。

もし、国内で局地的に病原性の悪化した変異株が発生したとき、その被害がどうなるか、想像すると鳥肌が立ちます。ただし、研究レベルとはいえ下水サーベイランスに触れていたことや、空港での検疫、重症化リスクの高い高齢者や妊婦さんに対するケアは継続するようなので、そこは少し安心です。

結局のところ、5類になって、何がどう変わるのか?と言っても、そこに新型コロナウイルスがいることに変わりはありません。しかも、波が来るたびに感染力は増しているのです。ですが、私たちにできる行動は、先に述べたように、これまでと同じです。

基本的な感染症対策とワクチン接種なのです。特に、最近の流行は、オミクロン株の亜系統がメインですから、オミクロン株に対応したワクチン(いわゆる二価ワクチン)でのブースター接種まで受けるのが良いでしょう。

ワクチン接種の今後のスケジュールについて
本コラムの最後に、ワクチン接種のスケジュールについて、触れておきます。大人(12歳以上)の内、医療従事者と重症化リスクの高い方(高齢者/妊婦/慢性疾患を有する者)については、この5月8日までに5回目を終えておられるなら、8月末までに6回目が接種できます。

そして、9月以降に7回目を接種する予定になっています。A.O.さんのように、重症化リスクの低い方で、4回目まで終えられているかたは、9月以降に5回目を接種する案内が8月末までに届くはずです。これからは集団接種会場も無くなって、いささか面倒なのですが、自治体がネットで予約サイトを作っていることも多いので、お問い合わせください。

もし、一度も受けておられない方で接種を検討する気になられた方は、自治体にご連絡の上で従来株を接種してください。二価ワクチンは、従来株を2回接種された方にしか接種できません(薬事申請が「従来株を2回接種された方への接種」のため)。

先にも触れましたが、罹患後症状の緩和も期待できます。未接種者が感染後に接種を希望することもあるでしょう。そのときは、医師にご相談ください。

そして、まだまだ接種の進んでいないのが子供たちです。生後半年から4歳の乳幼児、5歳から11歳の小児。12歳以上は、大人と同じ扱いですが10代の接種率は、まだまだ低すぎます。今後の第9波では、これまで以上に、ワクチン未接種の子供たちに多大な犠牲が出るやもしれません。

先に触れたMIS-Cや罹患後症状も心配です。ワクチン接種の開始時期が遅れたことや予約の煩雑さから、接種のタイミングを逃した親御さんたちもおられると聞きます。自治体によっては、不案内もあるかと思いますが、子供たちのスケジュールを図2に載せますので、参考になさってください。