翻訳会社 ジェスコーポレーション

TEL:045-315-2020(AM9:00〜PM6:00)

技術翻訳 特許翻訳 法務・法律翻訳 生命科学翻訳 多言語翻訳   
翻訳会社JES HOMEColumn > archive

Column


第22回 免疫力について
<質問>
まだまだコロナ禍が続いている中で、とりあえずは「手指殺菌・三密防止」を徹底することが自衛になるとは理解しています。ですが、「これだけで本当に大丈夫なのかな?」と思う自分もいます。TVやインターネットでは「〇〇を食べて、コロナに備えよう!」なんて情報が目につきます。

去年の春に本羅先生は、そういう類の話は全てデマと書かれていましたね(第12回)。さすがに最近では、露骨な表現は少なくなりましたが、代わりに「免疫力を高めよう!」「免疫を上げよう!」なんてフレーズが目立つような気がします。本羅先生のお話にも「免疫」が良く登場しますが、そもそも「免疫力」や「免疫を上げる」って、どういうことなのでしょうか。(東京都 A.T.)
(2021年2月)
<回答>
A.T.さん、ご質問ありがとうございます。ようやく2月17日から医療従事者(healthcare professional, healthcare workers, paramedical personnel)へのワクチン接種が開始されるとの報道がありましたね。私たち一般人にワクチンが届くまで、もう少しの辛抱です。お互いに頑張りましょう。

確かに去年よりは少なくなったものの、未だに怪しい「新型コロナ対策」が散見されます。冷静に考えてみれば、普段から私たちの周りには「怪しい健康情報」が蔓延していますから、コロナ禍のように世を騒がす大事ともなれば、まさに雨後の竹の子といった風情で、次から次へと「〇〇が??に効く!」という話が出回るのも、驚くほどのことでもないのかもしれませんね。まったくもって残念な話ではありますが。

「免疫」と「免疫力」
さて、今回A.T.さんが注目された「免疫力」という言葉、私も気付くようになりました。職業柄、そういう言葉には敏感なのですが(笑)、ここ数年来、普通の人との会話にも当たり前に使われるようになった気がします。ただ、いつもの私の解説に登場する「免疫」と、ここで言う「免疫力」は似て非なるものです。

医学・生物学的な意味については折に触れて説明しているので詳述しませんが、いわゆる「免疫」は、「力やエネルギー」のように「程度を測る指標や測定機器」がありません。

幾つもの複雑なシステムが重なり、それぞれ絡み合って、身体全体で機能しているのが「免疫」ですから、普通に生活できているのであれば「正常」であり、病気に罹るようでは「異常」だ、とは言えますが、免疫機能の全体が「どのくらい正常/異常なのか」を示すことは難しいです。

 
免疫の程度を測る指標や機器はないのです! 

要するに、漠然とした「病気全般に対する抵抗力」のことを「免疫力」と称しているのだと思います。そして、漠然としているがゆえに「病気全般に対する抵抗力」のように数値化できない(つまり測定不能な)ものに、もっともらしい名前を付けて「分かった気分」になっているのかもしれません。

身もふたもない言い方で申し訳ないのですが、おそらく「免疫力が高い」というフレーズが意味するものとは、即ち「健康であること」でしょう。そして「健康であること」とは、言い換えると「病気でないこと」になります。

つまり、特別に病気の自覚がないのであれば、既に「免疫力はある(≒免疫が正常に機能している)」し、それは「さらに高められるもの」ではないのです。

もちろん私も、普段の(専門家相手ではない)会話の中では、「免疫力」と「免疫」は違うよ!などと無粋なことは言いません。

一見、科学的っぽい情報
ただ、こうした「一見、科学的っぽい言葉」で、エビデンス(高い研究レベルの証拠)がない怪しい健康情報の本や記事を書いたり、健康食品やサプリメントを売りつけて金儲けをしたりすることに対しては、専門家の端くれとして皆さんに注意喚起を促したくなります。

実のところ、偏った情報を盲信することで特定の食品に対して「病気を防ぐ/治す」あるいは「健康になる」と評価したり、逆に「病気になる」と忌避したりするような、極端な行動に走る傾向は1950年代から知られていました。

こうした、食品や栄養に対する非科学的な問題行動のことをフードファディズム(food faddism)と言います。ちなみに ”faddism” は、良し悪しに関わらず、何かにのめりこむ様子を意味します。本によっては「食品神話」と訳すこともあるようです。

しかしながら今回、「免疫力」や「免疫アップ」という単語で検索したのですが、酷い情報は少なくて胸をなでおろしました。「〇〇が免疫力に効く!」というWeb記事の多くで取り上げられていた食材は、ある意味で普通のものばかりでしたし、フードファディズムというほど奇怪なものではありませんでした。

健康であることの自覚
実のところ、なかなか「自分が健康であることの自覚」を持ちにくいのが、現代社会です。ストレスや睡眠不足、様々な理由で体調不良を訴える人も多いでしょう。だったら、なおのこと、安直な健康情報に惑わされず、ストレス解消や睡眠時間の確保を考える方が、健康的というものです。

健康に関して、あえて食事に言及するなら、「何でもバランス良く、過不足なく」ということに尽きます。高級食材だの手作りだのにこだわらず、身の回りで手に入る食事で充分でしょう。

 
食べ物はバランスよく過不足なく! 

あまり神経質にならずとも、時々はお酒やジャンクフードを楽しむことも、ストレス解消という意味では良いのではないでしょうか。

そんな偉そうなことを言う私はといえば、お酒も食事も「過」の方で指導されがちなので、少し反省します(苦笑)。