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Column


第19回 性の多様性
<質問>
本羅先生、こんにちは。私は、いわゆるBL(ボーイズラブ)が好きです。少し前なら私のような趣味は差別されたものですが、最近はLGBTという言葉も広まって、世間にも浸透してきたかな、と思います。改めて不思議に思ったのですが、こうした「子孫を残すこと」を目的としない性のあり方は、ヒトに特有のものなのでしょうか。(東京都 Y.P.)
(2020年11月)
<回答>
 Y.P.さん、ご質問ありがとうございます。なかなかに、面白い難題ですね。Amazonの和書ジャンルで独立した項目になっているところからしても、すでにBLはエンタメ作品のジャンルとして受け入れられていると思います。

LGBT
私自身は異性愛者なのですが、いわゆるセクシャルマイノリティ(Sexual minority, 性的少数者)には偏見がないと思っています。というのも、昔、友人に連れられて、ノンセクシャル・バーという所でお酒を飲んだ経験が大きいです。そこは、いわゆるバーのママや店員さんがゲイ(Gay:男性の同性愛者)なのですが、どんなセクシャリティ(Sexuality:性的特質)の持ち主でも入店可能なお店でした。

それこそ、レズビアン(Lesbian:女性の同性愛者)、ゲイ、バイセクシュアル(Bisexual:両性愛者)、トランスジェンダー(Transgender:身体と心の性が一致しない人)といった、いわゆるLGBTの人たち、そして私のようなノンケ(異性愛者)もオープンに楽しめるお店というわけです。

 

 その時にママから教えてもらった話ですが、私たちが「性」を理解するときには、身体の性別(生物学的な性別)の他に3つの視点が含まれています。それは「自覚的な性別」と「性愛対象の性別」、そして「服装の性別」です。4つの組合せから個人の「性」を理解して、きめ細やかなコミュニケーションを取ろう、ということがママの言いたいことでした。

 なるほど、個々の人に、身体的・自意識・志向性・社会的と、それぞれに異なる「性別」が組み合わさっているのだ、と考えると、異質に思われた他のセクシャリティを理解しやすくなります。これが、私が俯瞰的に「性」を眺められるようになった切掛けでした。

たしかに「子孫を残すこと」だけをシンプルに考えれば、生物学的性と異性愛だけが全てであるような気がします。しかし、私たちには意識があり、社会的な存在でもありますから、それぞれのレベルにおいて「性別」が機能していても不思議ではありません。

動物の性
これは動物の世界にも当てはまるというより、ヒトが進化する過程で、祖先となる動物から引き継いだ資質と考える方が自然です。したがって、Y.P.さんがお尋ねの「動物の性」でも、十分に同性愛的な行動はありえると言えるでしょう。

 実際、1500を超える動物種に同性愛的な行動が見られ、少なくとも500以上の詳細な観察報告があるそうです。それも哺乳類に限らず、鳥類、爬虫類、両生類、魚類、なんと昆虫にまで報告があります。

ただし、単為生殖(雌だけで繁殖すること)は、ここでの話とはズレると思うので言及しません。また、動物の性行動が何に促され、何を選好するのか、まだまだ研究は不十分です。

さらに言うと、本来ならば「動物はヒトと同様の“自己や社会に対する意識”を持ちうるのか」という根本から議論が必要かもしれません。したがって「動物の同性愛」は、あくまで「人間から見たとき“同性愛的”に見える」という限定的な推測であることは理解しておく必要があります。その上で、いくつかの例をご紹介しましょう。

二ホンザル
 まずはヒトに近いところで、二ホンザルです。良く知られている話ですが、二ホンザルは、ボスザルを頂点にした厳格な階層社会です。世間的には「雌にあぶれた、階級が下の若い雄同士」がペアになると思われがちですが、実際は雌雄に関係なく、「じゃれあい」の延長上で、求愛行動に似た同性愛的な行動が観察されます。ただし、若干の違いはあって、雌同士では特定のペアと、雄同士では複数の個体との関係を持つ傾向が強いようです。

 

ゾウ
 ゾウも面白い行動様式を持っています。ゾウにおける異性愛的(繁殖目的)な行動は「そのときだけの関係」が多いことに対し、日常的には、雌雄ともに同性愛的な行動が多くの時間を占めるようです。年長の1頭と年少1~2頭がグループになり、異性愛の営みに似た行為(愛撫やマウンティング)も観察されます。雌雄の「番(つがい)」より、同性の「絆(きずな)」での行動を優先するのは、やはり社会的な意味合いが強いのでしょう。

 

イルカ
 イルカやクジラでも、同性愛的な行動がよく観察されるようです。特にバンドウイルカでは比較的研究が進んでいるようで、同性のカップルが愛撫し合うところも撮影されています。雄だけ、あるいは雌だけで群れをつくることも多く、雄だけの群れでは雌の獲得に協力し合ったり、雌だけでの群れでは協力して子育てしたり、と同性同士で密な関係を築いているようです。

 

キリン
 ネット・トリビアでは「キリンの交尾は90%が雄同士」というものがあるそうなのですが、キリンで雄同士の同性愛的な行動が多く観察されることは間違いないようです。意外だったのは、研究者によって同性愛的な行動が確認・報告された、初めての野生動物がキリンなのだそうです。雄同士での行為が多く観察されるのは、キリンの雄が成長過程で若い雄だけの群れを作る時期があることが要因の一つでしょう。

 

 さて、今回紹介した話は哺乳類ばかりになってしまいましたが、調べてみると、様々な動物で同性愛的な行動が観察されることが分かります。ただし、動物における同性愛的な行動は、繁殖目的の延長(性愛)というより、社会生活を円滑にすることに重要性のあることが特徴です。つまり、動物の世界における同性愛的な行動は、親密なコミュニケーションによって、お互いの関係性を強める「社会的な機能」として役立てているのかもしれません。