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Column


第12回 新型コロナウイルスに関するウソとホント
<質問>
先生、こんにちは。とうとう、新型コロナウイルスで世界中が、とんでもないことになってしまいました。私も会社から自宅待機を命じられ、慣れないパソコン仕事が中心の毎日です。近所では、マスクやティッシュ、一部の食材も買い占められて、困っています。連日のTV報道も、増える一方の感染者数など、怖い話ばかりです。おまけにSNSでは、ウソかホントか分からない情報が毎日のように、飛び交っています。一体、何を信じて、どう行動するべきなんでしょうか。(東京都 K.A.)

<回答>

K.A.さん、ご質問ありがとうございます。世の中、すっかり新型コロナウイルス一色ですね。まるで、他の病気が一切無くなってしまったかのようです。もちろん、そんな訳はなく、医療リソースも無限ではないですし、当然ながら本来助けられるはずの患者さんにまで影響しないか心配になります。

様々な情報
さて、マスコミは分かりやすさのために情報を単純化しすぎる傾向がありますし、特にTVは、派手に、衝撃的に、と情報を加工しがちです。まずはTVの情報番組には振り回されず、政府や厚労省、医師会などの公式発表を参考にしてください。

公式発表を疑って、自称「専門家」のデマを信じるのは、時間と労力の無駄です。本物の専門家は、今、TVに毎日出演できる暇は無いのです。とは言え、気になるものは仕方ありません。そこで、以下に、私が確認した新型コロナウイルスの話を紹介しますので、参考になさってください。

確かな話
まず、「〇〇が、コロナに効く!」の類は、全てデマです。現在(2020年4月)、新型コロナウイルスに効く治療法は、確立していません。


基本的に、患者に施される治療は、重傷肺炎の対症療法だけです。もちろん、今後、効果的な抗ウイルス薬やワクチンが確立すれば、それが治療法になると思います。

そもそも、今回に限らず、ガンなどの疾病が食事法や食材で治るというエビデンス(evidence:医学的な証拠)は存在しません(生活習慣病は除きます)。「バランスの良い食事が健康に良い」ことは事実ですが、治療薬や標準治療を凌ぐ効果は、ありえません。

新型コロナウィルスとは関係のない話
買い占めの対象となった「一部の食材」に、納豆がありました。私の近所のスーパーでも棚が空っぽです。これ、元をたどれば、国立がん研究センターが、「納豆を多く食べる人」は死亡リスクが低下するという内容の論文を2020年1月末に発表したことから広まったようです。

ただ、よく読むと、この研究は45-74歳だった男女約9万人を約15年間追跡した結果で、がんの死亡リスクには影響がなく、脳梗塞や心筋梗塞の死亡リスクを下げたことが分かった、という内容でした。新型コロナウイルスとは、全く関係ありません。

SNSやチェーンメールでは「コロナウイルスは熱に弱い」というデマが流れてきました。たしか「27度で死ぬので、15分に1回、お湯を飲めばよい」とか書いてあったと思います。冷静に考えれば、27度なんて体温より低い温度で死ぬなら、そもそも感染が成立しません。その後、改変された「37度で死ぬ」というものも出回っているようですが、デマであることに変わりありません。

また、「乾燥していると感染しやすく、胃酸で死ぬので、15分に1回、お湯を飲んで、気管に入る前に胃に流し込めばよい」なんて内容もありました(お湯を飲むの好きですね)。これも、少し考えれば分かるのですが、食道と気管は、全く違うので、気管に入りそうになったウイルスを食道に流し込むなんて出来ません。

また、軽いうがいくらいでは、単に口の中で菌類をかき混ぜているだけです(やるならシッカリ)。それと「深呼吸して息を10秒止め、苦しくなかったら大丈夫」という話も、全くのデマです。

BCG
面白いところで「BCGを打ったことがあると、重症化しにくい」という話が出回っています。各国の状況を見たところ、当たっていそうな気もしますが、因果関係は不明です。今の時点では「どちらとも判断できない」としか言えません。

ただ、不安に駆られた人々が接種を希望しているようで、本来、子供たちに必要な分が足りなくなると懸念されています。納豆の買い占めくらいでしたら罪は軽いのですが、BCGの買い占めは子供たちの未来を奪う行為です。自重してほしいと思います。

PCR検査
前回、「PCR検査を増やせば良い」という意見の間違いを説明しましたが、まだ「検査が足りない」という意見が政府レベルでも払拭されていないようです。繰り返しになりますが、臨床検査は「潜在的な患者を見つける」のではなく「疑わしい患者を調べる」ことが目的です。前回は書かなかったのですが、もし、片っ端から検査をしたら、どうなるでしょうか。答えは、簡単です。医療が崩壊します。

なぜなら、安静にしていれば軽快する患者で医療リソースを食いつぶし、助かる命まで救えなくなるからです。さらに、ただでさえ感度が低いうえに手間のかかるPCR検査の数を増やせば、ミスを誘発したり、院内感染の危険を助長したりすることも増えるでしょう(既に、どちらもありました)。

そして、治療薬が存在しない以上、できることは、感染者も非感染者も同じです。したがって、軽い風邪様の症状であれば、検査を受けるまでもなく、自宅療養が最適といえます。そして、症状のない者も、自分が感染者かもしれない覚悟をもって過ごす必要があります。

だからこそ、不要不急の外出を控える/ソーシャルディスタンス(他者との距離)を取る、ことに意味が生まれます。家族みんなで、生活物資の買い物に出かけたり、公園で遊んだり、というのも、「どのくらいの広さに何人が集まるのか」という危機意識を持ってほしいところです。

コロナ禍を把握する正確な指標
もう一点、調しておきたいのですが、上記のように、現在の新型コロナウイルスに対する臨床検査(PCR検査)が、肺炎患者に対する確定診断(病因の特定)に用いられている以上、公表されている「感染者数」に大した意味はありません。

不顕性(発症しない感染者)や軽症者の一部が含まれないからです。正確に、このコロナ禍を把握する指標は、法的な報告義務のある「重症者数」と「死亡者数」です。したがって、各国と比較するには「国民100万人あたりの死亡者数」が最も信頼できる数値でしょう。


報道されない事実なのですが、日本は極めて優秀で、4月15日現在は0.94と、トップ争いです。ちなみに韓国は4.39、ドイツが38.84、米国が78.72、最大はイタリアの348.47です。日本はギリギリのところで耐えて、頑張っています。

今の私たちにできることは、医療スタッフを応援し、彼らに負担をかけないことです。そのためには、三密(密室、密集、密接)を避け、手洗い・殺菌・咳エチケットを徹底することです。油断せず、何とか、頑張っていきましょう。