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生命科学翻訳


生命科学の各分野で経験豊富な翻訳者が多数在籍しています

ジェスコーポレーションの「生命科学翻訳」は、バイオテクノロジー、医薬、医療機器、農学、保健学、栄養学、森林科学、海洋学等、それぞれの分野に経験豊富な翻訳者が担当いたします。
また言語に関しても、英語のみならず、中国語、韓国語、ベトナム語、インドネシア語等、多様な言語の経験があります。
生命科学に関する翻訳は、ジェスコーポレーションの翻訳スペシャリストにおまかせください。

<生命科学翻訳の取扱分野>
農業資材技術(育種、肥料、農薬)、農業関連技術(土木、機械、情報)、栽培、農業バイテク製品、遺伝子組み換え農産物、人口呼吸器、麻酔器、内視鏡、血圧計、ゲノム創薬、抗体医薬、アンチセンス医薬品、分子標的薬、分子生物学、腫瘍学、臨床試験、生物学、畜産学、植物、作物生産管理システム、生化学、生態学、水、加工食品、漢方薬など



生命科学の翻訳実績


 過去の翻訳実績の一部を下記にご紹介させていただきます。
<日本語⇒英語>
精密農業への取り組みとその実際例
接ぎ木の技法と応用例
タンザニア研修資料
解説書 -生物多様性編-
超高速ゲノム解読装置の開発
生命プログラム再現科学技術推進に関して
イネゲノム解析
ジャポニカアレイ設計
ヒトゲノムDNAアレイ
医療用電子機器および医療用電子機器の制御方法
欧米業界手術器具レーザー刻印の概要
大学院医学研究論文
蛍光顕微鏡システム比較表
体外循環症例データベース
無線伝送式pHメーター
MEDICA報告書
健康関連ディスカッション
コホート説明書/コホート同意書
MRI 説明書/MRI 同意書
インフルエンザの流行に備え
歯科と健康管理
公衆衛生リーフ
塩試験方法
安全衛生監査規程
安全衛生管理資料
吸汗速乾
<中国語⇒日本語>
医薬包装規程一覧
禁止されている食品添加物について
化学肥料と農作物に関する報告書
農業関連技術向上へ向けて
農薬と遺伝子組換え技術について
精密農業の実態調査
土壌環境制御技術
遺伝子組み換え農産物、水産物の安全性に関する論文集
果実栽培における農薬の使用に関する各種規則及び通達等
遺伝子組み換えベクターとしての大腸菌及びレトロウイルスの可能性
農薬の製造方法
遺伝子組み換え作物の安全性に関する各種規定及び通達等
動物用医薬品のGMP
各種農薬等に関する国家標準
人獣共通感染症に関する論文
脱毛予防効果試験規定
<日本語⇒韓国語>
医療器具(歯科・医科製品)カタログ
カプセル内視鏡カタログ
工業用内視鏡・X線カタログ
外国人結核患者の看護と外国語対応
結核への外国語対応に関するアンケート
 日本語⇒ベトナム語>
外国人結核患者の看護と外国語対応
結核への外国語対応に関するアンケート
衛生管理マニュアル
<日本語⇒フランス語>
日本の医療保険制度について
保湿した皮膚の摩擦特性評価
<日本語⇒スペイン語>
バイオの研究開発と予算について
精密農業の作業サイクル
可変農作業機等の開発と農作業機械の自動化
農地利用集積の進行と経営規模の拡大
有機農法、自然農法、減農薬農産物
<日本語⇒ポルトガル語>
形態に合わせた農業技術のパッケージ化の必要性について
農業経営規模の拡大と労働時間の短縮
地下水位の設定と農作物
精密農業によるコスト低減効果
稲作復興研修コース資料
生長管理のためのITの活用
<日本語⇒ドイツ語>
バイオテクノロジーフレームワーク
農薬と遺伝子組み換え食品に対する意識調査
<デンマーク語⇒日本語>
医薬品カタログ
食肉の安全管理について
<ウクライナ語⇒日本語>
 ウクライナの穀物生産調査報告書
<日本語⇒ブルガリア語>
健康診断書
<ハンガリー語⇒日本語>
食肉の衛生管理について
ブタペストにおける食の嗜好調査
<英語⇒日本語>
農業用フィルム資料
種子カウンター操作マニュアル
圃場内のばらつきと収穫との相関関係
ハイブリッドコーン
初乳後に最適な子豚用ミルク
給餌システム
農業施設用ヒーター 取扱説明書
ヨーロッパにおける三圃式農法の歴史と日本への影響
米国農務省牛海綿状脳症(BSE)関連文書
遺伝子組み換え作物の普及率詳細
DNA マーカー育種の工程
バイオマス燃料報告書
医療用ソフトウェアのご紹介
食品の国際規格
新型インフルエンザ
ライフサイエンス産業向けソリューション
ライフサイエンス関連Webサイト
<英文校閲>
〝塩”に関連する研究論文・・・多数
<日本語⇒中国語>
15分でわかるセルフケア
PED商品一覧
結核への外国語対応に関するアンケート
ピロリ菌に対する検査結果
プロポリス 最新研究資料
ヘルペスについて
リュウマチに対する効果例
安全衛生規定
遺伝子診断によるゲ ノム創薬
医科大学付属病院文書
医療機器保守マニュアル
外国人結核患者の看護と外国語対応
看護師経験に関するアンケート
間質性肺炎に対する効果例
歯科用機器カタログ
重要遺伝子の特許化
体外循環症例データベース
中国のベビースキンケア市場
中国向け処方表 & 概要
内視鏡カタログ
日本のバイオテクノロジーにおける課題
入浴剤、育毛剤説明書
農業における無人可変作業ロボットの将来性
発酵技術と品種改良
美容関連機器説明書
末期ガン患者の症例
目のしくみと目の病気について
鑑別マーカー遺伝子セット
<英語⇒中国語>
医学的診断書
環境、健康、安全に関する宣言
<韓国語⇒日本語>
健康診断書
<日本語⇒インドネシア語>
外国人結核患者の看護と外国語対応
結核への外国語対応に関するアンケート
メンタルヘルスに関するアンケート
 <インドネシア語⇒日本語>
 メンタルヘルスに関するアンケート
<フランス語⇒日本語>
フランスにおける就農数の推移と今後の課題
フランス農業と穀物市場
ブルキナファソ農業・農村地域開発プロジェクト
<スペイン語⇒日本語>
農作物品質向上のための日々の取り組み
土木技術の改良による干拓事業の推進
バイオテクノロジーの農業への拡大
スペイン農業の競争力と就農者の所得について
植物工場への取り組みとその課題
<ポルトガル語⇒日本語>
マテ茶の効用
アサイーに関する報告書
有機肥料と化学肥料の実態調査
セラード地帯における穀物生産について
農作物の収量予測システム・装置
<オランダ語⇒英語>
産業医向け「ガンと職場復帰のガイドライン」
<スウェーデン語⇒日本語>
医薬品カタログ
<ノルウェー語⇒日本語>
水産物に関する調査報告書
魚介類の取扱いに関する注意事項
<ロシア語⇒日本語>
キルギスタン農協、食の安全
<クロアチア語⇒日本語>
クロマグロの実態調査報告書
<ギリシャ語⇒日本語>
医薬品説明書
果実と野菜に関する報告書


Column




 本コラムでは、皆様からの生命科学に関するあらゆる質問にお答えします。
 webへ掲載可能なお名前(ニックネーム)にて、ご質問をお願いします。

作者名:本螺 新一郎(ほんら・しんいちろう)
作者略歴:
大阪大学大学院医学系研究科博士後期課程修了。医学博士(Ph.D.)。
理化学研究所などで研究員を務め、現在は民間の研究開発職。
専門は医学・生物学(生理学、病理学、栄養学、神経科学、医用工学、幹細胞工学など)。

第84回 風邪のウイルスについて
<質問>
本螺先生、こんにちは。まだ梅雨にもならないのに、真夏日の暑さって、どういうことですかねぇ。前に、先生が「寒暖差が7℃で、身体のストレスになる」って書かれていたのもあって、朝の情報番組で、天気予報の「最高/最低気温」を引き算するのが習慣になっています。気温差の大きな日は、自分も含めて、イライラしたりグッタリしたり、具合の悪い人が大勢歩いていると思いながら通勤していますし、仕事相手から嫌な思いをしたら「気温差、辛いよね」って思うようにしています(苦笑)。

最近、気になるのが通勤電車内での大きな咳です。素人の直感なのですけど、新型コロナで大騒ぎしていた頃とは、車内に響く音が少し違うというか。と思っていたら、ネットで「謎風邪」という言葉が流れてきました。え!何これ?と思って調べたのですけど、よく分からなくて。また、新型コロナみたいな感染症が発生したのでしょうか……。大丈夫ですよね、本螺先生?(東京都 Y.S.)
(2026年6月)
<回答>
Y.S.さん、お疲れ様です。6月早々に大きな台風6号が過ぎたところで、九州と四国が昨年より2週間ちょい遅れての梅雨入り、関東も少し遅れて、平年並みの梅雨入りとなりましたね。確かに、GWが明けてから妙に暑く、5月の後半には30℃に達する真夏日が続出でした。早朝や夕刻との温度差が7~9℃、湿度も高かったですね。とても過ごしやすいとは言えない……いや、はっきり言いましょう。実に、不快な天気が続きました。私の周りでも、体調を崩す同僚や上司がチラホラと。

かく言う私もグッタリですが、特に満員電車で毎日の通勤は、大変ですよね。私が朝夕の車内で見かける限りは、マスクを付けずに大きな咳音を響かせる方はいないようですが、鼻出しマスクの方は見かけます。しっかり鼻と口をマスクで覆って、咳をするときは、さらにマスクの上から手を覆うなどして、極力、周囲に咳を飛ばさないようにしたいものです。

咳嗽(がいそう)の音

Y.S.さんが気づかれた、咳き込み(咳嗽)の音の違いですが、臨床医が患者さんの病状を推察(すいさつ)するときの、重要な所見の1つです。誰に習わずとも意識されたのだとしたら、なかなかの観察力ですね。

経験を積んだ医師なら、音の高低や籠(こも)り具合、震(ふる)えや湿(しめ)り気などと表現される特徴から、おおよそ「呼吸器や上下気道の、どこが、どんな風に炎症を起こしているのか?」という察(さっ)しが付くそうですよ。さすがに、Y.S.さんが、そこまで診断できるとは思いませんけれど、もしかすると周囲で流行している風邪の種類が変わってきているのかもしれませんね。

新型コロナ禍流行の様子

さて、新型コロナ禍は、最近のデータを見る限り、少し落ち着きを見せているようですが、いつものように確認してみましょう。まずは、患者数のグラフから(図1)。

 図1.新型コロナ禍患者数の推移
●患者数は、「エムスリー株式会社 (M3, Inc.)」が独自に構築するデータベース
「日本臨床実態調査(Japan Medical Data Survey, JAMDAS)」による推計値。
●縦軸の単位/スケールなどの違いに注意。
●下記、参考URLの「新型コロナ」タブを選択。
各地のデータは、地図上のエリアをクリック。
参考) 「モデルナ 感染症リアルタイム流行情報サイト」
    https://moderna-epi-report.jp/

念のために強調しておきますが、上記のグラフは、患者数の推計値です。推計とはいえ、全国の提携医院から、ほぼリアルタイムで計上される診断データからの、信頼性が高い数値です。ただし、あくまで「通院して、診断された」から計上されたわけで、病院に行かない人まで含めた、世の中全ての感染者ではありません。ただ、傾向として、2年前や3年前に比べれば驚くほどの鎮静化と言えるかもしれません。実際、都内のデータではありますが、重症化による入院患者数も、かなり減少しています(図2)。

図2.新型コロナウイルス感染症入院患者数 週報告分推移  
●縦軸は「都内定点あたり報告数」
参考)「定点報告疾病 週報告分 推移グラフ」 
  ※「感染症名」で「COVID-19入院」を選択
 https://survey.tmiph.metro.tokyo.lg.jp/epidinfo/weeklychart.do 

また、図示しませんが、市中における感染者数の指標となる、「下水中の新型コロナウイルスRNA濃度」も神奈川県や札幌市で下がっていますから、症状を我慢して病院に行かない感染者や、症状の出ない/軽い感染者が街を闊歩(かっぽ)しているわけでもなさそうです。

変異系統の最新状況

もちろん、患者数がゼロになったわけではないですし、昨年と同様に、夏からの流行が再燃しないとは言い切れません。前回の本コラム(2026年2月/第80回)で触れたように、相も変わらず、変異系統は増え続けています。この原稿執筆時(2026年6月)における変異系統の総数は”6198”に達しました。最新のPANGOリニエージ(新型コロナウイルス系統名/本コラム第27回と第64回を参照)に触れておくと、2文字表記の系統名は「QJ」から「SZ(注1)」へと、60種も増えています(414種類目)。Xで始まる系統名(異なる変異株の同時感染による遺伝子組換え系統)も、「XFV」から「XGZ(注2)」へ26種も増えました(184種類目)。冗談ではなく、2文字表記の最後「ZZ」を超えて、3文字表記「AAA」が見えてきました……。


(注1)

※「NB.1.8.1」は、「ニンバス(Nimbus, 大きな暗い雨雲)」の通称がある(本コラム第74回を参照)。
※上記「PQ(=NB.1.8.1)」の他、「RC(=PQ.2.8.1)」の分岐が増えている。

(注2) 

※ 「XFG」は、「ストラタス(Stratus, 最下層を覆う雲 / 層雲)」の通称がある(本コラム第74回参照)。
※上記「QF(=XFG.3.4.1)」の他、「XFQ, XFV, XFY, XGA, XGC, XGE, XGF, XGG, XGJ, XGK, XGL, XGN, XGP, XGQ, XGS, XGU, XGV, XGY」のように、さらなる遺伝子組換え系統が派生している。


未だ「ピロラ(BA.2.86 / JN / KP / LP / XEC)」の猛威(もうい)が掠(かす)める中、アジアでは「ニンバス(NB.1.8.1 / PQ /RC)」が、世界全体としては「ストラタス(XFG / QF)」が、優勢でした。そして、ここまでの感染拡大には、様々な変異が重なり続けたのですが、いずれにせよ、大元は「オミクロン株(BA.)」の内、「BA.2」に遡(さかのぼ)る系統として、まとめることができました。

ところが、ここに来て、微妙ではありますが、大きな変化が見られたことを前回に触れました。「BA.3.2」の出現です。前回の時点(2026年2月)では、28系統でしたが、半年もたたない内に総計66系統にまで増え、最新系統の2文字表記は「SS」です。研究者達は「シカダ(Cicada, 蝉(セミ))」と通称を付けました。オミクロン株(BA.3)として検出されてから一度は消え去り、5年弱も経って、再び現れたのです。まるで「土の下で眠っていた」と言わんばかり(※)。この「BA.3.2変異系統」が「セミ」とは、言いえて妙(みょう)というものでしょう。名付けた研究者たちの気持ちは分かります。
※蝉の幼虫は、地中で過ごし、短い種で2年、長い種では17年とも言われる。羽化(うか)した成虫の生存期間は 1~2週間と言われるが、これは俗説。実際は1ヶ月程度と考えられている。ただし、飼育が難しいことから、正確な研究は進んでいない。

新型コロナ禍は落ち着いているけれど……

昨年までの傾向を踏まえるなら、それこそ夏に「セミ」が流行するのか気になりますし、まだまだ油断は禁物です。もちろん、全国では毎日2千人前後の感染者が発生しています。とはいえ、少なくとも直近のデータとグラフを見る限り、2026年6月前半の新型コロナ禍は、過去に比べて落ち着いているように見えます。ただ、通勤電車内に響(ひび)き渡(わた)る大きな咳は気になるところです。

そこで、前回(第80回)に説明した、昨年(2025年4月7日)から5類感染症に位置づけられた「急性呼吸器感染症(Acute Respiratory Infection /略称:ARI)」について、都内のデータを見てみましょう(図3)。

 図3.急性呼吸器感染症患者数 週報告分推移 
●縦軸は「都内定点あたり報告数」
参考)「定点報告疾病 週報告分 推移グラフ」
  https://survey.tmiph.metro.tokyo.lg.jp/epidinfo/weeklychart.do
  ※「感染症名」で「急性呼吸器感染症(ARI)」を選択 

急性呼吸器感染症は、ざっくり「風邪っぽい症状の疾患」の全てです。各都道府県から指定されて「定点」と呼ばれる、指定届出機関(定点医療機関)の内、東京都では、急性呼吸器感染症の定点として、419か所が指定されています(小児科定点:264か所+内科定点:155か所)。グラフを見る限り、各定点から(つまり、1件の内科/小児科の病院で)、直近の週に”50人弱”の患者が診断されていることになります。ご近所の病院で、1週間に50人の風邪っぽい感染症の患者さんが診断されていると想像すれば、通院せずに市販薬で様子を見ている方もおられるわけですから、世の中、かなりの人達が風邪をひいていると推定できますね。

国立感染症研究所(注3)から公表されているのですが、感染症発生動向調査週報(Infectious Diseases Weekly Report Japan /略称:IDWR)によると、5月末における全国の数値も、東京と同様の傾向です。
   参考)「感染症発生動向調査週報」
    https://id-info.jihs.go.jp/surveillance/idwr/index.html


(注3) 国立感染症研究所(National Institute of Infectious Diseases /略称:NIID):
旧・国立予防衛生研究所(略称:予研)。1997年から現在の組織名に改称。新型コロナ禍を機(き)に、国立国際医療研究センター(National Center for Global Health and Medicine /略称:NCGM)と統合されて、2025年に国立健康危機管理研究機構(Japan Institute for Health Security)が創設、その一部門として再編された。本コラム第41回でも、少し触れている。


風邪のウイルス

普通感冒(かぜ症候群)、いわゆる「風邪(かぜ)」の病原体が、ウイルスであることは、過去の本コラムで触れました(第7回)。その代表的な種類は、ライノウイルスやアデノウイルスです。先の国立感染症研究所が公表している、病原体検出情報システム(Infectious Agents Surveillance system /略称:IASS)で、急性呼吸器感染症由来ウイルスを見ると(※)、今年(2026年)の流行は、ライノウイルスと、ヒトメタニューモウイルスが目立つようです。
※下記HP「病原微生物検出情報」における「病原体検出情報(IASS)/毎日更新グラフ」のリンク「ウイルス1」および「ウイルス2」を参照のこと。
  https://id-info.jihs.go.jp/surveillance/iasr/index.html

これら、風邪のウイルスについて、少し解説しましょう。まずは、ライノウイルス(Rhinovirus)。昔から、風邪の病原体となる代表的なウイルスの1つで、「ライノ(rhino)」は、ギリシア語で「鼻」を意味します。1950年代に、軽度の呼吸器感染症が集団発症した看護師グループを対象として、鼻腔(びくう)から得た検体(けんたい)より分離されたことが、命名の由来です。通常は、感染後数日で軽快する上に、血清型(≒対応する免疫の型)が軽く100種を超えるため、ワクチンの開発は非現実的と考えられています。ウイルスの分類学的には、第4群(一本鎖+鎖RNAウイルス)に属します(後述)。直径30nmほどで、ウイルスの中でも最小の部類ですから(インフルエンザウイルスで 80~120nm )、ウイルスを含む飛沫が、空中を漂(ただよ)って、容易に飛沫(ひまつ)感染します。さらに、エンベロープ (envelope, ※) を持たないことから、アルコールでの不活化ができない事もあって、ウイルスの付着した物を持った/触った、手指を介しての感染拡大が厄介ですね。
※ウイルス粒子を覆(おお)う膜構造(まくこうぞう)。感染先である宿主(しゅくしゅ)の細胞膜に由来することが多く、ウイルスが宿主を騙(だま)す、つまり感染先の免疫を回避するために役立つ。

エンベロープを持たないためにアルコールが効かない、この厄介な特徴は、アデノウイルス(Adenoviridae)にも見られます。1953年に、 かつては「扁桃腺(へんとうせん, ※)」と呼ばれていた咽頭扁桃(いんとうへんとう / アデノイド(Adenoid))から分離されたことが命名の由来で、風邪の病原体となるウイルスの1つです。
※実際には腺組織(何かを分泌する機能を持つ)ではないので、今は「扁桃(へんとう)」という。

代表的な疾病に、咽頭結膜熱(pharyngoconjunctival fever /略称:PCF)があります。 俗称の「プール熱」の方が聞き馴染みがあるでしょうか。以前、本コラム第50回で、子供たちの風邪として解説しましたね。直径80nmほどと、ウイルスの大きさでは中型で、ウイルスの分類学的には、第1群(2本鎖DNAウイルス)に属します。

ウイルスの分類学

現在、ウイルスは、6590種が知られています。多種多様なウイルスを系統だて、分類/整理するための最も基本的な分類法が、ボルティモア分類(Baltimore classification)です。アメリカ合衆国の分子生物学者デビッド・ボルティモア(David Baltimore)が提唱(ていしょう)したのですが、遺伝情報を保持する形式に注目することで、以下の7群に分けられています。

第1群 (Group I) : 2本鎖DNAウイルス(double-stranded DNA viruses /略称:dsDNA)
第2群 (Group II) : 1本鎖DNAウイルス(single-stranded DNA viruses /略称:ssDNA)
第3群 (Group III) : 2本鎖RNAウイルス(double-stranded RNA viruses /略称:dsRNA)
第4群 (Group IV) : 1本鎖RNA +鎖ウイルス(positive-sense single-stranded RNA viruses
                      /略称:+ssRNA, ※)
第5群 (Group V) : 1本鎖RNA -鎖ウイルス(negative-sense single-stranded RNA viruses
                      /略称:-ssRNA, ※)
第6群 (Group VI) : (複製によるDNA中間体を含む)1本鎖RNA+鎖逆転写ウイルス
(single-stranded RNA viruses with a DNA intermediate in their life cycle /略称:ssRNA-RT)
第7群 (Group VII) :(複製によるRNA中間体を含む )2本鎖DNA逆転写ウイルス
(double-stranded DNA viruses with an RNA intermediate in their life cycle /略称:dsDNA-RT)

※RNA +鎖(positive-sense RNA /略称:+RNA)は、宿主の細胞内で、合成されるタンパク質の設計図となるメッセンジャーRNA(messenger RNA /略称:mRNA, 伝令RNAとも)として作用する。
一方、RNA -鎖(negative-sense RNA /略称: -RNA)は、mRNAの相補鎖(そうほさ)、つまり対になる核酸塩基(かくさんえんき, ※※)の並びとして、mRNAを合成する鋳型(いがた)となる。

※※核酸塩基は、アデニン(adenine /略称:A)チミン(thymine /略称:T)ウラシル(uracil /略称:U)グアニン(guanine /略称:G)シトシン(cytosine /略称:C)の5種類あり、AとT/AとU/GとCの組合せで、相補的(そうほてき)かつ可逆的に結合する。
DNA(deoxyribonucleic acid/デオキシリボ核酸)の場合、この並びを
塩基対(えんきつい, base pair /略称:bp)という。
DNAでは”ATGC”、RNA(ribonucleic acid/リボ核酸)では”AUGC”の4種類の核酸塩基で表される。

ちなみに、第6, 7群の名称に含まれる「逆転写」ですが、これはウイルスが逆転写酵素(reverse transcriptase /略称:RT)を持つことを意味します。逆転写酵素は、逆転写反応(reverse transcription)を触媒する酵素で、この分類法を提唱したボルティモア、そして別の研究をしていたハワード・マーティン・テミン(Howard Martin Temin)が、1970年に、それぞれ独立して発見しました。発見のきっかけとなったウイルス研究を先導していたレナート・ドゥルベッコ(Renato Dulbecco)と3人で、1975年度のノーベル生理学・医学賞を受賞しています。

生命科学における逆転写反応の衝撃

逆転写反応は、当時の生命科学に衝撃を与えました。分子生物学(molecular biology)の基本概念であるセントラルドグマ(central dogma)を揺(ゆ)るがしたからです。セントラルドグマとは、遺伝情報が「DNA -(転写)→ mRNA -(翻訳)→ タンパク質」の順で伝達されるという、生命に共通する仕組みのことですが、逆転写反応では、遺伝情報の伝達方向が「RNA -(逆転写)→ DNA」と逆転しているのです(図4)

 図4.セントラルドグマ(遺伝情報の発現/複製)と逆転写
●生物の遺伝情報は、基本的にDNAで保存され、「DNAの複製」「RNAへの転写」を通じた「タンパク質への翻訳」へと伝達される。
●ウイルスの遺伝情報は、RNAのこともあり、発現するには感染先(宿主)の細胞機能を利用する必要がある。
●一部のウイルス(上記、第6, 7群)では、逆転写酵素で宿主のDNAに自身の遺伝情報を紛れ込ませる(後述)。

(参考)「面白くて眠れなくなる遺伝子」(著)竹内薫/丸山篤史 PHP研究所

そもそも、DNAを「遺伝情報の格納庫」とすれば、「具現化(ぐげんか)した遺伝情報」がタンパク質で、「DNAの翻訳結果」とも言えます。このとき、RNAは「遺伝情報の翻訳過程」であり、「タンパク質を合成する仕組み」を意味しています。

ちなみに、タンパク質の合成に関わるRNAの種類と働きは、以下、大きく3つに分けられます。

メッセンジャーRNA(mRNA):アミノ酸の結合順序に対応するリボ核酸の連結で構成された、タンパク質の設計図。DNAから読みだされる(=転写)。
リボソームRNA(ribosome RNA /略称:rRNA):mRNAを構成するRNAの順に従って、アミノ酸を連結する(=翻訳)。
トランスファーRNA(transfer RNA /略称:tRNA, 転移(てんい)RNAとも):遺伝情報に対応するアミノ酸と可逆的に結合し、rRNAにアミノ酸を運ぶ。

タンパク質は長く連(つら)なったアミノ酸(amino acid)であり、逆に言えば、アミノ酸の結合する順序でタンパク質が決まります。ということは、遺伝情報とは、主に「タンパク質を構成するアミノ酸の並ぶ順序」のことです。タンパク質は、生命体の活動(≒化学反応)の基本ですから、ある意味、「遺伝情報が生命そのものである」と言えます。

話を戻すと、逆転写酵素の、より正確な酵素名は「RNA依存性DNAポリメラーゼ (RNA-dependent DNA polymerase)」と言います(図4)。これは「RNAを鋳型にした(=依存性)、DNAの合成酵素(=ポリメラーゼ)」という意味です。つまり、本来「DNAから読み取られて(=転写)、タンパク質を合成(=翻訳)」するはずのRNAから「DNAが合成される(=逆転写)」というのです。言い換えると、「遺伝情報の伝達方向がRNAからDNAに逆転している」わけで、こんな現象が、ある種のウイルス感染症で発見されたことが大きな衝撃でした(※)。
※代表的な疾病に、後天性免疫不全症候群(Acquired immune deficiency syndrome /略称:AIDS(エイズ))B型肝炎(Hepatitis B)がある。

これは、ウイルスによる、宿主(感染先)の遺伝情報に対する干渉(かんしょう, interference)であり、「ウイルスという外部の遺伝情報が、感染先の格納庫に逆流している」ということです。例えるなら、コンピューターのハッキング(hacking)/不正アクセス(unauthorized access)に相当します。

謎風邪の正体?

ウイルスの説明が長くなって、少し怖がらせてしまったかもしれませんが、ライノウイルス(第4群)やアデノウイルス(第1群)のような、いわゆる「風邪(かぜ)」のウイルスは、逆転写酵素を持っていませんので、ご安心ください。

それは、今年の流行である、ヒトメタニューモウイルス(human metapneumovirus /略称:hMPV)も同じです(第5群)。ちなみに、新型コロナウイルスも、持っていません(第4群)。

ヒトメタニューモウイルスは、比較的最近に発見されたウイルスで(※)、元は、鳥類に感染する、トリメタニューモウイルス(Avian metapneumovirus /略称:aMPV)の変異体と考えられています(遺伝子が近いので)。
※2001年に報告。それまでの研究では、子供たちの急性呼吸器感染症において、数十%の原因ウイルスが特定できなかったが、21世紀に入って、新たに分子生物学的な手法が開発されて、未知のウイルスを探索可能となったことが背景にある。ただし「新たに出現した」のではなく、「見えなかった存在が可視化された」ということ。ヒトメタニューモウイルス以外にも、様々な風邪ウイルスが見つかり、未特定だった原因ウイルスの、およそ半分が見つかった。

トリメタニューモウイルスは、特に七面鳥(和名:シチメンチョウ/英名:Wild turkey)に感受性が強く、オーストラリア大陸(The continent of Australia)を除き、世界中で、鳥類の呼吸器感染症として広まっています。個人的には、インフルエンザウイルス(influenza virus)を連想するのですが(本コラム第7回/第49回)、今のところhMPV/aMPVともに「人獣共通感染症」とは確認されていません(実験的には、他の霊長類やげっ歯類に感染します)。

ヒトに感染するウイルス、という縛りの中では、RSウイルス(respiratory syncytial virus 略称:RSV)の遺伝子が一番似ています。とはいえ、ニューモウイルス科(Family Pneumoviridae)という大きな括(くく)りの、片やRSVはオルソニューモウイルス属(Orthopneumovirus)、片やaMPVはメタニューモウイルス属(Metapneumovirus)で、分類学的には、少し距離があります。ですが、臨床症状は、よく似ています(本コラム第50回で詳細に触れたので、ここでは割愛)。

ヒトメタニューモウイルスは、他の風邪ウイルスと同じく、1回の感染では充分な獲得免疫が得られないため、終生(しゅうぜい)に渡(わた)って再感染/発症を繰り返します。いわゆる風邪の病原体としては、成人の2~4% /小児の5~10%に相当すると推定されていて、特に、乳幼児で喘鳴(ぜんめい, ※)をきたす風邪の原因であることが多いようです。成人なら通常は無症状ないし数日で軽快しますが、乳幼児/高齢者/免疫不全状態の患者に重症化リスクの高いことは、他の風邪と同じですから、しっかりと対症療法(Symptomatic treatment)を行います。また、こちらはライノウイルスやアデノウイルスと違って、エンベロープがあるので、アルコールが効きます。
※呼吸とともに「ゼイゼイ/ヒューヒュー」と鳴る音のこと。

このヒトメタニューモウイルスですが、どうやら、Y.S.さんの心配される「謎風邪」の正体ではないか?と考えられているようです。調べてみると、2026年5月頃、九州(特に福岡)を中心に「謎の風邪が流行っている」とのSNS投稿が増えて、全国に広まり、一部のテレビや新聞でも取り上げられた、という経緯のようです。平均的な病状として、それほど深刻ではなく(※)、新型コロナウイルスやインフルエンザウイルスの検査では陰性だったにも関わらず、数週間から2か月と長く症状が治まらないことが、人々の不安を煽(あお)ったのでしょうか。
※喉(のど)の強い違和感あるいは激痛にはじまり、薄い痰のからむ咳/鼻水や鼻づまり/倦怠感が続くものの、微熱ないし熱が無い、など「寝込むほどの辛さではない/頑張れそうな辛さ」だったという。

「謎」は、既知の原因の組合せ?!

いみじくも冒頭に触れましたが、今年の5月は不快な天気が続きました。気候による体調不良に加えて、時期的にかぶる黄砂(こうさ, ※)やPM2.5(※※)、イネ科花粉(本コラム第72回)などが流れ込み、悪い環境因子が積み重なったところに、ヒトメタニューモウイルスが襲い掛かったのかもしれません。特に症状の酷い方は、他の風邪ウイルスと重複感染(ちょうふくかんせん)していた可能性もあります。

※中国内陸部(乾燥地域~砂漠)の砂塵(さじん)が、強風で空中に舞い上がり、国境を越えて降下する現象。あるいは砂塵そのものを指す。英語では“Asian Dust / yellow dust / yellow sand / yellow wind”と言い、日本語の発音に由来する、“kosa”が使われることもある。

※※直径がマイクロメートル(μm)単位で表される粒子状物質(particulate matter /略称:PM)のうち、かつて「微小粒子状物質」と呼ばれていた、粒子径2.5μm以下の微粒子。つまり2.5μm孔のフィルターを透過する微粒子のこと。その小ささから大気中の浮遊時間が長く、呼吸器を通じた健康への悪影響が懸念(けねん)されている。


とはいえ、ヒトメタニューモウイルスは、昨日今日やってきたものではありません。毎年、春に流行る風邪ウイルスです。そもそもが、そこまで重要視されておらず、普通の病院で行う検査項目には含まれていないのです。

以前の本コラム第11回で解説しましたが、病院で行う通常のウイルス検査は、「迅速診断」と呼ばれる「調べたいウイルスに固有のタンパク質」を調べる検査です。つまり「どんなウイルスが存在するのか?」ではなく「特定のウイルスが存在するか?」を調べているのです。

ですから、「謎風邪」を心配していた患者さんたちの「検査が陰性だった」というのは、「インフルエンザ/新型コロナ感染症ではなかった」というだけで、そもそも「ヒトメタニューモウイルス」を調べていないのです。迅速診断キットが存在しないので、仕方ないのですが。

上記の研究や、本コラム第80回で解説した、急性呼吸器感染症の定点サーベイランス(surveillance, 感染症の調査・監視)における「病原体サーベイランス(※)」では、分子生物学的な手法を用いた検査で、現在知られるウイルスを検出しています。これを通院される一人ひとりの患者さんに行うのは、費用的/労力的に不可能です。
※各定点における対象者の内、毎週第2営業日開始から5人分の病原体検査。

いずれにせよ、サーベイランスが行われている以上、本当に未知のウイルスが現れたときは、ちゃんと分かるはずです。現時点で公表されているデータや科学的な資料からは、今のところ、Y.S.さんの心配は、杞憂(きゆう, worry about nothing, ※)かなと思います。気を取り直して、この夏の暑さに負けないよう、頑張りましょうね。
※杞人之憂。「取り越し苦労/無用の心配」の代名詞(synonymous)。古代中国の国家「杞(き)」の男が「いつか天が落ち、地が崩落したら、身の置き場が無くなるのではないか?」と憂(うれ)いて寝食を廃(はい)した(心配で寝られず、食事も喉を通らなくなった)」という「列子(れっし)卷第一 天瑞篇(てんずいへん)」の故事(こじ)に由来。