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Column


第21回 新型コロナウイルスの変異株
<質問>
またも新型コロナウイルスの感染拡大で、首都圏と関西圏で緊急事態宣言が発令されました。今回は第三波の流行というよりも、新型コロナウイルスが変異し、感染力を増して新たに出回ってきた、という話も耳にします。すると、せっかく開発されたワクチンも最初から作り直しになってしまうのでしょうか? 医療崩壊!なんて報道も増えて、ものすごく心配です(神奈川県 M.A.)
(2021年1月)
<回答>
M.A.さん、ご質問ありがとうございます。ご心配になられるのも無理のない状況ですよね。かく言う私の勤め先も、再び在宅ワークになっています。M.A.さんが懸念されるように、今回の感染拡大が、昨年来のウイルスによる第三波ではなく、新たな変異株(mutation)によるものである可能性も否定はできません。

ただし、正確に、それを見極めることは、感染拡大と同時進行では困難です。しかしながら、報道によれば、英国型の変異株が渡航歴のない患者さんから検出されたということなので、少なからず日本においても市中に出回っていることは間違いないでしょう。

変異株とワクチン
1月20日現在の情報では、英国型と南アフリカ型の変異株が、世界に拡散しているようです。朗報としては、今のところ変異したとはいえ、開発中のワクチンを無効化するほど極端なものではないという研究報告が多いことでしょう。そういう意味では、むやみに心配する必要はないと思います。

また、第7回でも触れたように、変異の早いインフルエンザに対して型が合わなかったワクチンでも重症化は防げますから、仮に新型コロナウイルスの変異株が開発中のワクチンと合わなかったとしても、接種の意味はあると予想されます。

ウイルスの感染力と毒性の関係
変異株については、感染力が強まっていることが、恐怖心に拍車をかけているようにも思います。一般に、強毒性のウイルスは、感染力が強くても局地的な流行にとどまります。なぜなら、「感染した人間がすぐに死ぬと、ウイルスの拡散する範囲も狭まるから」です。

したがって、感染が広まりやすくなる(感染力が強まる)ように変異するウイルスは、同時に毒性も弱まるように変異することが知られています。

この性質が新型コロナウイルスの変異株についても当てはまるのであれば良いのですが、残念ながら楽観的になることは禁物です。というのも、新型コロナウイルスの感染者は、病状を発症する2日も前から、他者に感染させることができます。

 
症状が出る2日前に他人へ感染!! 

この性質が変異株にも受け継がれるなら、毒性が変わらなくても(あるいは強まっても)、感染力が強まることを邪魔しません。

さらに言うと、元から新型コロナウイルスは、高齢や基礎疾患という特定のリスクを持つ人々にだけ強く牙をむく、ターゲットの偏ったウイルスでした。

つまり、不顕性のまま感染を広める人間が多数いるということですから、全くもって油断できる状況ではありません。

しかしながら、変異株の広まったイギリスでも、第18回で解説した治療法(特に重症者に対するトシリズマブの投与)が有効であることが報告されています。

これまで以上に慎重になった方が良いことは間違いありませんが、治療の手立てが確立しつつあることは心強いと思います。

RNAウイルス
第13回でお話ししましたが、インフルエンザと新型コロナウイルスには、RNAウイルスという共通点があります。そして、RNAウイルスには、変異しやすいという特徴が元々あります。

ですから、新型コロナウイルスが多少なり変異することそのものは、それほど不思議ではありません。

また、冬に感冒(風邪やインフルエンザ)が流行ることも特別なことではありませんから、このタイミング(年末年始)で患者数が増えることは想定されていたことでもあります。

他国との比較
それでも他国と比べれば、被害は桁違いに少ないことも事実です。1月20日現在のGoogleニュースによると、人口100万人当たりの感染者数は、日本2,665人、アメリカ73,600人、イギリス51,682人、フランス43,349人、ドイツ24,767人ということです。

第12回で示したように、各国とコロナ禍を比較する上で最も信頼できる人口100万人当たりの死者数を見ると(1/18現在)、日本34.5人、アメリカ1,205.4人、イギリス1,326.2人、フランス1,085.1人、ドイツ564.1人です。

 
日本の被害が桁違いに少ないことも事実 

一部の報道で「他国の施策に見習え」という論調もあるようですが、そんな必要は全くありません。かと言って、日本の施策が万全とも思えませんので、そこは注意深く判断しなければなりません。

医療崩壊 !?
確かに、「医療崩壊(healthcare collapse)」というインパクトの強い言葉が、報道のせいで独り歩きしていますが、これも不安を煽られるだけで終わらず、正しく理解していて欲しいところです。

実際に、日本全体で病院ないし医療が逼迫しているわけではありません。しかし、「感染症対策」と同時に「呼吸器管理」が行える施設、そして専門医と看護師が充分に足りているのか、と言えば、余裕がなくなりつつあることも事実です。

その意味では、新型コロナの治療に対する医療リソースは逼迫しています。おそらく春から夏にかけて、順次、私たち一般人にもワクチン接種が進むでしょう。それまでは、これまで通り、私たち一人一人が予防に努めることで、自分を含む周り全体を守ることが大切だと思います。