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Column


第56回 嗜好品について
<質問>
本羅先生、こんにちは。先日のコラムで、先生が、嗜好品を「すべからく身体に悪いもの」と書かれていて、驚くと同時に半分納得しました。でも、もう半分は何だかモヤモヤしたままです。このモヤモヤを自分なりに考えてみたのですが……。

ようするに、これまで生命が進化してきて、最適な生物が生き残り、繁栄してきたはずなのに、人類が「身体に悪いものを好むこと」に矛盾を感じているのだと思います。生命科学とは少しズレるかもしれませんが、このモヤモヤを解消できるような解説をお願いできますか?(神奈川県 S.A.)
(2023年12月)
<回答>
S.A.さん、ご質問ありがとうございます。なかなか難しいことに、モヤモヤされてしまいましたね(笑)
もしかすると、”コスパやタイパ(注1)”といった、ある種の「最適化」や「効率」を善とし、「無駄」や「非効率」を悪とする、最近の世相の流れがあっての疑問なのかもしれません。S.A.さんのモヤモヤをスッキリさせることができますか、2023年最後の質問にも全力でお答えしたいと思いますので、どうか、お付き合いのほどを。

(注1) コスパやタイパ:
コストパフォーマンス(cost performance、費用対効果)とタイムパフォーマンス(time performance)の略語。そもそも、コスパの「コスト」には「金銭」や「労力」だけでなく、「時間」や「精神的負担」も含まれる。タイパは、コストの内の「時間」を強調した和製英語。

歴史的視点
さて、インターネットの海を彷徨ってみれば、日本で「嗜好品」という言葉を公式に使ったのは、かの森鴎外が最初なんだとか(注2)

(注2) 1912年6月に雑誌「太陽」で発表された小説「藤棚」。該当箇所は、以下。
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……そして毒に對(たい)する恐怖と云ふことを心の中(うち)に考へた。藥(くすり)は勿論の事、人生に必要な嗜好品に毒になることのある物は幾らもある。世間の恐怖はどうかするとその毒になることのある物を、根本から無くしてしまはうとして、必要な物までを遠ざけようとするやうになる。要求が過大になる。出來(でき)ない相談になる。恐怖のために精力を無用の處(ところ)に費してゐると考へたのであつた。
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どうやら、森鴎外は「毒になる嗜好品は避けるべき」という考えについて「羹に懲りて膾を吹く」ようなものだと見做していたようです。

森鴎外の記した「嗜好品」は、ドイツ語の”Genußmittel(高級食材)”を和訳したようです。単語の前半”Genuss”が「飲食/味わうこと」だけでなく「喜楽/享楽」を意味し、後半の”Mittel”が「手段/対策/措置」の他に「薬品」も意味するので、単なる「贅沢/高価な飲食物」だけではなく、嗜癖の対象となる薬物等も含むようです。

ただ、さらに調べてみると、森鴎外が「(私達の)人生に必要な」と表現する、「嗜む」というニュアンスまでを含意する単語では無さそうです。とはいえ、理系人間の私としては、言葉の定義が気になるところです。デジタル大辞泉によれば「栄養をとるためでなく、その人の好みによって味わい楽しむ飲食物。」とのこと。

 若き日の森鴎外
出典:国立国会図書館「近代日本人の肖像」
(https://www.ndl.go.jp/portrait/)

また、日本大百科全書(ニッポニカ) には、下記のようにもう少し詳しい記載がありました。

「栄養摂取を主要な目的とせず、香味や快い刺激などを楽しむため用いるもの。人類はかならずしもその生理的必要性のみから物を摂取してきたのではない。(中略)飲食物はすべて習慣によって摂取されているにすぎないし、人々がそれを好んでいるから摂取するのかどうか判断することも困難な場合がある。(中略)通例、栄養学的に重要な意味をもたないようなものが嗜好品として扱われる。(中略)本来、特別な宗教的・儀礼的な意味、あるいは薬用的な意味をもったものが多く、ほとんどの場合、それが特別の意味合いを失って、嗜好品化してきたと考えられる。(中略)嗜好品の種類は民族や文化によってさまざまであるが、伝播(でんぱ)や交易によって、広範な地域に広がって世界各地で用いられている嗜好品も多い。」

つまり、現代医学、特に栄養学的な意味で、生命維持に無意味ないし有害であっても、歴史的な治療薬、あるいは宗教や儀礼に用いられてきた飲食物が、こと近代に至って文化的な意味を失い、日々の生活を彩る/快感を得る/味覚・嗅覚・噛み応えも含む触覚・視覚などを楽しむためのものとして愛用される品物が、嗜好品の大意と考えて良さそうです。

文化的意義
どうも「嗜好品」という言葉には、日本文化特有の外国語に翻訳しづらいオタク気質が垣間見えるような気がしますね。英語にも、相当する単語は見当たりませんし、「嗜好品」という言葉は、実のところ「侘び寂び(wabi-sabi)」のような日本独特の世界観を表現する言葉になりうるのかもしれません。

もちろん、世界の様々な言語にも、各地に固有の文化圏に由来する、他国の言語に翻訳しづらい単語があります。

例えば、私が面白いと思った言葉に、ドイツ語の”Waldeinsamkeit(ヴァルトアインザームカイト)”があります。これは「森の中で感じる孤独感」を意味するそうですが、孤独と言っても感情的な寂しさではなく、自然とゆったり交流する感覚なのだそうです。何だか、深い森とともに育まれてきたゲルマンの文化が薫ってきませんか? 

また、スペイン語の”vacilando(ヴァシランド)”は、「目的地に行くことよりも、移動に伴う経験を重視した旅をする」という意味なのだそうです。これなど、大航海時代を彷彿とさせますよね。


私にとっては、こういう新しい言葉を教えてくれる、知的好奇心を刺激する書籍も、一種の嗜好品だったりします。
(参考) 「翻訳できない世界のことば」 
エラ・フランシス・サンダース著 前田まゆみ訳 創元社

享楽の生物学的基礎
閑話休題。世にいう四大嗜好品は、「酒・お茶・コーヒー・タバコ」なのだとか。確かに、これらを愛用される方は多いですね。無粋ではありますが、本コラムは生命科学がテーマですので、これら嗜好品を私達に嗜好させる成分についてお話ししましょう。

まず、酒はエチルアルコール(ethyl alcohol,)、お茶・コーヒーはカフェイン(caffeine)、タバコはニコチン(nicotine)が、私達の身体(特に脳)に作用し、私達に嗜好させる理由となります。

エチルアルコールは、エタノール(ethanol)とも言います。歴史的に「アルコール」と言えば、これを指し、酒を酒たらしめている化学成分ですね。それゆえ、酒精とも表記されます。

エチルアルコールの薬理作用は、本コラム第54回で解説した全身麻酔薬と同じです。つまり、厳密な作用機序は解明されていませんが、意識に作用して酩酊させ、量が過ぎれば意識不明となります。いわゆる急性アルコール中毒ですね。

カフェインは、お茶やコーヒーだけでなく、カカオ豆から作られるチョコレートやココアにも含まれていますね。その薬理作用は、ざっくり説明すると、アデノシン(adenosine)の偽物です。

アデノシンは、抑制性神経細胞(抑制性ニューロン)を興奮させる神経伝達物質です。本コラム第54回で説明した、生命活動における一般的かつ重要なメカニズムの一つである、「伝達物質と受容体の”鍵と鍵穴”の関係」を思い出してください。

ところで、ここで言う「ニューロンの興奮」は、いわゆる「私達の感情の興奮」とは厳密には違います。これも、本コラム第54回で少し説明しましたが「ニューロンの興奮」とは、ニューロンが細胞の膜電位を電気信号に変換して、電気信号の届いたシナプス前終末から神経伝達物質を放出することです。

一方で「抑制」とは、膜電位を電気信号に変換する邪魔をすることを意味します。つまり抑制性ニューロンの放出する神経伝達物質は、受取先のニューロンを抑制するのです。

そして、アデノシンの偽物、カフェインは、抑制性ニューロンの受容体に結合するアデノシンの邪魔をして(拮抗阻害)、抑制性ニューロンを抑制します。すると、抑制性ニューロンから抑制の外された興奮性ニューロンは、過剰に興奮するのです。

このように、抑制作用を抑制して興奮を増強することを「脱抑制」と言います。少しややこしいですね。イメージとしては、マイナスにマイナスを掛け算したらプラスになる、ということが細胞レベルで生じているのです。結果として、カフェインは脳を刺激し、ニューロンから神経回路、そして感情を興奮させることになります。


ニコチンは、アセチルコリンの偽物です。
これも、本コラム第54回を覚えておられたら、「アセチルコリンの偽物は、筋弛緩薬だったはずでは?もしかするとタバコを吸うと身体の力が抜けてしまうの?!」と思われるかもしれませんね。

実は、同じ「アセチルコリン受容体」でも、脳と神経筋接合部では少し性質が違います。専門的な話になりすぎるので端折りますが、ニコチンは、神経筋接合部のアセチルコリン受容体と結合しても、すぐに外れます。

したがって筋肉でのニコチンは、アセチルコリンの邪魔(≒拮抗阻害)をするほどではありません。一方で、脳のアセチルコリン受容体とは強く結合するので、中枢神経回路の邪魔をし、嗜好品の成分となるわけです。

ところで、脳のアセチルコリン受容体は、どこの中枢にでも存在するわけではありません。幾つかの重要な脳機能に関する神経回路に分布しています。その一つが、今回のトピックである、嗜好・嗜癖に関する神経回路で、一般に、報酬系(reward system)と呼ばれています。つまりニコチンは、報酬系を刺激する物質なのです。

報酬システムの理解
報酬系の、より正確な脳機能の名称は、報酬予測(reward prediction)と言います。これは、私達ヒトだけでなく、あらゆる動物に備わっている、最も基本的な、生存に関わる機能です。

そして、報酬とは、すなわち、水や食料に代表される物質であったり、安全な環境や状況であったり、それらの起きる出来事であったり、それらの得られる行動/活動/意識など、いわゆる「良い動機や感情」を喚起する刺激全般を、一般的には意味します。

動物は、より多くの報酬を求め、そのために報酬を予測する機能を装備し、洗練させました。そもそも動物の生命史、ほぼ全ての期間は、飢餓や他者からの捕食、環境変化との闘いと言っても過言ではないでしょう。

生命の維持に必要な諸々が、全て偶然に与えられ、満たされたならば、動物は動く必要がありませんよね。つまり、動物にまで生命は進化しなかったのではないでしょうか。……と、これは少々言い過ぎました。生命の意味論を説くことは、生命科学の範疇を超えますね。軽くお聞き流しください。

話を戻して、報酬予測について、もう少しだけ解説しておきましょう。ざっくりと、ではありますが、ここが、S.A.さんのモヤモヤに関わる部分と思うのです。

さて、動物が「より多くの報酬を得るために予測する」とは、具体的に、どういうことでしょうか。今のところ、おそらく、次のステップを踏む、ある種の学習過程のことだろうと考えられています。

1) 報酬が得られる。
2) 報酬と、同時/連続/経時的に知覚(注3)した「刺激A」を認知・認識(注3)する。
3) 報酬の増減(変化)を経験する。
4) 報酬の変化と符合する「刺激Aの増減」あるいは「刺激Bへの変化」を認知・認識する。
5) 刺激の変化/変動に対して働きかけ、報酬の増減を予測する。
6) 実際に得られた報酬と予測した報酬の差から、働きかけを変更する。
7) 5と6を繰り返して、報酬の増加を加速し、減少を遅延させる。

(注3) ここでは便宜上、「無意識 < 知覚 < 認知 < 認識 < 意識」の順に、グラデーションで、報酬や刺激に対する「気付きの強さ」を表記している。

ドーパミン作動性ニューロンの役割
あくまで一例ですが、上記の学習ステップは、ヒトを含む動物による報酬予測の生理学的なメカニズムです。この報酬予測を司る神経回路は、中脳の腹側被蓋野(ventral tegmental area, VTA)を中心にして前頭葉(frontal lobe)へと広がる、ドーパミン作動性ニューロン(dopaminergic neuron)によって構成されています(図1)。ドーパミン作動性とは、神経伝達物質としてドーパミン(注4)を放出することを意味します。

(注4) ドーパミン(dopamine, DA)
 中枢神経で機能する神経伝達物質の一つ。アミノ酸のチロシンから合成される。ノルアドレナリン(noradrenaline, NA)を合成する前駆体であり、ノルアドレナリンはアドレナリン(adrenaline, AD)の前駆体である。DA / NA / ADの3つは、どれも神経伝達物質であり、分子構造の共通性から、カテコールアミン(catecholamine)という。カテコールアミンに、セロトニン(serotonin, 5-HD)ヒスタミン(histamine, His)を加えた5つの神経伝達物質をモノアミン(monoamine)といい、脳機能を修飾(modulate)する働きから、神経修飾因子ともいう。脳機能の修飾とは、ニューロンの興奮を調節することを意味する。

図1.報酬系のドーパミン作動性ニューロン 

参考)  https://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%85%B9%E5%81%B4%E8%A2%AB
%E8%93%8B%E9%87%8E
*矢印(→)は、ドーパミン作動性ニューロンの神経回路を表す。
前頭葉(Frontal lobe)
 「随意運動」「作業記憶」「注意」「思考」「意欲」「情動」など様々な機能を有しており、いわゆる人格を形成する主要な脳部位。俗に言う「心・意識・自己」の脳部位。
側坐核(accumbens nucleus)
 「快楽/愛好」「恐怖/嫌悪」という真逆の感情を司り、「意欲」にも重要な脳部位。
線条体(striatum)
 「運動」や「意思決定」などに強く関与し、側坐核とともに「感情」や「意欲」に重要な脳部位。
黒質(substantia nigra(ラテン語の「黒い物」)):
 「運動」や「報酬予測の学習」に強く関与する脳部位。ドーパミンの前駆体であるL-ドパ(L-DOPA, L-3,4-ジヒドロキシフェニルアラニン)を多量に含む。L-ドパの重合体が黒い色素であるため、脳を解剖したときに黒斑として視認されることが名前の由来。黒質のドーパミン作動性ニューロンの減少は、パーキンソン病(注5)の原因となる。
海馬(hippocampus)
 近時記憶と長期記憶の形成(注6)に重要な脳部位。

(注5) パーキンソン病:
 特徴的な運動症状を呈する難病。主な運動症状は、安静時の振戦(不随的に震えること)、動作緩慢(微細かつ素早く動けないこと)、筋強剛(筋固縮)、姿勢保持障害(転びやすいこと)。50歳以上での発症が多く、高齢化に伴って患者数は増加し、65歳以上の1%が罹患している。薬物療法が基本。根治には至らないが、転倒による骨折や他の疾患を予防できれば、患者の平均寿命は健常者と変わらない。

(注6) 記憶の分類:
 記憶には「記銘(入力)」と「貯蔵(保持)」、「想起(出力)」の過程があり、情報を保持する時間によって「即時記憶」と「近時記憶」、「長期記憶」に区分される。即時記憶は記銘から間を置かず想起する記憶で、近時記憶は記銘の後に干渉を挟んでも想起できる記憶を意味する。干渉とは、情報が意識から消えることを意味し、ヒトでは数分から数日、実験動物では数時間の保持時間のこと。長期記憶は、近時記憶より保持時間の長い記憶(ヒトでは数十年、実験動物では数週間)で、臨床神経学では遠隔記憶ともいう。

先に説明したニューロンの興奮、つまり神経伝達物質の放出ですが、本コラム第54回で少し詳しく説明しました。シナプス前終末(前シナプス, presynapse)から放出された神経伝達物質は、シナプス後要素(後シナプス, postsynapse)の受容体に受け取られて、信号を伝達します(シグナル伝達)。そのときは明記しなかったのですが、前シナプスと後シナプスの間には、ごくわずかな隙間が開いています(シナプス間隙)。通常の神経回路におけるシグナル伝達では、シグナルのON/OFFを素早く切り替えるため、シナプス間隙に放出された神経伝達物質は、即座に回収されます。

特に、神経修飾因子であるモノアミンについては、後シナプスだけでなく、ニューロンの細胞体にも受容体があります。そのため、シナプス間隙の外に漏れたモノアミンも回収する仕組みを持っています。ところが、前頭葉に広がるドーパミン作動性ニューロンには、ドーパミンを回収する仕組みがありません(注7)

(注7) 厳密には、ノルアドレナリンを回収する仕組みで代用している。

報酬系と行動への影響
つまり、報酬予測の神経回路の内(図1)、私達の心に対して大きな役割を占める前頭葉は、一度、ドーパミンで興奮すると、なかなか静まらないという訳です。より多くの報酬を動物が求める理由が、これです。報酬を予測し、報酬を得られることが、ドーパミン作動性ニューロンにおいては、さらなる興奮につながります。

特に、行動や意識にも影響する前頭葉で、その予測と報酬の関係は亢進され、報酬を得る刺激自体が、また報酬となるのです。これは、一種の正のフィードバック機構(Positive feedback mechanism)です(本コラム第43回を参照)。つまり、報酬を得る機会があれば、それを最大化するようにアクセルをふかします。ただし、ブレーキがないのです。


ですから、先にも述べたように、「満たされない」ことが当然であれば、生命の維持に関わる「食」「住環境」「性」が、報酬系を刺激することも、また当然のことでしょう。そう進化する方が有利だったろうことは、想像に難くありません。

しかし、報酬が生命の維持を満たし、超えるほどになったとき、ブレーキが無ければ、どうなるでしょうか。生命のバランス、恒常性(ホメオスターシス, homeostasis)を崩すでしょう。

もちろん、一部に「満たされた」人々もいたでしょう。しかし、ヒト族(Homo)の誕生が1000万年~200万年前、現生人類(ホモ・サピエンス, Homo sapiens)となってから、まだ20万年~30万年と言われます。その、人類史上、有史時代(文字による記録の確認できる時代)でも、わずか6000年ほどに過ぎません。「満たされた」ことに順応する生理メカニズム、つまり、報酬系のブレーキを進化させるには、全く、時が足りないのです。

そして、報酬系のブレーキが欠けていることは、コンピュータープログラムにおけるバグのようなものかもしれません。なぜなら、報酬系を駆動させる刺激は、生命の維持と無関係どころか、害をなすこともあるからです。もう少し言い換えましょう。

報酬系は、生命の維持に関わらない刺激でも駆動するのです。そうです。その刺激こそ、私達に快感をもたらして耽溺させる、様々な嗜好品というわけです。

いわゆる違法なドラッグも、その多くが、今回説明した報酬系に作用しますし、様々な依存症と呼ばれる精神疾患でも、報酬系の過剰性から説明できます(もちろん全てではありませんが)。薬物に限らず、行動嗜癖行為依存(behavioral addiction, process addiction)と呼ばれる精神疾患では、特定の行動や行為が、高揚感/不安や怒りの軽減/緊張からの解放などを報酬としてもたらすために止められず、健康や社会生活に問題を起こします。

私達は、何とも厄介な仕組みを身につけたものです。しかし、私達を設計したのが神様だとしたら、飢餓を乗り越え、栄えて飽食に至った人類に「やっちまったなぁ」と苦笑いしておられるのか、あるいは「よくやった。嗜好品を楽しむがよい」と微笑んでおられるのか。いずれにせよ、「ほどほどにしろよ」とは仰せになられると思います。