薬、貿易赤字「陰の主役」 輸入超過、昨年」1.3兆円 開発競争で後手

2012年5月14日 日本経済新聞朝刊

医薬品の輸入が拡大している。新薬開発で米欧の後手に回り、海外から高額な抗がん剤などを買う必要があるためだ。輸入が輸出を上回った額(輸入超過額)は2011年には10年前の5倍の1兆3660億円で、日本の貿易赤字(2.5兆円)の隠れた主役になっている。40兆円規模に膨らんだ日本の医療費を支える税金と保険料は、海外に流れ出ているのが現状だ。

2012.05.14 日経

(以上で記事終わり)

少子高齢化で老人が増え続けていく日本ですから、今後ますます医療費が増加していくことは確実です。

にもかかわらず、医薬品の開発競争で完全に米欧企業の後塵を拝し、外国製の医薬品を買わざるを得ないとは情けないことです。

近年、日本で医薬関連の翻訳需要が急増してきた理由もこれでわかるというものですが、われわれ日本の税金や保険料が海外へ流れ続けていくというのは問題です。

日本は長い間、自動車や電子、機械、IT、ソフトウェアなどの分野で世界の最先端を走り続けてきました。

しかし、今ではそれもアジア諸国に追い上げられ、優位性を保てなくなってきています。

今後医薬品の分野で莫大な赤字を出し続けるなどもう許されないことでしょう。

実際医薬産業の育成に力を入れるインドが、日本との経済連携協定(EPA)を機に、後発薬などの売り込みを加速させようと働ききかけているそうです。

今後インドをはじめとするアジア諸国との医薬品に関する貿易が増大していくことも時間の問題でしょう。

世界が見たNIPPON 「もう、国内だけではやっていけない・・・。新たな“開国”を迫られる震災後の日本

COURRiER Japon 2012年6月号  ”The New York Times” の記事より抜粋して要約

・ 震災の打撃と長引く円高の影響で、「産業の空洞化」はよりいっそう深刻さを増している。その裏で、雇用の創出のために「外資」を呼び込もうとする自治体も現れはじめた。

・「日本はもはや外国の助けなしでは成長できない段階まできているのです。中国企業でも米国企業でも構いません。ぜひ会津若松に来ていただきたい」(会津若松の室井市長)

・ かつては輸出や海外投資が盛んな「製造業大国」だった日本はいま、新たな現実を突きつけられている。日本はこれまで拒んできた外資系メーカーを、受け入れざるを得なくなっている。

・ いまはまだ小規模だが、資本が隣国の中国から流入してきている。

・「中国人はいまや救世主のように思われています。日本への投資はどんなものでも基本的に日本にとってプラスになります。雇用の拡大、税収および機会の増加を意味するからです」(財団法人国際貿易投資研究の所増田研究主幹)

・ 日本政府は海外からの直接投資を今後10年間で倍増させることを目指している。とりわけ岩手、宮城、福島3県への投資に重点を置くという。

・ 先進国の大半は外資を呼び込むためにあらゆることをしてきたが、日本は何十年も外資に不利な条件を課してきた。高い営業コストや税率、厳しい規制、乏しい行政支援などだ。

・ 国連のデータによると、日本はその経済規模に対して海外からの投資が最も少ない国の一つだ。

・ 一方、日本企業の多くはいまも国内より海外での成長のチャンスに投資することを好む。

・ 財務省の資料によると、2011年の海外直接投資は9兆3000億円の流出超で、日本の政策決定者が憂慮してきた「産業の空洞化」がより進んだ結果となった。

・ 「企業の海外流出を誰もが懸念しています。だとすれば日本はもっと外資に門戸を開いてバランスをとるべきです。日本への進出を検討するような外資系企業は競争力があり、生産性も高い。彼らは日本に投資し、雇用を創出し、高い給料を支払い、そして新しい需要の火付け役になるのです」(一橋大学の深尾教授)

2012年6月 クーリエ 対内直接投資

・・・・(以上で、COURRiER Japon記事の抜粋終わり)

日本企業はここ十数年のあいだ、新興国からの安い製品に圧倒され、国内市場を奪われ続けてきました。これからは逆に新興国市場を奪う戦略に切り替えていかねばなりません。

なにも特許や特殊技術を持った大企業だけが新興国市場で有利に立てるわけではありません。

たとえばここ十数年のあいだ、新興国の個人所得は急激に上昇しているため、日本人との所得格差も日増しに縮まってきています。

急激に豊かになる人々が何をもとめるのか、それはきっと新興国の人たちよりも日本人の方がよく知っているはずです。

また、日本人にとっては当たり前のサービスが、外国人にとっては新鮮な驚きという話はよく聞きます。

コンビニ、宅配便、引っ越しサービス、レストランやお店での接客等々、かゆいところに手の届くきめの細かいサービスにかけては、日本人の方が一枚も二枚も上手でしょう。

その感覚を活かして、製品づくりにおいても、新興国の人たちがより喜ぶモノを作ることができるはずです。

現地生産により、コスト面で現地企業に近づけるだけでなく、日本固有のアイディアやきめの細かいサービスで、現地企業を圧倒するシェアを奪うことだって、決して夢ではないでしょう。

それでは、それにより空洞化した日本の国内産業の穴はどう埋めればよいのでしょうか?

言うまでもなく積極的な外国資本の導入が不可欠です。

かねてよりの私の持論、「経営者の目の色や資本(紙幣)の色など何色だって構わない。一番大事なことは雇用」なのです。

日本政府は一刻も早く法人税の減額や積極的な規制緩和を行い、外資企業が日本国内に投資しやすい環境を整えていってほしいものです。

アメリカ製造業ルネサンス

2012年4月16日号 日経ビジネスの記事より

製造業が米国の生産拠点を強化する動きが広がっている。
モノ作りを失いかけた国に何が起きているのか。
中国の人件費高等、米金融緩和に伴うドル安など、
競争力回復には様々な外的要因が指摘されるが、それだけではない。
先を見据えた企業の戦略、州政府の積極的な支援策など、主体的な努力も背景にある。
製造業の空洞化危機に直面する日本は何が学べるのか。

2012.4.46 日経B-2

2012.4.16 日経B-3

2012.4.16 日経B-1

<以上で日経ビジネスの記事終わり>

なぜ今アメリカの製造業は、自国内生産へ回帰し始めているのか?

記事の内容を簡単にまとめてみました。

1. 燃料費の高騰で、海外で生産する大型製品を米国へ輸送するコストが上昇している。

2. 「世界の工場」中国の人権費が高騰している。

3. 米国内の安価なシェールガス生産拡大により、工場運営に必要な燃料費コストが下落している。

4. パナマ運河の拡張工事が2014年に完了する予定なので、工場進出が相次ぐ米国南部とアジアを結ぶ海運の効率が高まる期待がある。

5. 実行為替レートでみるとドルは下落し、一定量のものを作るのに必要な単位労働コストも低下している。

6. オバマ大統領が製造業に対し税制面で優遇する改革案を発表している。

7. 米国内のほうが良質な人材を確保できる。

8. 米国内のほうが開発効率が良い。工場が近くにあれば要望を聞いて試作機を作ったらすぐに顧客に見てもらえる。

9. 海外に工場があると仕様変更のたびに担当者が海外出張しなければならない。

10. 地方政府が製造業に対し、法人税の減免や工場用地の提供、その他様々な支援を行っている。

戦後、日本とアメリカの間で起こったことが、現在日本と中国の間で起こっています。

従って現在アメリカで起きていることを見ておけば、将来日本で起きることも予見できる、という極めて単純な発想に行きつきます。

しかし、日本にシェールガスはないですし、アメリカマーケットと日本マーケットの大きさの違いもあります。

米中の距離よりも日中の距離のほうがはるかに近いという物理的事情もあります。

したがって、アメリカ製造業の復活が、即日本でも起こり得るとはなかなか考えにくいのではないでしょうか。

最近日本が南海トラフで開発を始めているメタンハイドレートの実用化の目途が立てば話は別ですが、仮にそれが実現するとしても数十年も先の話でしょう。

つまり、日本の製造業のグローバル化にブレーキがかかるということは今のところちょっと考えられません。

電力不足に東西格差の可能性も

日経ビジネス 2012年4月9日号「電力維新」

(以下、記事のなかから抜粋)

SMBC日興証券のエコノミスト、宮前耕也氏の推計によると、原発が全基停止のままの場合、今夏の東日本は最大電力需要に対して7.4%の不足で、西日本は5.1%の不足(下のグラフ参照)。鉱工業生産は全国で1.7%押し下げられる可能性があるという。

2012.4.9 日経ビジネス

問題は他にもある。

その1つは、この夏が予想以上の猛暑となり、節電ではなく昨年3月のような計画停電(一斉停電)となるケース。その場合、メーカーは休日の変更による生産日の変更や作りだめなどの対策が取りにくく、影響が今の予想よりも大きくなるのは必至だ。

2つ目は、東西間に電力供給格差が生じる可能性である。定期検査休止中の原発のうち、既にストレステストが終わっているのは16基。このうち先頭をいく「大飯3,4号機が再稼働となれば、東日本より原発への抵抗感の低い西日本の原発が再稼働へ動く可能性がある」(宮前氏)というのである。

仮に西日本が一部でも原発を再稼働すると、電力不足に東西間格差が生じることになる。となれば、東から西へ生産拠点を移したり、サプライチェーン全体の変更を余儀なくされる企業が出てくる恐れもあり、経済の新たな波乱要因になりかねない。

電力・エネルギー改革は先の話ではなく、喫緊の課題なのだ。

(以上で記事終わり)

今年の夏、東日本から西日本へ電力を求めて企業が移動する可能性もある、ということですが、つい最近まで世界を席巻していた「ジャパニーズカンパニー」が「電力難民」となり、日本中を右往左往する様なんて想像もしたくありません。

20年以上前の話ですが、インドに詳しいある方がこのような話をしてくれました。

「インド人は、インド政府をまったく信用していないので、インド政府が保証するなどという契約書には見向きもしない。しかし、日欧米の有名企業が保証するとなると、突然態度を変えて、ニコニコしながら契約に応じてくる。これはインドに限らず、発展途上国はどこも同じだけどね」と言っていました。

当時日本では、「日本政府が保証してくれるのであれば絶対安心。民間企業の保証だけでは信用できない」という考え方が主流でした。

したがって、この話を聞いて「やっぱり、途上国ってしょうがない国なんだな」と思う日本人も多かったようです。

さて、現在の日本です。

原発問題に関して、政府の公式発表や調査結果を信用する日本人はどれだけいるでしょうか。

「複数の民間シンクタンクによる調査結果ならある程度信用できるが、経産省が実施した調査結果など誰が信用できるか」という雰囲気が日本中に蔓延しているように感じます。

まさに日本は昔の「発展途上国」と同じになってしまったわけです。

今年の夏、日本の電力不足は、尻に火がついた状態なのですが、政府の公式見解そのものに国民が疑心暗鬼を生じているため、迷走してなかなか決まりません。

喫緊のエネルギー政策と中期、長期に分けたエネルギー政策を早く確立してほしいものです。

私が高校生だった1973年、「オイルショック」が勃発しました。

人々はトイレットペーパー探しに狂奔し、狂乱物価と共に多くの企業が倒産しました。

大方のマスコミは「日本は石油の99.9%を輸入に頼っている。もう日本に未来はない」と語っていました。

しかし、あの絶望的な「オイルショック」でさえ、日本人は乗り越えてきたのですから、きっと今回も乗り越えていけると信じています。

シャープ、台湾・鴻海が出資 1割、筆頭株主に 液晶パネル合弁

2012年2月28日 日本経済新聞より

シャープは27日、台湾の電子機器受託製造会社、鴻海グループと戦略的な業務・資本提携を行うことで合意したと発表した。同グループを割当先にした第三者割当増資を実施する。新株発行数は発行済み株式数の10.95%にあたる1億2164万9000株。併せてシャープの堺工場が生産する液晶パネルや関連部品を鴻海精密工業が最終的に50%まで引き取る。この結果、堺工場の操業安定を目指す。

堺工場を運営するシャープディスプレイプロダクトの出資比率も現状はシャープが約93%、ソニーが約7%だが、提携後はソニーの比率は変えずに、シャープの出資比率を約46.5%に下げ、鴻海精密の郭台銘会長や他の投資法人なども合わせて約46.5%にする。

記者会見した次期社長の奥田隆司常務執行役員は提携を「もの作り分野を変革する一環」と位置付けた。そのうえで「シャープが研究開発や設計、生産、調達、販売、サービスなどすべてのバリューチェーンを手がけるのではなく、バリューチェーンの中に協業を含めた取り組みをおこなうことが重要だ」と語った。液晶に関しては「シャープの単独垂直統合では限界がある」とも指摘した。

2012.3.29 日経2

2012.3.29 日経3

2012.3.29 日経1

(以上、日経新聞2012年2月28日・29日朝刊より)

2012.3.29 日経B
(日経ビジネス2012年3月26日号より)

・・・・(記事の転載ここまで)

すでに中国家電大手のハイアールが旧三洋電機の白物家電部門を買収し活動を始めていますが、今度は台湾の鴻海(ホンハイ)精密工業がシャープの筆頭株主となりました。

私はかねてよりこのブログの中でも指摘してきましたが、アジア企業のグローバル化の波が、いよいよ現実のものとなって日本企業にも押し寄せ始めたのです。

今後この傾向はどんどん強まっていくはずです。

日本人は、企業買収というとすぐに拒絶反応を起こしますが、“資本(紙幣)の色”が何色であろうと、“経営者の目の色”が何色であろうと、そんなことはどうでもよいのです。

山一證券や北海道拓殖銀行のように、日産自動車をつぶしたほうがよかったのでしょうか?

日産に外国資本が入ったおかげで、“進駐軍”による優秀な経営者が海外から送り込まれ、みごとに日産は復活をとげました。

フランスから来た“進駐軍”は日本人を不幸にしたでしょうか?

その経緯からみて、日本人だけでは、あの難局を乗り越えることは難しかったでしょう。

雇用を確保し、利益を上げ、税金を払ってさえいれば、“資本の色”や“経営者の目の色”など何色でも構わないのです。

これからも同様だと思います。自分のボスの国籍がどこであろうと、そんなこと自体がもうニュースにならない時代がやってくるはずです。

マリナーズのイチローが初めて野茂と対戦した時、日本中のマスコミが「メジャー・リーグで日本人同士が対決する」と大騒ぎをしました。

その時のイチローのインタビューが印象的でした。

「早く誰も騒がなくなるよう、多くの日本人がアメリカでプレーしてほしいものです」

事実、今では多くの日本人がアメリカでプレーしているため、日本人同士の対決など、たいしたニュースにもなりません。

近い将来、アジア企業による日本企業の買収報道は、きっと大きなニュースではなくなっていることでしょう。

世界が見たNIPPON  「武器輸出三原則」の緩和で日本は再び軍事大国となるのか?

COURRiER Japon 2012年4月号の記事「世界が見たNIPPON」の中に興味深い記事がありました。

中国の週刊誌「南方人物週刊」の記事、「『武器輸出三原則』の緩和で日本は再び軍事大国となるのか?」です。

(以下、記事の抜粋)

2012年4月クーリエ・ジャポン

日本は先ごろ、武器の輸出を制限した「武器輸出三原則」を緩和すると宣言した。武器開発コストや購入のコストの高騰に対応するためだ。

第二次世界大戦中、日本は中国に多大な損害を与えたが、真摯に反省することはなかった。それもあって、このニュースは中国国内で大きな注目を集めている。

(中 略)

日本の通常動力型潜水艦の技術は世界をリードしている。

(中 略)

潜水艦の技術は通常の艦船より遥かに複雑なため、開発できる国は少ない。米国はすでに通常動力型潜水艦の開発をやめており、現在、通常動力型潜水艦の輸出大国と言えるのはドイツ、ロシア、フランスぐらいだ。

日本が武器輸出を解禁すれば、米国は通常動力型潜水艦の市場を日本が独占するように仕向ける可能性がある。

米国にとって、自分が占有できない市場は、言いなりになる盟友に牛耳らせておいたほうが安心できるからだ。

ドイツとフランスは他国の干渉を嫌うため、米国がこれらの国の武器輸出をコントロールすることはできない。

日本は(中略)武器の高いアップグレード率を誇っており、ほぼ5年ごとに新型モデルを開発している。

使用年数20年たらずで退役する潜水艦は世界でもまれで、こうした比較的新しい中古潜水艦は小国にとっては得な買い物となる。

(中 略)

武器市場で影響力が小さい日本が、すでに大国がひしめく市場に参入するのはまず不可能だが、退役した中古兵器を安価で売ることによって利益を得ることはできる。

一方で日本は、昔から優位に立っている分野(電子、光学、素材など)でなら、世界市場で一定のシェアを得ることができる。

あまり知られていないことだが、米軍で使用されている軍事用望遠鏡M-22Bは日本製だ。

また、米軍の標準装備であるライフル銃のナイト・フォース・スコープはドイツ製になっているが、実際の加工は日本メーカーに委託されている。

武器輸出の規制が緩和されれば、日本は高密度光学、電子モニター、レーダーなどの市場で一定のシェアを獲得するだろう。

国際的な技術水準アップも期待できる。

武器の開発コストは年々増加しており、武器の自給を目指し、国産武器を国内にのみ供給するのではコストが高くなりすぎる。

20年以上経済が低迷する日本が、この高コストのゲームを続けるのは不可能だ。

日本による武器輸出三原則の緩和は、経済的な要因によるところが大きく、政治的な要素はおそらく少ないだろう。

・・・・(記事の抜粋ここまで)

昨年末、日本の野田政権が発表した「武器輸出三原則の緩和」が日本国内ではほとんど見向きもされなかったのに対し、中国国内では大いに注目が集まっていたようです。

やはり周辺諸国は「日本が再び軍事大国への道を歩むのではないか」と常に警戒しているのでしょう。

またこの記事では、「これから日本が中古の武器を小国へ販売して、利益をあげるようになるだろう」とも予測しています。

しかし結論的には、日本がお金欲しさに中古の武器を売るようになっても、「政治的要素つまり軍事目的ではないので特に目くじらは立てませんよ」との発言で終わらせています。

この中国人ジャーナリストの余裕の発言は、中国が政治大国、軍事大国、経済大国であるからではなく、現実に中国が武器輸出国のひとつであるからだと思われます。

実は世界の大国はどこもかしこも「戦争ビジネス」大国でもあるのです。

戦後の日本が世界各国、特に発展途上国からかなり友好的に迎え入れられていたのは、ODA(政府開発援助)だけでなく、「戦争ビジネス」に直接的に手を染めていなかったからではないでしょうか。

古くなった武器を発展途上国へ売り、小競り合いに火に油を注ぎ、戦火が広がればますます「死の商人」が儲かるというしくみ「戦争ビジネス」は、「麻薬覚せい剤ビジネス」となんら変わりがありません。

日本が「貧すれば鈍す」国にならないよう願っています。

アジア輸出 黒字化を左右 貿易赤字1月過去最大 中国向け2割減 燃料輸入は高水準続く

2012年2月21日 日本経済新聞朝刊より

財務省が20日発表した1月の貿易統計速報(通関ベース)で、輸出額から輸入額を差し引いた貿易収支の赤字が1兆4750億円と単月で過去最大となったのは、アジア向け輸出が前年比13.7%減と大幅に落ち込んだことが大きい。昨年は2月だった中国、台湾などの春節(旧正月)が今年は1月だったことに加え、欧州危機のアジア経済への波及が進んだ。原子力発電所の停止でエネルギーの輸入が引き続き高水準になるのは確実なだけに、貿易収支の先行きはアジア向け輸出がカギを握ることになりそうだ。

2012.02.21日経1

2012.02.21日経2

(以上で日経新聞の記事は終わり)

2012年2月21日 朝日新聞朝刊より

貿易赤字はこのまま定着するのか。例年は2月が多い中国の旧正月が今年は1月で、工場の稼働日数が少なかった事情もあり、「過去最大の赤字は、一時的現象」(農林中金総合研究所の南武志・主任研究員)との見方が多い。

だが、第一生命経済研究所の永浜利広主席エコノミストは、「企業の海外進出が進み、たとえ世界景気が回復しても、輸出額が過去の水準に戻るのは難しい」と指摘。

核開発疑惑があるイランに対する先進国の禁輸措置で原油やLNGの価格がさらに上がり、貿易赤字が拡大するリスクもある。

これまで日本は、貿易収支と所得収支の二本柱で経常黒字を稼いできたが、1月の経常収支は2009年1月以来、3年ぶりに赤字になる見通し。巨額の貿易赤字が続けば、経常赤字が恒常化するおそれもある。

2012.02.21 朝日

(以上で朝日新聞の記事は終わり)

内閣府は「日本は貿易赤字が定着したとは言い難い」(日経新聞)と指摘しています。

また、日銀の白川総裁も「一時的な要因で、定着するとは見ていない」(日経新聞)との見方を示しています。

本当にそうであればよいのですが・・・。

中国以外のアジア諸国への貿易収支は今のところ黒字となっていますが、実は日本が輸出した先のアジア諸国は、その部品を使って中国へ再輸出してお金を稼いでいるのです。

したがって中国経済が失速すれば、アジア経済全体が失速し、日本も多大な影響を受けるのです。

日本の経常収支が赤字定着するようにでもなれば、高騰する資源を輸入するお金はもう日本にはありません。

油もガスも食料も買えなくなった日本を想像したくはありません。

いまこそ日本の次世代のドル箱商品を官民挙げて研究開発していってもらいたいものです。

上場企業 今期利益ランキング けん引役10年で様変わり 電機3社赤字1.2兆円

2012年2月8日 日本経済新聞朝刊より

企業業績のけん引役が様変わりしている。2012年3月期の予想連結純利益が多い順に上場企業をランキングしたところ、上位にはNTTドコモなど内需型の通信や、資源高で潤う商社が名を連ねた。テレビ不振と円高で苦境に立つ電機大手は、パナソニックなど5社が1000億円以上の赤字となる。日本の稼ぎ手が製造業から非製造業へ、輸出関連から内需関連へと移り、産業地図が塗り替わろうとしている。

2012.02.08 日経

(以上で記事終わり)

これは日本の翻訳業界のみならず、日本全体にとって大変由々しき問題といえるでしょう。

利益上位に名を連ねた「通信」と「商社」は、いわば国策会社とも言える産業です。

「通信」はインフラ整備のため、莫大な国家予算を費やす産業であり、また国防上においても非常に重要なため、昔からどの国においても、国家が大きく関与してきました。

また、今回「商社」は、資源高により莫大な利益を上げたようですが、この「資源」もまた「国策企業」が扱う最たるものです。

日本は、今後「製造業」という産業をどのような位置に置こうとしているのでしょうか?

① 米国アップルのように、製造は新興国にまかせて、設計、デザイン、ソフトウェア開発に特化する製造業を目指す。

② 韓国のように国策で同業者を一つか二つにまとめて、世界で戦える巨大企業に集約してしまう。たとえば自動車メーカーにおける現代、電機メーカーにおけるサムスン、LGのように。

③ 日本はもう「ものづくり」はしない、と切り捨ててしまう。

まさか③の対応を考えているとは思いませんが、現在の日本政府の無為無策を見ていると、結果的に③になりそうで心配です。

強力な円高対策はもちろんのこと、企業グローバル化への後押し、法人税、相続税の減税も必要です。やはりまずは選挙でしょうか・・・・。

”失われた20年”は真っ赤なウソだ! 日本社会は米国よりも「これだけ豊か」

COURRiER Japon 2012年3月号の「世界が見たNIPPON」の中に興味深い記事があったので、抜粋して下記にご紹介いたします。

オリジナルは、“The New York Times” の記事です。

2012年03.01 クーリエ 失われた20年

<以下、記事の抜粋>

・日本は金融危機に直面しながらも国民の生活を豊かにすることに成功した。しかるべき時期が来れば「失われた20年」は実り多い時期だったとみなされるだろう。

・日本人の平均寿命は1989年から2009年にかけて78.8歳から83歳へと4.2歳も伸びている。日本人は米国人より4.8歳も長生きするのだ。しかも日本人の食事はこれまでになく欧米化が進んでおり、この伸びは日本人の食生活の“おかげ”ではない。最大の要因は充実した医療制度だ。

・インターネット・インフラも目覚ましく進歩している。世界最速のインターネット接続環境にある50都市のうち、日本の都市は38もあるが、米国の都市は3つだけだ。

・1989年末と比較して、円は対ドルで87%、対ポンドで94%値上がりしている。安定通貨としての地位を守り続けているスイスフランに対しても値上がりしている。

・日本の失業率4.2%は、米国の約半分の水準である。

・「失われた20年」に東京に建てられた高さ150m以上のビルは81棟ある。同時期にニューヨークでは64棟、シカゴでは48棟、ロサンゼルスでは7棟しか建設されていない。

・日本の経常黒字は2010年に1960億ドル(約15兆円)に達し、1989年から3倍以上増えている。対照的に、米国の経常赤字は1989年の990億ドルから4710億ドルに膨らんでいる。

・1980年代から米国の統計学者はGDPに対してインフレ率を調整する「ヘドニック法」を積極的に採用するようになった。これは多くの専門家に言わせると、国の見かけ上の成長率を意図的にかさ上げする手法だ。直近の数十年における米国の成長率は年率で2ポイントも水増しされてきた。

・携帯電話を見ても、日本の消費者は驚くほど早いサイクルで最新機器に買い替えている。

・ミシュランガイドによると、東京の3つ星レストランは16軒あるが、2位のパリは10軒だ。同様に、総じて日本のレストランのほうがフランスより評価が高い。

・米国人の日本へのイメージが間違っていることを示すものの一つに、日本が不況をものともせずに築き上げた、洗練された産業基盤がある。そしてそれがあまり知られていないことは、日本のメーカーが製造業向けの製品供給者へと脱皮した証しでもある。一般的に、製造業向けの製品は最先端の部品や素材、精密機器であることが多い。消費者の目にあまり触れないものだが、これらがなければ今の世界は成り立たない。

・日本の成功は素晴らしいものだ。多くの東アジア諸国が製造業に注力した結果、世界はここ20年間で急速な産業革命を遂げた。それでもなお、日本の貿易黒字は増え続けている。

・日本は反面教師ではなく、見習うべき国として引き合いに出されるべきである。日本が絶えずインフラを向上させていることは、一つのヒントになるはずだ。

<以上で記事終わり>

米国がGDP成長率を2%水増ししていたとは、にわかには信じがたいのですが、それを除けば「なるほど」とうなずかされる話ばかりです。

最近になって「米国経済の日本化(Japanization)」という言葉が、マスコミ各社でさかんに使われるようになりました。

“Japanization”とは、「日本のように長期間にわたって景気低迷から抜け出せない状態」のことを指します。非常に不名誉な比喩です。

世界での存在感が日増しに薄れゆく日本ですが、日本はもっと自信を持つべきなのかもしれません。

この”The New York Times” の記事が「正解」であることを願ってやみません。

海外進出しても、空洞化にはならない!

2012年1月号 日経トップリーダーに枝野幸男経済産業大臣のインタビュー記事が出ています。

その中から一部を抜粋して下記に記します。
(以下、日経トップリーダーの記事)

2012年1月号日経TL

— 中小企業の海外進出が進むことで国内産業は衰えませんか?

(以下、枝野経済産業大臣の回答)

海外に進出した中小企業と、国内に残った中小企業の雇用者数を比較した「中小企業白書」の調査があります(上記グラフ参照)。

海外に出た企業は、一時的に国内の雇用を減らしますが、およそ5年後には国内に留まっている企業より、むしろ従業員を増やしています。

海外の活力をうまく取り込むと、海外拠点はもちろん、日本の本社やマザー工場も発展するのです。そうしたことが10年ほど前から現実に起きています。

国内事業を放棄した企業は、進出先の海外でもあまり成功していません。そうではなくて国内事業がしっかりしているうちに、その足場を残しながら海外に展開する。

そういう中小企業の動きが、日本経済を発展させ、空洞化対策にもなります。

(以上で記事終わり)

私たち翻訳業界の人間にとって、大変うれしい調査結果がでています。日本企業がこぞって海外進出しても、それが産業の空洞化にはつながらない、逆に将来の日本国内の雇用を増やす要因になっている、というのです。

企業の海外進出のお手伝いをすることの多い私たち日本の翻訳業界は、

「これが日本の産業空洞化につながるのではないか?」

という懸念を抱きながら、仕事を受注してきたという側面もあったからです。

しかしこれからは、心配することなく海外進出のお手伝いをすることができます。

この話を書いていて1980年代の日米貿易摩擦の話を思い出しました。

当時アメリカ政府は、日本市場の閉鎖性や非関税障壁を激しく非難し、「もっとアメリカ製品を買え」と強く日本政府に迫りました。

その時、日本で活躍するある米国人経営者がこう話していました。

「日本市場で儲けている外国企業はたくさんある。IBM、コカコーラ、ペプシコ、プロクター&ギャンブル、ジョンソン&ジョンソン、ブラウン、マクドナルド、ヨーロッパのブランド品企業、などなど数え上げたらきりがない。彼らは何も言わない。なぜなら儲けていることを知られたくないからだ。日本で失敗した企業だけが自国に帰り、『日本はひどい国だ』と騒いでいる」・・・・・と。

これと同じことが、現在の日本と中国の間でもおこっていたのかもしれません。

中国へ進出し、失敗した企業が日本にもどり「中国はひどい国だ。中国人はひどいやつらだ」と騒ぐため、中国に対する悪いイメージだけが先行し、欧米企業に出遅れてしまいました。

実は、早い時期から中国へ進出し、しっかり儲けている企業は、大企業はもちろんのこと、中小企業でも少なくないのです。彼らは決して騒ぎません。なぜなら目立てば、ライバル企業に真似をされてしまうからです。

今からでも遅くはありません。海外進出(中国をはじめとする世界各国)を考えている企業がありましたら、ぜひ前向きにご検討ください。

そして翻訳の需要が発生したときに、ジェスコーポレーションの名前を思い出していただければ幸いです。

世界貿易にブレーキ / 中国貿易 移る軸足

世界貿易にブレーキ

欧州危機がアジア直撃 7~9月伸び1ケタ

欧州債務危機などを背景に、世界貿易量の伸びが鈍化し始めた。輸出と輸入の数量を合算した貿易取引量は7~9月が前年同期比5.2%増にとどまり、最近の10%前後の伸びから落ち込んだ。

欧州危機に伴う信用不安が実態経済に悪影響を与えつつあり、けん引役であるアジア新興国向け輸出も減速しつつある。国際通貨基金(IMF)は2012年にかけて貿易取引が低迷するとみており、世界経済の停滞につながる恐れもある。

2011.12.13 日経

(以上、2011.12.13の日経新聞朝刊より抜粋)

中国貿易 移る軸足

多国間から二国間・地域に
WTO加盟10年輸出額6倍

中国が世界貿易機関(WTO)に加盟してから今月で10年を迎えた。自らの存在感の高まりで多国間の交渉が難しくなるなか、二国間やアジア地域での経済協力へと交渉の軸足は移ってきた。貿易摩擦を抱えながらも順調に翼を広げてきた中国の通商政策に、米国が主導する環太平洋経済連携協定(TPP)がゆさぶりをかけている。

2011.12.13 朝日

米主導のTPPを注視

中国社会科学院国際研究学部長
チャン・ユンリン氏

中国はTPPに非常に注目している。中国抜きで始まったことに加えて、中国が参加するかどうかの態度を決めていない段階で、日本が入ろうとしているからだ。ただ、TPP参加へとアジアの大勢が動けば、中国政府もいずれ対応を考えねばならない。

TPPは日本の参加で規模も質も歴然と変わる。米国との関係を重視した政治的な選択だと思うが、中国や韓国、東南アジア諸国連合との協力を軽視しないでほしい。

アジア太平洋の地域全体を束ねる経済連携に向けては、2本の道がある。一本が米国主導のTPP。もう一本は(米国抜きで)中国も参加する東南アジアと日中韓を軸にしたものだ。どちらの交渉も時間がかかるが、いずれ、この二つを統合しようという動きが出る可能性がある。そのときは米中間の本格的な通商交渉になるだろう。

(以上、2011.12.13の朝日新聞朝刊より抜粋)

私はかねてより、TPPの背後に潜む日米共通の「仮想敵国」は「中国」であると考えてきましたが、この中国のチャン・ユンリン氏が、ここまであからさまに「日本の選択肢には2本の道がある」と言ってのけるとはちょっと驚きです。

この発言からも中国の「あせり」や「いらだち」が垣間見えますが、いずれにせよ独自の軍事力を「持たない」日本は、世界第2位の経済大国・軍事大国である中国と世界第1位の経済大国・軍事大国である米国の間に挟まって、「究極の選択」をせざるをえません。

中国に対する米国のゆさぶりのかっこうの「材料」が日本というわけですが、地政学的にも、米中間に挟まる日本は、米ソ間に挟まっていた冷戦時代同様、「漁夫の利」を得る格好のポジションにあります。

世界各国が、「自国の利益のみを追求」し、“しのぎ”を削る「武器を使わない戦争」のことを「外交」と呼ぶわけですから、その外交で日本は大いに日本の国益を高めていってほしいものです。

日本の大学、国際性が低い

2011.12.6 朝日新聞 朝刊の「オピニオン」から

2011.12.6 朝日2

(以下、朝日新聞の記事)

私たちは学生1人あたりの教職員数、論文の引用数など13の指標をもとに、毎年、世界の大学をランキング付けしています。その指標の一つが「国際性」です。留学生や外国人教職員の比率や、海外研究者との共著論文の比率を測定します。日本の大学は順位が近い外国の大学に比べて、この値が格段に低いのです。

研究面で国境の壁をいかに乗り越えるか、いかに高い競争力を持つかは、とても重要です。多くの大学が世界中で学生を募集し、自校の研究者がグローバルな舞台で活躍できるよう力を入れています。その点で日本の大学は孤立し、内向きに見えます。

逆に、日本の大学で高い指標は「評判」です。世界の研究者に、優れていると考える大学を回答してもらったものです。この指標だけなら東大は8位、京大は18位。だからこそ、過去の業績や印象に依存しているのは、という懸念が湧くのです。

上位の大学の大半が米英などで、英語偏重ではないかという批判はあります。このため英語圏以外で発表された論文も参照して、統計的な修正を加えます。しかし、影響力のある学術論文の多くが英語で書かれているのは紛れもない事実です。

世界最高の研究は世界中がわかる言語で発表されるべきだと考えています。ブラジル人の業績を日本人の研究者が読み、それをベースにさらに研究が進む。他のアジアの大学は英語発信に相当の力を入れています。

これから中国が台風の目になります。研究発表の分量で英国を抜き、米国に次ぐ世界2位。

中国政府は小規模のエリート大学にも膨大な資金を投入しています。国がトップクラスの大学に投資する意味ではドイツも目を見張ります。農業と熱帯医学で優れた研究があり、欧米との提携に熱心なブラジルの伸長ぶりもめざましい。

母国を離れて学ぶ学生は現在約400万人から、2020年には700万人に達する見通しです。学生が国境を越えて大学を選ぶ傾向はますます強まり、各国政府は優れた大学を持つことが経済的に繁栄するためのカギだと考えています。産業界もどこに研究開発の投資をするべきか探し求めています。だれもが大学を比較できる物差しを求めているのです。

ランキング外にも優れた大学は数多くあります。研究より教育に重点を置いたり、地域性を重んじたりする大学です。すべての大学がハーバード大や東大を目指す必要はありません。肝心なのは各大学が明確な使命と優先分野を持つことです。たとえばアフリカで必要なのは、地域経済の発展に貢献する人材を育てる教育です。限られた予算を一握りのエリート大学につぎ込むことを私たちは望んでいません。

2011.12.6 朝日

・・・・(朝日新聞の記事の転載ここまで)

文部科学省が今でも「一般教養」などの無駄な授業を必須科目として大学側に強いているのもその一因ですが、日本の大学は、あえて実務では使えない幅広い「一般教養」を身につけさせ、自ら考えたりたり、主張したりせず、与えられた課題を従順にこなす「真面目な若者」を大量生産しようとしているふしがあります。

また、基本的に日本の大学では「勉強」を教えることを良しとはしません。なぜなら教えたら「卒業」ができなくなるからです。「卒業」できなければ、生徒本人はもとより、親はもっと困ります。大学側も卒業させなければ新入生を受入れらず、一番おいしい「入学金」が手に入りません。

なにより大学側が恐れているのは、「あの大学へ行くと卒業できない」という「悪評」が広がることです。だから、授業料さえ払えば、誰でも卒業できる「居心地の良い」、「皆に喜ばれる」大学を作ります。まさに「学校、生徒、親の三方の得」となるわけです。

だから日本には、「資格の受験予備校」という不思議な教育機関が存在します。大学、高校、中学受験のための「塾」や「予備校」も日本独自の不思議な「教育機関」ですが、「資格の受験予備校」もまた不思議な存在です。

TAC(東証1部上場企業)などの「資格の受験予備校」は、大学生を相手に「公認会計士」「税理士」「社会保険労務士」「弁理士」「宅建」等々の資格をとるための学校を経営しています。

TACの社長がアメリカで職業を聞かれたときに「資格をとるための学校を経営している」と説明すると「ああ、大学のことですね」と誰もがうなずいたそうです。

「いえ、いえ、大学ではありません。生徒の多くは大学生ですが、彼らが資格を取るための手助けをしています」

と言うと、

「それでは、日本の大学は何を教えているの?」と誰もが怪訝な顔をして困った、と著書のなかで述べています。

日本では、小学校から大学まで、学校で「勉強」を教えるべきです。

学校で「勉強」を教えれば「塾」も「予備校」も「資格の受験予備校」も必要なくなり、親の金銭的負担は大幅に軽減され、少子化対策に絶大な効果を発揮します。

ぜひ、日本の学校では子供たちに「勉強」を教えてほしいと切に望みます。

さらにもうひとつ、上記の新聞記事にもありますが、英語の重要性はますます高まってきています。

2011年11月 米国の国際教育研究所が調べた米国留学生の数

1位: 中国  15万8000人
2位: インド 10万4000人
3位: 韓国   7万3000人
4位: カナダ  不明
5位: 台湾   不明
6位: サウジアラビア: 2万2704人
7位: 日本   2万1000人

1990年代後半、米国に留学した日本の学生数は4万7000人だったのですが、今は半減しています。しかもハーバード大学などの難関大学への留学生はほとんどいないと聞いています。

日本は海外へ留学する生徒の数が激減しているだけでなく、国内の大学もその国際性において相対的な質を落としている、とこの記事は警鐘をならしています。

今まで日本人が日本国内で生きていくうえで、英語は必要ありませんでしたが、これからは「うまい」「へた」「正確」「ブロークン」に関係なく、「生きていくために」「ツールとしての」英語を使わざるを得ない人たちが急増するはずです。「日本だけは例外」でいられるはずはありません。

今フィリピンでは英語でコミュニケーションできる人とできない人とで、給料が3倍から5倍違うと聞いています。15年後から20年後の日本の職場や学校や人が集まる場所には、どこでも色々な発音の英語が飛び交っている・・・そんな世の中になっていることでしょう。

「21世紀は英語の時代」・・・・遅ればせながら日本にも「英語の時代」がやってきます。そのときは日本の翻訳会社や翻訳業界に求めれらるものきっと様変わりしているはずです。

TPP亡国論のウソ

日経ビジネス 2011年11月7日号が「TPP亡国論のウソ」と題して、大特集を組んでいます。

あまりにも量が多いので、ここでは一番の話題となっている「農業」に絞って、考えていきたいと思います。

以下、日経ビジネスの記事を抜粋して私がまとめたものです。

「日本国内のコメ消費量700万トンのうち400万トンが米国から輸入されるようになる」との農水省の試算に対して、東京大学の本間正義教授は下記のように指摘している。

● 米国産米のうち日本人が食べるジャポニカ米は30万程度。日本に向けて増産しても70万トン~100万トン程度だろう。400万トンのコメを輸入することは極めて困難で、700万トンのジャポニカ米など世界のどこにもない。

● 1993年、コメが大不作になった「平成の米騒動」の時には政府がタイ米を260万トンも緊急輸入したが、日本人はほとんど消費しなかった。

● 世界のコメ貿易は2500万トン程度で、700万トンもの需要が新たに加われば価格が急騰するであろうことも無視している。

また、キャノングローバル戦略研究所研究主幹の山下一仁氏は、下記のように強調する。

● 「日中両国のコメの価格差は、1998年の6.5倍から、2010年には1.3倍に縮小した。減反政策を廃止すれば、国産米は9000円台に下落し、日中米価は逆転する」

2011.11.10 コメの輸出

「農家の失業が続出する」という議論に対しては、

● コメ農家の所得のうち、農業収入は8%にすぎず、92%は勤務所得と年金だ。年34万6000円の農業所得がなくなることよりも、勤務先の工場が海外移転してなくなってしまうことのほうが問題だ。

「日本の農業が壊滅する」という議論に対しては、

● 1990年代前半、日本が関税貿易一般協定(GATT)ウルグアイ・ラウンド交渉でコメ市場開放を迫られた時も、「日本の農業が壊滅してしまうと騒いだが、結果はそうはならなかった」(福井俊彦前日銀総裁)。

● そればかりか、ウルグアイ・ラウンド対策費として計上した6兆円もの財政資金は大半がハコモノなどに浪費され、農業の生産性向上にはつながらなかった。「壊滅」は自由化に瀕したときの常套句なのだ。

2011.11.10 コメだけで農家は

一部の農産物を異常なほどの高関税で保護し続けてきたが、

● 野菜はたった3%の関税でも、外国産との競争で生き残ってきた。

● 1977年、米国に輸入解禁を迫られたサクランボは、関税を8.5%にまで引き下げられたものの、外国産との棲み分けが行なわれていると農水省も認めている。

2011.11.10 関税その1

2011.11.10 関税その2

(以上で日経ビジネスの記事の抜粋は終わり)

1991年に牛肉の輸入自由化が行なわれた当時「日本の畜産業は壊滅する」と言われましたが、和牛は常に安定して生産され続けています。

2011.11.10 牛肉輸入量

「TPPに絶対反対!」とハチマキを巻いてシュプレヒコールを挙げる面々をテレビの画面で眺めていると、農業団体、日本医師会、郵政族議員などなど、ほとんどが昭和の時代に代表される既得権益に固執する面々ばかりです。

これだけ世界中がグローバル化により、大きく揺れ動いている最中に、日本だけが内向き思考で殻を閉じ、「開国」をせずに生き残っていけると本気で考えているのでしょうか。

日本は「安全でおいしく、しかも安いコメ」を中国へどんどん輸出して外貨を稼ぎ、コメが不作の年には、輸出分を国内消費に振り向ければいいのです。先進国ならどこもが考えるそのような普通の考え方が、食料安保なのではないでしょうか。

明治維新以降、「開国」や「自由化」重視の判断は、常に「鎖国」や「規制」重視の判断に勝ってきたと私は考えています。

「失われた20年」を「失われた30年」にしないためにも、日本の政治リーダーには賢明な判断と決断を望みます。

原発輸出 首相表明へ ベトナムと首脳会談

2011年10月28日 朝日新聞朝刊

野田佳彦首相は31日、ベトナムのズン首相と会談し、原発輸出を表明する。菅前政権は昨年10月、原発受注の見返りとして、政府の途上国支援(ODA)によるインフラ整備を確約しており、改めて輸出方針を伝える。福島第一原発事故後の輸出再会だけに慎重論も根強く、ODA活用をめぐって議論を呼びそうだ。

(中 略)

日本政府関係者によると、ベトナム政府は昨年10月当時の菅政権に対し、ハイテクパークや南北高速道路など優先度の高い7事業の支援を確約すれば、原発とレアアースの強力を前向きに進める意向を伝えていた。7事業とも原発関連施設と直接関係はない。

(後略、以上で記事おわり)

2011.10.28 朝日

要するに、ベトナムに資金援助すれば、その見返りとして、レアアースを発掘し、それを日本へ供給してあげるし、また日本が輸出したがってる原発も買ってあげますよ、・・・・・ということです。

いまだ原発事故の後処理で四苦八苦している日本が、自国の難題を解決することもなく、他国へその難題の種を売って金儲けしようなどとはとんでもない、というのが日本人の素直な感想でしょう。

ところが事情はなかなかそうも単純ではないようです。

現在ベトナムは、中国に次ぐ世界の工場を目指していますが、電力不足が海外企業誘致の最大のネックとなっています。

海外資本を呼びこめなければ、国内のインフラ整備も進まず、ますます経済発展から取り残されてしまいます。

ベトナムでは毎年15%も電力消費が伸びながら、天候に左右される水力発電に発電量のほぼ半分を依存しているため、昨年は工業団地でも1日2時間以上の計画停電が実施されました。

ベトナム政府は5年ごとの電源開発計画を立てていますが、資金不足から06~10年の計画達成率は7割に過ぎず、外資呼び込みなど国の成長維持のためには電源開発が喫緊の課題となっているのです。

「そんなに経済発展する必要はないんじゃないの?」と考えるのは、すでに経済的に発展してしまった日本人の発想のようです。

途上国からすれば、「日本は今までさんざん環境汚染を撒き散らしながら、豊かになってきたくせに、私たちが豊かになるために環境汚染しようと余計なお世話だ」となるのです。

実際、ベトナムの隣国、中国では現在建設中の原発を含めて、2030年までに193基を新規増設する予定です。まさに原発大ラッシュです。

悲しいかなこの流れを変えるためには、戦争を始めるしかない・・・・・・、というブラックジョークに行き着いてしまいます。

もちろん戦争を始めるなどは論外なので、結局はなんとか「安全な」原発作りを目指し、日本国内は原発を作らず、代替エネルギーの開発を急ぐ、というあまりにも常識的な結論にならざるを得ません。

まあ、いずれにしても、中国の賃金高騰問題や、タイの洪水被害などにより、ベトナムの安く、豊富で、優秀な労働力を求めて、今後ベトナムへの移転を検討する企業が数多く出てくるのは間違いありません。

私たち日本の翻訳業界もベトナムからは目が話せません。

異変・世界経済

日経ビジネス 2011年10月24日号より、トップ記事の見出しと関連チャートです。

(以下、日経ビジネスの記事の抜粋>

【異変・世界経済① 連鎖する欧州経済】
ギリシャ“破綻”へ秒読み

世界経済が再びリーマンショック以来とも言える危機の瀬戸際に直面している。
欧州の財政危機は、新興国からの資金流出など新たなリスクにも波及し始めた。
その影響はアジアにも広がり、日本企業の業績にも影を落としそうな雲行きだ。

2011.10.27 日経B(1)

【異変・世界経済② 混乱するアジア】
企業業績圧迫、洪水が追い打ち

日本企業の業績を支えてきたアジア経済に異変が生じている。
中国、インド経済が急減速し、タイの大規模洪水が追い打ちをかける。
近く本格化する上場企業の決算発表は、厳しい業績予想が増えそうだ。

2011.10.27 日経B(2)

【異変・世界経済③ 中国も失速懸念】
「ラストリゾート」なき世界へ

世界景気を需要面で支える「経済のラストリゾート」と言われてきた中国の成長に失速懸念が広がってきた。
欧米景気の減速と言う外患に、不動産市況の悪化など内憂が畳みかける。
インフレ警戒が根強い中、引き締め政策の見直しを迫られるという難局を迎えた。

2011.10.27 日経B(3)

(以上で記事終わり)

世界大恐慌は、1929年10月24日にニューヨーク証券取引所の株価大暴落(暗黒の木曜日=Black Thursday)を引きがねに、世界各国に波及した金融恐慌ですが、実は大恐慌のピーク、つまり経済が最悪の状態になったのは、「暗黒の木曜日」から3年後の1932年後半から1933年春のことでした。

恐慌発生直前と比べて株価は80%以上下落し、工業生産は平均で1/3以上低落、1200万人に達する失業者を生み出し、失業率は25%に達しました。閉鎖された銀行は1万行に及び、1933年2月にはとうとう全銀行が業務を停止、社会主義革命の発生すら懸念されたようです。

さて、ここでお気づきの方もいるでしょう?

そうです、あの「リーマン・ブラザース」が破綻したのもちょうど今からぴったり3年前の2008年9月のことでした。

実に不気味な符合ですね。「大恐慌」という「大惨事」が再び繰り返されないことを、今はただ願うしかありません。

世界が見たNIPPON  1年間に20万件もの“空き家”が・・・ 「スラム化」が進む日本の住宅街

2011年9月28日

“COURRiER JAPON” 2011年11月号、「朝鮮日報(韓国)」の記事からの抜粋です。

(以下、記事)

2011.09.28 クーリエ

少子化の影響で、日本では年々、空き家が増え続けており、全国で年間約20万戸が新たに 空き家となっている。

マイホームを最も多く購入する40代の人口が1990年には2000万人いたのが、現在では1700万人に減少するなど、住宅需要が全般的に急減したことが、空き家が増えている主な原因と考えられる。

国土交通省の2008年の調査によると、全国の住宅5712万のうち、13%超にあたる756万余戸が空き家だった。今年中に800万戸を超えるだろうと予想されている。

少子化による空き家の増加と景気の沈滞によって日本の住宅価格は、この20年の間に著しく低下している。

日本政府は「国土の長期展望」という報告書の中で、1970年代には年間200万人の新生児が誕生していたが、いまでは100万人台に落ちていると記している。今年生まれた新生児がマイホームを持つようになる40年後には、空き家が1500万戸を超える可能性も指摘されている。

人口過疎の地方だけでなく、大都市でも空き家が急増している。東京都内の全678万戸のうち、11%にあたる75万戸が空き家状態だ。そのほとんどがニュータウンなどの郊外とベッドタウンに集中しているが、都心の空き家も増えている。

日本のメディアが、都内で入気の居住区である世田谷区と杉並区の空き家103戸を調査した結果、約30%が家主不在の状態だった。家族のいない人が死亡した後に、放置されたままになっているケースが多いという。日本では現在、財産相続人がいない死亡者が年間1万5000人に達する。

(以上で記事終わり)

今から30年ほど前に、リクルートコスモスの社長から聞いた言葉です。

「団塊の世代が30代後半から40代を迎える日本には、必ず住宅ブームが起きる・・・・・」

実際その後、バブルとなり、猛烈な勢いで不動産価格が上昇し始めました。

これからの日本は、ちょうどバブルと逆の動きをはじめることになるでしょう。

空き家が増え、不動産価格は下落し続けるはずです。しかし、それが直接的に一人当たりの土地や床面積の増加につながるよう、政策的にもなんらかの後押しをしてほしいものです。

日本の不動産や物価は下がり続け、中国や韓国の物価は上がり続け、やがてヨーロッパ先進諸国のように、東アジア各国も、物価や人件費がほぼ近いレベルになるまで、物価の調整は続いていくでしょう。

危険な新局面

2011年9月21日 日本経済新聞朝刊より

国際通貨基金(IMF)は20日、世界経済見通しを改定した。米国とユーロ圏の実質成長率を6月時点から大幅下方修正し、2011年、2012年ともに実質成長率が1%台にとどまると予測した。世界経済は「危険な新局面にある」と表現したうえで「リスクは明らかに下を向いている」と分析した。

(中略)

IMFは「万一の事態が(米欧の)どちらかでも起きれば世界の成長に深刻な影響を与える」と指摘した。

(後略)

(以上で記事終わり)

2011.9.21 日経新聞

IMFの経済見通しは、主に欧米経済の危険度とその影響に関して触れていますが、新興国、特に中国に関しては比較的楽観的な見方をしているようです。

しかし、中国経済の見通しについてかなりネガティブな見方をする経済の専門家もいるようです。下記は「日経トップリーダー 2011年8月号」の講演CDの要旨を私が書き取ったものです。

日経トップリーダー 2011年8月号
経済評論家 今井徴氏の講演CDから

中国経済崩壊の警告
リーマン・ショックを予見したことで有名な、ニューヨーク大学のノリエル・ルービニ教授が自身のブログのなかで、こう予見している。

「GDPの50%を開発に投下している中国はソ連の末期と同じ状況なので、2013年に中国経済はハードランディングする。その根拠は中国が鳴り物入りで開発した中国版新幹線に上海から広州まで50分間乗ったが、乗客は半分もいなかった。各駅の3分の1は乗客が無人だった。並行して走るハイウェイは3分の2がガラガラだった。これは1960年代のソビエトや1997年アジア通貨危機前のアジアと同じ状況だ」(ルービニ教授が新幹線に乗ったのはあの中国版新幹線大事故の前のこと)

もう一人は、キニコス・アソシエイツの創立者で、大変に有名なヘッジファンドのマネージャー、ジェームス・シャノス氏が「中国を株式会社にたとえれば、史上最大のいかさま企業で今や崩壊しつつある」と指摘。ニューヨーク証券取引所の中国企業や中国が銅、セメント、鉄鉱石などを買っている中国関連企業の株を全て売り浴びせている。去年くらいから「チャイナ」と名のついた銘柄は全て「売り」と言い出している。

このシャノス氏は2001年にエンロンの粉飾決算を見抜き、エンロン株を80ドルで空売りし、下落後2ドルで買い戻し78ドルを儲けたということで非常に有名な人

中国は「逆さ合併」や「裏口上場」という手法で米国企業を買収し、上場審査をすり抜けてきたため、いかさまを摘発され、すでに20を超える銘柄が上場廃止もしくは売買停止においこまれている。そのため中国の「逆さ上場株」は年初来44%の下落をしている。

またさらに中国の住宅バブルが終わったという話もよく聞く。一時期は1ヶ月に10%、年間100数十パーセントも上がっていたマンション類だが、それが売れなくなった。それは中国政府が厳しい規制を始めたから。たとえば3件目のマンションは頭金50%が必要だとか、金利は基準金利の3割から4割増しにするとかだ。

以上から現在の中国は1990年から1991年の日本経済に似ている。あと1年~2年で中国のバブルは崩壊する。

(以上で講演CD終り)

現在の中国経済が世界に与える影響、特に日本に対する影響を考えるととても怖い内容となっています。

欧州経済(ギリシャ問題)、アメリカ経済(残されたサブプライム問題)、中国経済(バブル崩壊)の全てがうまくソフトランディングすることをただただ祈るばかりです。

上海港世界一 コンテナ量、日本の総量超す

2011.8.30 朝日新聞朝刊

上海港が急拡大している。中国経済が好調なことから、コンテナ取扱量はこの6年で倍増。2010年はシンガポールを抜き、貨物取扱量とともに世界一となった。今年上半期も10%以上、伸びており、上海港だけで日本全体のコンテナ取扱量を上回っている。(中略)

中国政府は、2020年までに上海を金融だけでなく海運でも国際的なセンターにする計画で、国のバックアップも大きい。同港の邵小平税関長は「中国は内陸部の市場も大きく、他国の港と需要の規模が違う。今後は国際的ハブ港として貨物の中継機能も強化する」と語った。
(以上で記事終わり)

2011.8.30 朝日1

2011.8.30 朝日2
<上海の沖合に造られた洋山深水港。こうした岸壁が5.6キロにわたって続いている(朝日新聞記事より)>

・・・・(記事の転載ここまで)

長期的視野で将来を見据え、壮大なスケールの国家戦略をスピーディーに実行に移す中国政府の実行力には今更ながら驚かされます。

国際物流の世界は、規格化された「巨大な箱」コンテナの普及で輸送スピードが格段に向上し、コストが劇的に下がりました。これがグローバル化とあいまって世界の物流量を飛躍的に増やす起爆剤にもなりました。最も恩恵を受けたのがアジアの国々です。

確かに急速に経済発展する巨大国家中国ですから、その港も一緒に発展していく、ということには納得がいきます。しかし、発展するアジアの港の中にシンガポールや韓国の釜山港が入り、日本の港がまったく入っていないとは一体どういうことなのでしょうか?

日本の観光客が韓国の空港を国際ハブ空港として利用するように、最近では日本の荷主が地方港からのコンテナを韓国の釜山港で国際航路に積み替えるケースも増えてきました。

なにしろ釜山港の荷役料などは日本より3~4割安い。低料金を背景に、運営会社が日本の自治体や荷主に売り込んできているのです。

365日24時間稼動の釜山港は、コンテナの集荷数で世界第5位となりました。

岸壁には5000~7000本のコンテナを積んだ大型船がズラリと並び、その取り扱い量は日本の主要5港の全ての取扱量を足したものよりも多いのです。

韓国政府は、1990年代後半より、周辺の港から積荷を集めて大型船に積み替える「ハブ港」としての役割を釜山港に求め、莫大な設備投資を集中させてきました。そのおかげで大きく発展し、両隣の中国や日本のほか、アメリカやヨーロッパへも運航しているのです。

それに比べ日本は、どこを日本の「ハブ港」にするかで、政官財および各港の権益者たちのあいだで内輪もめをするだけで、結局なにも決められずにここまで来ました。

阪神大震災の後、神戸港の復興を急ぐため、とにかく迅速に現状復帰がなされました。迅速な対応は、それはそれでよかったのですが、もしあのとき長期的視野を持った政治的リーダーが現れ、「神戸港に超大型コンテナ船を横付けできる岸壁」を建造していたら、現在の神戸港も大きく変わっていたことでしょう。

日本の港がこのまま地盤沈下すれば、日本経済や雇用にとっての悪影響が心配されます。電機メーカーなどはアジア各国の拠点との間で部品や半製品を大量に融通しあっているのです。

物流コストや在庫期間は競争力を左右します。港が高コストで使いにくければ、生産を海外に移す要因ともなります。

産業の空洞化を防ぐためにも、日本の港も運営会社の民営化や統合、効率化を進め、荷役料の引き下げや24時間運用などのサービス向上に一刻も早く取り掛かるべきです。

世界貿易額 昨年22%増 対外直接投資 中国、日本抜き6位

2011.08.12 日本経済新聞朝刊より

日本貿易振興機構(ジェトロ)は11日、2010年の世界の貿易額が前年比22.2%増の15兆495億ドル(1,150兆7,500億円、名目輸出)だったと発表した。リーマン・ショックによる落ち込みの反動などを背景に過去30年間で2番目の伸び率となった。けん引役は中国で、対外直接投資でも初めて日本を抜き、世界貿易での中国の存在感が一段と増している。

(以上、記事終わり)

2011.0812 日経新聞1

2011.0812 日経新聞2

輸出額で中国はすでに日本の2倍以上の規模になっているのですが、加えて対外直接投資でも日本を抜き去り、世界経済への影響力を高めています。

しかし、本日の中央日報の記事によると、中国人の7割弱、日本人の8割弱がそれぞれの相手国に良くない印象を持っていて、2005年の同調査以来、相手国への嫌悪度は最も高くなっているとのことです。

日本人が中国に良くない印象を持つ理由として、昨年9月の尖閣諸島沖での中国政府の対応を挙げる回答者が65%と最も多かったようです。

一方、中国人はどうかというと、歴史問題や福島第1原発事故後の日本政府の対応や尖閣問題などに強い不満を持っているとのことです。

また日中ともに、両国関係の発展を妨げる重要問題として、6割の人が領土問題を挙げています。

強まる中国の経済力・軍事力、高まる両国民の相手国への不信感・嫌悪感、そして解決不可能とも思える領土問題。

なんとか両国間の深い経済交流と文化交流により解決できるようにしたいものです。そのためにも両国の翻訳業界は少なからず貢献できると信じています。

世界景気、同時減速の足音

日経ビジネス2011.8.8-15合併号の記事の抜粋です。

(以下、記事の抜粋)

上場企業の4~6月期決算は米国、欧州、中国という主要市場での減速が目立った。家電は薄型テレビの売り上げ減に悩む。円高も重しとなり、自動車も苦戦した。震災の影響を脱した企業にとって、世界景気の行方が最大の経営リスクになってきた。

2011.08.11 日経ビ

パナソニックの上野常務>

「世界的に販売が落ち込んでおり、特に北米と欧州の落ち込みが激しい」

サムスン電子

4~6月期の液晶パネル部門が2,100億ウォン(約154億円)の営業赤字。

ソニーの加藤CFO)

「もはや(薄型テレビの)台数シェアは追わない」

パナソニックの上野常務>

「(薄型テレビの)数は追わず収益を重視する」

シャープの野村経理本部長>

「いたずらに(薄型テレビの)販売台数を増やすのはなく、強みが発揮できる大型液晶で攻める」

日本電気硝子

液晶テレビ向けガラスの販売が鈍く、単価も下落。4~6月期の連結営業利益が280億円と前年同期に比べ31.7%も減少した。

富士通

円高により、4~6月期の営業損益が171億円の赤字に転落した。

東芝

円高により4~6月期の売上高が810億円、営業利益は70億円減少した。「この水準の円高が続くと、事業ごとに日本でやっていけるのかを検討せざるを得ない」(同社の久保専務)

マツダ

4~6月期に230億円の営業赤字を計上。「円高の影響が大きい米国市場では、マツダが主力とする中・小型車で韓国や欧州の自動車メーカーによる攻勢がすさまじい」(同社の尾崎副社長)

コマツ

コマツは販売した建機に取り付けた情報端末で、建機の稼働率を常時、監視している。その情報によると、(中国市場では)5月に稼働率が前年同月より5%低下し、6月はさらに落ち込み14%の低下になった。稼働率の低下は、建機の需要が減少していることに、ほぼ等しい。コマツは4~6月期の中国の建機売上高が前年同期比23%減の754億円にとどまった。「成長のエンジン」と目された中国市場の変調は、建機各社に重くのしかかる。

スズキ

インドでの4~6月期の販売台数が前年同期比3%増の約25万台と、同27%増だった1~3月期に比べて急減速した。

ホンダ

2012年3月期の連結営業利益見通しを2,700億円と、6月の公表と比べて700億円引き下げた。

(以上で記事の抜粋、終わり)

世界景気の後退が日本の翻訳業界にどのような影響を与えるかなど、いまさら言うまでもありません。リーマンショックの傷が癒え、なんとか回復傾向を見せ始めた日本経済を覆う暗い影はなんとも不気味です。

近頃の極端なドル安やニューヨーク株式市場の急落が、「実は~だった」という隠れた経済スキャンダルの前兆ではないことを、ただただ祈るばかりです。

インド “英語偏重”に疑問の声 「私たちの言語で教育を!」

2011年7月26日

“COURRiER JAPON”2011年9月号の中島岳志氏(北海道大学公共政策大学院准教授)の記事が大変興味深いものだったので一部抜粋して下記に掲載させていただきます。

(以下、記事の抜粋)

インドでよく聞かれることがある。私が大学の教員だと知ると「日本の大学では、授業を日本語で行なうのか?」と尋ねられるのだ。「そうですよ」と答えると、インドの人たちは少々驚いた顔をする。

彼らは日本人が母語によって高度な自然科学や社会科学のタームを語ることができるのに驚いているのだ。

インド人エリートは英語を学ぶことで英国流の近代教育にアクセスし、出世の道を探った。当然高等教育はすべて英語。だから、近代科学のタームはそのまま英語で受容した。

一方、日本では福沢諭吉や西周(にしあまね)という明治初期の知識人が、さまざまな西洋近代の概念を日本語に置き換えて理解しようとした。彼らが作り出した翻訳用語は、次第に普及し、いまでは当たり前の日本語として浸透している。明治日本は、あくまでも日本語の体系で高度な近代科学を咀嚼し、表現しようとしたのだ。

「専門教育が英語でしか提供されない環境では、他人のコピーしか作り出せない」・・・・インド政府は科学技術用語委員会およびマイソールにあるインド諸言語中央研究所の国立翻訳プロジェクトの作業を早めることを決定した。

これまでインド人の英語力の高さは、グローバルなビジネス社会でのアドバンテージだと考えられてきた。しかしいま、国内では高等教育の英語偏重への疑問が噴出している。

(以上で記事の抜粋、終わり)

本年(2011年)4月から、日本の公立小学校では英語教育が必修化され、また日本の企業の中にも英語を公用語とする動きが出始めてきました。

小学生からの英語教育必修化を否定するつもりはありませんが、その前にやるべきことがたくさんあるのではないかと感じています。

まず、子供手当てをばら撒くことはやめて、教育の完全無償化を実現させるべきでしょう。“高校や大学の学費無料をめざす”という国際人権規約の条項を承認していないのは、157カ国のうち、日本、ルワンダ、マダガスカルの3カ国だけ。ほとんどの国が、若者がお金の心配なく学べるように努力しています。

幼稚園から大学までの授業料を無償化している先進国は世界に少なくありません。もっともそのためには、学校で勉強を教えるという“しくみ”を早く作らなければいけません。せっかく授業料が無償化されても、“学校で満足な勉強を教える必要はない”という日本社会の“本音と建前”がある以上、結局塾や予備校へ子供達を通わさざるを得ないからです。やはり国の財産である子供達への教育は、“学校で行なうべき”であると私は思います。

さらにもっと教育への国家予算を増やし、良質な教師の数を増やし、一クラスあたりの生徒の数を現在の3分の1程度にまで減らすべきでしょう。そうすれば小学校での英語教育においても大きな効果が期待できます。

資源のない国、日本にとって、人材だけが唯一国家の財産なのですから、福祉、医療、インフラ整備、防衛も大事ですが、教育への先行投資はもっと重要だと私は感じます。

国内造船、受注減で悲鳴 円高で中韓に競り負け

2011年07月20日 日経新聞朝刊より

日本の造船業界が受注減に悩まされている。19日に日本船舶輸出組合が発表した6月の受注実績は15隻で前年同月比55%の減少。実数ベースでも過去最低の水準となった。7月も商談環境は厳しく、このままでは2013年にも一部造船所で建造予定船がなくなる見通し。国際競争に勝てる体質づくりが待ったなしの課題だ。
(以上、記事終わり)

2011.07.20 日経新聞

この記事によると、 

(1) 中国企業や韓国企業とのコスト競争で負けている。
(2) かつ、現在の日本の造船所の規模では顧客からの大量発注に応えられない。

よって、ご多分に漏れず、「資材費40%の削減」と「高付加価値船」の開発、つまり「省エネ船」の開発に活路を見出そうとしている、とのことです。

しかしそれだけでは(1)の対策にはなっても、(2)の解決策にはなりません。

この造船業界の問題は、日本の産業が抱える諸問題の縮図でもあると思います。

今こそ中長期的視野に立った「国家的戦略」がなんとしても必要です。ちょうど韓国が行なったように、ハブ空港やハブ港の建設。自動車業界や電機業界の統合再編など大胆な国家プロジェクトが必要でしょう。

日本中には大小様々な港がありますが、大型船が横付けできる港や大量のコンテナを取り扱える設備を持った巨大な港はほとんどありません。お隣の韓国では、小さい港を廃止し、釜山港ひとつに絞って巨大設備を建造中です。

また、日本は1995年の「阪神淡路大震災」のあと、港の復興を急いだのはよいのですが、「現状復帰」を急いだがために、大型タンカーが横付けできる巨大なハブ港を建造する千載一遇のチャンスを逃してしまいました。

韓国産業界の「選択と集中」はすさまじく、自動車業界は現代自動車、電機業界はサムスン電子とLG電子にすべて統合してしまいました。初めから小さな国内市場を捨て、世界のマーケットを視野に入れていたからです。

日本に2つも国際線の航空会社(JALとANA)が必要でしょうか?日本に10社以上の自動車メーカーが必要でしょうか?日本に数十社を超える電機メーカーが必要でしょうか?

日本政府も早く“21世紀”を見据えた産業ロードマップを作成してほしいものです。そこに日本の翻訳業界の未来もかかっていると言っても過言ではないでしょう。

ハウステンボス黒字化 次の狙いは「英語需要」

2011.07.11号 日経ビジネス

エイチ・アイ・エスの2011年10月期第2四半期決算で、上半期として初の営業黒字達成が発表されたハウステンボス(長崎県佐世保市)。澤田秀雄社長が次に狙うのが、「英語村」構想だ。園内に英語を公用語とするエリアを設置。訪日客はもちろん、英語を習得したい日本人の集客を図る。

(中 略)

開園以来続いた赤字経営から抜け出しつつある大型テーマパーク。「英語需要」の取り込みでさらなる事業拡大といくかどうか。

(以上で記事終わり)

2011.07.08 日経ビ

・・・・(記事の転載ここまで)

Wikipediaで調べたところ、エイチアイエスがハウステンボスへの再生支援を表明」したのが、2010年1月とのことでした。したがって、開業以来18年ものあいだ赤字続きだった「問題児」を、1年も経たないうちに黒字化させたとは「お見事!」と言うほかありません。

それにしても「英語村」構想はなかなかユニークだと思いますが、今までこのようなテーマパークがなかったこと自体、不思議な気もします。

この発想は「当たり」になり、全国各地の人が集まる場所に「英語村」「中国語村」「韓国語村」のような、本当の意味でのエキゾチックな場所が広まっていくような気がします。

来日外国人復調の兆し

2011.6.17 日本経済新聞朝刊

東日本大震災後に激減した来日外国人の動向に持ち直しの兆しが出てきた。6月に入り、都心の家電量販店には団体客が相次ぎ来店。大手ホテルでは外国人宿泊客が前年の8割の水準まで戻したところもある。ただ原発事故の影響もあって本格回復にはなお遠く、安全をアピールする政府の情報発信の強化が一段と求められる。

(以上で記事終わり)

日経新聞によると、秋葉原のヨドバシカメラでは、震災直後に半分に減った外国人観光客向けコーナーの客足が、5月下旬以降は、震災前の8割~9割に戻ったそうです。東京都中央区のロイヤル・パークホテルでは、一時は20人ほどだった外国人宿泊客が、多い日で200人程度に回復。「特に欧米の製薬会社や金融機関系などのビジネス客が目立つ」と前年の8割程度の水準にもどっているそうです。

確かに一時期激減した外国人の姿が、少しずつ街に復活しているような気がします。観光客ももちろんですが、なんといってもビジネスマンの出張が増えなければ、とにかく貿易額は増えません。いかにネット社会になったとは言え、やはりFace to Faceでの商談がなければ、商売も大きくは動かないものです。そういう意味ではすこしずつ良い方向に向かっていると言えるでしょう。

また、企業の生産活動もサプライチェーンの復旧が予想以上に進み、エコノミストの間でも「秋には震災前の水準に戻る」との声が広がってきているとの報道がなされています。

となると明るい兆しばかり、と言いたいところですが、やはりいまだに日本に残る「原発と電力の供給不足問題」が頭痛の種です。

国際協力銀行のデータによると、日本企業の海外生産比率は2000年度の23%から2010年度は31.8%に高まったとのこと。また、第一生命経済研究所の試算では、海外生産比率が1%上がると製造業の就業者数が28万人減るとのことです。となるとこの10年で28万人×8.8=246.4万人もの雇用が日本から失われたことになります。

電力不足は製造業の国外脱出を加速させます。結局は、下記の2つの問題を、これから国家がどう対処していくか、にすべてがかかっているということです。

1.原発事故の当面の危機状態をまずは沈静化させる。
2.電力供給安定化へ向けての、短期、中期の道筋を作る。

日本の翻訳業界に限らず、日本経済の未来が全てここにかかっているといっても過言ではないでしょう。

今こそ、血みどろのシェア争いを勝ち抜け

日経ビジネス ONLINE の 2011年6月15日号
「今こそ、血みどろのシェア争いを勝ち抜け」と題した「日本電産の永守重信社長の復興に向けた提言」より、記事を抜粋して掲載させていただきます。

2011.6.15 永守社長
日本電産の永守重信社長

<以下、記事の抜粋>

これからの世界経済は「先進国vs新興国」という構図になるのだろう。例えば、日本市場は縮小が避けられないが、新興国の市場は当面成長し続ける。だから結局、日本企業も韓国企業がやったように外へ出ていくしかない。 

(中 略) 

多くの日本企業は、中国など新興国の企業がどんどん安いものを出してくる時、「我々は高級品でいく」と考える。大企業ほどすぐにそう言う。だが思い起こすと、僕が日本電産を創業した73年に、米国にはRCAという巨大電機メーカーがあったけど、十数年でつぶれた。

誰にやられたかといったら日本の電機メーカーだ。今で言えば、韓国や台湾、中国のメーカーにやられたようなものだろう。

どうしてやられたかと言うと、高級品に逃げて低価格品はOEM(相手先ブランドによる生産)にしたわけだ。今、日本の会社が中国や台湾の会社にパソコンやほかのモノを作らせているが、それに似ている。

高価格品市場だけで生きていけるというのは、技術的過信に基づいた発想で、とても危険だ。技術だけで売れるなら新興国市場はみな先進国の製品で埋め尽くされていたはずだが、そうはなっていない。新興国市場を侮ってはいけない。

技術的過信は、企業と国の双方を危うい方向に持っていく。 

(中 略) 

日本企業はもう一度、世界で血みどろのシェア争いをしないといけない。繰り返しになるが、低価格品は新興国企業に任せるなどと言っていたら、やがてやられる。戦い抜くというスピリッツがないとダメなんだ。

 厳しい競争の時代を勝ち抜くには、韓国がやってきた税制や産業政策のような国を挙げた企業支援の政策が必要かもしれないが、もう待ってはいられない。(談)

<以上で記事終わり> 

ファーストリテイリング会長兼社長の柳井正氏も最近の日経ビジネスの取材に対し、「日本は20年もの間、成長から遠ざかってきました。あと10年もすれば、アジア各国に完全に追いつかれるでしょう」と発言をしています。

確かに「日本はアジアにおいて、つねに技術的優位にあり、つねに先進国であり続ける」などという妄想は早く捨てなければならないでしょう。

今から10年後、20年後の日本には、中国系企業、韓国系企業、台湾系企業、インド系企業がひしめきあい、オフィスには、英語のみならず、中国語、韓国語が飛び交う、などという風景もめずらしくなくなるのかもしれません。

そのとき日本の翻訳会社はどうなっているのでしょうか?

やはり日本のメーカー同様、中国系、韓国系、インド系などの地元翻訳会社と「血みどろのシェア争い」をして、勝ち抜いた「多国籍翻訳会社」もしくは「無国籍翻訳会社」が勝ち残りしているのかもしれません。

この「無国籍翻訳会社」は私が作った造語ですが、「どこの国なのかさえ特定できない、あるいは特定すること自体に意味がない」ほどインターナショナルな翻訳会社のことです。

アジアから目指す世界一

「日経ビジネス」に「ファーストリテイリング会長兼社長の柳井正氏(下記写真)へのインタビュー記事」が載っていました。日本企業のグローバル展開の重要性を説く思想はとても示唆に富み、興味深い記事だと思います。その一部を抜粋して下記に載せておきます。なお文中の赤字は私がつけたものです。詳細を知りたい方はぜひ「日経ビジネス」を定期購読してください。

2011.05.27 柳井社長

<以下、日経ビジネス 2011.5.30号からの記事の抜粋>

日本の一番の問題は、ずっとピンチだと感じていなかったことでしょう。アジアに追いつかれようとしているのに、いまだに自分たちが上にいると思っている。20年間給料が下がり続けているのに、中流意識に浸かっている。

「もう頑張らなくてもいい」とか「成長しなくてもいい」とか言う人がいますが、信じられません。グローバル経済でそんなことができるはずがない。鎖国をやっていた江戸時代に戻るつりですか。

日本を食べさせていくのは、グローバル化した企業とグローバル化した日本人なんです。日本を支えていくには海外展開しかあり得ません。この思いは震災を経てますます強くなりました。

僕たちはアジアについて勉強しなければなりませんし、「一緒にやっていきましょう」とお願いする立場にある。そうした意識を持っていない人はいまだに多い。日本はアジア各国よりも進んでいると思い込んでいる。上から目線なんです。それはまったくの錯覚で、日本は20年もの間、成長から遠ざかってきました。あと10年もすれば、アジア各国に完全に追いつかれるでしょう。こうした認識を持ったうえでアジア展開にとりかかることが大切です。

自前のグローバル展開を推し進めるため、組織も見直しました。東京をグローバル本社に位置づけ、上海、シンガポール、パリ、ニューヨークの4拠点に地域本社を立ち上げます。理想的な姿としては、本部社員の3分の2を外国人に、日本の店舗の2割を外国人店長に任せ、海外では8割を現地の店長にしたいと思っています。

「僕は国内の店舗は運営できますが、海外はどうも」などと言っている場合ではありません。日本で店長をやっていても、国内市場が縮小していけば、給料は下がってしまう。外国人と、あるいは外国企業と一緒に仕事ができない人は、本当には仕事ができない。

英語は外国人と一緒に仕事をするえでのツールにすぎません。ビジネスの能力はあるのにコミュニケーションできないというのは非常にもったいない。

経営は座学では身につきません。実業を通して、自分でやってみなければ分からない。

日本ブランドはまだまだ強いと思いますが、それでも、今回の原発トラブルは企業のブランディングからすれば最悪の事態です。もっとも、最悪だと思うのは事故そのものというよりも、政府をはじめとした関係者の対応です。今回の原発対応で政官民の癒着、談合体質、隠蔽主義など日本のダメな部分が一気に噴出してしまいました。日本のセールスポイントの1つとして「安心、安全」がありましたが、そんな評価はもう当てはまらないでしょう。

現状を見る限り、日本はとても資本主義の国とは思えません。むしろ官僚社会主義の国といったほうがしっくりきます。税金の使い道を考え、税金を払っている企業や個人を大切にしないと、本当にみんな出ていってしまいます。国に助けてほしいと言いませんが、邪魔だけはしないでほしい。

<以上で記事からの抜粋終わり>

ソフトブレーン創業者の宋文洲氏が彼のメルマガの中で以下のように記述しています。

<日本人は数十年前から中国の政治不安を「心配」してきましたが、中国は未だに安定しています。逆に、日本の政治は未だにリーダーシップが確立できず、総理大臣の名前が覚えられないほど政権が変わります。「政治不安」がもし政治の不安定を意味するならば、結果的にどちらの政治不安が高いだろうか。>

日本のカントリーリスクを真剣に考え、リスクヘッジのために今われわれは何をしなければならいのか考えさせられます。

マイクロソフト スカイプを買収

2011.5.11 日本経済新聞朝刊

米マイクロソフト(MS)は10日、インターネット通話大手スカイプ・テクノロジーズ(ルクセンブルク)を現金85億ドル(約6,850億円)で買収すると発表した。(中略)MSによる企業買収では過去最大の案件となる。(中略)

MSが今回の買収を決めた背景には、IT(情報技術)業界の主戦場となっているスマートフォン(高機能携帯電話)などの分野でMSが攻めあぐねている現状がある。同分野で先行する米アップルやグーグルとの競争がさらに激しくなりそうだ。(中略)

IT業界では「コミュニケーション」が次の成長分野と目され、グーグルや米フェイスブックなどもスカイプとの提携や買収に関心を示していたとされる。

アップルも最新スマートフォン「iPhone4」などに無料のテレビ電話機能「フェースタイム」を標準搭載し、スカイプと競合する関係にある。
(以上で記事終わり)

発表会場で握手するスティーブ・バルマー氏(左)とトニー・ベイツ氏
2011.05.11 skype
(以上で記事終り)

無料で世界中とテレビ電話ができるスカイプはとても魅力的なツールであることはいまさら言うまでもありませんが、従来はセキュリティに問題があり、なかなかビジネス上で使用することに問題がありました。

しかし今回のマイクロソフトの買収により、その点の改善が大きく進むと期待が持てます。

それにしても国際通話はもちろんのこと国内通話も全て無料のスカイプとフェースタイムになってしまったら、既存の通信キャリアは今後どうなるのでしょうか?

IT業界のみならず、世界のビジネスのあり方そのものを根本から変えるきっかけになるかもしれません。当然ながら私たち翻訳業界に与える影響も少なかろうはずはありません。

官民インフラ輸出7000億円

2011.5.8 日経新聞朝刊

政府と国内有力企業が組んで環境配慮型のインフラを輸出する計画の内容が7日明らかになった。政府が15事業を選び、投融資などで全面的に支援する。東芝やパナソニック連合がインドで電力供給体制を整備し、三菱重工業などはシンガポールで電気自動車(EV)を活用した交通システムを構築。合計の受注額は7000億円規模に達し、約2万人の国内雇用創出を見込む。
(以上で記事終わり)

2011.05.08 日経(1)2011.05.08 日経(2)2011.05.08 日経(3)

・・・・(記事の転載ここまで)

「日本は得意分野の異なる民間企業が企業連合を作り、インフラ整備の計画段階から関与することで、受注にむすびつけようとしている。アジアや中東など成長市場を中心に旺盛な需要を取り込む」そうです。

キーワードはやはりここでも「アジア」、「エネルギー」、「環境技術」となります。3.11以前であれば、まちがいなくここに「原子力発電」が入っていたのでしょうが、さすがに今回は原子力の「げ」の字も見当たりません。

しかしながら、「急拡大が見込まれる世界のインフラ需要」の表をよくよく見てみると、2020年までの増加見込み490兆円のうち、300兆円が「情報通信」、つまり増加分の6割以上は「情報通信」が金額的に占めているようです。

「情報通信」は他のどの産業よりも、翻訳需要の多い産業といえます。したがって、この「インフラ輸出」は、日本経済にとって大変よいことであり、当然日本の翻訳業界にも強力なフォローの風が吹くと期待しています。

日本の新エネルギーと翻訳業界

今後日本での新規の原発建設などは論外と言えるでしょう。

そうしたなか、“新エネルギー”問題が、がぜん脚光をあびることになりますが、エネルギー問題に詳しい東京大学名誉教授、安井至氏の記事が出ていたので、下記にその要旨をまとめてみました(週間ポスト2011年4月8日号)。

(以下記事の要旨)

今後の本命となる“自然エネルギー”を期待値の大きいもの順にならべると下記のようになる。

1. 地熱発電

火山活動による地熱で蒸気を発生させて発電する方法。現在日本には18ヶ所の地熱発電所があり、合計で原発1基の約半分の発電容量をまかなえる。

2. 中小水力発電

河川や農業用水などを利用して発電する方法。すでに日本のほとんどの大河川には大規模ダムが建設されているので、小さな河川で細かくエネルギーを拾う。

3. 洋上風力発電

陸上ではなく海上での風力発電のため、風向・風力が安定しやすく、あてにできる電源になる。

4. 風力発電太陽光発電

ヨーロッパやアメリカなどの大陸諸国と違い、島国である日本は風向きが安定せず、また雨や雪が多いため、必要なときにあてになる電源とはならない。

しかし、将来的に上記の“自然エネルギー”を全て整えたとしても、1次エネルギー消費量の約8%しかまかなえず、現在の原発での供給量の約半分ほどにしかならない。しかもそこまで設備を整えるためにはかなりの時間を要する。

したがってこれまでのような“電気依存の生活”は破綻するので、“自然エネルギー”の開発と同時に“極端な省エネ”が重要になってくる。

もはや都心での“オール電化”や“電気自動車”などは机上の空論と化す。

(以上、記事終わり)

1973年に始まったオイルショックは、日本の国民生活や経済活動に大きな変化を与えました。

当時高校生だった私もはっきりと覚えていますが「石油の99%以上を輸入に頼る日本の将来はお先真っ暗」と世論マスコミの多くは悲観論一色でした。

しかし、後にふり返ってみれば、そこから「技術立国日本」や「ジャパン・アズ・ナンバーワン」の礎がスタートしたのです。

官民一体となり、髪を振り乱して、必死の「省エネ作戦」を行ったため、気がついたら世界有数の省エネ大国となっていました。

エネルギー事情が変われば国民生活が変わり、国民生活が変われば、企業活動が変わります。そして企業活動が変われば、提供される製品やサービスが変わり、当然そこから生まれてくる技術も変化を遂げることになります。

必死になって生み出された技術はやがて国の財産となり、将来海外へ輸出されることになるでしょう。鉄も車もウォークマンも新幹線もそうでした。

今で言えばオール電化は、都市ガス+SOFC(固体酸化物燃料電池)に替わり、電気自動車は、ふたたびハイブリッド車に回帰し、照明は徹底的にLEDに替わっていくでしょう。

これらはほんの一部の例に過ぎませんが、技術の変化は必ずや日本の翻訳業界にも大きな影響を与えることになるでしょう。

世界を揺らす「福島ショック」 原発ルネサンスの逆風に

以下は、2011年3月27日の日本経済新聞の記事からの抜粋です。

(以下 記事の抜粋)
「東日本大震災で福島第1原発が危機に陥ったことは、各国の原発政策を揺さぶっている。

<ドイツ>

・1980年以前に稼動を始めた古い原発7基の一時停止を発表。
・既存原発の稼動期間を延長する計画を凍結。

<イタリア>

・原発の復活宣言をしたベルルスコーニ政権は、復活計画の凍結を決定。

<ギリシャ>

・隣国のトルコに対し、トルコ初の原発建設計画の中止を求めた。

<トルコ>

・日本勢が受注を求めている原発建設計画が、福島の事故で不透明感が強まっている。

<中 国>

・国内の全ての原子力施設に対し緊急の安全検査を実施。
・今後5年間に発電能力4000万キロワット相当の原発計画に着手する予定だったが、その承認を当面中止。

<ベトナム・インド>

・日本が原発を売り込もうとしているベトナムやインドでも、膨らむエネルギー需要と原発の安全性への不安がせめぎあう構図が急浮上している。

1979年の米スリーマイル島原発事故と86年のチェルノブイリ原発事故で、原発を推進しようとの機運は世界的に後退した。近年地球環境問題への関心の高まりとともに温暖化ガスの排出量が少ないエネルギーとして再び関心が高まった。

これに新興国を中心としたエネルギー需要の急増と原油など資源価格の高騰が加わり、「原発ルネサンス」という言葉が生まれた。エネルギー政策の柱の一つとして、着実に再評価が進んでいたといえる。

「福島ショック」がルネサンスに大きな打撃となるのは間違いないだろう。」
(記事の抜粋 終わり)

今回の大震災と大津波が日本経済に与えた影響は、言うまでもなく莫大なものです。しかし、地震と津波の経済的被害だけであれば、幾度の大震災や戦後の焼け野原からさえも、果敢に立ち直ってきた、わたしたち日本人は、まちがいなくまた急速な復興をはたすことができるでしょう。

しかし、今回の震災被害は、「地震」と「津波」に加えて、「原発の放射能」と「風評被害」という4重苦を私たちに与えることになりました。

日本政府が21世紀の日本の戦略的輸出コンテンツのひとつとして掲げている「原子力発電」の輸出に対し、急ブレーキがかかることは必至でしょう。

そればかりでなく、同じく経済政策の重要課題としている「日本への外国人観光客の誘致」にも深刻な打撃を与えるでしょう。また、近年海外で脚光を浴び始めている、日本のコメや果物といった食料品や日本酒などの飲料にも当然影響が出てくるでしょう。

食料品ばかりでなくすでに日本の工業製品にも「風評被害」が出始めているという噂もあります。当然今後の日本の翻訳業界に与える影響も少なかろうはずはありません。

やっとリーマン・ショック後の大不況から立ち直りかけた日本経済を、この「平成の大津波」はどこへ流そうとしているのでしょうか?

非常にくやしいことではありますが、今はとにかく「原発問題」の一刻も早い収束を、ただただ「外野席」から見守るしかありません。

日本の貿易依存度と翻訳業界

TDB景気白書 2010年~2011年版より

帝国データバンクから毎年送られてくる「景気白書」の中から、日本の輸出依存度に関するデータをご紹介いたします。

このグラフは1980年から2009年までが、内閣府「国民経済計算」による実績データであり、2010年以降が帝国データバンクによる予測となっています。

2011.2.16_輸出依存度

私が翻訳業界に入ったのが今からちょうど30年前の1981年4月のことですから、このグラフは、私がこの業界で歩んできた道のりとほぼ同じ時期を示していることになります。

1985年9月のプラザ合意後におきたいわゆる「円高不況」ですが、それまで1ドル250円ほどだった円が1年後に160円、2年半後には120円にまで急騰しました。

当然この円高は、日本の輸出企業に大変深刻なダメージを与えました。今でも覚えているのは、大手新聞が特集した「このまま円高が進み、1ドル170円になると、日本の輸出関連中小企業の7割が倒産する」というまことしやかな記事でした。

実際輸出関連企業にとっては、とても深刻な不況ではありましたが、多くの日本企業はたくましく生き残り、やがて空前絶後の「バブル景気」を迎えることになります。

そしてその後1990年「バブルの崩壊」と2000年「ITバブルの崩壊」を迎え、2008年の「リーマン・ショック」で再び急速に落下します。

この「名目輸出金額」のグラフから3つのことがわかります。

(1)1980年から2003年までの24年間、かなり大きな景気のアップダウンがあったが、輸出はほぼなだらかに右肩上がりに推移している。

(2)2004年から2007年までの急上昇とその後2年間の急激な落ち込みをみると改めて、リーマン・ショックの激しさがよくわかる。

(3)帝国データバンクによる2010年以降の予測は、過去30年間と比べて、かなり急激な輸出増になっている。

この予測が的中するとなると、日本経済はいまだかつて経験したことのない爆発的な貿易増(輸出増は必然的に輸入も増やします)と高い輸出依存度を経験することになります。

これが日本の翻訳業界にとって良いことであっても悪いことであるはずがありません。

「第三の開国」 日本はTPPに参加すべきか否か?

2011年1月18日の朝日新聞朝刊で、「日本はTPPに参加すべきか否か」で二人の論客の意見を紹介しています。私たちの翻訳業界にも深いかかわりをもつ話題なのでここにその要旨をご紹介させていただきます。

ちなみに「第三の開国」とは、幕末、戦後に続く「3回目の日本の開国」を意味しています。
(以下、朝日新聞の記事)

(*注) TPP(環太平洋パートナーシップ協定)
太平洋を囲む国々が国境を越えて、人、モノ、カネの移動を自由にしようという約束。2006年にシンガポールやニュージーランドなど4カ国で始まった。現在は米国や豪州などが参加交渉に入っており、今年11月にも9カ国に拡大する見通しだ。

2011.1.18 朝日1
中野剛志氏
京都大助教・元経済産業省課長補佐

デフレがますます進むだけだ

・TPPへの参加など論外。今でも日本の平均関税率は欧米よりも韓国よりも低い。日本はすでに十分開国している。

・「安ければいい」という途上国市場でいくら製品を売っても、開発力はつかない。

・日本人という「うるさい消費者」を相手にしてきたから、日本企業は強くなった。ところがデフレが進み、安さばかりが求められるようになって、国内の「目利きの消費者」が減ってしまった。だからこそ一刻も早くデフレから脱却すべき。

・グローバル化した世界で輸出を増やそうとするとデフレを促進する。

・日本の輸出がGDPに占める割合は2割にも満たない。ドイツなどよりはるかに低い。日本は実は輸出立国ではなく、内需大国。

・ 内需拡大に即効性があるのは、政府が公共投資をすることだが、開放された経済の中で公共投資をしても、海外企業が受注しては景気刺激につながらない。

・そのため「一時的な関税引き上げ」や「保護主義政策」が必要。それが無理というならば、せめてこれ以上の貿易自由化はやめてほしい。

・公共投資で需給ギャップが埋まれば、デフレは収まる。貿易自由化が自動的に経済を成長させるのではなく、国内経済が成長してはじめて、貿易が拡大する。

2011.1.18 朝日2
戸堂康之氏
東京大教授

中進国に落ちぶれてもいいのか

・日本経済は長い停滞が続いている。このままだと近い将来、先進国から脱落し、落ちぶれた国になってしまう。2020年には韓国より下、マレーシアとほぼ同じという予測もある。

・TPPへの参加は、日本の閉鎖性を打ち破る契機になり、日本人全体の意識改革につながる。

・経済成長の源泉は技術進歩。ここでいう「技術」とはモノづくりでいう技術だけではなく、効率的な生産手法やマネジメント、ビジネスモデルなども含めた広い概念。

・一国の中だけの技術革新には限界がある。鎖国時代を考えれば明らか。

・もしグローバル化がデフレの原因なら、グローバル化が進んでいる他の先進国では日本よりデフレが進行しているはず。実際そうではない以上、デフレの主因がグローバル化でないことは明らか。

・50年代から70年代にかけて、ラテン諸国が積極的な保護主義政策で内需を高めようとしたが結局うまくいかず、積極開国派のアジア諸国に追い越されてしまった。

・日本の農業を見ればわかるように、国が政策的に保護することで産業は成長できない。

・十分な国際競争力があると思えるのにグローバル化していない日本企業が各地にたくさんある。適切な情報を得て海外市場でのリスクを低減できれば、世界でかなりやっていけるはず。こうした企業群がグローバル化することが、日本経済再生の起爆剤になる。

(以上で記事終わり)

結論から言うと私は戸堂氏の意見に賛成です。公共投資の増加や国内産業の保護により、この20年間続いた日本経済の低迷を脱却できるとはとても思えないからです。

中野氏の言うとおり、日本はGDPに占める輸出比率が低い「内需大国」ではありますが、リーマン・ショック後日本よりもはるかに高い輸出比率を持つ多くの国々が、日本よりもずっと早く景気回復した姿を見て、改めてグローバル化の重要性を認識しています。

競争のない国鉄時代と競争を始めたJRを比べてみれば全てが一目瞭然です。保護主義から発展は生まれません。

一部に「発展する社会など必要ない」という考え方も確かにあります。

私が大学生のころ、エアコンのない満員電車に乗って、エレベーターのないビルの階段を昇り降りしていました。あの当時はそれがあたりまえでしたし、それでも幸せに暮らしていました。

しかし一度エアコンとエレベーターの味を知ってしまった私たちが、またあの時代へ後戻りできるでしょうか?

最低限の生活を維持するためには最低限の「経済発展」が必要です。そして天然資源や豊かな農地を持たない日本が経済発展するためには「輸出」で外貨を稼ぐ必要があり、輸出で勝ち抜くためにはなんとしても「グローバル化」が必要なのです。

国内市場に雌伏する数多くの優秀な日本企業群が、世界へ飛び立つために、私たち日本の翻訳業界が力になれればこんなにうれしいことはありません。

自由貿易圏「2020年」を前倒し 非関税障壁という魔物

2010年11月11日 日本経済新聞

10日に横浜市で開幕したアジア太平洋経済協力会議(APEC)閣僚会議の共同声明案が明らかになった。域内の経済連携を加速する「アジア太平洋自由貿易圏(FTAAP)」を巡っては2020年目標を前倒しする方向で、目標年次の明記は見送った。世界で経済連携の動きが加速するなか、APEC域内の貿易自由化も数年単位で大幅に前倒しされる可能性が出てきた。
(以上で日経の記事終わり)

2010.11.12 日経(1)

<日本経済新聞朝刊より>

2010.11.12 日経(2)
<日本経済新聞朝刊より>

日本がTPPに加入すれば、アメリカ、オーストラリア、ニュージーランド、シンガポール、ベトナム、ペルー、チリ、マレーシア、ブルネイの9カ国との間の貿易は全て関税が撤廃されることになります。2015年を目処に現在協議が行われているそうです。

また、TPPよりもさらに規模の大きいAPEC(TPP+カナダ、中国、香港、インドネシア、メキシコ、タイ、パプアニューギニア、フィリピン、韓国、ロシア、台湾の合計21カ国)において、自由貿易圏を築くことになれば、巨大な経済圏がアジア太平洋地域に誕生することになります。

その世界最大の自由貿易圏を2020年に実現しようという構想が、さらに時期的に早まる可能性ができたようです。現在横浜のMM21地区で開催されているAPEC閣僚会議の共同声明案で明らかにされました。

一方、現在日本とEUとの貿易協定を見てみると、日本からEUへの輸出は3分の2の物品に対し関税がかけられているのに対し、その逆のEUから日本への輸出に対しては、3分の1の物品にしか関税がかけられていません。

日本はEUとの交渉に負け、だまされているのか?と思いきや現実はその逆のようです。

その正体は「非関税障壁」という代物です。この「非関税障壁」の意味については日経新聞に下記のような記載があります。

「政府が関税以外の方法で国産品と外国産品を区別して輸入を制限する措置。輸入数量制限や輸入課徴金のほか、製品企画の基準・認証制度や輸出入時の検査手続きの厳しさなどがある。日本の「系列取引」など各国特有の社会制度に基づく商慣習や流通構造もその一種だ」

「日本の基準・認証制度は煩雑で非関税障壁となっている」との諸外国からの批判が未だに根強いそうです。

日本政府が意図的に嫌がらせをして国内産業を守っているという側面もあるでしょうが、日本人特有の商慣習や日本人の特異な消費行動などもきっと影響していることでしょう。

そう考えると近い将来APECで21カ国全てが自由貿易圏になっても、日本はなんだかんだと駄々をこねて「非関税障壁」を貫けば国内産業は安泰なのでしょうか?

諸外国にとっては日本特有の商慣習や特異な消費行動のみならず、日本語そのものが非関税障壁なのです。いずれにせよこの自由貿易協定の実現は、わたしたち翻訳業界の人間にとって大変な朗報になることに間違いはありません。

また、これが日本全体にとっての朗報にすべく、今後の政策、国策、国家戦略を間違えないよう政治家や官僚の皆さんには期待したいものです。

あふれるドル バブルの予感

2010年11月8日 日経新聞朝刊より

米連邦準備理事会(FRB)が量的緩和の第2弾に踏み切ったことで、世界的なカネ余りに拍車がかかるとの見方が出ている。米国のデフレ回避には避けられない措置と言えるが、強力なだけに副作用を生むリスクもある。あふれる投資マネーが新興国や商品市場に流れ込み、新たなバブルの芽を生むとの指摘もある。

2010.11.8 日経1

2010.11.8 日経2

2010.11.8 日経3
(以上で記事終り)

なんとも不気味な記事です。
現在世界は「カネ余り活況」なのだそうです。世界中の株価、特に新興国の株価が上昇し、金や資源の相場も上昇しているようです。

そういった中で、日本の株価だけは諸外国に比べ大きく出遅れ、かつ多くの日本企業は円高に苦しめられているというのが実情です。

残念ながら今回のリーマン・ショックにより、日本という国は「製造業の輸出でしか生き残っていけない国」ということがすっかりばれてしまいました。

以下独立行政法人経済産業研究所のホームページからの引用です。

製造業の付加価値額の対GDP比は20.8%、製造業の事業活動に伴う他産業の付加価値額の増加分を加えたものの対GDP比は32.4%、でGDPに占める割合は大きく、付加価値額の増減による波及効果は1.95でサービス業(1.35)よりも大きいです。

また経済成長という観点では、製造業の労働生産性の伸びは全産業の労働生産性の伸びを大きく上回り、経済成長に貢献しています。また外貨獲得という観点では、輸出の9割以上は工業製品が占めていて、貿易収支はかつてよりだいぶ減って11.6兆円(2001年)。一方サービス業の輸出入収支はほとんどの分野で赤字で、米国と対照的です(図1-13)。雇用機会という観点では、製造業の就業者数全体に占める割合は、日本20.0%、米国14.0%、英国16.5%、ドイツ24.1%で、米国、英国を上回ります。研究開発という観点では、製造業は我が国の民間研究開発投資の中心で、日本89.6%、米国64.2%、英国79.6%、フランス85.7%、ドイツ90.9%です。

この4つを見ると、製造業が引き続き日本経済の牽引力になると思います。サービス業の生産性向上にも努めないといけないわけですが、すぐに製造業と取って代わることはないと思います。

(以上、引用終わり)

日本の農業のみならず漁業や林業も非常に大切であり、食料自給率はなんとしても高めていかなければなりません。しかしそのためにもまずは輸出で稼いだお金で農業や漁業に重点的に研究開発投資を行い、競争力をつけさせていくべきでしょう。

日本は一刻も早く、環太平洋戦略的経済パートナーシップ協定(TPP)を決断し貿易立国として生き残る最後のチャンスを実現させねばなりません。これは日本の翻訳業界のみならず、日本全体の将来のために必要不可欠の戦略だと確信しているからです。

各相場から見た景気見通し

本日(2010年10月28日)のニュースの中から「景気見通し」に関するニュースを検索してみました。3ヶ月から6ヶ月先の景気を占う上で重要な指標となる各国の株式相場や為替相場を中心に見てみます。

2010年10月28日 47NEWS

東証株価終値は反落21円安 米景気減速懸念で
28日の東京株式市場は、米国の追加金融緩和が小規模にとどまるとの観測から米景気の減速懸念が強まり、日経平均株価(225種)終値が反落した。
⇒ 少し弱気見通し

2010年10月28日 47NEWS

東京円続落、81円台後半 米景気先行き懸念和らぐ
27日の東京外国為替市場の円相場は続落し、1ドル=81円台後半で推移した。これまでの円高基調で戦後最高値の1ドル=79円75銭に迫っていたが、一服した形だ。(中略)米国の景気先行き懸念がやや和らぎ、追加金融緩和の規模が想定より小さくなるとの観測から、いったん円を売ってドルを買い戻す動きが優勢となった。オーストラリアの利上げ観測後退で豪ドルに対して米ドルが急速に買われたことも、対円でドルが買われる材料となった。
⇒ 少し強気見通し

2010年10月28日 ウォールストリートジャーナル

【米国株市況】ダウ反落、エネルギー銘柄が安い
27日の米国株式市場のダウ工業株30種平均とS&P500種指数は反落。米連邦準備制度理事会(FRB)による追加金融緩和への期待感に変化がみられたほか、企業の好決算が織り込み済みとなり、売りが優勢になった。ダウ平均は一時150ドル近く下げたものの、その後は切り返して日中高値近辺で取引を終えた。FRBは金融危機の際に2兆ドル近くの米国債を買い入れたが、来月発表される景気対策の買い入れ規模は数カ月にわたり数千億ドル相当を買い入れるものになる、との見方が市場に広がった。
⇒ 少し弱気見通し

2010年10月28日 ロイター

欧州株式市場=続落し2週間ぶり安値で引け、米追加緩和の規模巡り不透明感
27日の欧州株式市場は続落し、2週間ぶり安値で引けた。来週の米連邦公開市場委員会(FOMC)で連邦準備理事会(FRB)が打ち出すとみられる量的緩和第2弾の規模をめぐり不透明感が出ていることや、さえない米耐久財受注を背景に、投資家の間に慎重姿勢が広がった。
⇒ 少し弱気見通し

2010年10月28日 日本経済新聞

韓国、景気回復に陰り ウォン安でも輸出低迷
韓国の景気回復に陰りが見えてきた。韓国銀行(中央銀行)が27日発表した7~9月期の国内総生産(GDP)は実質で前期比0.7%増にとどまり、4~6月期の同1.4%増に比べ伸び率は半減。最大のけん引役である輸出がウォン安の傾向にもかかわらず伸び悩んだ。今後はウォン高の兆しもあり、輸出への逆風が強まりそうだ。国内では不動産市場の低迷が不安要素となってきた。
⇒ 少し弱気見通し

2010年10月28日 ロイター

10年の中国貿易黒字は1800億ドルの見通し=商務相
中国の陳徳銘商務相は、2010年の貿易黒字が09年の1960億ドルを下回る1800億ドルに達するとの見通しを示した。4月時点の政府予測の1000億ドルから大幅に上方修正した。
⇒ かなり強気見通し

2010年10月28日 財経新聞

翻訳センターは2Q業績を上方修正、利益で米国子会社の貢献が大
翻訳センター <2483> は取引終了後、11年3月期第2四半期連結業績について、5月14日公表の予想を上方修正し、売上高2,196百万円(前回予想比4.6%増)、営業利益106百万円(同76.7%増)、経常利益96百万円(同61.5%増)、純利益57百万円(同65.2%増)とした。なお、11年3月期通期連結業績予想は、前回公表予想を据え置いた。
⇒ かなり強気見通し

上記のように見方は分かれていますが、翻訳業界に一番大きな影響を与える世界景気の動向は、「大きな経済スキャンダル」、「大規模テロ」、「天変地異」、「パンデミック」、「戦争」等々・・・・さえなければ、そろそろ景気拡大の時期にさしかかっていると考えても良いのではないでしょうか。

とは言っても「大きな経済スキャンダル」も「大規模テロ」も「天変地異」も「パンデミック」も「戦争」も、いつ起こっても不思議ではない世相ではありますが・・・。

円高の影響に関する緊急アンケート

2010.9.24 日本経済新聞

大手製造業が海外生産比率を一段と引き上げる。トヨタ自動車や日産自動車の海外生産比率は通年で過去最高に達する見通し。電子部品や精密機器も海外生産が拡大する。2010年4~9月期の実績為替レートは主要輸出企業の平均で前年同期比7円前後の円高・ドル安になるとみられる。海外生産拡大は円高対応力を強めるが、生産能力全体が増えない中での海外拡充は国内の空洞化につながる懸念もある。

(以上で日経の記事終わり)

2010.9.24 日経新聞
<日経新聞朝刊より>

円高の影響に関するジェトロ・メンバーズ緊急アンケート結果概要
2010年9月17日 日本貿易振興機構 海外調査部

円高による海外部門の業績への影響(業種別)

2010.9.24 JETRO 1
* 現在の円高が今後(半年から1年程度)続くことによる、海外部門(輸出含む)の業績の影響については、4分の3の企業が業績が悪化すると回答し、4割超が業績は「大いに悪化する」との回答であった。

* 業種別には、製造業の約85%、非製造業は6割程度が業績悪化を見込んであり、非製造業では3割近くが業績への影響は無いとの回答であった。

円高による海外部門の業績への影響(業種別詳細)●2010.9.24 JETRO 2
*業種を詳細にみると、特に機械類(「一般機械」、「電気機械」、「情報通信機械器具/電子部品・デバイス」、「自動車/自動車部品/その他輸送機器」、「精密機械」)で悪影響が大きくなると見込まれ、いずれも8割以上の企業が業績の悪化を見込んでいる。これに対し、非製造業への影響は相対的に限られると見込まれる。

(以上でJETROの記事は終り)

このブログの中で何度も指摘してきましたが、日本製造業の海外脱出と国内産業の空洞化の問題が今後さらに強まりそうです。

今回の急激な円高が日本製造業を海外脱出させる直接的な原因となっていることは間違いありませんが、もちろん原因はそれだけではありません。「日本製造業の派遣社員切りに対するヒステリックな社会的批判」や「諸外国に比べかなり高率の法人税」に嫌気がさしていたところへ、今回の円高がとどめを刺したというところでしょう。

まあ、いずれしてもこれも時間の問題ではありました。なぜならグローバル化が進めば、製品売却先の国に工場を建て、現地人を雇用し、納税し、「売って儲けているだけ」という批判を少しでもかわさなければならないからです。

ただし、翻訳業界にとって気になるのは、工場の移転よりも「開発や設計の海外移転」のほうですが、これも今や着々と途上国へと移転が進んでいるようです。ITソフトウェアの世界では十数年間から途上国でのオフショア開発が盛んに行われてきましたが、これが今後は製造業一般にまで広がっていくのかどうかが気になるところです。

日本とインド EPAで大筋合意

2010年9月10日 朝日新聞の朝刊より

日本とインド両政府は9日、両国間の貿易やサービスなどの自由化を進める経済連携協定(EPA)に大筋合意した。日本のEPAの合意はベトナムやスイスと決着した2008年9月以来、2年ぶり。12億人以上の人口を抱え、成長著しいインド市場の取り込みを図る日本企業を後押しする。

両国のEPA交渉が始まったのは07年1月。9日は次官級交渉で大筋で合意。インドのシン首相が10月に訪日した際、首脳間で正式合意に至る。

合意によると、貿易では、インドから日本への輸出額の97%、日本からインドへの輸出額の90%にあたる物品について、それぞれ10年かけて関税を撤廃する。現在、日本から輸出する家電や自動車部品、鉄鋼製品には7.5~10%の関税がかけられているが、10年後までに大半が撤廃される。現地生産する日本企業は、日本から調達する部品のコストが下げられる。ただ、インドが100%の税率をかけている乗用車の関税は対象外。

2010.9.10 朝日
(以上で記事終り)

成長著しいインドとの貿易の自由化が進むということは、わたしたち翻訳業界にとっても良いことこそあれ悪いことはないはずです。しかし、韓国企業の激しい追い上げに脅威を感ずる日本企業のあせりが、日本政府の尻をたたかせ、今回の合意にこぎつけさせた・・・・というのが実情のようです。

韓国は今年1月にすでにインドとのEPAが発効済みなので、インドにいち早く進出し、乗用車市場の半分を握る日本のスズキは、韓国の現代自動車などの激しい追い上げに、かなりの危機感を持っているようです。

また、インド市場で確実にシェアを広げつつある韓国のサムスン電子に遅れまいと日本の電機業界も必死のようです。

たとえば、インドでの売上げを2012年に現在の5倍にあたる2,000億円に引き上げようとしているパナソニックでは「先にEPAを締結した韓国勢に対抗するため、ものすごいコストダウン努力を強いられてきた。今頃になって、やっと追いついたのかという印象」との声も出ているようです。

いずれにしても、世界での存在感を急速に強めつるあるアジアの2大国、中国とインド。その巨大市場への参加レースに出遅れた日本企業が、商売上手な中国・インドに振り回されふらふらしている隙に、日本の脇を猛烈な勢いで追い抜いていく韓国政府と韓国企業の連合体。こんなことは今までは考えられなかった、信じられない、とあっけにとられる日本企業。

かつての世界の強者、日本の自動車業界と電機業界の心情を象徴的に表している出来事のように感じてなりません。

中国、大豆輸入10年で5倍

2010.8.24 日本経済新聞

中国の大豆輸入量は1999年度に1,000万トンを超え、当時最大の輸入国だった日本を追い抜いた。それから10年。2009年度輸入量は1999年度の4.9倍。主な供給国は米国、ブラジル、アルゼンチンだ。(後略)

(以上記事終わり)

2010.8.24 日経新聞
<日経新聞朝刊より>

・・・・(記事の転載ここまで)

上のグラフは中国と日本の大豆の輸入量を比較したものですが、現在中国はものすごい勢いでトウモロコシも輸入し始めています。数年内には現在世界最大のトウモロコシ輸入国である日本の1,600万トンを抜いて、中国が世界第一位のトウモロコシ輸入国になるのはもう確実でしょう。

また、中国が米国から輸入している大豆のほとんどは、遺伝子組み換え大豆だそうですが、逆に日本はしょうゆや豆腐の原料としては、ほとんどが遺伝子組み換えでない大豆を輸入しています。だから日本には影響は少ないのかというと、大間違いで、今後大豆にしてもトウモロコシにしても国際相場そのものが当然のことながら急上昇していくので、日本へも大きな影響が出てくることは必至でしょう。

「毒入り餃子」や「農薬漬けの野菜」など中国から輸入される食品は危ない、というイメージがやっと定着してきた日本ではありますが、「中国の食品なんか買ってあげない」といつまで言っていられるのでしょうか?食糧危機になったときに、頼んでも「日本になんか食料を売ってやるもんか」とならないことをただただ祈るばかりです。

一方で実は日本は1ヘクタールあたりの農薬使用量は米国の8倍で世界最悪というOECDの報告もあれば、いやそんな数値は意味がないという反論もあり、どちらが正しいのかよくわかりませんが、日本に食糧危機の影が静かに近づいてきているということだけは確かなようです。

農林水産省は、おいしい日本の食品をもっと積極的に海外へ輸出するべく「輸出促進対策」を打ち出していますし、優秀な日本の農作機械ももっと積極的に海外へ輸出していこうと画策しているようです。従って翻訳業界としてはそこら辺に新たなビジネスチャンスあり、と見ていいわけですが、しかし人間は、「腹が減っては戦はできない」のです。もっと根源的な食料自給率の向上のための政策を打ち出して欲しいと強く望みます。

中国人向けビザ緩和、すでに申請数が大幅増

2010年7月24日 Searchina

中国人向けビザ緩和、すでに申請数が大幅増、顕著な中国パワー

7月1日、中国人向け個人旅行ビザの発給条件緩和が行われたが、すでにビザの申請数が大幅に増加していることが明らかとなった。中国新聞社が報じた。

2010年7月29日 Searchina

中国人観光客急増で、日本の百貨店が留学生を緊急採用

日本の大手百貨店、東急百貨店はこのほど、8月9日から渋谷の店舗で中国人観光客を対象とした接客サービスを提供すると発表した。私立大学の亜細亜大学に通う約50人の中国人留学生から応募があり、東急百貨店は中国語と英語ができ、熱心な留学生20人を採用する。

2010年7月28日 日本経済新聞

中国人客、成田で安心 TV電話で中国語サービス

個人観光ビザ(査証)の発給要件緩和による中国人観光客の増加を見越し、玄関口である成田空港でIT(情報技術)機器を使った受け入れ体制の強化が進んでいる。テレビ電話を通したスタッフによる中国語の案内、翻訳機能付きの携帯電話……。言葉の壁を越えて「十分なもてなしをする」(成田国際空港会社)のが狙いという。
(上記の記事の詳細はこちら

日本政府観光局(JNTO)の速報値によると、2010年1月から6月までの6ヶ月間の訪日外国人客数が420万人を超え、対前年比35.8%増となったもようです。その国別TOP4の内訳をみると、下記のようになっています。

1位 韓国 117万人(71.9%増)
2位 台湾 62万人(37.0%増)
3位 中国 70万人(47.4%増)
4位 香港 25万人(28.3%増)

しかも中国に対しては今年の7月1日からビザの発給条件が緩和されたわけですから更に観光客数が急増することは明らかです。

すでに中国の富裕層は銀座のデパートで高額商品を買いまくり、箱根や富士五湖などのリゾート観光地の別荘を買いあさっているそうです。

ヨーロッパ諸国は、かつて世界の海を制覇したその栄華を新大陸のアメリカに奪われ、老大国となっていったわけですが、歴史や歴史的遺産を非常に大事にする彼らは、観光大国として復活し、現在もまだ豊かな生活を維持しています。

現在日本政府も「観光立国」となるべく観光業の促進に力を注いでいるようですが、はたしてどうなるのでしょうか。歴史や伝統を軽視する日本人気質からいって、観光客にとって魅力あるハードやソフトを作れるのかどうかが疑問です。

また良くも悪くも宗教的観念の薄い国民性なので、バルセロナのサグラダファミリアのような歴史的建造物の建設を百年、二百年もの間じっと見守るなどという離れ業ができるとはとても思えません。

しかし、日本人特有のきめの細かいサービスはやはり世界に誇れる文化なので、「歴史」を売りものにするのではなく、「新文化のサービス」を売りものにして急増するアジアの観光客を日本ファンにしていくことが重要でしょう。

そのためにもわが翻訳業界は間違いなく大きな貢献ができるはずです。

ヤフーとグーグル 提携発表

2010年7月28日 朝日新聞

インターネット検索で世界最大手の米グーグルが、同じく日本最大手のヤフーに、検索技術を提供することになった。今やネット検索は、日本人の暮らしや経済活動を支えるインフラだ。この技術を事実上、グーグル1社が握ることで、ネットから得られる情報の多様性が損なわれる恐れも指摘されている。

(以上記事終わり)

2010.7.28 朝日
<朝日新聞朝刊より>

2010年7月28日 日本経済新聞

インターネット検索で国内最大手のヤフーは27日、同分野で世界最大手の米グーグルと提携すると発表した。年内にも検索サービスの基本技術となる「検索エンジン」を、従来の米ヤフー製からグーグルに切り替える。米ヤフーは、米マイクロソフト(MS)と検索分野で提携している。グーグルは「MS・ヤフー連合」から日本のヤフーを奪う格好になり、日本のネット検索市場での存在感を一気に高める。

(以上記事終わり)

2010.7.28 日経
<日経新聞朝刊より>

・・・・(記事の転載ここまで)

このヤフージャパンがグーグルの検索エンジンを採用するという提携話には驚きました。今やネット検索は現代人の生活に欠かすことのできない「社会インフラ」となっています。特に私たち翻訳業界の人間にとって、このネット検索は仕事上必要不可欠の「ライフライン」と言っても過言ではないでしょう。

その検索技術が事実上、グーグル1社に独占されてしまうということは、長期的に見れば、やはり決して喜ばしいことではないはずです。

独自での経営が難しくなった米国Yahooは、マイクロソフトに買収されるか、それともグーグルと提携するかでもめ、結局昨年7月にマイクロソフトの検索エンジンを使用するという提携話で決着をみたばかりでした。

その米ヤフーは日本のヤフーに34.8%出資していますが、今や日本のヤフーの時価総額が2兆400億円、純利益216億円なのに対し、米ヤフーは時価総額が1兆7,000億円、純利益が186億円と完全に親子の逆転現象を生み出しています。セブンイレブンジャパンが米国セブンイレブンを買収して救済したのと同じことが今後行なわれるかもしれません。

かつてマイクロソフトのOSにより、PCが爆発的に普及し、IBMをはじめとする既存の大手コンピューターメーカーがダウンサイジングの波をまともにかぶり、多くの大手企業が市場から消え去っていきました。

その後わが世の春を謳歌したマイクロソフトもグーグルの出現により、その将来性すら危ぶむ声も出始めています。

今や飛ぶ鳥を落とす勢いのグーグルですが、そのグーグルでさえ、iPod、iPhone、iPadで見事に復活したアップルの後塵を拝しています。

まさに「一寸先は闇」、「生き馬の目を抜く世界」とはこのようなことを言うのでしょうか。つまりどこにも「安泰」はないということですね。

日産4工場で生産停止 日立エンジン部品納期遅れ

2010.7.13 日本経済新聞

日産自動車は12日、日立製作所から調達しているエンジン部品の入荷が遅れているため、国内4つの完成車工場で14日から3日間、操業を停止することを決めた。減産台数は約1万5,000台。日立はエンジン部品に欠かせない半導体の調達が不足した、と説明している。日産の4工場は来週から操業を再開するが、「8月半ば以降の半導体の調達は交渉中」(日立)としており、影響が拡大する可能性もある。

2010.7.13 朝日新聞

日立がECU用のICを1社だけに発注していたのは、特注品は調達先を絞った方がコストが安くなるため。こうした手法は自動車や電機業界で使われている。

(以上で記事おわり)

半導体メーカー ⇒ 日立製作所 ⇒ 日産自動車、という納入図式になっているようですが、日立製作所に半導体部品を納めている海外の半導体メーカーが、「一方的な通告による納期遅れ」をおこしたために、エンジン内の基幹部品である「エンジン制御ユニット(ECU)」を日産自動車に納品できなくなり、結局日産の4工場の操業ラインが突然ストップするという異常事態にまで発展してしまいました。

背景には現在の世界的な半導体の品不足という需給バランスの崩れがあるようですが、実際それだけでもなさそうです。

つまり「集中購買」の弊害が表面化したともいえます。「集中購買」とは、たとえば5社の下請けメーカーへ発注していた部品を、下位3社を切り捨て、上位の2社だけに集中的に発注することにより、納入コストを20%下げさせる、というようなやり方を言います。

近年の流行とも言える手法ですが、今回の日立製作所のケースで言うと、コストカットを究極まで追求したため、結局1社のICメーカーに絞りこまざるを得ず、このような非常事態を招いてしまったとも言えるでしょう。

しかしこのような動きは、部品メーカーのみならず、わが翻訳業界にも少なからず影響を与えています。「御社だけに集中的に翻訳を発注するから、何%コストを下げて欲しい・・・・・・」。

しかし、装置産業の場合は「1万個作ると1個あたりのコストは100万円だが、10万個作れば50万円になる」というような図式もあり得るでしょうが、翻訳業は装置産業ではないので、ある一定ラインを超えると量が増えることによりコストも増大する、ということに早く気がついて欲しいものです。

半導体需要 アジアが支え 世界売上高の過半に

2010.7.8 日本経済新聞

世界の半導体需要が2008年秋の金融危機前の水準を越えて伸びている。5月の売上高は過去最高を更新した。地域別では中国を含むアジア太平洋(日本を除く)の比率が世界の5割を超え成長が続く。米アップルの多機能携帯電話「iPHONE(アイフォーン)」などパソコン以外の用途拡大も進み、生産が追いつかない。ただ欧州経済の減速懸念などもあり、今秋以降の需要動向には警戒感も出ている。

(記事終わり)

2010.7.8 日経新聞(1)2010.7.8 日経新聞(2)

・・・・(記事の転載ここまで)

さて、全世界の半導体の需要がリーマン・ショック前の水準を越え伸びている、ということは世界経済にとっても日本経済にとってもわが国の翻訳業界にとっても確かに良いことではあります。しかし1980年代、世界の半導体生産量50%超の日本メーカーが、海外に日本製半導体を売りまくっていた時代とは明らかに状況がちがいます。技術立国日本の象徴だった半導体が「今は昔」となってしまったのは本当に残念としか言いようがありません。

しかし本日(2010.7.9)の日経新聞の見出しに

・ 米成長を上方修正 3.1% → 3.3%
・ 電子部品5社、受注拡大 「リーマン前」回復
・ キヤノン、営業益2.8倍
・ 半導体・パネル製造装置販売額70%増に
・ 工作機械受注額2.4倍 6月
・ NEC、通信会社向け機器事業 9,000億円目標

などという見出しが躍っているだけでもせめてもの救いです。

日本の輸出入総額推移

1979年1月から2010年4月までの日本の輸出入総額のグラフをエクセルを使って作成してみました。
(数字は財務省貿易統計のサイトから)

日本の輸出入総額

こうやってグラフにしてみると、2008年9月のリーマン・ショックのすさまじさが改めてよくわかります。わずか半年足らずで過去10年間に積み上げてきた貿易額の全てが吹き飛んだ、という形になっています。まさに「釣瓶(つるべ)落とし」とはこのことでしょう。

しかしその後はV字回復をして、2010年4月にはほぼ2006年初めの水準にまで戻してきました。「それでもピーク時の8割程度にすぎないから日本経済は良くない」と言われています。

それでは2005年、2006年当時の日本経済の景気は悪かったのでしょうか?

いいえ、日本の上場企業の多くは、3年連続、4年連続で過去最高利益を更新し、「いざなぎ景気」を超えた、超えないなどとおろかな議論をやっていたまさにその時期です。

その景気が良かったはずの時期と同じレベルの貿易額まで回復したのに、日本経済も日本の翻訳業界もいまひとつ元気がないのはなぜでしょうか?

恐らくその一番の原因は、アメリカ経済のバブルの恩恵を一番享受していたのは実は日本企業だった、ということでしょう。過剰消費に慣れきったアメリカ国民のゆるい財布のひもを「通常のこと」と捕らえた多くの日本の大企業も同様に緩みきってしまっていたのです。

しかしその後の調整も反省もそろそろ終盤に差し掛かってきていると感じます。悲しいかな輸出により外貨を稼ぎ、原料や食料を輸入せざるを得ない日本の貿易額は、中長期的に見れば増えることはあれ、減ることはありえないでしょう。

日本の翻訳業界も、これからそろそろ忙しくなってくるはずです。

~産業構造ビジョン 日本は、何で稼ぎ、雇用していくのか~

経済産業省が、日本経済を立て直すための成長戦略「産業構造ビジョン」を発表しました。

インフラの海外輸出や環境関連産業など5つの戦略分野の競争力を強化し、これらの市場規模を2020年までに149兆円拡大させ、258万人の新規雇用を生み出すとのことです。

ここでは、自動車とエレクトロニクス産業に依存した現状の産業構造から、戦略5分野をはじめ多様な産業が経済成長を牽引する構造に転換する必要性を強調しています。

また、新たな“稼ぎ頭”として、原子力発電などインフラ輸出や、次世代送電網など環境・エネルギー産業に加え、医療・介護・健康・子育てサービス、アニメなど文化産業、先端技術を選び、集中支援する方針も示しています。

現在の日本の産業構造は、自動車やエレクトロニクスの外需にあまりにも依存しすぎているので、今回のリーマンショックにより欧米や中国経済が「風邪」をひけばたちまち日本は「肺炎」になってしまう、という産業構造の脆弱性があからさまになってしまいました。

一人の日本人として、日本経済全体の将来の発展のために、この成長戦略がうまく機能してくれることを望むばかりですが、わが翻訳業界にも大きな影響を与える方針転換でもあります。

潮の流れや波の高さや風の強さに注意を払いながら、うまく「波に乗る」ことができるかどうか・・・・・。これがこれからの翻訳業界でサバイバルできるかどうかのポイントになっていくでしょう。

Google、社内PCをWindowsからほかのOSへ移行

2010.6.2 ITmedia News

Googleがセキュリティ上の懸念から、社内でのWindows利用をやめて、Mac OS XやLinuxに移行すると報じられている。

・・・・(記事の転載ここまで)

最新のFinancial Timesの記事によると、Googleは、“今年の新入社員から、AppleのMacまたはLinuxをオペレーティングシステムとするPCのどちらかを使わなければならない。そして自分のコンピュータでWindowsを使いたい者は、最高役員であるCIOの許可を要する。”とあります。

もちろんこの直接の原因は、中国ハッカー攻撃事件であり、そのせいでGoogleは中国市場から撤退する決断を下すことになったのです。Googleからすれば、Winodowsのセキュリティーに対する弱さや不完全さに対する不信感の表れなのかもしれません。

しかしGoogleは、新入社員にMacのOS XやオープンソースのLinuxを使わせることによって、Windows離れの動きを徐々に広げていこうとしているのかもしれません。この二つのOSを、Chrome OSを広く普及させていくまでの「つなぎ」として位置づけ、IT業界における盟主の座をマイクロソフトから一気に奪うための前哨戦と考えているに違いない、と思うのはちょっと行きすぎでしょうか?

日中韓連携 電子図書館

2010.5.12 朝日新聞朝刊

2010.5.12 朝日

この記事の文面からすると書籍を「電子化する」の意味が、過去の紙の書物をスキャナーで読み込んで電子化するのか、あるいはOCRで読み込んでテキスト入力するのかは不明です。後者であれば膨大な量の入力作業が発生するでしょう。

そういえば10年ほど前にそのような書籍のテキスト入力の仕事が膨大に発生していると、あるDTP専門会社の人から聞いたことがあります。現在はどうなっているのでしょうか。いずれにしても自動翻訳するためには、最低限書籍のタイトルだけはテキスト入力されている必要があります。

しかし、仮にタイトルが翻訳ソフトで正しく翻訳されたとしても、目的の書籍を検索した人は、その書籍の中身が原文のままであれば理解はできないはずです。逆に理解できるほどの語学力を持つ人であれば、自分でキーワードを入力して、自力で検索するでしょう。

となると何のための「翻訳機能」なのでしょうか?「いずれは本文も自動翻訳して各国語で読めるようにしたい」ということですが、そのためには前述のとおり、まずは本文の全てをテキスト化する必要があるため、膨大な時間とコストがかかります。しかし仮にそれをやったとしてもコンピューターによる「自動翻訳」であれば、現実的には実用レベルに達するまでにかなりの時間を要することになるでしょう。というより本当にできるのでしょうか?

一つ考えられることはまず必要のありそうな書籍を検索してから自動翻訳し、なんとなく興味がありそうなものだけを改めて人間に翻訳をしてもらう、という使い方です。

ただそれも明治・大正期の書籍にどれほどの需要があるのか疑問です。要するに結論としては「無駄に税金を使わないで欲しい」ということだけです。

電子部品再び増産投資 新興国にハイテク景気

2010年4月23日 日本経済新聞の朝刊より
「家電や自動車に使う電子部品の増産投資が再び拡大する。日本電産など大手5社の2011年3月期の設備投資額が合計で約2600億円と前期比で5割増えるほか、東芝は約100億円を投じハードディスク駆動装置(HDD)を3割増産。新興国で急拡大するパソコンや携帯電話端末の需要に対応する。国内工場での増産は半導体関連などにも広がりつつあり、外需が国内の設備投資を押し上げる構図が部品産業ではっきりしてきた」

2010.4.23 日経(3)

2010年4月23日 日本経済新聞の朝刊より
2010.4.23 日経(2)

(以上で記事終り)

日本の電子部品が増産体制を整え、輸出が活発になってきた、ということは確かに明るい兆しではありますが、よくよくグラフを見てみると出荷金額もピーク時の7~8割程度に戻ったに過ぎないということがわかります。

2010年4月23日 日本経済新聞の朝刊より

「日本の貿易でアジアの比重が一段と高まっている。財務省が22日発表した2009年度の貿易統計によると、全体の貿易額(輸出額と輸入額の単純合計)に占める対アジアの割合は前年度から4.7ポイント上昇し、50.2%となった。5割を超えるのは統計の比較が可能な1979年度以降で初めて。米欧の景気がもたつくなか、中国などアジア経済がいち早く持ち直したのが背景だ。アジアの経済動向は日本経済の先行きを大きく左右する存在になってきた」

2010.4.23 日経(1)
2010年4月26日 日本経済新聞の朝刊より

「日本の輸出品の低付加価値化が進んでいる。財務省と日銀の統計を使って試算したところ、輸出品の平均単価はこの3年間で13%低下していることがわかった。2008年9月からの金融危機で輸出先のシフトに拍車がかかり、アジア向けの汎用品や中間財などの比重が高まったためだ。新興国市場の重要性が増す一方で、日本経済を引っ張る輸出の採算が悪化するとの見方も出ている」
2010.4.28 日経

(以上で記事終り)

「輸出は増えた、でも売上単価は下落している」、なぜなら「アジアを中心とする新興国向けの輸出が増えたから」ということです。今日本の製造業は採算があうようにどんどん現地生産の比率を高めています。

また昨今の「派遣切り」が世間から非難を浴びたため、さらに追い討ちをかけるように日本の製造業は工場を海外へ移転し、産業の空洞化をますます加速させています。

早く「士農工商」と言う4つの身分制度、つまり「正社員、パート社員、契約社員、派遣社員」という4つの身分制度を廃止し、「万人は皆平等である」、「努力した者、能力のある者が報われる」という精神のもと、人材の流動化を促す社会基盤を整備していかなければ、日本経済はこのまま衰退の一途をたどると大変に危惧しています。

円安と国債とインフレと

2010年4月6日、朝日新聞の朝刊より

「外国為替市場で円安傾向が強まっている。5日の円相場は一時、対ドルで94円70銭まで下げ、昨年8月18日以来となる95円台の大台に迫った。米国で景気回復の予想から金利の先高感が高まり、日本より金利が高いドル資産に投資しようとする動きが広がっているからだ。ただ、米景気の回復に力強さは乏しく、円安がさらに進むかどうかは不透明だ」

2010.4.6 朝日新聞
(以上で記事終り)

戦後の日本経済の発展は、製造業による輸出に「おんぶにだっこ」されてきたわけですが、その傾向が近年さらに強まってきたことが先のリーマン・ショックでばれてしまったわけです。

その輸出企業にとって円安は良いことで、輸出が増えれば輸入も増え、これはこれで日本の翻訳業界にとっても良いこととなります。

しかしことはそう単純には運びそうにありません。いまや日本の国債の予定発行残高は約860兆円となり、国家予算の10倍超、約500兆円といわれるGDPの1.7倍となりました。

このまま永遠に赤字国債の発行が続くわけもなくいつかは必ず行き詰るときが来ます。そのときはどうなるか?

1. 日本の国債の格付けが下がる。

2. 日本のカントリーリスクが高まり、資金が海外へ移動し円安となる。

3. 日本の国債の金利が上昇することにより、国家予算が破綻する。

4. 郵便貯金を初めとする金融機関の預貯金が凍結される(引き出しができなくなる)。

5. 消費税の大増税により不況に拍車がかかる。

6. 日銀が紙幣を刷りまくりインフレ政策をとる。

7. 円安がいっそう進み、輸入原材料が高騰し、さらにインフレに拍車がかかり、瞬く間にハイパーインフレとなる。

8. 国民の預貯金や紙幣が紙くず同然となる。

9. 日銀が新紙幣を発行することにより、国債という借金がすべて棒引きにされる。

10. 「経済大国」日本のデフォルト(国家債務不履行)が引き金となり、世界大恐慌となる。

現在アメリカの金融機関もサブプライムローンによる不良債権の処理を3年間返済猶予されているにすぎません。

恐ろしい話ですが、現政権が郵便貯金限度額を1,000万円から2,000万円に引き上げるなど準備を始めているところをみると、このストーリーも決して絵空事ではない気がします。

では私たちはどうすればよいのか?

海外へ移住し資産も海外へ避難させるか、あるいは日本国内に残るならば、全財産を不動産と金に変えてじっと耐え忍ぶか、このくらいしか対策は思い浮かびません。

しかしこれはそう簡単には実行できませんよね。ただし、日本の国債の格付けが現在より2段階下がったら即実行ですね。その時ではもう遅いかもしれませんが。

貿易統計:輸出総額45%増 回復基調裏付け--2月

2010.3.24 毎日新聞

財務省が24日発表した2月の貿易統計速報(通関ベース)によると、輸出総額は前年同月比45・3%増の5兆1287億円で、3カ月連続で前年同月の水準を上回り、世界景気の持ち直しを背景とした回復基調を裏付けた。輸出から輸入を差し引いた貿易収支は、約9・2倍の6510億円の黒字だった。輸入総額は、原油輸入価格が前年同月から74・5%も急伸した影響で、29・5%増の4兆4777億円となり、2カ月連続で前年同月を上回った。

輸出品目別では前年2月は大幅に落ち込んでいた自動車が105%増、自動車部品が121・7%増の大幅な伸びとなり、全体をけん引した。トヨタ自動車のリコール問題の影響が懸念されたが、同省は「マイナス要因は見られなかった」(関税局)と分析している。

・・・・(記事の転載ここまで)

さて、例によって「財務省貿易統計」のホームページから該当する数字を拾ってきて検証してみましょう。

【過去3年間の日本の2月の輸出入総額】 (単位:百万円)

2008年2月

2009年2月

伸び率

2010年2月

伸び率

輸出

6,973,675

3,529,575

-49.4%

5,127,898

+45.3%

輸入

6,037,854

3,458,728

-42.7%

4,478,346

+29.5%

新聞記事が出た時の2010年2月の数字は「速報値」だったため、現在の数字と若干の違いはありますが、伸び率に変化はありません。確かに対前年同月に比べれば、輸出が45.3%伸び、輸入も29.5%伸びています。

しかし、伸びたとはいえピーク時の2008年2月に比べれば、輸出は26.5%のマイナスで輸入も25.8%のマイナスとなっています。数字の「率」だけを追い、新聞の見出しだけでイメージしてしまうと、輸出は49.4%下がって、45.3%上がったわけですから、ほぼピーク時の状態に近づいたようにも感じますが、実際にはピーク時の4分の3のレベルに戻ったにすぎない、ということがわかります。

また、翻訳業界から見れば、「輸出の増加」は日英翻訳や日中翻訳の増加を意味し、「輸入の増加」は英日翻訳の増加を意味するのですが、「輸出が増えなければ輸入も増えない」、あるいは「輸出が減れば、輸入も減る」ということがわかります。つまり、日本経済も翻訳業界も「輸出」次第ということなのです。

有力外資 相次ぎ日本撤退

2010年3月10日、日本経済新聞の朝刊から

「海外の有力企業が日本での生産や販売から相次ぎ撤退する。タイヤ大手の仏ミシュランは7月に日本での生産をやめ、韓国の現代自動車は乗用車の販売を中止。カナダの燃料電池大手も撤退する。国際収支統計によると2009年の対日直接投資は前年比で55.7%低下。外資大手は日本から新興国などへの投資先シフトを鮮明にしており、日本は法人税減税や規制緩和で投資環境を改善する必要がありそうだ」

2010.3.10-1 日経新聞
(以上で記事終り)

今まで日本人は外資が日本へ参入しようとするとすぐに「黒船来襲」と拒絶反応を示してきました。今回はその逆です。出て行く外資に「やっぱり出ていっちゃうの?」と寂しいラブコールを送っています。

問題は外資の「紙幣の色」や経営者の「目の色」ではありません。グローバルに(地球規模で)ものを考え、企業を発展させ、雇用を創造し、日本国に税金を支払う企業であれば、その国籍などどこでもよいのです。

日本人が「資本の紙幣の色」や「経営者の目の色」をとやかく問題にしている間は、相変わらずグローバル化の波に乗り遅れ続けていくのでしょう。

どんな色の紙幣でも、どんな目の色であろうと、どんな言葉をしゃべろうと、そんなことに一切頓着せず、見事に環境適応してしまう華僑の人たちにかなうわけがありません。

世界で活躍する華僑財閥と言われる人たちは、長い間外国で暮らしながら見事にその国の文化に適応しています。しかも自国の文化や風習を失うどころか逆に発展させつつ、結局は財をなしていくパワーはやはりすごいものがあります。

潜在的に「商才」を持つ中華人民13億人が、ここ数百年の間では初めて、国としてのまとまりを持ち、世界へ飛び出し始めました。

そう遠くない将来、日本にも中国資本の会社が多数現れ、当然中国人経営者の数も増えていくことでしょう。今から10年後、20年後、私たちが今想像している以上に、中国語の翻訳需要は増えているのかもしれません。

「純利益」 上位20社 20年前と今

2010.3.10 日経新聞

上場企業の2010年3月期は2期ぶりに最終黒字転換する見通しで、リーマン・ショック後の業績悪化からようやく立ち直ってきた。この20年間でバブル経済の崩壊、IT(情報技術)バブルの崩壊を経て、上場企業の勢力図は大きく変わった。電機など製造業が地盤沈下する一方、通信・商社が浮上した。ただ、新顔は少なく、日本経済の核となる成長業種の不在が浮き彫りになった。

(中略)

バブル崩壊が始まった1991年3月期は松下電器産業(現パナソニック)が首位。3位に日立製作所、5位に東芝など電機大手が6社入った。日本製の家電や半導体が世界市場を席巻していた時代だ。

しかし2010年3月期には上位20社から電機メーカーは姿を消した。韓国のサムスン電子に代表されるアジア勢に押され、低収益が常態化。かつての基幹産業の面影はない。

電機に限らず製造業は退潮ぶりが鮮明だ。上位20社のうち製造業は武田薬品工業、ホンダなど4社にとどまり、1991年3月期(9社)の半分以下。

(中略)

通信は携帯電話の普及、商社は原油など資源価格の高騰が追い風になった。だが、「両業種とも日本経済のけん引役になるのは難しい」(三井住友アセットマネジメントの宅森昭吉氏)。国内の携帯電話市場は飽和状態なうえ、資源ビジネスは自動車など製造業に比べ産業のすそ野の広がりが期待しにくいためだ。

(後略)

2010.3.10-2 日経新聞

・・・・(記事の転載ここまで)

ホンダの利益も新興国向けの二輪車販売が好調なためと聞いていますが、戦後の日本経済をけん引してきた「電機」と「自動車」業界の落ち込みには今更ながらに驚かされます。

日本の携帯電話業界は広く知られているようにガラバゴス化(日本市場でしか生存できない)していて、その出口戦略を描けずにいます。ソニーのトランジスタ・ラジオやウォークマンに代表されるように、小さく軽く高性能は日本のお家芸だったわけですが、その力を存分に発揮できる場がありません。かつてのビデオのベータマックスやパソコンのマッキントッシュの販売戦略の失敗に通じるものがあります。

一方の日本の商社は輸入した天然資源を日本市場に高く売ることにより儲けているわけですから、はたして本当に日本の国益にかなっているのでしょうか。

海外企業に負けないため、日本企業もこれからはもっと積極的に合併や買収を推し進め、豊富な資金力で新興国ビジネスのリスクを分散しながら取り込んでいって欲しいものです。

各企業が持つ個別の戦略だけでなく日本国全体の国家戦略がより重要になってくるはずです。

中国、輸出世界一が確定

2010年2月10日 日本経済新聞

中国の輸出額が2003年から2008年まで首位だったドイツを抜き、初めて世界一になったことが確定した。(中略)2008年はドイツ、中国、アメリカ、日本、オランダの順だった。(中略)胡錦涛国家主席は最近の演説で「経済成長の方式を投資・輸出主導から、消費を含めた調和のとれたものに転換する必要がある」と強調。内需拡大をマクロ経済政策の最重要課題に掲げた。

2010.2.10中国輸出

・・・・(記事の転載ここまで)

「いよいよ」と言うか「やっぱり」と言うか、中国が輸出額で世界一に躍り出ました。しばらくすると今度は「中国のGDPが日本を抜いて世界第2位の経済大国になった」という記事で賑わうことになるでしょう。

十数年前ですが、日本のある経済の専門家がこう言っていました。「中国は共産主義国家なので、経済政策も計画経済しか経験したことがないため、資本主義に精通した専門家がほとんどいない。中国政府は日本から経済の専門家を招いて盛んに資本主義の勉強をしているが、人材育成には時間がかかるので、中国経済は近いうちに破綻するだろう・・・・」

ところがどうでしょうか?

リーマンショックのあと、中国中央政府はいち早く景気対策として総額4兆元(約57.5兆円)の財政出動を決定しました。そして世界に先駆けて景気回復を実現し、いまだに高い成長率を保持しています。

それに比べて日本はどうでしょうか?

政治の混乱とともに有効な経済対策を打つこともできず、先進諸国の中でも最悪の経済状況に陥っています。中国は共産党一党独裁のため、決断が早く思い切った手を打てる、という政治面でのメリットを最大限に活かしているでしょうが、それにしても日本の経済の専門家というのは一体どうなっているのでしょうか?中国から経済政策の教えを請うたほうがいいのではないか、と皮肉も言いたくなります。

さて、下記のグラフは帝国データバンクの「TDB景気白書」の中にある「日本の輸出依存度と名目輸出金額」のグラフです。1980年から2008年までは内閣府の「国民経済計算」のデータで、2009年以降は帝国データバンクの予測です。

それによると日本の輸出は「2010年度以降では平均して+4.4%の安定的な伸びを示すと予測される」そうです。TDBの予測どおり輸出が安定した伸びを見せれば、当然輸入も増えてくるので、翻訳業界にとっても悪くはないはずです。

2010.2.10輸出依存度

「外需」概念の混乱

2009年12月11日の日経新聞、「大機小機」の欄に興味深い解説が出ていました。

・「外需」とは「輸出マイナス輸入」のことであり、「外需」=「輸出」ではない。
・したがって輸出が増えて内需があまり増えない場合であっても(つまり輸出にリードされた成長であっても)、輸出と同じように輸入が増えれば、外需の寄与度はゼロとなり、一見「完全内需主導型の経済」となってしまう。
・日本の高度経済成長期(1956~1970年度)の平均経済成長率は9.6%であり、これを寄与度に分解すると、内需寄与度が9.9%、外需寄与度はマイナス0.2%だった。
・これだけで判断してしまうと、日本の高度成長は完全に内需主導型だったように見える。しかし、この期間、輸出は14.6%の高い伸び率だったが、輸入もまた15.4%もの高い伸びとなったからだ。

記事の要旨は以上です。

つまり上記から察するに、高度経済成長期の日本は、旺盛な輸出競争力で円を強くし、結果として実質的な輸入原材料の価格を引き下げ、一段と輸出競争力を強めていく。さらに輸出は個人や企業の所得を増やし内需を拡大させ、さらに円高は一般の輸入物価を引き下げ輸入を益々促進する。安い輸入物価は旺盛な国内消費を刺激し、内需をさらに増大させていく。こうやって輸出・輸入・内需の3者が同時に増加することで経済を拡大させていった。

確かに輸出・輸入・内需の3者を同時に引き上げていくバランスが大事なのでしょうが、やはりことの初めはとにかく「輸出」ということでしょう。輸出で外貨を稼がねば所得が増えず輸入ができないし、輸出で自国の通貨の価値を上げることにより、輸入物価を下げなければ消費に弾みがつかない・・・・ということでしょう。

基本的に豊かな国が豊かであるワケは、モノやサービスを外国へ売ることにより外貨を稼ぐか、外国から観光客を呼び込むことにより外貨を稼ぐかのどちらかでしょう。日本の場合、後者は難しいでしょうから結局のところ「ハイテク日本の輸出」、「ものづくり日本の輸出」に頼らざるを得ない、という従来どおりの当たり前の結論にたどり着いてしまいます。

嗚呼、日本の電機業界、自動車業界 決算動向

2009年11月14日、日本経済新聞の朝刊から。

2009.11.16 日経新聞

(以上で記事終り)

今回の世界同時不況で一番ダメージを被った国は、米国でもなく、欧州でもなく、BRICsでもなく、まさに日本でした。

その日本のなかで圧倒的なダメージを被った産業は「製造業」でした(もっとも儲け頭の製造業の業績悪化に引っ張られて「金融業」も悪化しましたが、それでも製造業ほど悪くはありません)。

しかし、製造業の内訳をよく見てみるとその全てが悪いわけではありません。突出して悪い業種があるのです。

その第一が「電気機器業界」、第二が「自動車・部品業界」、第三位が「鉄鋼業界」です。特に「電気機業界」の悪さは、他と比較しても目を覆わんばかりです。

つまり日本の「電気機器業界」は、世界で最もダメージを被った産業だと言えます。

アメリカのバブル個人消費を当てにした、北米輸出に偏りすぎた企業方針の“つけ”が一挙に噴出したと言わざるを得ないでしょう。

来年3月期の決算予想では、他の産業が増益あるいは黒字転換を果たす中、「電気機器業界」だけは依然、巨額の赤字決算となる見通しです。

韓国企業等、他の新興国企業の追い上げも激しいため、今後も苦戦は避けられません。

欧州や韓国や台湾の企業に比べて日本は技術では決して負けてはいません。むしろ優秀な技術者の質と量では他国を凌駕しているはずです。それなのになぜ負けるのか?日本が今負けているのは、経営者の戦略だけでしょう。

今こそ再び日本の電機業界に“技術立国日本”の灯を点す、戦略的経営者の出現を強く望んでやみません。

銀行再編 業界再編

2009年11月15日(日)の日経新聞の記事から

2009.11.15日経新聞

上の図を見るとずいぶんと懐かしい名前がならんでいます。確かに昔は沢山の「大手銀行」がありましたね。

それも今や気がついてみると、たったの6グループに再編されてしまいました。これは欧米の金融機関が合併・買収を繰り返し、巨大化していく流れに対抗すべく、日本でもどんどん巨大化が進んでいったからでした。

しかし、日経新聞の記事によると昨今の欧米の金融機関では「昨秋以降の金融危機をきっかけに、金融機関の巨大化には見直しの動きが広がっている」そうです。

「組織が巨大化し過ぎて管理がしきれない」のだそうですが、あげくのはては政府にとって金融機関は「大き過ぎてつぶせない」組織になってしまったからだとは、あきれはててものが言えません。

日本でもアメリカでもそうですが、バブルがはじけて未曾有の経済危機に直面した時、自国の経済を守るためには、なにがなんでも自国の金融機関を守らねばならないと実に手厚い保護をし続けてきました。

そのうえ国際競争に勝ち、国内産業を守るためには巨大な金融機関が必要との理由でどんどん合併・買収を奨励してきました。

そのあげくのはてが「大き過ぎてつぶせない」から考え直そうとしている、とは実に無責任な話です。

「組織が巨大化し過ぎて管理がしきれない」などは最初からわかっていたはずですが、この見直しの動きが本格化すると他の産業への影響も出てくるかもしれません。

「大きいことはいいことだ」・・・・・・・、これは高度経済成長期の日本で流行ったキャッチコピーですが、未曾有の経済成長と未曾有の経済危機を迎えた21世紀初頭の世界経済に変化が現れるのでしょうか?

今後も「規模の利益の追求」と「グローバリゼーション」の流れは変わらないとは思いますが、それでもしっかり小規模ビジネスは生き続けるでしょう。

製造業等のモノを作る業界、小売業等のモノを売る業界、金融業等のカネを貸す業界においては、「規模の利益の追求」はある程度避けられないでしょうが、サービス(役務)を提供する事業においては、その流れはやはり限定されるでしょう。

30年も40年も昔から「業界再編」という言葉がささやかれてきました。印刷業界、出版業界、新聞業界、広告業界・・・・・・等々、いくらでもあります。翻訳業界もそうでした。しかし、大きな組織の枠に収まりきらない人間はいつの時代もどこの世界でも必ずいて、その数は決して少数派ではないからです。

輸出入総額と翻訳業界

日本の貿易額(輸出入総額)が翻訳業界と密接な関係にあることは言うまでもありません。

財務省貿易統計のページ(→ http://www.customs.go.jp/toukei/info/index.htm)から数字を拾ってきて、Excelでグラフを作ってみました。

まずは1950年から2008年までの「輸出入総額」を年別にグラフ化したものを見てみましょう。

年度別輸出入

日本の貿易額は戦後ほぼ一貫して成長を続けていますが、中でも1972(昭和47)年から1985(昭和60)年までの13年間と2004(平成16)年から2008(平成20)年までの5年間の急上昇が目立ちます。

1972年におきた出来事を調べてみました。

1. 札幌オリンピック開催
2. 連合赤軍の浅間山荘事件
3. 川端康成自殺
4. 沖縄返還
5. 田中角栄が総理大臣になり「日本列島改造論」を発表
6. ミュンヘンオリンピック開催
7. 田中首相、中国を訪問
8. 中国政府寄贈の2頭のパンダが上野動物園に現る

当時私は中学2年生~3年生だったのですが、これらの出来事が昨日のことのように思い出されます。なにせあの「列島改造論」が出てきた年ですから、世の中全体がイケイケドンドンだったことは容易に想像できます。そのムードの中で日本の輸出額は急上昇し、稼いだ外貨でどんどん輸入額も増えていったのでしょう。

一方の1985年ですが、忘れもしません。プラザ合意の円高ショックが始まった年だからです。日本の輸出企業はあまりに急な円高に対応ができず、景気は低迷し、翻訳業界にも深刻な不況が訪れました。

しかし強い円は結果的に日本の国力を高め、安くなった輸入品は人々の消費意欲を大いに刺激し、未曾有の大好景気(バブル経済)を作り出します。

改めてこのグラフを見てみると、バブル経済(87年~90年)の間、日本の輸出入総額は低迷していたことがわかります。円高による内需拡大は、あえて日本の貿易増大を必要としなかったのでしょう。

つまり「貿易立国日本」は貿易が低迷しても、内需さえ拡大できれば、国民生活は改善できるということを示唆しています。現在の日本とは大違いです。

1990年のバブル崩壊から失われた10年が始まります。その間日本の景気は低迷し、他の先進国から日本だけが置いてけぼりにされます。当然、日本の貿易額も低迷します。

しかし、今世紀に入った頃から、特に中国経済の急成長とアメリカのバブル消費によって日本の貿易額は再び急上昇を始めます。翻訳業界にも再びブームがやって来たわけです。

そして2008年9月のリーマンショックに始まった「世界同時不況」は、世界経済に大打撃を与え、日本の輸出産業もかつてないほどのダメージを受けることとなります。

下のグラフは、2007年10月から2009年8月までの日本の輸出入総額の月額(速報値)を示したものです。やはりリーマンショック後、貿易額全体が“つるべ落とし”になり、その後底を這っていることがこの図を見てもよく分かります。

月別輸出入

最後に「日経平均株価」のグラフを下記に掲載しておきます。1989年12月にピークをつけた株価は直後に急降下し、その後長期にわたり低迷を続けます。

日本の輸出入総額のグラフもこの「日経平均株価」のようにならないよう願っていますが、その可能性も高いと感じています。

今後企業のグローバル化はますます加速し、業務のアウトソーシングも積極的に行われていくはずです。したがって世界的に見れば翻訳業そのものの需要は減ることはないと考えていますが、同時に日本の翻訳業界は、厳しい構造不況の中、絶えざる革新を続けていかなければ、厳しい生存競争の中で生き残っていけなくなるでしょう。

日経平均株価

電子部品 受注上向き IT景気復調示す

2009年10月8日、日本経済新聞の朝刊から。

「電子部品の受注が回復傾向にある。7~9月の京セラや村田製作所などの受注額は4~6月に比べ1~2割増加し、2四半期連続でのプラスとなった。日本電産の出荷数は過去最高。電子部品は景気の先行指標とされ、世界のデジタル景気が昨秋以降の落ち込みから脱しつつあることを示す。

(中略)

ただ先行きには不透明感が強い。日本経済新聞社が電子部品メーカーなど30社を対象にした『電子部品景況調査』では、10~12月の景況感が『良くなる』と答えた企業は40%にとどまる。(後略)」

2009.10.8 日経新聞

(以上で記事終り)

この記事によると京セラ、TDK、日本電産、村田製作所などの電子部品メーカーの7~9月期の受注額は回復傾向にあるが、それは主に中国向けの受注が増えているからであって、依然日本や米国市場向けは前年同期を割り込んでいる、とのことです。 

また、半導体需要が多く見込めるパソコンに関して言えば、ネットブックと呼ばれる低価格ノートパソコンの市場が拡大しているほか、マイクロソフトの新OSである、ウィンドウズ7の発売に備えて、メーカーが生産体制を拡充しているとのこです。

ただ「Microsoftの次期OS発売を目前に米eWEEKが行った聞き取り調査の結果は、誰もがWindows 7を待ちわびているといった状況ではなかった。」(この記事の詳細はこちら → ITmedia News)という声も聞かれるので、マイクロソフトの新OSが一挙に世界景気を盛り上げる、とはなかなか考えにくい状況です。

日本の翻訳業界への影響という点で考えれば、世界のデジタル景気は最悪期は脱したが、先行きは不透明で、結局は米国の景気回復次第というごく平凡な答えに行き着いてしまいます。

「対外直接投資」と翻訳業界

2009年9月8日、日本経済新聞1面トップ記事からの抜粋

「中国での販売 日本抜く 製造業、依存高まる

自動車や建設機械の販売で日中逆転が起きている。日産自動車は1~7月の中国での版台数が日本を抜き、建機ではコマツの2009年4~6月の中国売上高が地域別のトップになった。大手メーカーは対外直接投資を米欧中心から中国など新興国に切り替えており、収益面でも対中依存は高まっている。日本を含む先進諸国が伸び悩むなか、中国が日本メーカーの最重要市場になってきた。」

2009.9.8日経(1)
2009.9.8日経(2)

(以上で記事終り)

「対外直接投資」の意味についても同じ日の日経新聞に説明が出ていました。

「国内企業が海外で実施する投資のこと。日本銀行の調査では日本の製造業による1~3月の対外直接投資は米欧向けが激減。7,848億円となり対前年同期比48%減少した。一方で対中国、対インド、対ブラジルは前年同期を上回った。日本の製造業は投資先を中国など成長余力のある新興国に切り替えつつある。

中国など新興国向け投資では、コスト圧縮や現地需要の獲得を狙った日本からの工場移転が目立つ。もたつく先進諸国を尻目に景気回復が期待される新興国市場で、他社に先駆けて存在感を示せるかどうか。これが今後の成長力を左右するというコンセンサスが、日本企業の間にうまれつつある。」

日本製造業の海外への工場移転に関しては、ブログ等で何回か指摘してきましたが、大変憂慮すべき問題です。今回の不況に円高が加わり多くのメーカーがその製造拠点を新興国へ移す準備を始めています。まさに「産業の空洞化」が加速していきます。

さらにそれに追い討ちをかけるように今日本では「製造業への派遣禁止」を法制化する方向へ向かっています。「不況で首を切られた派遣社員がかわいそうだから、製造業への派遣を禁止すれば、きっとメーカーは派遣社員を正社員として雇うだろう」と。

はたしてそうでしょうか?私はこの規制は「産業の空洞化」を助長させるだけだと考えています。

ソフトブレーン創業者の宗文洲氏の説によると、「日本はいつのまにか江戸時代の身分制度に逆戻りした国家になってしまった。『士農工商』ならぬ4段階の身分制度、つまり『正社員、契約社員、パート社員、派遣社員』だ。」

私も宗さんと同感ですが、派遣社員を規制する前にもっと日本の労働人口の流動化をはからねばなりません。つまりかつて明治政府が行ったように『士農工商』制度を廃止して下克上や転職がしやすい社会に変えていくのです。

ただ現実的になって、冷静に海外事情を分析すれば、これからも企業のグローバル化は増えることはあっても減ることはないでしょうから、製造業の海外移転を憂えたって実はしかたがないのです。世界の大きな流れは止めようもないからです。

このグローバル化の波そのものはわが翻訳業界にとって大変良いことなのですが、日本という国家そのものが弱体化してしまっては本も子もありません。

かつて1970年代、経済低迷に苦しんだ米国は製造業に見切りをつけ、ソフトウェアやコンテンツ産業を重点的に育成し、金融・エネルギー・食料政策を重視して、かつ知的財産の徹底した保護を行いました。それにより「ジャパン・アズ・No.1」を引き摺り下ろす国家戦略を打ち立てたのです。

グローバル化の波に乗り遅れたかつての「ものづくり大国」日本が、ただの「斜陽国家」に落ちぶれることのないよう、正しい方向へ舵をきって欲しいものです。

具体的には、環境、エネルギー、農業等の“新しい産業”への国家ぐるみの重点投資と、いまやその公共投資の額で世界の三流国になりはててしまった国民教育への重点投資です。

「Google 翻訳」 は2年前から進化したか?

2007年5月から7月にかけ、Web上の無料翻訳ソフトの実力を試してみたことがありました。 → 「無料翻訳ソフトの実力くらべ」

下記の5つの代表的な翻訳ソフトを選び、同じ文章を翻訳させ比較しました。これらは全て異なる翻訳エンジンを搭載しています。

【エキサイト翻訳】
【Yahoo!翻訳】
【翻訳@nifty】
【Google言語ツール】
【OCN言語ツール】

かつてこの5つの翻訳ソフトの中で、Google翻訳は常に評価が最低でした。「β版」とはっきりうたっていたので、それもしかたのないことだったのでしょう。「あのGoogleのことだから近い将来、すごい翻訳ソフトを開発するに違いない」・・・・・そう思ったものです。

さて、あれから2年の歳月が経ち、「Google翻訳」から「β版」の表示が消えました。どの程度の進化を遂げているのか検証してみましょう。

10個の英文を日本語に翻訳してみました。

【英  文】
1. Right now he’s going out with a girl who’s a former Miss California.
2. A woman whose husband is a well-known doctor was killed by someone yesterday.
3. The woman I’m working with is very difficult to get along with.
4. McDonald’s is an American fast-food chain whose popularity has spread all over the world.
5. The neighborhood bank whose business started to drop off is now offering special services to attract new customers.
6. This is the last product I’d have expected to sell like crazy.
7. All you’ve got to do is read from Page 10 to Page 20.
8. This is the bank where one of my uncles used to work as branch manager.
9. See to it that everything is ready by the time he gets here.
10. The reason why I chose to study American studies was because I knew that a good knowledge of America was mandatory for studying English through and though.

【旧 Googleによる翻訳】
1. 今彼は前のさんであるカリフォルニア女の子と出かけている。
2. 夫が有名な医者である女性は誰かによって昨日殺された。
3. 私がと働かせている女性はうまくやり非常ににくい。
4. マクドナルドは人気が世界中で広がったアメリカのファーストフードのチェーン店である。
5. 新しい顧客を引き付けるために落ち始められるビジネス今福祉業務を提供している近隣銀行。
6. これは私が狂気のように販売すると期待しよう最後のプロダクトである。
7. あなたがするなるのは読まれたページから20ページからだけである10。
8. これは私の叔父さんの1つが支店長として働くのに使用した銀行である。
9. 彼がここに着くまでにすべてが準備ができていることをそれに見なさい。
10. 私がアメリカの調査をなぜ調査することを選んだか理由はアメリカのよい知識は英語をそしてしかし調査するために必須だったことを私が知っていたのであった。

【新 Googleによる翻訳】
1。今の彼は、元ミスカリフォルニアの女の子と付き合っている。
2。夫はよく知られている医師が女性の人が23日に殺された。
3。私が働いている女性に非常に沿って取得することは困難です。
4。マクドナルドは、アメリカのファストフードのチェーン店を持つ人気を全世界に広がっています。
5。そのビジネスは今、新しい顧客を引き付けるための特別なサービスを提供し降ろしを始めた近所の銀行。
6。これは私が狂ったように売れることを期待しただろう、最後の製品です。
7。やらなければいけないことを得たページ10ページ20から読み取られます。
8。これは、銀行はここでは私の叔父の支店長として働いていました。
9。それには、すべての時間を彼はここになるの準備ができてしてください。
10。私は、アメリカの十分な知識を英語を介しても勉強のために必須を知っていた理由はアメリカの研究を検討することを選択した。

【人間による翻訳】
1. 今彼は元ミスカリフォルニアの女性と交際しています。
2. 夫が有名な医者である女性がきのう誰かに殺された。
3. 私が一緒に働いている女性は、仲良くやってゆくのにむずかしい人なんです。
4. マクドナルドは人気が世界中に広がっているアメリカのファーストフード・チェーンです。
5. 営業成績が落ち始めた近所の銀行が、新しいお客をひきつけるために特別サービスをしている。
6. これが飛ぶように売れるとは私は夢にも思わなかった。
7. あなたはこの本を10頁から20頁まで、読みさえすればよいのです。
8. これは私のおじさんの一人が、元支店長として働いていた銀行です。
9. 彼がここへ来るときまでに、全部準備ができているようにしてください。
10. 私がアメリカ研究を選んだ理由は、アメリカをよく知ることが英語を徹底的に勉強するのに不可欠であることを知っていたからです。

さて、どうでしょうか?

ざっとみたところ、【新 Googleによる翻訳】は、「進化」しているどころか「退化」している印象すらあります。

また、【新 Googleによる翻訳】では、項番の後の「.」(コンマ)が「。」に変わっていますが、これはいただけませんね。

Googleは現在Websiteを瞬時に翻訳するアイコンをツールバーに設定したりして、「翻訳」業務に一生懸命取り組んでいる模様です。

また、”Google Translator Toolkit” という新サービスも公開しています。

「米Googleは9日、翻訳支援のためのWebアプリケーションツール『Google Translator Toolkit』を公開した。機械翻訳技術「Google Translate」や、翻訳家に使用されている翻訳メモリデータを使用し、人間による翻訳を支援する。」

→ 詳しくはこちら

ただし、このサービスに関しては著作権や機密保持の問題も絡むため、社団法人日本翻訳連盟(JTF)のトラブル防止委員会では、各メンバーに注意するよう呼びかけています。

以下は、JTFからの「注意を呼びかけるメール」の写しです。ご参考までに。

Google Translator Toolkitの使用に関する注意

6月9日、米GoogleがGoogle Translator Toolkit(以下GTT)と呼ばれるWebアプリケーションツールを公開しました。GTTの仕組みでは、ユーザがアップロードした原文と訳文が、翻訳メモリに登録するしないに関わらずデータベースに保存され、第三者によるアクセスが可能な状態に置かれます。したがって、クライアント (発注元企業、翻訳会社、ローカライズ会社など)との間でやり取りされる文書をGTTで処理すると、著作権法や秘密保持契約に抵触する可能性があり、最悪の場合、訴訟につながる恐れすらあります。

以上、GTTの使用には上記のようなリスクがあることをお知らせするとともに、十分に 留意するようお願いいたします。」

「子供だまし」のトリック

2009.7.25 日経(3)

世界のパソコン出荷台数

上記2つの棒グラフをご覧ください。

上のグラフは、2009年7月25日の日経新聞朝刊の記事で使われていた「世界のパソコン出荷台数」のグラフです。下のグラフは、日経のグラフと同じ数字を使って私がエクセルで作り直したものです。

どうでしょうか?同じ数字を使ったグラフにも関らず、随分とイメージが違いますね。上のグラフは、グラフ下部に白線を入れた「中抜き」を行っているため、09/1~3の出荷台数が2008/7~9に比べ、まるで3分の1に減ったかのように見えます。

これは新聞社各社が多用する手法ですが、私は子供の頃からこの手のやり方にいつも違和感を持っていました。「なぜグラフに中抜きを行うのだろう?」と。

新聞社としては、数字の羅列よりもグラフのほうが、ビジュアル的に訴える力が強く、より分かりやすくなるので、あえてグラフを使うのでしょう。それはそれで構わないのですが、なぜそこで「中抜き」をしなければならないのでしょうか?

「中抜き」を行うことにより、全体像が見えにくくなります。上記の例で言えば、09/1~3の出荷台数は2008/7~9に比べ、せいぜい20数%の下落にもかかわらず、「中抜き」を行うことによりまるで70%ほども激減したかのように、イメージ的には捉えられます。

読者は感覚的に「こんなに激減しているんだ」というイメージを頭に強く焼き付けます。そこがマスコミの狙いなのです。テレビの映像でもそうですが、ビジュアル的に入ってくる情報は、理屈ぬきのイメージとして記憶の片隅に残り続けます。

マスコミは常にセンセーショナルな話題を追い求めています。そのために毎日躍起になって働いていると言っても過言ではないでしょう。そこでこのようなトリックを使って、少しでも情報に「お化粧」を施すのです。

このようなグラフのトリック以外にも、もっと多用され影響力の大きいのが「見出しのトリック」です。「モノは言いよう」ですから、裏から見るか、表から見るかで印象は大きく違ってきます。

たとえば、健康診断の結果で、「健康者50%超」という見出しを持ってきた新聞と、「成人病疑い35%も」という見出しをもってきた新聞とでは、同じ健康診断の結果にもかかわらず、読者のイメージは大きく異なります。

「モノは言いよう」と言う意味では、翻訳業はまさに「モノは言いよう」な業種ですから、このような子供じみたマスコミのトリックには惑わされないようにしたいものです。