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シェール革命、エクソンCEOの告白(NY特急便)

2012.06.28 日経電子版

「正直に言おう。我々は完全に過小評価していた」。27日朝、ニューヨーク。「北米の新たなエネルギー・パラダイム」と題した講演の冒頭、米石油最大手エクソンモービルのレックス・ティラーソン最高経営責任者(CEO)はこう打ち明けた。

情報量や分析力では誰にも負けないはずの業界の盟主が「過小評価」していたものとは何か。頁岩(けつがん=シェール)と呼ばれる地中深くの岩盤層に閉じ込められた天然ガスや石油の潜在的な価値と、それを回収する技術の進歩だ。

「北米のシェールの可能性は認識していた。だが、そこからガスや石油を回収する技術がこれほど効果的で、しかもこれほど素早く普及するとは思っていなかった」。「水圧破砕」と「水平掘削」という手法を組み合わせた採掘技術を編み出したのは、米エネルギー業界以外では、ほぼ無名の独立系開発会社だった。

(以上で記事終わり)

2012.06.28 シェールガス
アメリカの天然ガス生産量の推移、実績と予測
出典:Annual Energy Outlook 2011 (縦軸:兆立方フィート、20兆立方フィート=5663億立方メートル)USエネルギー省エネルギー情報局 (DOE/EIA)のエネルギー見通し年鑑2011年版

・・・・(記事の転載ここまで)

「シェールガス」のみならず、「シェールオイル」の大増産が米国内での原油価格を下落させているようです。

また、「シェールガス」の増産が化学系肥料などの値下がりを促し、トウモロコシなどの生産コストを低減させる要因になってきているようです。

現に一部米国内では、「シェールガス効果」により電気料金が大幅に下げられた地域も出始めています。

この「シェールガス革命」は今後の世界経済に大きな影響を与えるでしょう。

天然資源をほとんど持たない国、日本はかつて石油や鉄鉱石を求めて中国や米国相手に戦争を始めました。

逆に戦後の日本は「無資源国」の立場を活用し、デメリットをメリットに変え、経済を大躍進させました。

つまり、なまじっか資源産業を持つ欧米諸国は、自国のエネルギー産業を保護するため、否応なしにコストの高い自国の資源を使わざるを得ませんでした。

その点ほとんど天然資源を持たない日本は、なんの迷いもなく、世界で一番安い天然資源(原油、天然ガス、鉄鉱石、ウラン、ボーキサイト、天然ゴム等々)を買い求め、国際競争力を高めていったのです。

話は少しずれますが、19世紀、中国は豊かな天然資源に恵まれていたため、欧米列強からすればよだれがでるような国でした。

それに反して日本は、コメとミカンしかとれず、天然資源を持たないため、欧米列強からみれば、なんの魅力もない国でした。そこで「ジャパンン・パッシング」して(日本を通り越して)中国を植民地にし、よってたかって食い物にしたのです。

つまり19世紀においても、戦後においても「無資源国、日本」は、資源がないから得をしたのです。

今度もうまくいくでしょうか?

かつてない勢いで新興国経済が発展し、爆発的に増え続ける世界の人口を考えると、「資源がないから得をする」などということはもうないでしょう。

日本は、「省エネ技術」や「再生可能エネルギー」の分野で地道に研究し、実績をあげ、エネルギーバブルでタガの緩んだ諸外国との差別化をしっかり図っていくことが大切だと私は考えます。

電力不足に東西格差の可能性も

日経ビジネス 2012年4月9日号「電力維新」

(以下、記事のなかから抜粋)

SMBC日興証券のエコノミスト、宮前耕也氏の推計によると、原発が全基停止のままの場合、今夏の東日本は最大電力需要に対して7.4%の不足で、西日本は5.1%の不足(下のグラフ参照)。鉱工業生産は全国で1.7%押し下げられる可能性があるという。

2012.4.9 日経ビジネス

問題は他にもある。

その1つは、この夏が予想以上の猛暑となり、節電ではなく昨年3月のような計画停電(一斉停電)となるケース。その場合、メーカーは休日の変更による生産日の変更や作りだめなどの対策が取りにくく、影響が今の予想よりも大きくなるのは必至だ。

2つ目は、東西間に電力供給格差が生じる可能性である。定期検査休止中の原発のうち、既にストレステストが終わっているのは16基。このうち先頭をいく「大飯3,4号機が再稼働となれば、東日本より原発への抵抗感の低い西日本の原発が再稼働へ動く可能性がある」(宮前氏)というのである。

仮に西日本が一部でも原発を再稼働すると、電力不足に東西間格差が生じることになる。となれば、東から西へ生産拠点を移したり、サプライチェーン全体の変更を余儀なくされる企業が出てくる恐れもあり、経済の新たな波乱要因になりかねない。

電力・エネルギー改革は先の話ではなく、喫緊の課題なのだ。

(以上で記事終わり)

今年の夏、東日本から西日本へ電力を求めて企業が移動する可能性もある、ということですが、つい最近まで世界を席巻していた「ジャパニーズカンパニー」が「電力難民」となり、日本中を右往左往する様なんて想像もしたくありません。

20年以上前の話ですが、インドに詳しいある方がこのような話をしてくれました。

「インド人は、インド政府をまったく信用していないので、インド政府が保証するなどという契約書には見向きもしない。しかし、日欧米の有名企業が保証するとなると、突然態度を変えて、ニコニコしながら契約に応じてくる。これはインドに限らず、発展途上国はどこも同じだけどね」と言っていました。

当時日本では、「日本政府が保証してくれるのであれば絶対安心。民間企業の保証だけでは信用できない」という考え方が主流でした。

したがって、この話を聞いて「やっぱり、途上国ってしょうがない国なんだな」と思う日本人も多かったようです。

さて、現在の日本です。

原発問題に関して、政府の公式発表や調査結果を信用する日本人はどれだけいるでしょうか。

「複数の民間シンクタンクによる調査結果ならある程度信用できるが、経産省が実施した調査結果など誰が信用できるか」という雰囲気が日本中に蔓延しているように感じます。

まさに日本は昔の「発展途上国」と同じになってしまったわけです。

今年の夏、日本の電力不足は、尻に火がついた状態なのですが、政府の公式見解そのものに国民が疑心暗鬼を生じているため、迷走してなかなか決まりません。

喫緊のエネルギー政策と中期、長期に分けたエネルギー政策を早く確立してほしいものです。

私が高校生だった1973年、「オイルショック」が勃発しました。

人々はトイレットペーパー探しに狂奔し、狂乱物価と共に多くの企業が倒産しました。

大方のマスコミは「日本は石油の99.9%を輸入に頼っている。もう日本に未来はない」と語っていました。

しかし、あの絶望的な「オイルショック」でさえ、日本人は乗り越えてきたのですから、きっと今回も乗り越えていけると信じています。

原発輸出 首相表明へ ベトナムと首脳会談

2011年10月28日 朝日新聞朝刊

野田佳彦首相は31日、ベトナムのズン首相と会談し、原発輸出を表明する。菅前政権は昨年10月、原発受注の見返りとして、政府の途上国支援(ODA)によるインフラ整備を確約しており、改めて輸出方針を伝える。福島第一原発事故後の輸出再会だけに慎重論も根強く、ODA活用をめぐって議論を呼びそうだ。

(中 略)

日本政府関係者によると、ベトナム政府は昨年10月当時の菅政権に対し、ハイテクパークや南北高速道路など優先度の高い7事業の支援を確約すれば、原発とレアアースの強力を前向きに進める意向を伝えていた。7事業とも原発関連施設と直接関係はない。

(後略、以上で記事おわり)

2011.10.28 朝日

要するに、ベトナムに資金援助すれば、その見返りとして、レアアースを発掘し、それを日本へ供給してあげるし、また日本が輸出したがってる原発も買ってあげますよ、・・・・・ということです。

いまだ原発事故の後処理で四苦八苦している日本が、自国の難題を解決することもなく、他国へその難題の種を売って金儲けしようなどとはとんでもない、というのが日本人の素直な感想でしょう。

ところが事情はなかなかそうも単純ではないようです。

現在ベトナムは、中国に次ぐ世界の工場を目指していますが、電力不足が海外企業誘致の最大のネックとなっています。

海外資本を呼びこめなければ、国内のインフラ整備も進まず、ますます経済発展から取り残されてしまいます。

ベトナムでは毎年15%も電力消費が伸びながら、天候に左右される水力発電に発電量のほぼ半分を依存しているため、昨年は工業団地でも1日2時間以上の計画停電が実施されました。

ベトナム政府は5年ごとの電源開発計画を立てていますが、資金不足から06~10年の計画達成率は7割に過ぎず、外資呼び込みなど国の成長維持のためには電源開発が喫緊の課題となっているのです。

「そんなに経済発展する必要はないんじゃないの?」と考えるのは、すでに経済的に発展してしまった日本人の発想のようです。

途上国からすれば、「日本は今までさんざん環境汚染を撒き散らしながら、豊かになってきたくせに、私たちが豊かになるために環境汚染しようと余計なお世話だ」となるのです。

実際、ベトナムの隣国、中国では現在建設中の原発を含めて、2030年までに193基を新規増設する予定です。まさに原発大ラッシュです。

悲しいかなこの流れを変えるためには、戦争を始めるしかない・・・・・・、というブラックジョークに行き着いてしまいます。

もちろん戦争を始めるなどは論外なので、結局はなんとか「安全な」原発作りを目指し、日本国内は原発を作らず、代替エネルギーの開発を急ぐ、というあまりにも常識的な結論にならざるを得ません。

まあ、いずれにしても、中国の賃金高騰問題や、タイの洪水被害などにより、ベトナムの安く、豊富で、優秀な労働力を求めて、今後ベトナムへの移転を検討する企業が数多く出てくるのは間違いありません。

私たち日本の翻訳業界もベトナムからは目が話せません。

日本の新エネルギーと翻訳業界

今後日本での新規の原発建設などは論外と言えるでしょう。

そうしたなか、“新エネルギー”問題が、がぜん脚光をあびることになりますが、エネルギー問題に詳しい東京大学名誉教授、安井至氏の記事が出ていたので、下記にその要旨をまとめてみました(週間ポスト2011年4月8日号)。

(以下記事の要旨)

今後の本命となる“自然エネルギー”を期待値の大きいもの順にならべると下記のようになる。

1. 地熱発電

火山活動による地熱で蒸気を発生させて発電する方法。現在日本には18ヶ所の地熱発電所があり、合計で原発1基の約半分の発電容量をまかなえる。

2. 中小水力発電

河川や農業用水などを利用して発電する方法。すでに日本のほとんどの大河川には大規模ダムが建設されているので、小さな河川で細かくエネルギーを拾う。

3. 洋上風力発電

陸上ではなく海上での風力発電のため、風向・風力が安定しやすく、あてにできる電源になる。

4. 風力発電太陽光発電

ヨーロッパやアメリカなどの大陸諸国と違い、島国である日本は風向きが安定せず、また雨や雪が多いため、必要なときにあてになる電源とはならない。

しかし、将来的に上記の“自然エネルギー”を全て整えたとしても、1次エネルギー消費量の約8%しかまかなえず、現在の原発での供給量の約半分ほどにしかならない。しかもそこまで設備を整えるためにはかなりの時間を要する。

したがってこれまでのような“電気依存の生活”は破綻するので、“自然エネルギー”の開発と同時に“極端な省エネ”が重要になってくる。

もはや都心での“オール電化”や“電気自動車”などは机上の空論と化す。

(以上、記事終わり)

1973年に始まったオイルショックは、日本の国民生活や経済活動に大きな変化を与えました。

当時高校生だった私もはっきりと覚えていますが「石油の99%以上を輸入に頼る日本の将来はお先真っ暗」と世論マスコミの多くは悲観論一色でした。

しかし、後にふり返ってみれば、そこから「技術立国日本」や「ジャパン・アズ・ナンバーワン」の礎がスタートしたのです。

官民一体となり、髪を振り乱して、必死の「省エネ作戦」を行ったため、気がついたら世界有数の省エネ大国となっていました。

エネルギー事情が変われば国民生活が変わり、国民生活が変われば、企業活動が変わります。そして企業活動が変われば、提供される製品やサービスが変わり、当然そこから生まれてくる技術も変化を遂げることになります。

必死になって生み出された技術はやがて国の財産となり、将来海外へ輸出されることになるでしょう。鉄も車もウォークマンも新幹線もそうでした。

今で言えばオール電化は、都市ガス+SOFC(固体酸化物燃料電池)に替わり、電気自動車は、ふたたびハイブリッド車に回帰し、照明は徹底的にLEDに替わっていくでしょう。

これらはほんの一部の例に過ぎませんが、技術の変化は必ずや日本の翻訳業界にも大きな影響を与えることになるでしょう。

世界を揺らす「福島ショック」 原発ルネサンスの逆風に

以下は、2011年3月27日の日本経済新聞の記事からの抜粋です。

(以下 記事の抜粋)
「東日本大震災で福島第1原発が危機に陥ったことは、各国の原発政策を揺さぶっている。

<ドイツ>

・1980年以前に稼動を始めた古い原発7基の一時停止を発表。
・既存原発の稼動期間を延長する計画を凍結。

<イタリア>

・原発の復活宣言をしたベルルスコーニ政権は、復活計画の凍結を決定。

<ギリシャ>

・隣国のトルコに対し、トルコ初の原発建設計画の中止を求めた。

<トルコ>

・日本勢が受注を求めている原発建設計画が、福島の事故で不透明感が強まっている。

<中 国>

・国内の全ての原子力施設に対し緊急の安全検査を実施。
・今後5年間に発電能力4000万キロワット相当の原発計画に着手する予定だったが、その承認を当面中止。

<ベトナム・インド>

・日本が原発を売り込もうとしているベトナムやインドでも、膨らむエネルギー需要と原発の安全性への不安がせめぎあう構図が急浮上している。

1979年の米スリーマイル島原発事故と86年のチェルノブイリ原発事故で、原発を推進しようとの機運は世界的に後退した。近年地球環境問題への関心の高まりとともに温暖化ガスの排出量が少ないエネルギーとして再び関心が高まった。

これに新興国を中心としたエネルギー需要の急増と原油など資源価格の高騰が加わり、「原発ルネサンス」という言葉が生まれた。エネルギー政策の柱の一つとして、着実に再評価が進んでいたといえる。

「福島ショック」がルネサンスに大きな打撃となるのは間違いないだろう。」
(記事の抜粋 終わり)

今回の大震災と大津波が日本経済に与えた影響は、言うまでもなく莫大なものです。しかし、地震と津波の経済的被害だけであれば、幾度の大震災や戦後の焼け野原からさえも、果敢に立ち直ってきた、わたしたち日本人は、まちがいなくまた急速な復興をはたすことができるでしょう。

しかし、今回の震災被害は、「地震」と「津波」に加えて、「原発の放射能」と「風評被害」という4重苦を私たちに与えることになりました。

日本政府が21世紀の日本の戦略的輸出コンテンツのひとつとして掲げている「原子力発電」の輸出に対し、急ブレーキがかかることは必至でしょう。

そればかりでなく、同じく経済政策の重要課題としている「日本への外国人観光客の誘致」にも深刻な打撃を与えるでしょう。また、近年海外で脚光を浴び始めている、日本のコメや果物といった食料品や日本酒などの飲料にも当然影響が出てくるでしょう。

食料品ばかりでなくすでに日本の工業製品にも「風評被害」が出始めているという噂もあります。当然今後の日本の翻訳業界に与える影響も少なかろうはずはありません。

やっとリーマン・ショック後の大不況から立ち直りかけた日本経済を、この「平成の大津波」はどこへ流そうとしているのでしょうか?

非常にくやしいことではありますが、今はとにかく「原発問題」の一刻も早い収束を、ただただ「外野席」から見守るしかありません。

日本が資源大国になる? メタンハイドレートの商業化

経済評論家今井徴氏の講演CD(日経ベンチャー2008年10月号)の中に大変興味深い話がありましたので、下記にその要点をご紹介させていただきます。

・ メタンハイドレート(天然ガスがシャーベット状になったもの)が、低温・高圧状態で日本近海1,000メートルの海底に眠っている。

・ メタンハイドレートを商業化するためには、1バレル当たり77ドルが採算ライン、と言われているが、近年の原油相場の高騰により、俄然現実味を帯びてきた。

・ 日本は世界有数のメタンハイドレート保有国で、世界の埋蔵量の半分が日本近海にあると言われている。

・ なかでも南海トラフと呼ばれる海域(静岡県から和歌山県沖)に大量に埋蔵されているので、他国との領域争いもない。

・ この8月、アメリカのエネルギー省と日本の経済産業省とが話し合い、共同でメタンハイドレートを商業化することが決まった。

・ 日本では、石油資源開発がその鉱区のほとんどをおさえている。また、三井海洋開発という会社がテスト用の色々な機器を作り、世界中へ販売している。

・ メタンハイドレートの生産開始は、20012年からで、本格生産は2018年からとなっている。

・ このプロジェクトが成功すれば、日本が資源大国に生まれ変わるばかりでなく、その生産技術や商業化技術を世界各国へ輸出するようになり、日本の経済構造そのものが大きく変わる可能性がある。

今井徴氏の講演は以上ですが、関連する記事が新聞にも出ていました。

「経済産業省は9月29日の総合資源エネルギー調査会石油分科会で、日本の領海と排他的経済水域(EEZ)での海洋エネルギー開発の骨子案を示した。石油・天然ガスでは、探査船を使って2008年度から11年間で約6.2万平方キロメートルを立体的に探査する。さらに有望な地点を選定し、機動的にボーリングを実施する。

次世代エネルギーとして期待され、排他的経済水域の埋蔵量も多い”メタンハイドレート”は2018年度までに技術整備や経済性、環境への影響を検証し、将来の商業化を目指すことを打ち出した。2015年度までアラスカなどの永久凍土地帯での陸上産出試験の継続なども盛り込んだ」
(2008年9月29日の日経新聞)

ところが、この夢のような話にもまだまだいくつかの問題点が残っているようです

『Nature』誌の2008年5月29日号に掲載された論文によると、メタンハイドレートは「石油に代わる新エネルギーとして期待される一方、地球温暖化を激化させる脅威をはらんでいる」(→メタンハイドレートの二面性)とのことです。

しかし、この「日本を資源大国へ変貌させる」、という夢の実現のためには、私自身も一人の日本人として、おおいに拍手をおくり、応援したいと思っています。

日本が持つ様々な省エネ技術や、海水を真水に変える技術、海の波を電気エネルギーに変える技術等々、エネルギーや環境に関する日本の誇るテクノロジーは、今後一層その輝きを増していくことでしょう。

また、このブログのなかでも再三指摘している、「食料」および「食料の安全性」に関る翻訳需要同様、「エネルギー」や「環境」に関する翻訳需要もきっと増え続けていくに違いありません。

原油価格と翻訳業界

昨今の世界経済の一番の話題は、なんと言っても、原油価格の急上昇でしょう。

まずは過去に2度あったオイルショックをふり返ってみます。

第一次オイルショック ・・・・・ 1973年10月(約$3/バレル) → 同年12月(約$12/バレル)
2ヶ月あまりの間に原油価格が約4倍

第二次オイルショック ・・・・・ 1979年2月(約$18/バレル) → 翌年9月(約$39/バレル)
1年半ほどの間に原油価格が約2倍

しかし、その後の原油価格の歩みは実に奇妙です。1980年以降はほぼ一貫して下がり続け、その後長期低迷します。なんと1998年は約$12/バレルにまで下がり、第二次オイルショック後の最高値を更新するまでには、なんと25年以上もの年月を費やすことになります。

oil graph
<グラフの出所:過去の原油価格・ガソリン価格の推移からみた限界点の考察

一方、第二次オイルショック後の米国の名目GDPはどうだったでしょうか?

1980年実績   27,900億ドル  (出所:世界各国のGDP上位60

2008年見通し 148,430億ドル (出所:2007-2008米国経済見通し

つまり、25年間低迷していた原油価格を尻目に、その間の米国の名目GDPは、5.3倍も拡大しています。

それでは原油価格はどこまで上がるのでしょうか?

1970年代のオイルショック時 ・・・・・ 1972年(約$1.9/バレル) → 1980年(約$39/バレル)
8年間で約20倍

今回のオイルショック      ・・・・・ 1998年(約$12/バレル) → 2008年(約$147/バレル)
10年間で約12倍

今回のオイルショックが「まだまだ甘い」と言うことがよく分かります。

また、米国GDPとの関係で見てみると、1980年の5倍ほどになると考えれば、$180~$210/バレルまで上がることになります。

もちろんこれは、米国GDPとの関係だけからみた私の”推論”であり、このような発言をしている専門家はどこにもいません。素人だからこその奇想天外な発想(無責任ですみません)とお考えください。

今世界では、原油価格が”異常に暴騰”していると騒いでいますが、25年間米国に抑圧されていた中東諸国の原油価格が、先進諸国の成長度合いに合わせて、遅ればせながら補正されつつあるとも考えられます。

石油の専門家の中には、「現在の原油マーケットには大量の投機マネーが流れ込んでいるだけなので、近いうちに大暴落する。石炭や天然ガスや原子力発電のコストとの兼ね合いで考えれば、バレル50ドルくらいが妥当」と主張する人もいます。

さて、現在の原油高騰は、わが翻訳業界にどのような影響を与えるのでしょうか?歴史から学ぶ必要があります。

70年代のオイルショック後、日本企業は猛烈な省エネと人員削減に取り組みはじめました。それにより、製造業は世界最強の省エネ、省コストの製造方法を生み出し、かつ、オフィスオートメーション、ファクトリーオートメーションの需要が、コンピュータ業界、ソフトウェア業界を飛躍的に発展させることになったのです。

今回の”ニューオイルショック”は、一時期の勢いを失いつつある世界中のIT産業を再び活性化させるでしょう。また、現在の日本の”省エネ技術という知的財産”も、そう遠くない将来、”輸出の花形”へと変貌していくでしょう。

東芝、原発1兆4000億円受注・米で4基、WH買収後最大

2008.4.3 NIKKEI NET

東芝が米国の電力会社2社から計4基の原子力発電所を総額約1兆4000億円で受注することが2日、明らかになった。傘下の米ウエスチングハウス(WH)の新型軽水炉が採用される見込み。2006年にWHを買収してから最大規模の受注となる。東芝は先に米国で8000億円の原発受注も決めており、新設ラッシュが続く米国市場で攻勢を強める。世界最大の市場である米国での実績をてこに、新興国を含めた原発事業の世界展開を加速する。

・・・・(記事の転載ここまで)

この件に関しては、このブログの中で過去に2回とりあげています。

2007.6.27 「東芝がアメリカの原発受注、総事業費6000億円」

2007.3.20 「原子力白書、情報公開徹底求める」

本日(2008年4月3日)の日経新聞(紙媒体)の記事に、世界の原発メーカーの状況が分かりやすく書かれています。下記に私が作成した「世界の原発大手の提携関係」の図を載せておきますので、ご参照ください。

genpatsu

図の中にある、「PWR方式」と「BWR方式」とは、原子炉の種類のことです。原子炉は、加圧水型軽水炉(PWR)と沸騰水型軽水炉(BWR)に大別されるのですが、現在では「PWR方式」が主流になりつつあります。その理由は、「BWR方式」は建設費は割安なのですが、放射能の管理が難しいと言われているからです。

目下、この「PWR方式」を提供できるメーカーは、世界広しと言えども、アレバと東芝傘下のウェスチングハウス(WH)、三菱重工業の3社しかありません。

アメリカでの同時多発テロ(9.11)後の石油価格の暴騰と中東情勢の不安および世界的規模でのCO2排出規制の流れで、今後世界における原発需要は膨大なものがあります。

米国だけでも、今後20年間に約30基の原発を建設する計画があります。その他、ロシア、中国、インド、南アフリカ、日本等の国々の計画も含めれば全世界で100基は優に超えるでしょう。

原発プラントを1基建設するのに、最低でも2,000億円は下らないと言われていますから、今後、すさまじい特需がこれらの原発メーカーに舞い込むことになります。

いずれにせよ、世界の原子力発電所の行方は、日本企業の手にゆだねられている、と言っても過言ではないでしょう。

言うまでもなく、関連する翻訳需要も膨大なものがあるはずです。

ホンダをエネルギー会社に

2007.7.19 日本経済新聞

日経新聞1面に興味深い特集記事が出ています。

「塗り替わる産業地図 ホンダをエネルギー会社に」というタイトルですが、以下が要旨です。

ホンダが二輪車工場の一角で、まもなく”場違い”な太陽電池の量産を始める。

太陽電池で得た電気で水を分解し、発生した水素で燃料電池車を走らせる。家庭が超小型の水素ステーションになり、ガソリンスタンドも送電線もない、新交通システムを生みだそうとしているためだ。

日米欧は2050年に温暖化ガス排出量を半分以下にする検討に入った。世界のあちらこちらで若い起業家がグローバル競争に挑んでいる。

Qセルズ(旧東ドイツ)は太陽電池の生産で瞬く間に京セラを抜き、世界首位のシャープに迫っている。今年6月には東京に事務所を開いた。

サンテック・パワー(中国)も太陽電池で世界第4位に躍進し、創業からわずか5年で米株式市場に上場した。

風力発電で世界第5位のスズロンエナジー(インド)は、相次ぐ買収でのし上がる姿から「エネルギー業界のミタル」と呼ばれている。

かつては世界の太陽電池生産の5割強を誇った日本企業のシェアは、現在では3割に落ちてしまった。

技術の目配りや投資判断を誤れば、異業種や新興企業にたちまち足元をすくわれてしまう。

21世紀を貫くであろう環境革命。日本企業にIT革命で経験したような停滞は許されない。

以上で要旨は終わりです。

21世紀もきっとIT革命は継続されていくでしょうが、日本企業や日本人が「革命疲れ」をおこしている間に、新興国では新たな「革命」が起こり、さらにそこに「環境革命」が加わっていく、と言うことでしょうか。

18世紀から19世紀にかけて西ヨーロッパで起きた「産業革命」の後始末を、21世紀の世界が「環境革命」によって尻拭いしようとしているわけです。

いずれにせよ、21世紀の翻訳業界にとって、この「IT」と「環境」が重要なキーワードになることだけは間違いないでしょう。

東芝がアメリカの原発受注、総事業費6000億円

2007.6.27 NIKKEI NET

東芝が米電力大手NRGエナジーから原子力発電所を受注することが内定した。同原発は日立製作所・米ゼネラル・エレクトリック(GE)連合が優勢だったが、日本での安定した実績などを訴えた東芝が逆転した。

・・・・(記事の転載ここまで)

今年の3月20日に、このブログの中で書いた、「巨大な原発プラントを建設できるメーカーは世界に、日立、東芝、三菱重工という日本の3社くらいしか存在しない」という業界関係者の話を裏づける結果が続々と出始めています。

1979年のアメリカ、スリーマイル島の原発事故と1986年のウクライナ、チェルノブイリの原発事故以降、世界中で原発に対する猛烈な反対運動が起こりました。それ以後、日本とフランスを除けば、新規の原発建設は先進国では、ほとんど行われていません。

「これからの世の中は原子力の時代」と聞いて、一生懸命原子力分野の勉強をしてきた学生や研究者たちにとって、突如冬の時代が訪れたわけです。アメリカやヨーロッパでも原発関係の技術者の数はどんどん減っていき、相当数が他分野へ移行したと聞いています。

ところがまたまた時代が変わり、近頃の原油高にCO2排出規制の問題も加わり、原発が再び脚光を浴びています。

2003年の東京電力の試算によると、

1キロワット時の発電コストは、
石炭火力 7.2円
LNG火力  7.0円
石油火力 12.2円
水力  10.6円
原子力  7.3円

つまり、コスト的にみれば、原発は石炭やLNGと大差なく、石油や水力よりもずっと安い費用で発電できることがわかります。 また、

1キロワット発電時のCO2排出量は、
石炭火力  887グラム
石油火力  742グラム
LNG火力   478グラム
原子力  0グラム

この流れに乗って、近頃アメリカで30年ぶりに原発を新規建設することに決まりました。一説によると60兆円もの膨大な予算を原発建設に費やす計画だそうです。

これからは日本の原発関係、プラント輸出関係の会社は狙い目です。当然、それらに付随する翻訳関係の仕事も急増することでしょう。

原子力白書、情報公開徹底求める

2007.3.20 NIKKEI NET

原子力委員会(近藤駿介委員長)は20日、2006年版の原子力白書を閣議に報告した。エネルギー価格の高騰や地球温暖化問題へ対応するうえで、原子力発電が中核的な役割を果たすと強調する。北陸電力の志賀原発1号機の臨界事故隠しについて、電力各社などに情報公開を徹底するよう求める見解文をまとめ公表した。

白書では中国やインドなどの経済発展で、2030年には世界のエネルギー消費量が現在の1.5倍になると予想する。原油が06年一時、1バレル75ドルになるなど価格高騰を引き起こした背景には、世界第2位のエネルギー消費国になった中国の影響が大きいとした。

・・・・(記事の転載ここまで)

相変わらず日本の原子力発電関係者の「情報隠蔽体質」は困ったものですが、ある意味それも、過去数十年間虐げられてきた彼らの怨念なのかもしれません。1979年のアメリカ、スリーマイル島の原発事故と1986年のウクライナ、チェルノブイリの原発事故以降、世界中で原発に対する猛烈な反対運動が起こりました。それ以後、日本とフランスを除けば、新規の原発建設は先進国では、ほとんど行われていないはずです。

「これからの世の中は原子力の時代」と聞いて、一生懸命原子力分野の勉強をしてきた学生や研究者たちにとって、突如冬の時代が訪れたわけです。アメリカやヨーロッパでも原発関係の技術者の数はどんどん減っていき、相当数が他分野へ移行したと聞いています。

ところがまたまた時代が変わり、近頃の原油高にCO2排出規制の問題も加わり、原発が再び脚光を浴びています。

東京電力(2003年)の試算によると、1キロワット時の発電コストは、原子力(16年) 7.3円 石炭火力(15年) 7.2円 LNG火力(15年) 7.0円 石油火力(15年) 12.2円 水力(40年) 10.6円*設備稼働率80%と仮定(水力は45%)、( )内は法定耐用年数、となります。

つまり、コスト的にみれば、原発は石炭やLNGとそう大差なく、石油や水力よりもずっと安い費用で発電できることがわかります。

一方、1キロワット発電時のCO2排出量は、石炭火力887グラム、石油火力742グラム、LNG火力478グラム。これに対し、原発はCO2排出ゼロです。

この流れにより、近頃アメリカで30年ぶりに原発を新規建設することに決まりました。一説によると今後十年間で60兆円もの膨大な予算を原発建設に費やすそうです。

ところが、現在アメリカには原発関係の技術者が極端に少なく、また巨大な原発プラントを建設できるメーカーは世界に、日立、東芝、三菱重工という日本の3社くらいしか存在しない、とも聞いています。

これからは日本の原発関係、プラント輸出関係の会社は狙い目です。当然、それらに付随する翻訳関係の仕事も急増するはずです。