特許」カテゴリーアーカイブ

特許黒字1兆円に迫る 昨年最高2割増 海外子会社からの収入大半 「知財立国」なお途上

2013年2月20日 日本経済新聞

日本が特許や著作権など「知的財産」を活用して、海外からお金をどれだけ稼いでいるかを示す「特許収支」の黒字額が2012年に約9528億円に達し、過去最高額を更新した。これまで過去最高だった前年を2割上回った。ただ黒字の大半は日本企業が海外子会社から受け取る特許料など社内取引が占めており、知財で黒字を稼ぐ「知財立国」の実現にはなお課題が多い。

特許収支は特許や商標、著作権を含む知財の使用料について、海外から受け取った額と海外に支払った額の差を示す。日本は02年まで支払い超過で赤字が続いていたが、03年に初めて黒字に転換。その後は一貫して黒字が続いている。

2013.2.20 特許4

中国勢が躍進

最近では中国の特許戦略が活発になっている。世界知的所有権機関(WIPO)によると、11年の国際出願件数の企業別ランキングで、中国の通信機器大手ZTE(中興通訊)が前年トップだったパナソニックを抜き、初の1位を獲得。3位にも華為技術が入るなど中国勢の躍進が目立つ。日本の「技術立国」としての地位を脅かしている。

日本貿易会の予測によると、13年度の貿易収支も12年度に続き、過去最大の赤字水準圏にとどまる見通し。日本はアジアなどの成長を取り込む戦略が必要だ。海外からの投資収益を拡大して国内に還流させることと並び、特許や著作権など「アタマ」を使って海外で稼ぐ力をつけることが、日本経済の成長力維持にとって重要課題になる。

(以上で日経新聞の記事終り)

下記のグラフは、「特許行政年次報告書 2012年版」からの引用となります。
確かに中国企業の躍進ぶりが目立ちます。

2013.2.20 特許1

さらに「五大特許庁における特許出願件数の推移」のグラフ(特許行政年次報告書 2012年版からの引用)が下記です。

2005年まで世界一の特許出願大国であった日本は、2006年にアメリカに抜かれ、2010年からは世界第3位に落ちたのに対し、中国は、2010年に日本を抜き、さらに2011年には米国を上回り、世界最大の特許出願大国に躍り出ました。知的財産の分野でも中国が大国化していると言えます。

2013.2.20 特許3

特許書類の一部で機械翻訳OK

2009.5.21 日本経済新聞

2009.5.21日経

特許庁のホームページを見ると下記の記載がありました。

「2009年5月19日、オーストリアで開催された日オーストリア特許庁長官会合において、両庁は特許審査ハイウェイ(PPH)の試行を本年7月1日から開始することに合意しました。オーストリアとのPPH締結によって、世界の特許出願の約76%を占める主要13の国と地域の特許庁がPPHを実施することとなり、質の高い権利を早期に取得することを可能にするPPHの取組が、さらに拡大されることとなりました」

しかし、私がざっと調べたところでは特許庁のHPのどこにも「機械翻訳」に関する記述はなかったのですが、なぜでしょうか?

PPHに加盟する13カ国のうち多くは欧州諸国のようですから、欧州言語間では、一部の書類に機械翻訳が使われているという現実があるのでしょうか?

上記の日経の新聞記事は、今ひとつ意味がわかりません。

「相手国に提出する書類の一部で機械翻訳を認めることで合意した」

「米国とカナダは、(中略)専門家が翻訳して提出するよう求めている」

「ただ特許権の請求範囲などを示した明細書については、引き続き手翻訳を求めている」

この記事を読んだ限りでは、実際どこまで機械翻訳化が進むのかまったくわかりません、というよりは実際は何も変わらないのではないでしょうか?だから特許庁のHPはその点につきなにも触れていないのではないでしょうか?

それにしてもこの日経新聞の記者は、「言葉のプロ」であるはずなのに、言葉の使い方を知らないようです。

「引き続き手翻訳を~」・・・・・これは何でしょうか?

翻訳は人間が「頭」で行うものであって、「手」が行うものではありません。

「手作業での翻訳に比べ~」・・・・・この表現も気になります。

たとえば、「従来の手作業での郵便仕分け作業に比べ~」なら理解できます。

この記者は、翻訳は郵便仕分け作業と同じレベルの作業としか捕らえていないようなので、同じ文筆業者としのて見識を疑います。

世界各国の特許等使用料の収支

財団法人 国際貿易投資研究所 国際比較統計のデータを編集して下記の表を作成してみました。

日本の特許収支の黒字が2006年暦年で過去最大の約46億ドル(当時の為替相場で約5,358億円)となり、アメリカに次ぐ世界2位の黒字国に浮上しました。

大変喜ぶべきニュースなのですが、「これはただ日本企業が海外子会社から受け取る特許料が増えただけ」と指摘する声もあり、手放しで喜ぶわけにはいかないようです。

また、黒字額を対GDP比で比べてみると、スウェーデンの0.6%に比べて、日本の0.11%は明らかに見劣りします。

さて、これらの統計を編集してみて、気がついたことを下記に列挙してみます。

1. 特許等使用料の世界収支が、2006年で161億ドル以上という巨額の赤字となっています。世界収支が赤字というのも奇妙な話なので、(財)国際貿易投資研究所へメールにて問い合わせをしたところ、下記のような返事をもらいました。

(返事始まり)
統計の精度やタイムラグ等、さまざまな要因から、実際に計算した結果は一致しないのが現実となっています。特許等使用料の場合を例にとると、受取り額を公表している国。支払い額を公表している国収支のみを公表している国など、発表している国数が異なります。

世界中の国地域が200前後の数が在るのに対し、特許等使用料の公表国は110を前後ですので、集計可能な国で計算するとどのような金額になるのかを示しています。

そこで、WORLDには集計可能な国数を表示してあるのは、そのためです。これは、当研究所のホーページ国際比較統計のWORLDに国数を示しているのは、掲載時に集計計算が可能な国のみを対象に作成する方法を採用していることを示しています。
(返事終わり)

つまりどこかの国に巨額の黒字が隠れ、表面に出てきていないということになります。

そんなことが本当にあるのでしょうか?その答えのひとつに下記の問いかけがあると私は推測します。

2. 「黒字国TOP10」の6位にアンゴラ、9位にパラグアイが入っています。このような発展途上国がなぜ黒字国となっているのでしょうか?

調べてみると「特許等使用料の定義」は、「居住者・非居住者間の特許権、商標等の工業所有権、鉱業権、著作権などに関する権利の使用料、~」とあります。

つまり、アンゴラやパラグアイはきっとこの「鉱業権」の対価をもらっているに違いないと私は考えます。

そのため巨額の「鉱業権」を先進国からもらいながら、その統計もよく把握できない発展途上国が数多くあり、「世界の特許等使用料の国際収支」が巨額の赤字になっているのだろうと、私は推測します。

<世界各国の特許等使用料 黒字国 TOP10   単位:100万ドル>

順位

国 名

1980年

1990年

2000年

2005年

2006年

 

 world

 1,794

2,595

▲5,315

▲13,375

▲16,142

 

 (国 数)

(52)

(69)

(122)

(129)

(112)

 1

アメリカ

6,350

13,500

26,765

34,777

35,945

2

日 本

▲980

n.a.

▲780

3,002

4,595

 3

イギリス

210

▲520

1,515

4,336

3,626

 4

 フランス

▲532

▲334

277

3,123

2,932

 5

スウェーデン

▲114

▲180

375

1,969

2,346

 6

 アンゴラ

n.a.

n.a.

10

46

1,338

 7

 ベルギー

n.a.

n.a.

n.a.

311

468

 8

 オランダ

▲225

▲ 666

▲334

175

261

 9

 パラグアイ

n.a.

76

194

217

234

 10

ルクセンブルグ

n.a.

n.a.

12

147

212

「特許黒字」のTOP5(2006年暦年)

 

黒字額

名目GDP

GDP比

アメリカ

359億ドル

131,947億ドル

0.27%

日 本

46億ドル

43,664億ドル

0.11%

イギリス

36億ドル

23,985億ドル

0.15%

フランス

29億ドル

22,480億ドル

0.13%

スウェーデン

23億ドル

3,930億ドル

0.60%

<世界各国の特許等使用料 赤字国 TOP10 + 注目国   単位:100万ドル>

順位

国 名

1980年

1990年

2000年

2005年

2006年

1

アイルランド

n.a.

▲553

▲7,691

▲18,450

▲19,788

2

シンガポール

n.a.

n.a.

▲4,959

▲8,317

▲9,739

3

中 国

n.a.

n.a.

▲1,201

▲5,164

▲6,430

4

カナダ

n.a.

n.a.

▲1,510

▲4,028

▲4,075

5

韓 国

▲99

▲1,327

▲2,533

▲2,652

▲2,477

6

台 湾

n.a.

▲461

▲1,463

▲1,562

▲2,077

7

タ イ

▲30

▲170

▲701

▲1,657

▲1,999

8

ドイツ

▲840

▲1,810

▲2,763

▲438

▲1,956

9

ロシア

n.a.

n.a.

23

▲1,333

▲1,703

10

オーストラリア

▲205

▲664

▲788

▲1,452

▲1,600

           

12

ブラジル

▲26

▲42

▲1,289

▲1,303

▲1,513

           

17

インド

▲12

▲71

▲200

▲636

▲837

           

20

イタリア

▲355

▲919

▲635

▲811

▲725

           

24

フィンランド

▲84

▲266

321

83

▲407


3. 赤字額で言えば、やはりBRICs(ブラジル、ロシア、インド、中国)の存在感がより強まってきています。

4. 意外なことに、あの先進工業国ドイツや豊富な歴史的遺産や高級ブランド品を多く持つイタリアが、大幅な赤字国となっています。

5. 教育国として最近脚光を浴びているフィンランドも赤字国へと転落しているのは、とても興味深いところです。

いずれにせよ、”感覚”ではなく”数字による客観的データ”をもとに、科学的に考えていかなければ真の姿は見えてこない、ということが改めてよくわかります。

平成18年の知的財産侵害物品の差止状況

2007.3.1 財務省

平成18年の税関における知的財産侵害物品の輸入差止件数は19,591件で、前年と比較すると46%の増加となった。一方、輸入差止点数は約98万点で、前年と比較して11%の減少となった。

また、一件当たりの平均輸入差止点数は50点で、前年(82点)と比較して39%の減少となった。

なお、平成18年6月から輸出取締りの対象となった育成者権侵害物品に係る輸出差止実績はなかった。

・・・・(記事の転載ここまで)

仕出国(地域)別輸入差止実績構成比(件数ベース)では、中国が48.2%、韓国が44.5%、知的財産別輸入差止実績構成比(件数ベース)では、商標権が98.6%、品目別輸入差止実績構成比(件数ベース)では、バッグ類が56.7%となっています。

つまり中国、韓国からの偽ブランドバッグの取り締まりに右往左往した、というわけです。

ヨーロッパの各有名ブランドメーカーに「御社の全世界の売上に占める日本市場の割合は?」と聞くと、どこも判で押したように「40%でございます」と答えます。

しかし、あるヨーロッパ有名ブランドの元幹部だった人の話によると、実際には40%ではなく、80%なんだそうです。

「このブランドバッグは日本人しか買わない」と言うと売れなくなるので、各社知恵を絞って誤魔化している、とのこと。

真実はわかりませんが、日本市場をターゲットにするニセモノが実は、ヨーロッパ有名ブランドのバッグだけ、というのも知的財産大国を目指す国としては、なんだか寂しい、と思うのは私だけでしょうか?

特許黒字、最高の5470億円・06年

2007.2.23 NIKKEI NET

海外から受け取った特許料収入から支払い分を差し引いた日本の特許収支が、2006年に初めて5000億円を超えた。海外生産の拡大で日本企業が海外子会社から受け取る特許料が増えた一方、特許戦略の強化で欧米企業に支払う特許料を抑制した。アジア企業からの収入も拡大している。特許収支は03年に黒字に転換して以降、着実に黒字幅を増やしており「知的財産」で稼ぐ体制が定着しつつある。

・・・・(記事の転載ここまで)

1980年代初め、米国レーガン大統領が打ち出した「強いアメリカ」構想の中にこの知財戦略がありました。大国にもかかわらず、大統領の一声で迅速に行動を起こすアメリカは、思い切ってどんどん製造業を切り捨てて行き、知財とソフトウェア産業へ経済を集中させていきました。IBMスパイ事件で日本企業がつるし上げられ、やがてマイクロソフト、その他のソフトウェア企業が次々と台頭してきます。あとは皆さんご存知とおりです。日本の知財戦略は出遅れすぎている、と常々思っていたのですが、それでも着実に成果が出てきているということは、一日本人としても、翻訳会社の経営者としても、大変に喜ばしいことです。まあ、日本の製造業が持つ知的財産の価値から言えば、当然のことであり、もっともっと伸びていくと私は考えていますが。

特許の国際出願件数、韓国と中国が急増・昨年

2007.2.8 NIKKEI NET

世界知的所有権機関(WIPO)が7日発表した2006年の特許の国際出願件数(速報値)は前年比6.4%増の14万5300件となった。国別の件数では韓国と中国が急増し、それぞれ4位と8位に浮上。日本を含めた東アジアが世界の4分の1を占めた。WIPOは「世界の発明地図が変わりつつある」と指摘した。

日本は8.3%増の2万6906件で、03年以来米国に次ぐ2位を保っている。韓国は26.6%増の5935件、中国は56.8%増の3910件と急増した。韓国や中国の企業は、進出先や輸出先でも特許権を確保するため自国内だけの出願から、複数の国に一度に申請できる国際出願に切り替える傾向を強めている。

・・・・(記事の転載ここまで)

中国の国際特許出願件数が56.8%増とのことです。もちろん、結構なことではありますが、正直なところ、中国は他国の特許をとる前に、自国の知的財産管理にもっと力を入れて欲しいという気がします。

中国は、政治、軍事、経済、文化における世界の「大国」であるわけですが、いまだ、日本を含む世界各国からODA開発援助を受けている「発展途上国」でもあります。

ある意味この「発展途上国」という位置づけが、色々な点で事を難しくしています。

環境問題では、中国は「発展途上国」だからという理由で規制の対象外となっています。

ODAにより他国から多額の援助を受けながら、一方で多額の軍備にお金を使っています。

知的財産の問題でも、「発展途上国だから」という理由で、世界各国もあまり強くは突っ込めません。

国民一人当たりの収入はまだまだ「発展途上国」の域を超えていませんが、トータルの額では、すでに先進国の仲間入りをしています。確か中国のGDPは、イタリアを抜いたと最近報道されたはずです。

また一部の報道では、中国の富裕層は約3,000万人いて、日本の富裕層の数と変わらず、消費する金額も同等レベルと聞いています。