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オフィス需要活況続く 都心空室率、5月も低下

2014年6月13日 日本経済新聞

企業の事務所移転の増加などで、東京都心部のオフィスの不足感が一段と高まっている。仲介大手の三鬼商事(東京・中央)が12日発表した東京都心5区(千代田、中央、港、新宿、渋谷)の5月末の空室率は6.52%で前月比0.12ポイント低下した。景況感の改善を背景に、都内の大手企業の移転に加え地方企業が東京に進出する例も出てきた。

2014年6月13日 日経

(以上で記事終り)

東京都心部のオフィスビルの空室率が減っている、という現象から、あることを思い出しました。

かつて、ジェスコーポレーションでは、NTTタウンページに「翻訳業」を掲載している翻訳事業者(団体)がどのくらいあるのかを調査したことがあります。

日本の翻訳事業者数
2007年度 ⇒ 1,984社
2012年度 ⇒ 1,959社(▲1.3%)

このように日本には、約2,000の翻訳事業者があることがわかりました。

また、2007年度から2012年度の5年間に約3割の翻訳事業者が消え、新しい翻訳事業者が生まれていることも判明しました。

さて、下記は東京都内における翻訳事業者数の両年度の比較です。

2012年度 2007年度 増減 どちらの年度にも
存在している会社
2012年度数に
対する割合(%)
東京都 706 813 -107 569 81%

 

 

 

5年間で107の事業者が減少し、かつ2007年度と2012年度の両方に存在している事業者は全体の約8割ということもわかりました。

その理由を考えてみました。

  • 地方の翻訳会社が首都圏に支店を出していたが、不況により採算がとれなくなり撤退した。
  • リーマン・ショック後に金融翻訳の仕事が冷え込んだ。
  • インターネット環境の格段の進歩により、“東京都心に近い ” という地理的アドバンテージが失われた。

今回の新聞報道では、東京都内のオフィスビルの賃貸が再び活況を呈し始めている、ということですが、はたして翻訳業界はどうなのでしょうか?

OECD  2060年までの長期経済成長見通し

今後50年で世界経済のパワーバランスは劇的に変わる

最新のOECD報告書によると、今後50年、躍進を遂げる新興経済が世界のGDPの大部分を占めることとなり、世界経済のパワーバランスは劇的に変わることが予測されます。

これまで私たちが慣れ親しんだパターンとは異なる長期的経済成長を辿ることで、各国経済の世界に占める割合は大きく変化することになります。現在トップに君臨する米国は、早くて2016年にも中国に追い超され、いずれはインドにも追い越されるでしょう。さらに中国とインドを合わせれば、まもなくG7全体の経済力をも追い超し、2060年にはOECD加盟国全体を追い越すことが予測できます。急速な高齢化が進むユーロ圏や日本といった現在の経済大国は、若年層が人口を占める新興経済のインドネシアやブラジルのGDPに圧倒されることになります。

⇒ OECD東京センターのサイトより
(以上で引用は終わり)

「世界経済のネタ帳」のデータを元に、世界の主要国と日本の名目GDPの推移 を比較してみました。

まずはGDP世界第2位の中国との比較ですが、2005年あたりから急激にGDPを伸ばし、あっという間に日本を追い越してしまった様子がグラフで見るとよくわかります。

名目GDP(USドル)の推移(1980~2012年) - 世界経済のネタ帳

次にGDP世界第1位のアメリカとの比較はどうかというと日本の「失われた15年」の間にますます差が拡大していった様子がグラフだとよくわかります。

名目GDP(USドル)の推移(1980~2012年) - 世界経済のネタ帳

それでは、GDP世界第4位のドイツや同じく第5位のフランスはどうかというと、確かに「失われた15年」の間に差が縮まったようですが、再度開いていき依然日本とは差があることがわかります。他のヨーロッパ先進国もこれと大差ありません。

名目GDP(USドル)の推移(1980~2012年) - 世界経済のネタ帳

名目GDP(USドル)の推移(1980~2012年) - 世界経済のネタ帳

中国を除くBRICs諸国はどうでしょうか?
確かに伸び盛りであることはわかりますが、依然日本とは差があることがわかります。

GDP世界第6位のブラジル

名目GDP(USドル)の推移(1980~2012年) - 世界経済のネタ帳

GDP世界第9位のロシア

名目GDP(USドル)の推移(1980~2012年) - 世界経済のネタ帳

GDP世界第10位のインド

名目GDP(USドル)の推移(1980~2012年) - 世界経済のネタ帳

最後に現在日本の電機業界を窮地においやっているサムスン電子やトヨタ・ホンダを急追する現代自動車の国、韓国はどうでしょうか?

意外なことに日本とはまだまだ差があることがよくわかります。

GDP世界第15位の韓国

名目GDP(USドル)の推移(1980~2012年) - 世界経済のネタ帳

OECDのレポートでは、世界における日本の名目GDPのシェアは、2011年が7%、2030年が4%、2060年が3%とどんどん落ちていくと予想しています。

しかし上記のグラフを見た限りでは、押しも押されぬ超大国アメリカと現在伸び盛りの人口超大国中国を除けば、まだまだ日本に余力は残されていると感じます。

国民一人あたりのGDPを伸ばすべく、国全体の具体的成長戦略を定めさえすれば、まだまだ日本は捨てたものじゃないと思います。

日本人は、決められた道をまっしぐらに進む生真面目集団が多いので、落ちる時も早いのですが、正しい方向性さえ定まれば、回復するときもきっと早いと信じているからです。

日本輸出に追い風 最後の大国 ロシア今日WTO加盟

2012年8月22日 日本経済新聞朝刊

ロシアが22日、156番目の加盟国として世界貿易機関(WTO)に加わる。「最後の大国」といわれたロシアの加盟で、WTO加盟国・地域の貿易額は世界全体の98%に達する。ロシアは工業製品の平均関税率を約9%から約6%に引き下げるとともに、市場開放や外資呼び込みに力を入れる。日本企業による自動車などの輸出にも弾みがつくことになる。

2012.08.22日経

ロシアの世界貿易機関(WTO)加盟により、日ロ間の貿易は拡大に一段と拍車がかかりそうだ。関税が下がれば日本からの主力輸出品である自動車の輸出に追い風が吹くほか、知的財産の保護といったルールの共通化も対ロシア投資を考える企業にとってメリットは大きい。

原油などの資源高をテコにロシアが高い経済成長を遂げたのに伴い、日本からロシアへの輸出額は10年間で16倍に急増した。2001年当時は日本にとって44位(7.2億ドル)の輸出先にすぎなかったロシアは11年には15位(118億ドル)まで浮上。輸出増の最大のけん引役は自動車だ。ピークの08年は日本から中古車を含めて98万台を輸出した。

9月上旬にアジア太平洋経済協力会議(APEC)の首脳会議が開かれるウラジオストクでは、右ハンドルの日本車が多く走っている。WTO加盟で新車に対する関税は現在の30%から25%に低下。さらに今後7年間で15%まで下がり、日本からの車の輸出は300万台規模まで膨らむとの見方もある。

ロシアへの投資の追い風にもなる。これまでは不透明な法律の運用などを理由に、ロシアでの投資に二の足を踏む日本企業も多かった。WTO加盟後はロシアが不公正な競争環境を放置すれば他の加盟国から提訴される。「同じ土俵にロシアを立たせることができるのが実質的な最大のメリット」(経済産業省幹部)という。

(以上で記事終わり)

中国がWTOに加盟したのが2001年の12月ですから約10年が経ちます。「国際貿易投資研究所」の資料によると2000年から2010年の10年間で中国のGDPは5倍になっています。

中国がその間、これだけ急成長したという理由は決して一つではないでしょうが、WTOの加盟により貿易相手国が安心して取引できるようになったという点も見逃せないでしょう。

その点次なるはロシアということでしょうか。

それにしても、かつてアメリカと軍拡競争を繰り広げ、宇宙開発でも競い合ったあの大国ロシアのGDPが、あまりにも小さかったこと自体が逆に驚きです。

こんな国がなぜあんにたくさんの核兵器を開発し保有できたのか?

なぜ、宇宙にロケットを飛ばすことができたのか?

とても不思議です。

第2次世界大戦が終わった時にナチスドイツが持っていた、核技術、ロケットエンジン技術、医薬技術(ユダヤ人殺りくによる大量の人体実験データを保有)を米ソが分け合ったため、その後の米ソの科学技術が急速に発達したという説もあります。

そのため戦後の米ソのジェット機の姿かたちは酷似していたと言うのです。

まあ、話は脱線してしまいましたが、今後ロシア経済が急成長する条件は十分整っているので、日本とロシア間の貿易の行方からも決して目が離せません。

世界各国のGDP2010年

音楽や広告、海外からの配信に消費税 14年度にも 財務省、国内勢と公平に

2012年6月29日 日本経済新聞朝刊

財務省は海外から電子書籍や音楽、広告などを日本向けに配信するサービスに消費税を課す方針を固めた。消費増税関連法案が国会で成立すると2014年4月から消費税率が8%に上がることから、早ければ同時に実施する。ネット取引課税について国内企業と海外企業の格差が解消に向かうが、海外勢にどうやって確実に納税させるかが課題となる。

(中 略)

国境をまたぐ取引の場合、どこでサービスが提供されたかの判定は難しい。航空機の国際便運賃は免税とされ、事実上、消費税はかかっていない。海外企業による音楽ダウンロードを日本で利用する場合も、日本の消費税はかかっていない。

だが海外事業者が事実上、優遇される仕組みを放置すれば、日本企業は拠点を海外に移すといった対応を迫られる。コスト競争力への不安から、海外にも課税の網を広げるべきだとの要望は産業界から強まっている。

実際に効果があがる枠組みを作れるかどうかは不透明な面もある。欧州連合(EU)はサービスを提供する事業者に対して各国に登録させ、納税させる仕組みを作っているが、きちんと機能しているかどうかの検証は難しい。課税のための情報交換なども特定国との協力にとどまれば、企業が別の国に事務所を移して課税逃れをする「いたちごっこ」になる可能性もある。

2012.06.29 日経

(以上で記事終わり)

消費税法ができた1989年には、このような「インターネットによる電子商取引」など、とうてい想像もできなかったことでしょう。

法律というものは常に世の中の動きに遅れて、止むを得ずかつ突然にして動き始めるものです。

『文芸春秋』の2012年5月号に、「税金を払っていない大企業リスト―隠された大企業優遇税制のカラクリ」という論文が掲載されています。元国税庁職員で、中央大学の富岡幸雄名誉教授が書いているものです。

税金を払っていない大企業

上記は法人税を「節税」している例ですが、今後消費税率が上がれば、海外の関連企業を使って、ありとあらゆる税逃れが行われるでしょう。結局「いたちごっこ」が続くのでしょうが・・・・・。

20数年前の話ですが、ある税務署職員から聞いた話を思い出しました。

当時東南アジアをはじめとする世界各国の途上国の税務官が日本の税務署に研修に来ていたそうです。

その中の一人、ある東南アジアの税務署員Aさんと日本の税務署職員Bさんの間のやり取りです。

Aさん:「あそこに並んでいる長蛇の列は一体なんですか?」

Bさん:「日本では毎年3月15日が確定申告の締切の時期なんです。その申告のために窓口に並んでいる人たちの列ですよ」

Aさん:「え!・・・と言うことは、あの人たちは税金を払うために長時間並んで待っているのですか?」

Bさん:「そうですが、それが何か?」

Aさん:「信じられない!私たちの国では、税金を払えと言っても誰も払わず皆雲の子散らすように逃げ回るので、それを捕まえるのが大変なんです。それなのに、日本人は税金を払うためにわざわざ何時間も並んで待っている。んー、信じられない。これが日本の強さなのですね」

世界で戦うためには相当な「したたかさ」も必要でしょうが、この日本人固有の生真面目さも忘れずにいてほしいものです。

薬、貿易赤字「陰の主役」 輸入超過、昨年」1.3兆円 開発競争で後手

2012年5月14日 日本経済新聞朝刊

医薬品の輸入が拡大している。新薬開発で米欧の後手に回り、海外から高額な抗がん剤などを買う必要があるためだ。輸入が輸出を上回った額(輸入超過額)は2011年には10年前の5倍の1兆3660億円で、日本の貿易赤字(2.5兆円)の隠れた主役になっている。40兆円規模に膨らんだ日本の医療費を支える税金と保険料は、海外に流れ出ているのが現状だ。

2012.05.14 日経

(以上で記事終わり)

少子高齢化で老人が増え続けていく日本ですから、今後ますます医療費が増加していくことは確実です。

にもかかわらず、医薬品の開発競争で完全に米欧企業の後塵を拝し、外国製の医薬品を買わざるを得ないとは情けないことです。

近年、日本で医薬関連の翻訳需要が急増してきた理由もこれでわかるというものですが、われわれ日本の税金や保険料が海外へ流れ続けていくというのは問題です。

日本は長い間、自動車や電子、機械、IT、ソフトウェアなどの分野で世界の最先端を走り続けてきました。

しかし、今ではそれもアジア諸国に追い上げられ、優位性を保てなくなってきています。

今後医薬品の分野で莫大な赤字を出し続けるなどもう許されないことでしょう。

実際医薬産業の育成に力を入れるインドが、日本との経済連携協定(EPA)を機に、後発薬などの売り込みを加速させようと働ききかけているそうです。

今後インドをはじめとするアジア諸国との医薬品に関する貿易が増大していくことも時間の問題でしょう。

アメリカ製造業ルネサンス

2012年4月16日号 日経ビジネスの記事より

製造業が米国の生産拠点を強化する動きが広がっている。
モノ作りを失いかけた国に何が起きているのか。
中国の人件費高等、米金融緩和に伴うドル安など、
競争力回復には様々な外的要因が指摘されるが、それだけではない。
先を見据えた企業の戦略、州政府の積極的な支援策など、主体的な努力も背景にある。
製造業の空洞化危機に直面する日本は何が学べるのか。

2012.4.46 日経B-2

2012.4.16 日経B-3

2012.4.16 日経B-1

<以上で日経ビジネスの記事終わり>

なぜ今アメリカの製造業は、自国内生産へ回帰し始めているのか?

記事の内容を簡単にまとめてみました。

1. 燃料費の高騰で、海外で生産する大型製品を米国へ輸送するコストが上昇している。

2. 「世界の工場」中国の人権費が高騰している。

3. 米国内の安価なシェールガス生産拡大により、工場運営に必要な燃料費コストが下落している。

4. パナマ運河の拡張工事が2014年に完了する予定なので、工場進出が相次ぐ米国南部とアジアを結ぶ海運の効率が高まる期待がある。

5. 実行為替レートでみるとドルは下落し、一定量のものを作るのに必要な単位労働コストも低下している。

6. オバマ大統領が製造業に対し税制面で優遇する改革案を発表している。

7. 米国内のほうが良質な人材を確保できる。

8. 米国内のほうが開発効率が良い。工場が近くにあれば要望を聞いて試作機を作ったらすぐに顧客に見てもらえる。

9. 海外に工場があると仕様変更のたびに担当者が海外出張しなければならない。

10. 地方政府が製造業に対し、法人税の減免や工場用地の提供、その他様々な支援を行っている。

戦後、日本とアメリカの間で起こったことが、現在日本と中国の間で起こっています。

従って現在アメリカで起きていることを見ておけば、将来日本で起きることも予見できる、という極めて単純な発想に行きつきます。

しかし、日本にシェールガスはないですし、アメリカマーケットと日本マーケットの大きさの違いもあります。

米中の距離よりも日中の距離のほうがはるかに近いという物理的事情もあります。

したがって、アメリカ製造業の復活が、即日本でも起こり得るとはなかなか考えにくいのではないでしょうか。

最近日本が南海トラフで開発を始めているメタンハイドレートの実用化の目途が立てば話は別ですが、仮にそれが実現するとしても数十年も先の話でしょう。

つまり、日本の製造業のグローバル化にブレーキがかかるということは今のところちょっと考えられません。

海外進出しても、空洞化にはならない!

2012年1月号 日経トップリーダーに枝野幸男経済産業大臣のインタビュー記事が出ています。

その中から一部を抜粋して下記に記します。
(以下、日経トップリーダーの記事)

2012年1月号日経TL

— 中小企業の海外進出が進むことで国内産業は衰えませんか?

(以下、枝野経済産業大臣の回答)

海外に進出した中小企業と、国内に残った中小企業の雇用者数を比較した「中小企業白書」の調査があります(上記グラフ参照)。

海外に出た企業は、一時的に国内の雇用を減らしますが、およそ5年後には国内に留まっている企業より、むしろ従業員を増やしています。

海外の活力をうまく取り込むと、海外拠点はもちろん、日本の本社やマザー工場も発展するのです。そうしたことが10年ほど前から現実に起きています。

国内事業を放棄した企業は、進出先の海外でもあまり成功していません。そうではなくて国内事業がしっかりしているうちに、その足場を残しながら海外に展開する。

そういう中小企業の動きが、日本経済を発展させ、空洞化対策にもなります。

(以上で記事終わり)

私たち翻訳業界の人間にとって、大変うれしい調査結果がでています。日本企業がこぞって海外進出しても、それが産業の空洞化にはつながらない、逆に将来の日本国内の雇用を増やす要因になっている、というのです。

企業の海外進出のお手伝いをすることの多い私たち日本の翻訳業界は、

「これが日本の産業空洞化につながるのではないか?」

という懸念を抱きながら、仕事を受注してきたという側面もあったからです。

しかしこれからは、心配することなく海外進出のお手伝いをすることができます。

この話を書いていて1980年代の日米貿易摩擦の話を思い出しました。

当時アメリカ政府は、日本市場の閉鎖性や非関税障壁を激しく非難し、「もっとアメリカ製品を買え」と強く日本政府に迫りました。

その時、日本で活躍するある米国人経営者がこう話していました。

「日本市場で儲けている外国企業はたくさんある。IBM、コカコーラ、ペプシコ、プロクター&ギャンブル、ジョンソン&ジョンソン、ブラウン、マクドナルド、ヨーロッパのブランド品企業、などなど数え上げたらきりがない。彼らは何も言わない。なぜなら儲けていることを知られたくないからだ。日本で失敗した企業だけが自国に帰り、『日本はひどい国だ』と騒いでいる」・・・・・と。

これと同じことが、現在の日本と中国の間でもおこっていたのかもしれません。

中国へ進出し、失敗した企業が日本にもどり「中国はひどい国だ。中国人はひどいやつらだ」と騒ぐため、中国に対する悪いイメージだけが先行し、欧米企業に出遅れてしまいました。

実は、早い時期から中国へ進出し、しっかり儲けている企業は、大企業はもちろんのこと、中小企業でも少なくないのです。彼らは決して騒ぎません。なぜなら目立てば、ライバル企業に真似をされてしまうからです。

今からでも遅くはありません。海外進出(中国をはじめとする世界各国)を考えている企業がありましたら、ぜひ前向きにご検討ください。

そして翻訳の需要が発生したときに、ジェスコーポレーションの名前を思い出していただければ幸いです。

異変・世界経済

日経ビジネス 2011年10月24日号より、トップ記事の見出しと関連チャートです。

(以下、日経ビジネスの記事の抜粋>

【異変・世界経済① 連鎖する欧州経済】
ギリシャ“破綻”へ秒読み

世界経済が再びリーマンショック以来とも言える危機の瀬戸際に直面している。
欧州の財政危機は、新興国からの資金流出など新たなリスクにも波及し始めた。
その影響はアジアにも広がり、日本企業の業績にも影を落としそうな雲行きだ。

2011.10.27 日経B(1)

【異変・世界経済② 混乱するアジア】
企業業績圧迫、洪水が追い打ち

日本企業の業績を支えてきたアジア経済に異変が生じている。
中国、インド経済が急減速し、タイの大規模洪水が追い打ちをかける。
近く本格化する上場企業の決算発表は、厳しい業績予想が増えそうだ。

2011.10.27 日経B(2)

【異変・世界経済③ 中国も失速懸念】
「ラストリゾート」なき世界へ

世界景気を需要面で支える「経済のラストリゾート」と言われてきた中国の成長に失速懸念が広がってきた。
欧米景気の減速と言う外患に、不動産市況の悪化など内憂が畳みかける。
インフレ警戒が根強い中、引き締め政策の見直しを迫られるという難局を迎えた。

2011.10.27 日経B(3)

(以上で記事終わり)

世界大恐慌は、1929年10月24日にニューヨーク証券取引所の株価大暴落(暗黒の木曜日=Black Thursday)を引きがねに、世界各国に波及した金融恐慌ですが、実は大恐慌のピーク、つまり経済が最悪の状態になったのは、「暗黒の木曜日」から3年後の1932年後半から1933年春のことでした。

恐慌発生直前と比べて株価は80%以上下落し、工業生産は平均で1/3以上低落、1200万人に達する失業者を生み出し、失業率は25%に達しました。閉鎖された銀行は1万行に及び、1933年2月にはとうとう全銀行が業務を停止、社会主義革命の発生すら懸念されたようです。

さて、ここでお気づきの方もいるでしょう?

そうです、あの「リーマン・ブラザース」が破綻したのもちょうど今からぴったり3年前の2008年9月のことでした。

実に不気味な符合ですね。「大恐慌」という「大惨事」が再び繰り返されないことを、今はただ願うしかありません。

危険な新局面

2011年9月21日 日本経済新聞朝刊より

国際通貨基金(IMF)は20日、世界経済見通しを改定した。米国とユーロ圏の実質成長率を6月時点から大幅下方修正し、2011年、2012年ともに実質成長率が1%台にとどまると予測した。世界経済は「危険な新局面にある」と表現したうえで「リスクは明らかに下を向いている」と分析した。

(中略)

IMFは「万一の事態が(米欧の)どちらかでも起きれば世界の成長に深刻な影響を与える」と指摘した。

(後略)

(以上で記事終わり)

2011.9.21 日経新聞

IMFの経済見通しは、主に欧米経済の危険度とその影響に関して触れていますが、新興国、特に中国に関しては比較的楽観的な見方をしているようです。

しかし、中国経済の見通しについてかなりネガティブな見方をする経済の専門家もいるようです。下記は「日経トップリーダー 2011年8月号」の講演CDの要旨を私が書き取ったものです。

日経トップリーダー 2011年8月号
経済評論家 今井徴氏の講演CDから

中国経済崩壊の警告
リーマン・ショックを予見したことで有名な、ニューヨーク大学のノリエル・ルービニ教授が自身のブログのなかで、こう予見している。

「GDPの50%を開発に投下している中国はソ連の末期と同じ状況なので、2013年に中国経済はハードランディングする。その根拠は中国が鳴り物入りで開発した中国版新幹線に上海から広州まで50分間乗ったが、乗客は半分もいなかった。各駅の3分の1は乗客が無人だった。並行して走るハイウェイは3分の2がガラガラだった。これは1960年代のソビエトや1997年アジア通貨危機前のアジアと同じ状況だ」(ルービニ教授が新幹線に乗ったのはあの中国版新幹線大事故の前のこと)

もう一人は、キニコス・アソシエイツの創立者で、大変に有名なヘッジファンドのマネージャー、ジェームス・シャノス氏が「中国を株式会社にたとえれば、史上最大のいかさま企業で今や崩壊しつつある」と指摘。ニューヨーク証券取引所の中国企業や中国が銅、セメント、鉄鉱石などを買っている中国関連企業の株を全て売り浴びせている。去年くらいから「チャイナ」と名のついた銘柄は全て「売り」と言い出している。

このシャノス氏は2001年にエンロンの粉飾決算を見抜き、エンロン株を80ドルで空売りし、下落後2ドルで買い戻し78ドルを儲けたということで非常に有名な人

中国は「逆さ合併」や「裏口上場」という手法で米国企業を買収し、上場審査をすり抜けてきたため、いかさまを摘発され、すでに20を超える銘柄が上場廃止もしくは売買停止においこまれている。そのため中国の「逆さ上場株」は年初来44%の下落をしている。

またさらに中国の住宅バブルが終わったという話もよく聞く。一時期は1ヶ月に10%、年間100数十パーセントも上がっていたマンション類だが、それが売れなくなった。それは中国政府が厳しい規制を始めたから。たとえば3件目のマンションは頭金50%が必要だとか、金利は基準金利の3割から4割増しにするとかだ。

以上から現在の中国は1990年から1991年の日本経済に似ている。あと1年~2年で中国のバブルは崩壊する。

(以上で講演CD終り)

現在の中国経済が世界に与える影響、特に日本に対する影響を考えるととても怖い内容となっています。

欧州経済(ギリシャ問題)、アメリカ経済(残されたサブプライム問題)、中国経済(バブル崩壊)の全てがうまくソフトランディングすることをただただ祈るばかりです。

今こそ、血みどろのシェア争いを勝ち抜け

日経ビジネス ONLINE の 2011年6月15日号
「今こそ、血みどろのシェア争いを勝ち抜け」と題した「日本電産の永守重信社長の復興に向けた提言」より、記事を抜粋して掲載させていただきます。

2011.6.15 永守社長
日本電産の永守重信社長

<以下、記事の抜粋>

これからの世界経済は「先進国vs新興国」という構図になるのだろう。例えば、日本市場は縮小が避けられないが、新興国の市場は当面成長し続ける。だから結局、日本企業も韓国企業がやったように外へ出ていくしかない。 

(中 略) 

多くの日本企業は、中国など新興国の企業がどんどん安いものを出してくる時、「我々は高級品でいく」と考える。大企業ほどすぐにそう言う。だが思い起こすと、僕が日本電産を創業した73年に、米国にはRCAという巨大電機メーカーがあったけど、十数年でつぶれた。

誰にやられたかといったら日本の電機メーカーだ。今で言えば、韓国や台湾、中国のメーカーにやられたようなものだろう。

どうしてやられたかと言うと、高級品に逃げて低価格品はOEM(相手先ブランドによる生産)にしたわけだ。今、日本の会社が中国や台湾の会社にパソコンやほかのモノを作らせているが、それに似ている。

高価格品市場だけで生きていけるというのは、技術的過信に基づいた発想で、とても危険だ。技術だけで売れるなら新興国市場はみな先進国の製品で埋め尽くされていたはずだが、そうはなっていない。新興国市場を侮ってはいけない。

技術的過信は、企業と国の双方を危うい方向に持っていく。 

(中 略) 

日本企業はもう一度、世界で血みどろのシェア争いをしないといけない。繰り返しになるが、低価格品は新興国企業に任せるなどと言っていたら、やがてやられる。戦い抜くというスピリッツがないとダメなんだ。

 厳しい競争の時代を勝ち抜くには、韓国がやってきた税制や産業政策のような国を挙げた企業支援の政策が必要かもしれないが、もう待ってはいられない。(談)

<以上で記事終わり> 

ファーストリテイリング会長兼社長の柳井正氏も最近の日経ビジネスの取材に対し、「日本は20年もの間、成長から遠ざかってきました。あと10年もすれば、アジア各国に完全に追いつかれるでしょう」と発言をしています。

確かに「日本はアジアにおいて、つねに技術的優位にあり、つねに先進国であり続ける」などという妄想は早く捨てなければならないでしょう。

今から10年後、20年後の日本には、中国系企業、韓国系企業、台湾系企業、インド系企業がひしめきあい、オフィスには、英語のみならず、中国語、韓国語が飛び交う、などという風景もめずらしくなくなるのかもしれません。

そのとき日本の翻訳会社はどうなっているのでしょうか?

やはり日本のメーカー同様、中国系、韓国系、インド系などの地元翻訳会社と「血みどろのシェア争い」をして、勝ち抜いた「多国籍翻訳会社」もしくは「無国籍翻訳会社」が勝ち残りしているのかもしれません。

この「無国籍翻訳会社」は私が作った造語ですが、「どこの国なのかさえ特定できない、あるいは特定すること自体に意味がない」ほどインターナショナルな翻訳会社のことです。

官民インフラ輸出7000億円

2011.5.8 日経新聞朝刊

政府と国内有力企業が組んで環境配慮型のインフラを輸出する計画の内容が7日明らかになった。政府が15事業を選び、投融資などで全面的に支援する。東芝やパナソニック連合がインドで電力供給体制を整備し、三菱重工業などはシンガポールで電気自動車(EV)を活用した交通システムを構築。合計の受注額は7000億円規模に達し、約2万人の国内雇用創出を見込む。
(以上で記事終わり)

2011.05.08 日経(1)2011.05.08 日経(2)2011.05.08 日経(3)

・・・・(記事の転載ここまで)

「日本は得意分野の異なる民間企業が企業連合を作り、インフラ整備の計画段階から関与することで、受注にむすびつけようとしている。アジアや中東など成長市場を中心に旺盛な需要を取り込む」そうです。

キーワードはやはりここでも「アジア」、「エネルギー」、「環境技術」となります。3.11以前であれば、まちがいなくここに「原子力発電」が入っていたのでしょうが、さすがに今回は原子力の「げ」の字も見当たりません。

しかしながら、「急拡大が見込まれる世界のインフラ需要」の表をよくよく見てみると、2020年までの増加見込み490兆円のうち、300兆円が「情報通信」、つまり増加分の6割以上は「情報通信」が金額的に占めているようです。

「情報通信」は他のどの産業よりも、翻訳需要の多い産業といえます。したがって、この「インフラ輸出」は、日本経済にとって大変よいことであり、当然日本の翻訳業界にも強力なフォローの風が吹くと期待しています。

日本とインド EPAで大筋合意

2010年9月10日 朝日新聞の朝刊より

日本とインド両政府は9日、両国間の貿易やサービスなどの自由化を進める経済連携協定(EPA)に大筋合意した。日本のEPAの合意はベトナムやスイスと決着した2008年9月以来、2年ぶり。12億人以上の人口を抱え、成長著しいインド市場の取り込みを図る日本企業を後押しする。

両国のEPA交渉が始まったのは07年1月。9日は次官級交渉で大筋で合意。インドのシン首相が10月に訪日した際、首脳間で正式合意に至る。

合意によると、貿易では、インドから日本への輸出額の97%、日本からインドへの輸出額の90%にあたる物品について、それぞれ10年かけて関税を撤廃する。現在、日本から輸出する家電や自動車部品、鉄鋼製品には7.5~10%の関税がかけられているが、10年後までに大半が撤廃される。現地生産する日本企業は、日本から調達する部品のコストが下げられる。ただ、インドが100%の税率をかけている乗用車の関税は対象外。

2010.9.10 朝日
(以上で記事終り)

成長著しいインドとの貿易の自由化が進むということは、わたしたち翻訳業界にとっても良いことこそあれ悪いことはないはずです。しかし、韓国企業の激しい追い上げに脅威を感ずる日本企業のあせりが、日本政府の尻をたたかせ、今回の合意にこぎつけさせた・・・・というのが実情のようです。

韓国は今年1月にすでにインドとのEPAが発効済みなので、インドにいち早く進出し、乗用車市場の半分を握る日本のスズキは、韓国の現代自動車などの激しい追い上げに、かなりの危機感を持っているようです。

また、インド市場で確実にシェアを広げつつある韓国のサムスン電子に遅れまいと日本の電機業界も必死のようです。

たとえば、インドでの売上げを2012年に現在の5倍にあたる2,000億円に引き上げようとしているパナソニックでは「先にEPAを締結した韓国勢に対抗するため、ものすごいコストダウン努力を強いられてきた。今頃になって、やっと追いついたのかという印象」との声も出ているようです。

いずれにしても、世界での存在感を急速に強めつるあるアジアの2大国、中国とインド。その巨大市場への参加レースに出遅れた日本企業が、商売上手な中国・インドに振り回されふらふらしている隙に、日本の脇を猛烈な勢いで追い抜いていく韓国政府と韓国企業の連合体。こんなことは今までは考えられなかった、信じられない、とあっけにとられる日本企業。

かつての世界の強者、日本の自動車業界と電機業界の心情を象徴的に表している出来事のように感じてなりません。

日本の輸出入総額推移

1979年1月から2010年4月までの日本の輸出入総額のグラフをエクセルを使って作成してみました。
(数字は財務省貿易統計のサイトから)

日本の輸出入総額

こうやってグラフにしてみると、2008年9月のリーマン・ショックのすさまじさが改めてよくわかります。わずか半年足らずで過去10年間に積み上げてきた貿易額の全てが吹き飛んだ、という形になっています。まさに「釣瓶(つるべ)落とし」とはこのことでしょう。

しかしその後はV字回復をして、2010年4月にはほぼ2006年初めの水準にまで戻してきました。「それでもピーク時の8割程度にすぎないから日本経済は良くない」と言われています。

それでは2005年、2006年当時の日本経済の景気は悪かったのでしょうか?

いいえ、日本の上場企業の多くは、3年連続、4年連続で過去最高利益を更新し、「いざなぎ景気」を超えた、超えないなどとおろかな議論をやっていたまさにその時期です。

その景気が良かったはずの時期と同じレベルの貿易額まで回復したのに、日本経済も日本の翻訳業界もいまひとつ元気がないのはなぜでしょうか?

恐らくその一番の原因は、アメリカ経済のバブルの恩恵を一番享受していたのは実は日本企業だった、ということでしょう。過剰消費に慣れきったアメリカ国民のゆるい財布のひもを「通常のこと」と捕らえた多くの日本の大企業も同様に緩みきってしまっていたのです。

しかしその後の調整も反省もそろそろ終盤に差し掛かってきていると感じます。悲しいかな輸出により外貨を稼ぎ、原料や食料を輸入せざるを得ない日本の貿易額は、中長期的に見れば増えることはあれ、減ることはありえないでしょう。

日本の翻訳業界も、これからそろそろ忙しくなってくるはずです。

~産業構造ビジョン 日本は、何で稼ぎ、雇用していくのか~

経済産業省が、日本経済を立て直すための成長戦略「産業構造ビジョン」を発表しました。

インフラの海外輸出や環境関連産業など5つの戦略分野の競争力を強化し、これらの市場規模を2020年までに149兆円拡大させ、258万人の新規雇用を生み出すとのことです。

ここでは、自動車とエレクトロニクス産業に依存した現状の産業構造から、戦略5分野をはじめ多様な産業が経済成長を牽引する構造に転換する必要性を強調しています。

また、新たな“稼ぎ頭”として、原子力発電などインフラ輸出や、次世代送電網など環境・エネルギー産業に加え、医療・介護・健康・子育てサービス、アニメなど文化産業、先端技術を選び、集中支援する方針も示しています。

現在の日本の産業構造は、自動車やエレクトロニクスの外需にあまりにも依存しすぎているので、今回のリーマンショックにより欧米や中国経済が「風邪」をひけばたちまち日本は「肺炎」になってしまう、という産業構造の脆弱性があからさまになってしまいました。

一人の日本人として、日本経済全体の将来の発展のために、この成長戦略がうまく機能してくれることを望むばかりですが、わが翻訳業界にも大きな影響を与える方針転換でもあります。

潮の流れや波の高さや風の強さに注意を払いながら、うまく「波に乗る」ことができるかどうか・・・・・。これがこれからの翻訳業界でサバイバルできるかどうかのポイントになっていくでしょう。

電子部品再び増産投資 新興国にハイテク景気

2010年4月23日 日本経済新聞の朝刊より
「家電や自動車に使う電子部品の増産投資が再び拡大する。日本電産など大手5社の2011年3月期の設備投資額が合計で約2600億円と前期比で5割増えるほか、東芝は約100億円を投じハードディスク駆動装置(HDD)を3割増産。新興国で急拡大するパソコンや携帯電話端末の需要に対応する。国内工場での増産は半導体関連などにも広がりつつあり、外需が国内の設備投資を押し上げる構図が部品産業ではっきりしてきた」

2010.4.23 日経(3)

2010年4月23日 日本経済新聞の朝刊より
2010.4.23 日経(2)

(以上で記事終り)

日本の電子部品が増産体制を整え、輸出が活発になってきた、ということは確かに明るい兆しではありますが、よくよくグラフを見てみると出荷金額もピーク時の7~8割程度に戻ったに過ぎないということがわかります。

2010年4月23日 日本経済新聞の朝刊より

「日本の貿易でアジアの比重が一段と高まっている。財務省が22日発表した2009年度の貿易統計によると、全体の貿易額(輸出額と輸入額の単純合計)に占める対アジアの割合は前年度から4.7ポイント上昇し、50.2%となった。5割を超えるのは統計の比較が可能な1979年度以降で初めて。米欧の景気がもたつくなか、中国などアジア経済がいち早く持ち直したのが背景だ。アジアの経済動向は日本経済の先行きを大きく左右する存在になってきた」

2010.4.23 日経(1)
2010年4月26日 日本経済新聞の朝刊より

「日本の輸出品の低付加価値化が進んでいる。財務省と日銀の統計を使って試算したところ、輸出品の平均単価はこの3年間で13%低下していることがわかった。2008年9月からの金融危機で輸出先のシフトに拍車がかかり、アジア向けの汎用品や中間財などの比重が高まったためだ。新興国市場の重要性が増す一方で、日本経済を引っ張る輸出の採算が悪化するとの見方も出ている」
2010.4.28 日経

(以上で記事終り)

「輸出は増えた、でも売上単価は下落している」、なぜなら「アジアを中心とする新興国向けの輸出が増えたから」ということです。今日本の製造業は採算があうようにどんどん現地生産の比率を高めています。

また昨今の「派遣切り」が世間から非難を浴びたため、さらに追い討ちをかけるように日本の製造業は工場を海外へ移転し、産業の空洞化をますます加速させています。

早く「士農工商」と言う4つの身分制度、つまり「正社員、パート社員、契約社員、派遣社員」という4つの身分制度を廃止し、「万人は皆平等である」、「努力した者、能力のある者が報われる」という精神のもと、人材の流動化を促す社会基盤を整備していかなければ、日本経済はこのまま衰退の一途をたどると大変に危惧しています。

貿易統計:輸出総額45%増 回復基調裏付け--2月

2010.3.24 毎日新聞

財務省が24日発表した2月の貿易統計速報(通関ベース)によると、輸出総額は前年同月比45・3%増の5兆1287億円で、3カ月連続で前年同月の水準を上回り、世界景気の持ち直しを背景とした回復基調を裏付けた。輸出から輸入を差し引いた貿易収支は、約9・2倍の6510億円の黒字だった。輸入総額は、原油輸入価格が前年同月から74・5%も急伸した影響で、29・5%増の4兆4777億円となり、2カ月連続で前年同月を上回った。

輸出品目別では前年2月は大幅に落ち込んでいた自動車が105%増、自動車部品が121・7%増の大幅な伸びとなり、全体をけん引した。トヨタ自動車のリコール問題の影響が懸念されたが、同省は「マイナス要因は見られなかった」(関税局)と分析している。

・・・・(記事の転載ここまで)

さて、例によって「財務省貿易統計」のホームページから該当する数字を拾ってきて検証してみましょう。

【過去3年間の日本の2月の輸出入総額】 (単位:百万円)

2008年2月

2009年2月

伸び率

2010年2月

伸び率

輸出

6,973,675

3,529,575

-49.4%

5,127,898

+45.3%

輸入

6,037,854

3,458,728

-42.7%

4,478,346

+29.5%

新聞記事が出た時の2010年2月の数字は「速報値」だったため、現在の数字と若干の違いはありますが、伸び率に変化はありません。確かに対前年同月に比べれば、輸出が45.3%伸び、輸入も29.5%伸びています。

しかし、伸びたとはいえピーク時の2008年2月に比べれば、輸出は26.5%のマイナスで輸入も25.8%のマイナスとなっています。数字の「率」だけを追い、新聞の見出しだけでイメージしてしまうと、輸出は49.4%下がって、45.3%上がったわけですから、ほぼピーク時の状態に近づいたようにも感じますが、実際にはピーク時の4分の3のレベルに戻ったにすぎない、ということがわかります。

また、翻訳業界から見れば、「輸出の増加」は日英翻訳や日中翻訳の増加を意味し、「輸入の増加」は英日翻訳の増加を意味するのですが、「輸出が増えなければ輸入も増えない」、あるいは「輸出が減れば、輸入も減る」ということがわかります。つまり、日本経済も翻訳業界も「輸出」次第ということなのです。

世界貿易量9%減 戦後最大の下落 WTOの09年の予測

まずは、2009年3月24日の朝日新聞の記事から。

「世界貿易機関(WTO)は23日、09年の世界の貿易量が実質ベースで前年比約9%減となり、第2次世界大戦後で最大の落ち込みになるとの見通しを発表した。昨年秋の金融危機の深まりで世界各地の経済が一斉に減速したため。世界貿易は過去約30年間一貫して拡大してきたが、09年は一転する」

(ここで記事終り)

上記の記事の元になったWTOのレポートはこちらです。

続いては、 ドイツ証券チーフエコノミスト、松岡幹裕氏の「米大恐慌と現在の日本の相違点と類似点」 を下記に紹介します。

「99%の読者やエコノミストは、1929年以降の米国大恐慌と現在の日本を比較するのは、ナンセンスだと考えるであろう。しかし、現在の日本における鉱工業生産の低下幅とスピードは、1929年の米国のそれを上回っている。両者の間には、さまざまな制度的な差異が存在するにもかかわらず、鉱工業生産で計測した日本の景気悪化のスピードや幅が当時の米国よりも深刻だという事実は、われわれが気づかない両者の類似点の存在を示唆している。

大恐慌時の米国を上回る景気悪化のスピード

図表1は、現在の日本と大恐慌時の米国の鉱工業生産について、ピーク月(米国は1929年6月、日本は2008年2月)をそれぞれ100とする指数で表し、横軸もピーク月を基準にそろえて示したものだ。日本の鉱工業生産はピークから11カ月後に31.0%低下したのに対し、当時の米鉱工業生産のピークから11カ月間の低下幅は18.6%であり、現在の日本は大恐慌時の米国の低下ペースを上回る悪化を示している」

2009年3月25日

ながい論文なので、以下は省略しますが、最後に松岡幹裕氏は、こう結んでいます。

「これらを考えると、筆者は、現在の経済体制や経済思想が1920~30年代と全く異なると断じるには、不安を感じるのである」

最後に、NIKKEI NET の記事を紹介します。

”世界経済「2010年末までに回復」 OECD経済政策委 ”

「経済協力開発機構(OECD)は緊急の経済政策委員会を開き、各国の景気対策の効果などから、2010年末までには世界経済が回復に向かうとの認識をまとめた。各国に求められる対策はそれぞれ異なっているが、迅速な政策実施が有効だとの考えで一致した。OECDは今回の議論をもとに世界経済見通し(エコノミック・アウトルック)を作成し、31日に公表する」

この記事の詳細はこちら。

上記の3つの記事を簡単にまとめるとこうなります。

1. 2009年の世界の貿易量は戦後最悪の落ち込みとなる(WTO)。

2. 日本経済が世界大恐慌時のような深刻な状況に陥る可能性も完全には否定できない(松岡幹裕氏)。

3. 2010年末までには世界経済は回復に向かう(OECD)。

「2010年末までには回復に向かう」ということは、少なくとも2010年末頃までは底に落ちていくということです。そこからV字回復できるかどうかは、日本を含めた主要国の政策によるのでしょう。

いずれにせよ、日本の翻訳業界にとっては、まだしばらくの間「冬の時代」が続きそうです。

日本の製造業バブルの崩壊

ソニー1万6,000人削減でも底が見えぬ業績低迷 (ダイヤモンド社 2008.12.15)
東芝、最悪2800億円の赤字 期間従業員4,500人削減 (産経ニュース 2009.1.30)
日立製作所7,000億円の赤字、従業員7,000人配置転換、希望退職(毎日新聞 2009.1.30)
NECも最終赤字に転落、全世界で2万人超の削減へ (日経新聞 2009.1.30)
住友化学:最終赤字150億円 正社員含め2,500人削減 (毎日新聞 2009.2.3)
パナソニック国内外で1万5,000人削減へ 今期3,800億円赤字(産経ニュース 2009.2.4)
シャープ、非正規1,500人削減へ=役員年収最大50%カット(時事通信 2009.2.6)
日産2万人削減へ 3月期、営業赤字1,800億円に(毎日新聞 2009.2.10)
パイオニア1万人削減 正社員6割、薄型TVから撤退(共同通信 2009.2.12)

製造業のうち、主だった大企業の人員削減計画をネット上で拾っただけでも、上記のようになりました。なかでも自動車メーカーの落ち込みは激しいため、下記に一覧でまとめてあります。

国内自動車メーカーの人員削減数(毎日jpより)

社名

国内の人員削減数

トヨタ

6,000人

ホンダ

4,310人

日産

13,500人

スズキ

960人

マツダ

2,000人

三菱自

3,300人

ダイハツ

500~600人

富士重

1,200人

いすゞ

1,400人

日野自

2,100人

三菱ふそう

580人

日産ディ

900人

合 計

36,750~36,850人


自動車産業の裾野は広いため、自動車メーカーへ納入する部品メーカー、半導体メーカー、工作機械メーカーの惨状は言うまでもありません。今まで輸出産業の花形と言われ続けてきた、日本の自動車メーカーや電機メーカーの落ち込みは目も当てられず、まさに戦後最大の危機と言っても過言ではないでしょう。

1990年代初めの「日本経済のバブル崩壊」の時は、「不動産を始めとする資産バブルの崩壊」でした。2000年頃に起きた「ITバブルの崩壊」は、米国を始めとする新興IT企業が急成長し、その行き過ぎにブレーキがかかり、文字通りの「ITバブルの崩壊」が世界的規模で起こりました。

今回はどうでしょうか?一般的には、アメリカのサブプライムローンに端を発する「米国発金融危機」が「世界同時不況」へつながったと言われています。しかし、外国はともかく日本に限って言えば、前々回バブル崩壊のように不動産価格がクラッシュしたわけでもなく、金融機関が不良債権で危機に陥っているわけでもありません。

際立って悪いのは、製造業なのです。6年間連続で過去最高利益を更新し続けてきた、「製造大企業のバブルの崩壊」と言ってもよいのかもしれません。

人によっては、「構造改革により、日本政府が製造業への人材派遣を認めたから今回の大量首切りにつながった」という人もいるようです。しかし、それはちょっと違うと思います。なぜなら派遣を認めなければ、日本の工場は、雪崩を打って中国やベトナムへ移転し、今以上に産業の空洞化が進んでしまっていたでしょう。

「終戦直後」や「オイル危機」や「資産バブルの崩壊」の時と同じく、今まさに既存の価値観が音を立てて崩れ始めつつあります。

戦後の日本は一貫して、外国から資源を輸入し、それを加工して輸出し、外貨を稼ぎ今日の繁栄を築きあげてきました。

「終戦直後」は、それまでの植民地支配による天然資源の確保をあきらめ、世界中から一番安い資源を選び、輸入し、加工後輸出し、工業国としての基礎を固めました。

「オイルショック」では、99%以上輸入している石油価格の暴騰に対処すべく、猛烈な省エネ研究開発に成功し、世界に先駆けてもっとも環境にやさしい製造業を作り上げました。

「資産バブルの崩壊」では、多くの日本の製造業は「土地担保主義」に見切りをつけ、グローバル化の時流に乗り遅れまいと、捨て身で海外に進出して成功を収めてきました。

また、前々回の「資産バブルの崩壊」では、日本は不景気に苦しみましたが、世界は逆に好景気に沸いていたため、日本のお家芸である「輸出」でなんとか景気を取り戻すことができました。

前回の「ITバブルの崩壊」では、世界的にIT関連企業はショックを受けましたが、他の分野の企業は特に痛手を負っていたわけではありません。

さて、今回の「日本製造業のバブルの崩壊」ですが、世界的な大不況に加え、日本はなぜか今回の不況の発信元であるアメリカよりも、経済が悪化しています。つまり、輸出もダメ、輸入もダメ、という状況です。

加えて、米国マイクロソフトも5,000人の人員削減を発表しているように、IT関連企業にも今までになく暗い影を投げかけています。

さて、こんな中、日本の翻訳業界は何をしたらよいのでしょうか?

私は「ネット戦略」と「知的財産」が今まで以上に大きなキーワードになってくると考えています。

企業のグローバル化とIT革命

20世紀に発達した通信・航空・運送技術の進歩は、企業のグローバル化を加速させ、巨大な「多国籍企業」も多数生み出しました。

当時は、東西冷戦による微妙なバランスのもとに、軍事的、政治的、経済的「安定」が続き、米国とソ連がにらみ合いを続けていたため、人々も企業も、ある意味暴れようにも暴れられなかったとも言えます。

しかし、1989年11月に起きた「ベルリンの壁崩壊」は、旧東欧諸国を一挙に自由主義経済へと参入させました。西側諸国は、失業者に苦しむ旧東欧圏に目をつけ、こぞって東側諸国に工場を建て、安い人件費で作った製品をどんどん西側諸国で売りさばき始めたのです。

アジアでも中国が自国に市場経済を導入し、NIES、ASENに負けじと急成長を続けています。同様に人口・資源大国であるインドやブラジルも後に続き、その結果、世界の工業用資源が逼迫し、中近東やアフリカ諸国のような資源大国も経済発展をとげるという、地球的規模での大規模な経済発展が21世紀の初めに実現したのです。

一方20世紀後半から始まった「IT革命」は、大量の情報を迅速かつ安価に伝達させることに成功しました。

情報を一方的に流すテレビ、ラジオ、新聞、映画とは違い、インターネットは非常に安価なコストで情報が縦横無尽に世界各地を駆け巡ります。また、PCを持てない地方の人々には、携帯電話が決定的な影響を与えました。

たとえばかつて中国奥地の人々は、「人民日報」を読むか、政府の流すテレビのニュース番組を見るしか情報を得る手段がありませんでした。それが今では携帯電話を手にすることにより、クチからクチへ「真実の声」が縦横無尽に流れ始めたのです。

人々は「良い暮らし」を得るためにはどうしたらよいのか、携帯電話を使って自由に情報交換を行っています。もう今や政府による情報統制は効きめがありません。

世界中の企業が、生き残りをかけ必死になって少しでも「安い人件費」の地域に工場を建て、製品を製造しようと競い合います。また貧しい地方の人々は、少しでも「良い暮らし」を求めて、命を懸けて移動を試みます。

その結果、世界的規模で「貧富の格差」が拡大してきていると言われています。確かにそうかもしれません。かつての世界は、東西冷戦による「東西の壁」と、先進諸国と発展途上国による「南北問題」により、バランスがとれていました。「バランスがとれていた」というのは、「東」と「西」はまったく別世界、別経済であり、「先進国」と「途上国」はまったく別世界、別経済だったからです。

つまり貧しい者は常に貧しく、「豊かな人」の存在すら知らなかったわけですから、羨ましがることもなく、また怒る必要もなかったからです。

「IT革命」は、世界中の眠れる民衆の目を覚まさせてしまいました。同時に世界的バブルに酔い、マネーゲームに狂奔した先進諸国の「富裕層」は行き過ぎた資本主義、つまり極端な弱肉強食が生み出す貧富の拡大という問題点に今気づき始めたのかもしれません。

今はリーマンブラザースに始まった、金融危機という目の前の「火事」を消すのに躍起でしょうが、少し落ち着いたら「資本主義反省会」がマスコミの間で賑わうに違いありません。

非製造業の海外進出加速 07年度 対外投資35%増加

2008.8.11 NIKKEI NET

流通や運輸、通信など非製造業の海外投資が加速している。2007年度の対外直接投資額は約4兆3000億円と前年度に比べて35%増え、投資残高も約28兆円(07年末)に膨らんだ。

・・・・(記事の転載ここまで)

「非製造業の投資額はバブル期には、不動産投資などで年間6兆円を越えたが、2005年度は2兆円を下回る水準に落ち込んでいた」 (日経新聞の紙媒体)とのことなので、日本人がいかにバブル期に海外で騙され、海外の不動産を買い漁り、お金を失っていったかがわかります。

つまり、日本人に自国の不動産をたっぷり買わせたあとに、自国の法律を変えてお金を全部巻き上げてしまうという海外ではよくある、単純にして大掛かりな手口です。バブル期にオーストラリアのゴールドコーストあたりで、盛んに日本人がカモにされたと、後日大手都市銀行の幹部から聞かされたことがあります。海外事情に”うぶ”な日本人などは、”赤子の首をひねる”ように騙せたでしょう。

このように海外直接投資の中には、不動産投資も含まれるわけですが、海外子会社への出資や企業買収など”事業目的への投資”が本来の中心的な中身となります。

さて、製造業が新興国に工場を建てて投資するのはよくある話ですが、”非”製造業が盛んに海外へ投資しているとは、一体どういうわけなのでしょうか?

流通、運輸、鉱業、通信等の内需型産業が少子高齢化の進む国内市場に見切りをつけて、活路を新興国へ求めていることは明らかです。また、海外へ進出した日本企業相手のビジネスも当然視野に入っているでしょう。

2004年(平成16年)の国内総生産に占める第二次産業の割合は、25.7%、第三次産業の割合は73.1%となっています。(→ 2007年度版「ものづくり白書」と翻訳業界

GDPの7割以上を占める日本の非製造業ですが、「それでも日本の非製造業の海外事業の規模は欧米と比べなお低水準だ。対外直接投資残高のうち非製造業が占める割合には日本は45%だが、米国やドイツなど欧米主要国は全体の70~80%」(日経新聞の紙媒体)とあります。

また、「新興国ではサービス業などの外資規制が厳しく、収益につなげるには通商交渉による投資の自由化も欠かせない」(同)ともあります。

要するに、企業の努力だけではなく、日本の政治力が求められるということでしょうか?

またぞろ、バブル期における日本人の海外不動産投資の悪夢が再現されないようただただ祈るばかりです。

いずれにせよ、日本の翻訳業界には製造業に関係する技術文書だけでなく、非製造業にまつわる様々な関連文書の需要が増加していくことでしょう。

2050年の経済大国

ゴールドマン・サックス・アセット・マネジメントのサイトより

brics1

brics2

・・・・(記事の転載ここまで)

「中国経済は、2016年には日本を追い越し、2041年までには米国すらも上回り、世界最大の経済大国となる可能性がある」とのことです。

昔は欧米から輸入した製品を”舶来品”と呼び珍重し、欧米で勉強して帰ってきた人のことを”洋行帰り”などと称えていた時代がありましたが、近い将来、中国製品を”舶来品”と呼び、中国帰りの人を”洋行帰り”と呼ぶ時代が来るのでしょうか?

世界経済に占める日本のシェアが小さくなれば、当然の理屈で中長期的には、”円”は安くなっていくでしょう。
私が子供の頃、1ドルは360円でした。日本は天然資源のほとんど全てを海外に依存し、食料の60%、家畜に与える飼料の75%を海外に依存して生きています。

したがって、単純に考えれば、円安になると、給料が増えずに物価が2倍3倍になるわけですから、当然日本人は、現在のような豊かな暮らしができなくなるわけです。ちょうど「Always 3丁目の夕日」のような、昭和30年代の日本に戻っていくわけです。

ただ私は、そこまで急激に日本が落ちて行くとは考えていません。なぜならば”技術立国日本”の余韻はあと10年や15年は続くと楽観的に考えているからです。ただそれも、これからの”構造改革”がいかに断行されるか否かにかかっているとは思いますが。

資産形成の面で考えると、日本人は”円”だけを持っていると、どんどん貧乏になっていってしまします。長期で運用するお金、退職金や保険や定期預金などは、円で預けて他国の通貨で運用するという、ハイリスク・ハイリターンの時代はもはや避けて通れないでしょう。

翻訳会社にとっても”円”だけにこだわっていたのでは、いくら仕事をやっても儲からない、お金が貯まらない、という事態に陥る時代になってくるわけです。

これはあくまでも”私の予想”ですが、短期、中期はともかくとして、長期的なトレンドに関して言えば、円が安くなっていくことはほぼ間違いないと考えています。

日本車海外生産、BRICsが北米を逆転――2011年にも年500万台に

2008.1.6 NIKKEI NET

日本の自動車メーカーによるBRICs(ブラジル、ロシア、インド、中国)での生産台数が2011年にも年500万台を超え、北米生産を逆転する見通しとなった。

・・・・(記事の転載ここまで)

例によって、Web上での情報は極端に少ないので、日本経済新聞の”紙情報”から拾ってきた数字を下記に並べます。

【日本の自動車メーカーによるBRICsでの増産計画】
中国 (2006年 100万台 ⇒ 2011年にも260万台)
インド(2006年 75万台 ⇒ 190万台)
ロシア(2006年 ゼロ ⇒ 50万台)
ブラジル(2006年 17万台 ⇒ 40万台)

各社の計画を集計するとBRICs4カ国での生産台数は2010年台初めで540万台と、2006年(200万台)の3倍近くに増える。2006年に400万台だった北米生産は伸びが鈍化し、480万台前後にとどまる。

(以上で新聞からの情報は終わり)

戦後の日本経済は、途上国から資源を輸入し、加工した製品を欧米先進国へ輸出することにより外貨を稼ぎ、経済的な繁栄を謳歌してきました。

そして欧米各地に工場を建て、その国での雇用を確保し、その国へ税金を払うことにより、”日本の一人勝ち”という批判をかわして来たのです。

しかし、今後単純にBRICsでの生産を増やし、北米での売上を伸ばしていけば、またまた日米貿易摩擦の象徴として槍玉に挙げられてしまうでしょう。

”グローバル化”には常に”雇用問題”と”エネルギー問題”が付きまといます。たとえばブラジルです。

ブラジルは世界最大のコーヒー産出国として有名ですが、多くの人手を必要とするコーヒー農園では、多くの労働者が働いています。その農園で今大きな変化が起きています。

原油価格の暴騰により、代替エネルギーである”バイオエタノール”が注目を浴びていますが、作付けから収穫まで7~8年かかるコーヒーの樹木に対して、バイオエタノールの原料であるトウモロコシ、大豆、サトウキビは、1年で収穫ができます。

しかも、トウモロコシ、大豆、サトウキビは大型トラクターや飛行機、工作機械を使って、大規模経営ができるため、農園の維持や収穫に多数の人手を要するコーヒー農園が嫌われて、今次々とトウモロコシ、大豆、サトウキビ畑へと転換されているのです。

ブラジルへトラクターや農機具を売る日本企業にとっては、まさに”儲け時”なわけですが、失業したコーヒー農園の労働者達が、大地主を相手に暴動を起こし、地主は地主で私兵を雇い、武力装備をして自衛している、と聞いています。

ここでもまた、”グローバル化”が引き起こす新たな”収入格差”の問題が、新たな火種を生みだしています。

”経済のグローバル化” ⇒ ”格差拡大” ⇒ ”テロの勃発” という21世紀の世界が抱える深刻な問題の縮図が今、BRICs内部でも着実に進行しているようです。

5月速報!輸出15.1%増、輸入15.5%増 財務省貿易統計

2007.6.21 財務省

報 道 発 表
平成19年5月分貿易統計(速報)の概要

平成19年5月分については、輸出は自動車、鉄鋼等が増加し、対前年同月比15.1%の増加となった一方、輸入は非鉄金属鉱、通信機等が増加し、15.5%の増加となった。その結果、差引は9.3%の増加となった。

●総額
【輸 出】 金額 6兆5,651億円 (+15.1%) 42ヵ月連続の増加
【輸 入】 金額 6兆1,755億円 (+15.5%) 39ヵ月連続の増加
【差 引】 金額 3,895億円 (+9.3%) 7ヵ月連続の増加
(注)伸率及び増加・減少は全て対前年同月比による。

・・・・(記事の転載ここまで)

日本の輸出総額は、30年前と比べて3.77倍、20年前と比べて2.13倍、10年前に比べ1.68倍拡大しています。同じく輸入は3.50倍、3.12倍、1.77倍拡大しています。

年別輸出入総額表(財務省貿易統計)

暦 年   輸出(千円)   輸入(千円)
1976年 19,934,618,464 19,229,168,610
1986年  35,289,713,887  21,550,717,070
1996年  44,731,311,206  37,993,421,106
2006年  75,246,173,392  67,344,293,072
(このデータの詳細はこちら

まさに「貿易立国日本」を表す数字が明確に示されています。「バブルが崩壊」しても、「失われた15年」があっても、「デフレ経済」があっても、日本の輸出入は着実に増え続けてきたわけです。

さらに今年(2007年)に入っても、大幅に増え続けています。このまま行けば、おそらく対前年度で10%以上の伸びをみせるでしょう。まさに「高度経済成長産業」です。全世界の企業を巻き込んだグローバリゼーションの波は、日本の貿易額を今後も確実に増やし続けていくでしょう。

日本全体の貿易額がこれだけの伸びを見せているわけですから、わが翻訳業界全体も同じ比率で拡大してきたずです。今後も貿易の発展とともに着実に伸び続けていくはずです。

設備投資の業種別動向

2007.6.18 内閣府

設備投資の動きに先行性がみられる設備過剰感(日銀短観3月調査)を業種別にみると、設備投資が引き続き堅調な電気機械、一般機械、鉄鋼、運輸通信等は直近で不足超となっている(図2)。

setsubi2

・・・・(記事の転載ここまで)

製造業の大部分で、設備過剰感がマイナス、つまり設備の不足感が出始めています。不足した設備をどこで補うのでしょうか?とりあえずは海外への委託生産から始まっていくのでしょうか?

現在景気の良い日本企業は、地球規模で生産し販売網を世界へ広げる大企業および中国需要を満たす素材産業や重厚長大産業だと思います。上記の統計は、大中小企業全てを対象に調査したものだと思うので、設備の不足感が、実際、産業の裾野まで広がっているのならばよいのですが。

国内IT市場:2007年は2.1%増の12兆2474億円、2011年に13兆円強–IDC予測

2007.6.1 CNET Japan

調査によると、2006年の国内IT市場規模は、前年比2%増の11兆9948億円。同社による予測では、2007年に12兆2474億円(前年比2.1%増)に拡大。また、2006~2011年の年間平均成長率は1.7%と試算しており、2011年のIT市場規模は13兆788億円に達すると見込んでいる。
(中 略)
また、2007年以降は、2008年4月に始まる日本版SOX法の適用などにより、上場企業を中心とした、内部統制のためのIT投資が国内IT市場を押し上げると予測している。

・・・・(記事の転載ここまで)

「日本版SOX法」とは、

「相次ぐ会計不祥事やコンプライアンスの欠如などを防止するため、米国のサーベンス・オクスリー法(SOX法)に倣って整備された日本の法規制のこと。上場企業およびその連結子会社に、会計監査制度の充実と企業の内部統制強化を求めている」

とあります(→詳細はこちら)

米国最大のエネルギー会社だったエンロンが、2001年12月、チャプター11(米連邦破産法11条)を適用して破綻しました。米国最大級の会計事務所アーサーアンダーセンと共謀の上、簿外で巨額の負債隠しを行っていたという不正会計事件でした。

私が学生だった、70年代後半から80年代前半のころ、米国の経済学、会計学、経営学は常に光り輝く憧れの的でした。日本の企業会計と監査の仕組みと米国のそれとは、まるで日本のプロ野球とメジャーリーグ(当時は大リーグと呼んでいました)の違いのように、比べることすらナンセンスであるかのごとく、偉大な存在だったのです。

しかし、その後野茂やイチローがメジャーリーグで大活躍するのを見につけ、日米野球の力の差がそんなにないことに気がつき始めました。

同様に、2001年に米国のエンロン事件を知ったとき、私は「ブルータス!おまえもか!」という思いで、驚愕しながら事件を注目していました。あのアメリカがこんなずさんな会計システムや監査システムを持っていたとは、夢にも思わなかったからです。

ただその後のアメリカの対応のすばやさは、さすがでした。大統領の鶴の一声で委員会が設置され、2002年4月には下院議院で可決、同年7月には各種不正会計事件への対応法案、SOX法が成立したのです。この迅速な対応や危機管理だけは、決して日本にはマネのできない、アメリカのすごいところでもあります。

さて、日本ではこの「日本版SOX法」が来年の4月からいよいよ施行されます。これによりIT関連への投資が一段と強まっていくという見方が強いようです。

企業のグローバル化に伴い、企業会計も国際化し、きわめて複雑になってきました。粉飾、脱税、資産隠し、所得隠しの手口もまさにグローバル化し、「見解の相違」もまたグローバル化してきているわけです。

この21世紀、金融や会計にともなう翻訳需要はますます重要性を帯び、需要もいちだんと拡大していくことでしょう。

3月の全国消費者物価、0.3%下落――2カ月連続

2007.4.27 NIKKEI NET

総務省が27日発表した3月の全国の消費者物価指数(CPI、2005年=100)は、生鮮食品を除く総合で99.6と、前年同月比0.3%下落となった。下落は2カ月連続。項目別で価格の下落幅が大きかったのは家具・家事用品(1.7%下落)だった。生鮮食品を含む総合では99.8と0.1%下落した。

・・・・(記事の転載ここまで)

上記グラフを見れば、1998年の半ば以降、日本はデフレ基調で来ていることがよくわかります。かねてよりの私の持論、このデフレ基調は、今後長期にわたって続くと信じています。

理由のひとつは、過去にも何回かこの話題に触れましたが、現在日本で一番力をもつグループ、高齢者の方々がそれを望んでいるからです。

土地・家屋を所有し、1,400兆円とも言われる個人金融資産の大半を所有し、かつ年金収入のある高齢者達にとって、デフレはインフレよりも居心地がよいのです。満足している人たちは、決して声高には叫びません。デフレ政策を推し進めた小泉政権があんなに人気が高かった理由も、実はそこにあると私は考えています。

それに加えて、日本がデフレになるもっと根源的な理由は、簡単に言えば、下記の3つだと私は考えています。

1. 米ソ冷戦の終結による軍拡競争の停止
2. 中国や東南アジア諸国からの低価格製品の流入
3. 日本におけるピラミッド構造社会の終焉

ピラミッド構造社会とは、毎年新入社員が入社して、常に後輩社員や部下があふれている、という組織構造のことです。

このピラミッド型組織には、企業内にとどまらず系列、つまり企業の下請け構造も含まれます。

かつて日本では、A社の下請け仕事をしている会社が、A社のライバル会社、B社やC社の仕事を請けるなど「とんでもないこと」でした。

私は1981年、ちょうど第一次日米自動車貿易摩擦が勃発して、米国自動車業界が一触即発状態にある時、サンフランシスコ郊外にあるGM(ゼネラルモータース)の工場を見学に訪れたことがあります。

日本人を見る、米国人工場労働者たちの鋭い視線と、「日本の自動車業界をやっつけろ!」と書かれた巨大な横断幕が今でも忘れられません。

ただその時、違う意味で少し驚いたことがありました。

GMの工場の従業員駐車場です。GM車はもちろんですが、フォード、クライスラーは言うおよばず、ドイツ車や日本車も数多く見られました。

私がそのことを指摘すると、案内してくれたGMの従業員の一人が、「どのメーカーの車を買おうが会社には関係ない。個人の問題だから。私の車は私の車だ」とこともなげに話していました。

それから7年後、私は仕事で愛知県にあるD社の工場を訪ねたことがあります。D社はT社系列の自動車部品メーカーでした。工場の入口で入場手続きをしていると、その時たまたまトラックで納品に来た、ある出入りの業者が立ち往生しています。

なぜならばその業者は、T社のライバル会社、N社製のトラックに乗っていたからでした。結局そのトラックは、守衛さんに門を通してもらえず、裏口へ回されていました。

また、こんな経験もしました。私がT社製の車に乗って、神奈川県内にあるN社の工場へ納品に行った時のことです。工場の入り口で守衛さんに呼び止められ、正門を通してもらえず、はるかかなたの裏門へ回されました。私は裏門の駐車場から目的地まで、延々と歩かねばなりませんでした。

「日本の会社って、なんて了見が狭いのだろう!」――こう思ったのは私だけでしょうか?

しかし、今の日本企業は違います。なぜならば、世界を相手に戦っているからです。購買も販売も広い視野で考えなければなりません。もうお隣どうしでいがみ合っている時代は、とうの昔に終わったのです。今では、D社もほとんど全ての自動車メーカーへ部品を供給しています。

グローバリゼーションの影響が、こんなところにも出てきているのです。

海外事業活動基本調査結果概要

2007.3.30 経済産業省統計

第36回
海外事業活動基本調査結果概要

- 平成17(2005)年度実績 -

売上高は製造業、非製造業ともに大幅に増加し、過去最高

2005年度の現地法人の売上高は、184兆7884億円、前年度比13.5%の増加となり、過去最高となった。このうち、製造業が87兆3340億円、同10.1%の増加、非製造業は97兆4544億円、同16.7%の増加と、製造
業、非製造業ともに大幅な増加となった。

アジアが大幅に増加し、北米との水準差は縮小

2005年度の地域別売上高をみると、北米は66兆1548億円、前年度比10.7%の増加となった。このうち、製造業は29兆9982億円、同5.7%の増加、非製造業は36兆1566億円、同15.2%の増加となっている。

アジアは65兆2723億円、前年度比23.8%と大幅に増加し、北米との水準の差は縮小した。このうち、製造業は36兆1382億円、同16.2%の増加、非製造業は29兆1342億円、同34.7%の増加となっている。

アジアの内訳をみると、中国は製造業、非製造業とも大幅に増加したことから23兆2353億円、前年度比25.3%の増加、ASEAN4は18兆6604億円、同16.6%の増加、NIEs3は21兆630億円、同28.7%の増加となった。

ヨーロッパは38兆2402億円、前年度比2.7%の増加となった。このうち、製造業は15兆9001億円、同4.0%の増加、非製造業は22兆3402億円、同1.8%の増加となった。

なお、BRICsは17兆798億円、前年度比48.3%の増加となっている。

・・・・(記事の転載ここまで)

詳細かつ膨大な量の情報なので、翻訳に関係ありそうな情報だけをほんの少し抜粋しました。

なお、上記中で使われている略語の国々は下記となります。

NIEs3 : シンガポール、台湾、韓国
ASEAN4 : マレーシア、タイ、インドネシア、フィリピン
BRICs : ブラジル、ロシア、インド、中国(除.香港)

ご多分に漏れず、アジアの躍進が著しいわけですが、売上だけでなく、経常利益においても、アジアの重要性が増しています。

アジア    2兆4960億円
北米     2兆4053億円
ヨーロッパ    9416億円
(アジアの経常利益は03年度以降、北米を上回っている)

アジア地域での経常利益の内訳は、下記です。

ASEAN4   9738億円
NIEs3    6845億円
中国    6332億円

NIEs3が若干ですが、中国を上回り、ASEAN4が圧倒的に利益をあげているところが意外でした。

一方、現地法人の撤退数はヨーロッパとアジアで増加。

アジア   242社 (前年度比 4社増加)
ヨーロッパ 122社 (前年度比24社増加)
北米    135社 (前年度比 1社減少)

アジアの内訳は下記で、なかでも中国は大幅に増加しています。

中国    109社(前年度比17社増加)
ASEAN4    71社(前年度比 6社減少)
NIEs3    51社(前年度比 9社減少)

撤退比率は、北米4.6%、ヨーロッパ4.9%で全地域の3.4%よりも高くなっているところが気になります。

物価世界一、今年もオスロ=東京は5位、大阪6位に後退-英社番付

2007.3.9 時事通信

【ロンドン8日時事】英経済誌エコノミストの調査部門、エコノミスト・インテリジェンス・ユニット(EIU)が8日までにまとめた世界主要都市の生活費番付によると、ノルウェーのオスロが昨年に続き「最も物価の高い都市」の座を維持した。東京は5位(昨年は2位)、大阪・神戸は6位(同4位)とそれぞれランクを下げた。
2位にはパリが入り、以下コペンハーゲン、ロンドンと欧州の都市が上位を占めた。このほか、経済の急成長を背景にモスクワが29位から26位に順位を上げ、ニューヨーク(28位)を上回った。
EIUでは「欧州通貨高の影響が大きいが、日本の物価はほとんど変化がないのに対し、欧州の物価は上昇している」と分析している。

・・・・(記事の転載ここまで)

日本の物価は今後長期にわたり、下がり続けるでしょう。

緩やかなデフレが十数年、あるいは数十年間続くことにより、日本の国際競争力は高まり、日本国民の生活レベルは一段と向上していくはずです。

なぜなら日本の金融資産と不動産の大半を所有する、「日本の強者」たち、つまり「老人」たちが、それを望んでいるからです。

1400兆円とも言われる個人金融資産の大半を所有し、かつ年金も定期的に入ってくる彼らにとって、物価が下がることは実に歓迎すべきことであり、誰も声高に文句を言う人はいません。居心地の良い人たちは常に黙っているのです。

物価を下げ、人件費を下げたうえで、知的財産を海外へ売り、外貨を稼いでいく以外に日本人が豊かな暮らしを継続させていく方法はありません。他の先進諸国に比べ極端に少ない観光収入も、物価を下げることにより多少好転していくでしょう。

つまりデフレは日本にとって、「五十害あるけど、百利もあり」と考えるべきなのです。デフレ経済を推進させた小泉政権があんなに人気が高かった最大の理由はここにある、と私は考えています。

GDP速報、年4.8%増 10~12月期

2007.2.15 Sankeiweb

内閣府が15日発表した平成18年10~12月期の国内総生産(GDP、季節調整値)速報は、物価変動を除く実質で前期(7~9月期)比1.2%増、年率換算で4.8%増と市場予測を上回る高い伸びとなった。プラス成長は8期連続。ただ、日銀の追加利上げ判断に影響するとして注目された個人消費は前期比1.1%増と増加に転じたものの、前期の落ち込みを取り戻したにとどまり、日銀の判断はますます難しくなっている。

物価の影響を含めた名目GDPは1.2%増(年率5.0%増)で、16年10~12月期以来8四半期ぶりに名目成長率が実質成長率を上回り「名実逆転」を解消した。

速報段階で年率0.8%増だった前期の実質成長率は0.3%増に改められた。

物価の総合的な動きを示すGDPデフレーターは前年同期比で0.5%減で、依然としてマイナスが続いているが、マイナス幅は前期の0.7%減より縮小した。

寄与度でみると、内需が1.0%、輸出から輸入を差し引いた海外需要が0.2%のプラスで、マイナス寄与は民間在庫のみだった。

・・・・(記事の転載ここまで)

本日の日経新聞、紙媒体の情報によると、「日本経済が輸出で稼ぐ傾向を強めている。2006年の日本の国内総生産(GDP)に占める輸出の比率は15%に近づき、過去最高となる見通し。

中国などの新しい市場が拡大していることや、コスト削減や円安などで企業の輸出競争力が高まったことが背景だ。

人口減時代に突入した日本の海外頼みは今後も強まる方向。世界経済の変動に揺れ動きやすい経済構造にもなる」とあります。

翻訳会社の社長としては、輸出が増えることは、実に嬉しいことですが、上記の産経新聞を含め、他のNET上の記事は、どこも「内需が1%プラス、外需が0.2%プラスなので、内需主導型の景気回復」としか書かれていません。

実は原油高により増えた輸入を上回る輸出があったのです。

一方「物価の総合的な動きを示すGDPデフレーターは前年同期比で0.5%減」ということで、物価が下がりながら、名目GDPも増えているので理想的な経済成長だとも言えます。

現在の日本人は、実はデフレ社会にどっぷりつかり、十分満足しているのです。小泉政権の支持率が高かったのも実はそこらへんにあると、私は考えています。

古いタイプの経済学者は、われわれが大学の授業で習ったように、「デフレ=不況=悪」と考えているので、なぜ民衆が小泉政権を支持したのかが理解できません。したがってデフレ社会は、まだ当分続く、と私は予想しています。

WTO交渉「日本は主導権発揮を」・対日貿易政策審査

2007.2.4 NIKKEI NET
世界貿易機関(WTO)は2日、日本の貿易政策を審査する会議を開いた。参加国からは「日本は多角的通商交渉(ドーハ・ラウンド)でもっと主導権を発揮すべきだ」との意見が相次いだ。日本は「戦後最長の景気回復をテコにした積極的な市場開放で自由貿易体制に貢献すべきだ」との声も多かった。

・・・(記事の転載ここまで)

「戦後最長の景気回復をテコにした積極的な市場開放で自由貿易体制に貢献すべきだ」との声も多かった、とのこと。「景気回復」云々はともかくとして、日本市場が閉鎖的で競争を排除し続けてきたことは、事実です。

電気製品や自動車などの耐久消費財ならびに物をつくるための装置(生産財)といった工業技術分野の競争力だけが突出していて、それが大量の外貨を稼いできました。

しかし、それ以外の分野では他の先進国から大きく出遅れています。

競争のない擬似社会主義国家が長く続いたため、「いびつな物価高」と「貧しい日常生活」に日本人は慣らされ、文句も言わずに働かされ続けてきました。

ただこの10年ほどで日本もずいぶんと変わってきたと思います。いや、変わらなければ存在しえなくなってきたからです。

特に大きく世界から遅れていた金融、流通などの分野ではずいぶんと改善がされてきています。

「真実など知る必要はない」「みんなで痛みを分かち合うんだ」「黙って働け」という日本人特有の体質がそうさせてきたのでしょうが、インターネットの発達で、今までの「日本の常識」が大きく変わろうとしています。日々痛切に感じます。