日本の製造業バブルの崩壊

ソニー1万6,000人削減でも底が見えぬ業績低迷 (ダイヤモンド社 2008.12.15)
東芝、最悪2800億円の赤字 期間従業員4,500人削減 (産経ニュース 2009.1.30)
日立製作所7,000億円の赤字、従業員7,000人配置転換、希望退職(毎日新聞 2009.1.30)
NECも最終赤字に転落、全世界で2万人超の削減へ (日経新聞 2009.1.30)
住友化学:最終赤字150億円 正社員含め2,500人削減 (毎日新聞 2009.2.3)
パナソニック国内外で1万5,000人削減へ 今期3,800億円赤字(産経ニュース 2009.2.4)
シャープ、非正規1,500人削減へ=役員年収最大50%カット(時事通信 2009.2.6)
日産2万人削減へ 3月期、営業赤字1,800億円に(毎日新聞 2009.2.10)
パイオニア1万人削減 正社員6割、薄型TVから撤退(共同通信 2009.2.12)

製造業のうち、主だった大企業の人員削減計画をネット上で拾っただけでも、上記のようになりました。なかでも自動車メーカーの落ち込みは激しいため、下記に一覧でまとめてあります。

国内自動車メーカーの人員削減数(毎日jpより)

社名

国内の人員削減数

トヨタ

6,000人

ホンダ

4,310人

日産

13,500人

スズキ

960人

マツダ

2,000人

三菱自

3,300人

ダイハツ

500~600人

富士重

1,200人

いすゞ

1,400人

日野自

2,100人

三菱ふそう

580人

日産ディ

900人

合 計

36,750~36,850人


自動車産業の裾野は広いため、自動車メーカーへ納入する部品メーカー、半導体メーカー、工作機械メーカーの惨状は言うまでもありません。今まで輸出産業の花形と言われ続けてきた、日本の自動車メーカーや電機メーカーの落ち込みは目も当てられず、まさに戦後最大の危機と言っても過言ではないでしょう。

1990年代初めの「日本経済のバブル崩壊」の時は、「不動産を始めとする資産バブルの崩壊」でした。2000年頃に起きた「ITバブルの崩壊」は、米国を始めとする新興IT企業が急成長し、その行き過ぎにブレーキがかかり、文字通りの「ITバブルの崩壊」が世界的規模で起こりました。

今回はどうでしょうか?一般的には、アメリカのサブプライムローンに端を発する「米国発金融危機」が「世界同時不況」へつながったと言われています。しかし、外国はともかく日本に限って言えば、前々回バブル崩壊のように不動産価格がクラッシュしたわけでもなく、金融機関が不良債権で危機に陥っているわけでもありません。

際立って悪いのは、製造業なのです。6年間連続で過去最高利益を更新し続けてきた、「製造大企業のバブルの崩壊」と言ってもよいのかもしれません。

人によっては、「構造改革により、日本政府が製造業への人材派遣を認めたから今回の大量首切りにつながった」という人もいるようです。しかし、それはちょっと違うと思います。なぜなら派遣を認めなければ、日本の工場は、雪崩を打って中国やベトナムへ移転し、今以上に産業の空洞化が進んでしまっていたでしょう。

「終戦直後」や「オイル危機」や「資産バブルの崩壊」の時と同じく、今まさに既存の価値観が音を立てて崩れ始めつつあります。

戦後の日本は一貫して、外国から資源を輸入し、それを加工して輸出し、外貨を稼ぎ今日の繁栄を築きあげてきました。

「終戦直後」は、それまでの植民地支配による天然資源の確保をあきらめ、世界中から一番安い資源を選び、輸入し、加工後輸出し、工業国としての基礎を固めました。

「オイルショック」では、99%以上輸入している石油価格の暴騰に対処すべく、猛烈な省エネ研究開発に成功し、世界に先駆けてもっとも環境にやさしい製造業を作り上げました。

「資産バブルの崩壊」では、多くの日本の製造業は「土地担保主義」に見切りをつけ、グローバル化の時流に乗り遅れまいと、捨て身で海外に進出して成功を収めてきました。

また、前々回の「資産バブルの崩壊」では、日本は不景気に苦しみましたが、世界は逆に好景気に沸いていたため、日本のお家芸である「輸出」でなんとか景気を取り戻すことができました。

前回の「ITバブルの崩壊」では、世界的にIT関連企業はショックを受けましたが、他の分野の企業は特に痛手を負っていたわけではありません。

さて、今回の「日本製造業のバブルの崩壊」ですが、世界的な大不況に加え、日本はなぜか今回の不況の発信元であるアメリカよりも、経済が悪化しています。つまり、輸出もダメ、輸入もダメ、という状況です。

加えて、米国マイクロソフトも5,000人の人員削減を発表しているように、IT関連企業にも今までになく暗い影を投げかけています。

さて、こんな中、日本の翻訳業界は何をしたらよいのでしょうか?

私は「ネット戦略」と「知的財産」が今まで以上に大きなキーワードになってくると考えています。