Google、Yahoo!」カテゴリーアーカイブ

グーグルのデータ蓄積とパーソナライズ

下記は2014年4月23日の朝日新聞朝刊の切り抜きですが、米グーグルの副社長が「将来はすべての言語、方言に対応できる音声認識システムを作る」と答えています。

2014年4月グーグル

「すべての言語・方言」に対応するとは、ずいぶんと大口を叩くものだな、と思いますが、日々私たちが入力する文字や発する言葉がその都度グーグルのコンピューターに蓄積されていっている、と思うとなんとなく複雑な心境です。

もはや紙の地図や時刻表を使う人はほとんどいないでしょうし、何十万円もする紙の百科事典を購入する人もいないでしょう。

今やネットで得られる様々な情報はすでに社会インフラのひとつとなっていて、私たちの生活に必要不可欠な道具となっていますが、便利さの裏に潜む不気味さのようなものも感じます。

検索エンジンが、過去の検索結果から、自分の好みや興味を判断し、結果を“操作”してくれる“パーソナライズ”もその不気味さの一つと言えます。

パーソナライズされた情報は、当然“偏った情報”になるわけですが、本人だけが気付かず、それが広く世の中一般に受け入れられていると錯覚する危険性もあるからです。

ところで、最近は、Google Translation Toolkit (グーグル翻訳者ツールキット)が、産業翻訳の分野でも使われ始めているそうです。プロの翻訳者がこの翻訳メモリの共有機能を使用することは、機密保持の観点から厳に慎んでほしいと思います。

一般社団法人日本翻訳連盟では、翻訳会社やプロの翻訳者がGoogle Translation Toolkit を使って、翻訳メモリの共有機能を使用することのないよう、会員各位に文書を発行して注意を促しています。

ヤフーとグーグル 提携発表

2010年7月28日 朝日新聞

インターネット検索で世界最大手の米グーグルが、同じく日本最大手のヤフーに、検索技術を提供することになった。今やネット検索は、日本人の暮らしや経済活動を支えるインフラだ。この技術を事実上、グーグル1社が握ることで、ネットから得られる情報の多様性が損なわれる恐れも指摘されている。

(以上記事終わり)

2010.7.28 朝日
<朝日新聞朝刊より>

2010年7月28日 日本経済新聞

インターネット検索で国内最大手のヤフーは27日、同分野で世界最大手の米グーグルと提携すると発表した。年内にも検索サービスの基本技術となる「検索エンジン」を、従来の米ヤフー製からグーグルに切り替える。米ヤフーは、米マイクロソフト(MS)と検索分野で提携している。グーグルは「MS・ヤフー連合」から日本のヤフーを奪う格好になり、日本のネット検索市場での存在感を一気に高める。

(以上記事終わり)

2010.7.28 日経
<日経新聞朝刊より>

・・・・(記事の転載ここまで)

このヤフージャパンがグーグルの検索エンジンを採用するという提携話には驚きました。今やネット検索は現代人の生活に欠かすことのできない「社会インフラ」となっています。特に私たち翻訳業界の人間にとって、このネット検索は仕事上必要不可欠の「ライフライン」と言っても過言ではないでしょう。

その検索技術が事実上、グーグル1社に独占されてしまうということは、長期的に見れば、やはり決して喜ばしいことではないはずです。

独自での経営が難しくなった米国Yahooは、マイクロソフトに買収されるか、それともグーグルと提携するかでもめ、結局昨年7月にマイクロソフトの検索エンジンを使用するという提携話で決着をみたばかりでした。

その米ヤフーは日本のヤフーに34.8%出資していますが、今や日本のヤフーの時価総額が2兆400億円、純利益216億円なのに対し、米ヤフーは時価総額が1兆7,000億円、純利益が186億円と完全に親子の逆転現象を生み出しています。セブンイレブンジャパンが米国セブンイレブンを買収して救済したのと同じことが今後行なわれるかもしれません。

かつてマイクロソフトのOSにより、PCが爆発的に普及し、IBMをはじめとする既存の大手コンピューターメーカーがダウンサイジングの波をまともにかぶり、多くの大手企業が市場から消え去っていきました。

その後わが世の春を謳歌したマイクロソフトもグーグルの出現により、その将来性すら危ぶむ声も出始めています。

今や飛ぶ鳥を落とす勢いのグーグルですが、そのグーグルでさえ、iPod、iPhone、iPadで見事に復活したアップルの後塵を拝しています。

まさに「一寸先は闇」、「生き馬の目を抜く世界」とはこのようなことを言うのでしょうか。つまりどこにも「安泰」はないということですね。

Google、社内PCをWindowsからほかのOSへ移行

2010.6.2 ITmedia News

Googleがセキュリティ上の懸念から、社内でのWindows利用をやめて、Mac OS XやLinuxに移行すると報じられている。

・・・・(記事の転載ここまで)

最新のFinancial Timesの記事によると、Googleは、“今年の新入社員から、AppleのMacまたはLinuxをオペレーティングシステムとするPCのどちらかを使わなければならない。そして自分のコンピュータでWindowsを使いたい者は、最高役員であるCIOの許可を要する。”とあります。

もちろんこの直接の原因は、中国ハッカー攻撃事件であり、そのせいでGoogleは中国市場から撤退する決断を下すことになったのです。Googleからすれば、Winodowsのセキュリティーに対する弱さや不完全さに対する不信感の表れなのかもしれません。

しかしGoogleは、新入社員にMacのOS XやオープンソースのLinuxを使わせることによって、Windows離れの動きを徐々に広げていこうとしているのかもしれません。この二つのOSを、Chrome OSを広く普及させていくまでの「つなぎ」として位置づけ、IT業界における盟主の座をマイクロソフトから一気に奪うための前哨戦と考えているに違いない、と思うのはちょっと行きすぎでしょうか?

「世界のIT景気」と翻訳業界

2009年7月25日(土)、日経新聞朝刊に「世界のIT景気 回復探る ネットサービス堅調」というタイトルの記事が出ていました。下記はその中で使われていた表とグラフです。

「足元の業績にはばらつきはあるものの、(IT)業界内には『需要低迷の最悪期は脱した』との見方が広がりつつある」とあります。

2009.7.25 日経(1)

2009.7.25 日経(2)

以下、日経の記事の中から一部抜粋して、わかりやすく編集してみました。

<好調 アップル
高性能携帯iPhone(アイフォーン)で新たな市場を開拓したアップルは快走が続く。iPhone販売は7.3倍の521万台に増え、売上高が8%減ったパソコン事業の穴を埋めた。iPhone向けソフトは65,000種類に達し、ソフト開発業者と共存共栄する事業モデルも確立されつつある。

<好調 アマゾン・ドット・コム
ネット小売最大手のアマゾン・ドット・コムも売上高14%増と2けた増収。既存の小売各社が苦戦するなか、割安な価格や品ぞろえの豊富さが評価された。

<好調 グーグル
ネット広告分野ではグーグルの一人勝ちの様相だ。パソコン用基本ソフト(OS)への参入も表明、ネット広告を軸にした勢力の拡大を急ぐ。

<低調 ヤフー
3四半期連続の減収。

<好調 インテル
MPUの販売が伸びず売上高が前年同期比で15%減。ただ、「ネットブック」向けのMPU「アトム」関連売上高に限れば前期比65%増と大きく伸びた。

<低調 マイクロソフト
「ネットブック」の普及など市場環境の変化に対応が遅れ、パソコンやサーバー販売が振るわず、打撃を受けた。主力のパソコン用OS「ウィンドウズ」部門は売上高、営業利益とも3割減った。

<好調 サムスン電子
業績回復で先行するのが韓国勢。サムスン電子の営業利益は前年同期比5%増の2兆5,200億ウォンと世界景気後退前の水準まで戻した。販売価格上昇で液晶パネル部門と半導体部門の営業損益が黒字転換を果たした。

IT業界では、需要低迷の底は打ったとの認識が広がり始めているが、回復の主役は個人。

米調査会社アイサプライは09年のパソコン出荷台数を前年同期比4%減と見込むが、個人利用が多いノートブック型は12%増を予想。

一方で企業のIT投資は回復が遅れている。IBMの4~6月期も情報システムに使う高性能コンピュータなどハード部門は売上高が前年同期比26%減。顧客別売上高でも製造業や金融業向けは前年割れだった。

<以上、日経新聞の記事終わり>

さて、翻訳業界に対する影響ですが、IT関連企業が翻訳業界の重要なクライアントの一つであることはまちがいないので、その直接的な影響も徐々に現れてくるでしょう。

しかし、「回復の主役は個人」であって、「企業のIT投資は回復が遅れいる」という点が問題です。特に製造業と金融業のIT投資額が増えないと、翻訳業界への波及効果も限定的とならざるを得ません。

現在でも中国を中心とする途上国向けの輸出は、欧米向けに比べればまだ堅調なわけですが、重厚長大産業から発生するドキュメントの翻訳量はそう多くを期待できません。

つまり、同じ金額の輸出であっても、IT関連分野と重厚長大産業とでは、そこから派生する翻訳の需要が圧倒的に違うからです。

各国政府が積極的な減税と公共投資を行う
→ 世界各地で個人の財布のヒモが緩む
→ お金が企業へ流れ、業績が好転する
→ 企業が設備投資を積極的に行う
→ 大量生産の効果が生まれ、価格が安くなる
→ 安くなった物品をさらに個人が購入する
→ ますます企業業績が好転する・・・

経済学の単純な理屈はこうなります。しかし、全てのメカニズムが複雑化した現代社会では、なかなか理屈どおりには動きません。

「翻訳業界サバイバルゲーム」の時間はまだちょと続きそうですが、おそらくあと1年くらいが勝負の分かれ目となるでしょう。「山高ければ谷深し、谷深ければ山高し」です。21世紀初めに現れた、「世界的超バブル経済」の谷は深く、長くなりますが、上昇した時の景色はまた今世紀最高の「絶景」となるのは間違いありません。

アメリカの粉飾決算と日本の美点

今から6年以上も前になりますが、2001年12月、アメリカのエンロンが破綻しました。負債総額は3兆7,200億円から4兆8,000億円と言われ、未だはっきりしていません。その8ヶ月後の2002年7月、今度はワールドコムが、米国史上最大の資産(12兆4,000億円)を抱えたまま破綻しました。負債総額は、4兆7,000億円でした。

その後両社とも粉飾決算の実態が次々と明るみに出て、結局、ワールドコムの経営責任者は、懲役25年の実刑判決を受け、エンロンの経営責任者は、判決を受ける前に病死しました。巨大企業のトップに立ったことのある人間にとっては、あまりにも悲しい末路となりました。

現在アメリカでは、上場企業のCEO(最高経営責任者)やCFO(最高財務責任者)は、決算報告書をSEC(証券取引委員会)へ提出する際に「もしこの報告書に粉飾があったら、裁判抜きに26年間の実刑に服する」旨の誓約書にサインをさせられるそうです。現在ニューヨークの隣の州、ニュージャージー州にそのための刑務所が完成しているそうです。現在はまだ空き家だそうですが、そこに収監される”犯罪者”が出てきたら、アメリカ中の経営者が震えあがることでしょう。

これ以外にも、”株主代表訴訟”という足かせがあります。今まさに話題になっている、マイクロソフトによる米国ヤフーの買収問題ですが、ヤフーの行う株価吊り上げの駆け引きが裏目にでれば、「ヤフー取締役会は引き続き役員報酬を得るために、マイクロソフトとの交渉を怠り、保身に走った」と、株主代表訴訟を起こされかねないのです。

巨額の役員報酬を得るアメリカの経営者達は、とかく非難されがちですが、その分責任も非常に重い、というわけでしょうか。私の目から見ると、アメリカという国はなにごとによらず、たいていの場合、「決断が早く、実行も早く、画期的で、過去やしがらみにとらわれない」という美点とともに、「良いも悪いもとにかく極端」というようなイメージが付きまといます。

その点日本という国は、「決断はせず、実行もせず、前例や慣習を重んじ、常に周りの顔色をうかがってから集団で動く」ので、良きにつけ悪しきにつけ”格差”が生まれず、また”格差”を忌み嫌うため、”みんな同じ”という安心感とともに気楽に暮らせる、という”美点”があるようです。

日本列島に日本人だけで暮らしている間は良かったのですが、グローバリゼーションの進む21世紀に、外資による買収を”黒船”と恐れたり、海外からの移民をほとんど受け付けないという”日本列島孤立主義”では、日本そのものが生きていけない、と早く気がついて欲しいものです。

Microsoft の Yahoo 買収問題を考える

米国マイクロソフトが446億ドル(4兆7,500億円)で米国ヤフーを買収したいと表明しました。この問題は過去に何回か表面化しては消え、表面化しては消え、を繰り返してきたのですが、今回のマイクロソフトの態度表明には、相当な意気込みを感じます。

かねてより私は、「検索エンジンを制する者は21世紀を制す」と言い続けてきたのですが、今回の”事件”は、その言葉を裏づけるような重みを持っています。

膨大なキャッシュを保有する”超優良企業”マイクロソフトが、創業以来続けてきた無借金経営を捨て、多額の借金をしてまで「ヤフーが欲しい」と叫ぶ背景には、いったい何があるのでしょうか?

創業者のビル・ゲイツ氏がいみじくも言い放った「マイクロソフトにとって、創業以来最大の脅威は、IBMではなく Google だ」という言葉に、その全てが凝縮されています。

Googleは、すでに表計算ソフトやワープロをネット上で無料提供するサービスを始めていますが、近い将来、OS(基本ソフト)もアプリケーションソフトもそのほとんどが、タダかタダ同然で世の中へ提供される時代が来るでしょう。現在発売されている、アップルの新しいノートPC”MacBook Air”などは、DVD・CDドライブを捨て、アプリケーションソフトを他のPCから、ワイヤレスでインストールするという新しい発想を採用しています。

これなどは将来、すべてのソフトウェアをWeb上からダウンロードしてインストールする、という発想に近づいているのかもしれません。コンピュータはただの”箱”だけでよい、中身はすべてネット上からダウンロードする、というコンセプトです。OSとアプリケーションソフトを収益の柱としているマイクロソフトにとっては、当然死活問題となります。

それでは、無料サービスを提供するGoogleは、いったいどうやって利益をあげようというのでしょうか?その答えの一つは「広告料収入」であり、もう一つは「マーケティングビジネス」と言えます。

2006年3月、ソフトバンクは社運をかけて、ボーダフォンを1兆7,500億円という膨大な金額で買収しました。ソフトバンクの孫正義社長は、配下に抱えるヤフージャパンの持つ、優良なコンテンツを使って差別化を図れば、勝算あり、と考えたに違いありません。

実際、今から数年以内には、日本の携帯電話の通話料金は全て”無料”になるはずです。”無料”といっても基本料金だけの定額制ということですが、現在のインターネットが24時間使い放題と同じことです。

それでは、通信会社であるソフトバンクはどこで儲けるのでしょうか?これも同じく、一つは「広告料収入」であり、もう一つは「マーケティングビジネス」と言えます。

現在Googleとマイクロソフトは、先を競い合って、世界中の図書館のありとあらゆる本を、スキャナーで読み取り、デジタル化しています。優れたコンテンツをより多く抱え、検索し、整理する能力をもった検索エンジンが世界を制するからです。

検索エンジンはコンピュータの中だけでなく、携帯電話、デジタル家電、カーナビ、放送局、図書館、その他ありとあらゆるところに進出し、情報を検索し、整理をはじめます。

将来、車を運転して見知らぬ土地へ出かけると、通りかかった近くのスーパーの特売情報がカーナビに現れ、ラジオからは私のお気に入りのクラシック音楽が流れて、携帯電話のメールには、私の大好きなイタリア料理を紹介する、最寄のレストランメニューが配信されることでしょう。

知らず知らずのうちに、プライベート情報が提供され、その見返りとして、無料サービスという対価を得ることになるのです。

ヤフーとイーベイ、共同サイト開設・提携を発表

2007.12.4 NIKKEI NET

ネットオークション世界最大手の米イーベイと日本の最大手であるヤフーは4日午前、業務提携すると正式に発表した。同日にネットオークションサービスを相互乗り入れするための共同サイトを開設。双方の会員が相手国の出展品目に応札できるようにする。

・・・・(記事の転載ここまで)

イーベイは1999年に一回日本へ進出したのですが、ヤフーとの競合に敗退し、2002年に日本市場から撤退しています。やはり”日本語”が最大の非関税障壁だったと私は推察しています。

今回の提携により、日本人は、日本語で入札に参加し、 日本語で出展できるようになり、同様に米国人は英語で入札し、英語で出展できるようになるそうです。当然そこに”翻訳”というプロセスが発生するわけですが、マスコミ情報では、その翻訳をどのようにするのかは、まったく触れていません。機械翻訳を使うのでしょうか?翻訳ミスによるトラブルの発生をどのように認識しているのでしょうか?

この手の話が出てくると、たいていの場合マスコミは、お金の決済方法や物流のやり方が”画期的”であると注目するのですが、常に翻訳の問題は「なんとかなるだろう」であまり深く考えていないものです。

イーベイの2006年の全世界の落札額は520億ドル(約5兆7000億円)で、約半分が北米サイト上です。一方のヤフーの2006年の落札額は7,127億円です。

両社とも落札額は年率10―15%程度成長し、落札額の2007年の合計は日米で4兆円前後に上る見込みだそうです。

いずれにしても、提携により、国境を超えた巨大な消費者間の売買市場が成立するので、今までの企業対企業の間で発生する翻訳需要に加えて、一般消費者をターゲットとした新しい翻訳市場が誕生することになります。

MT(機械翻訳)+TM(翻訳メモリー)に、人間の手を加えた、牛丼並みの「安い、早い、うまい」翻訳需要が急速に強まることは、まず間違いないでしょうが、はたしてその行方はどうなることでしょうか?

携帯基本ソフト、グーグルが無償提供

2007.11.6 NIKKEI NET

インターネット検索最大手の米グーグルは携帯電話市場に本格参入する。米インテルやモトローラ、韓国サムスン電子、NTTドコモ、KDDIなど世界のハイテク・通信企業33社と提携し、基本ソフト(OS)など携帯電話に必要なソフトをすべて無償提供する。これらのソフトが普及すれば、パソコンに代わって将来、IT(情報技術)機器の中心になるとみられる携帯向けネットサービスの拡大にはずみがつきそうだ。

・・・・(記事の転載ここまで)

相変わらず、ネット上のニュースは、紙媒体のニュースに比べて、その情報量が圧倒的に足りません。

今回の「携帯基本ソフト、グーグルが無償提供」に関する記事でも、紙媒体(日経新聞)の情報は、ネット上の情報(NIKKEI NET)の20倍以上はあるでしょう。

それもそのはず、読者は紙媒体の新聞にはお金を払っていますが、ネット上のニュースは全て”タダ”で読んでいるわけですから。情報を提供する側としては、お金を払ってくれる読者に手厚くするのは、当然といえば当然です。

「もう紙の新聞は読まない。ネット上の情報だけで十分だから」と言って、新聞の購読を止めた人たちも沢山いるようですが、現時点においては、情報を深く知るためには、まだまだネット情報だけでは足りない、ということを知っておく必要があります。ただそれも逆転するのは時間の問題ですが。

しかしなぜ、新聞社各社は、”タダ”で情報をネット上に提供するのでしょうか?

答えは単純明快で、広告料収入が得られるからです。したがって、サイトを閲覧する読者の数が増えれば増えるほど、広告媒体としての価値も高まります。

ただ皮肉なことに、新聞社が、ネット上の読者を増やそうと紙面を充実させるたびに、紙媒体の売上が落ちていきます。その恐怖から、おっかなびっくりで情報をアップロードしている、という姿が目に浮かびます。

新聞業界は現在、発行部数減、広告収入減など深刻な状況に陥り、朝日、読売、日経が販売店統合へ向けて動いています。ネットニュースに関しても、3社が共同でポータルサイトを立ち上げる計画が報道されています。

さて、Googleです。

ご存知の通りGoogleは、検索やメールなどのサービスを無償提供し、ネット広告で高収益を上げてきました。このビジネスモデルで、IT分野の時価総額でマイクロソフトに次ぐ世界第2位の企業に、創業からわずか9年にして昇りつめました。

まさに「21世紀はGoogleの時代」と言われる所以です。そのGoogleが、次の収益源と位置づけているのが、携帯電話のネットサービスなのです。

ここからは、日経新聞の紙媒体の情報です。

「一般に携帯電話は通信会社が決めた仕様に従って、メーカーが端末を納入してきた。グーグルの無償ソフト群を採用すれば、端末の開発・製造コストの引き下げ余地が生まれる一方、ハード面での差異化が難しくなる。競争力を保つには、応用ソフトやデザインなどを強化する必要があり、ノキアが地図情報会社の買収を決めるなど、ハード依存を改める動きも出ている。事業規模が小さい日本の端末メーカーは今後、生き残りに向け厳しい競争を強いられる」

日本のハードメーカーの戦略が難しくなる一方、有力ソフトや有力コンテンツを所有する会社が相対的に有利になり、かつ、企業の合併・買収や提携が、国際的なレベルで一段と進んでいくことが予想されます。

まさに、「翻訳」の需要が一層強まるわけです。

グーグル、電子書籍の販売を計画か–米報道

2007.09.07 CNET Japan

Googleは2007年秋、出版社と協力して同社データベースにある書籍の完全デジタル版を有料で公開し始めることを計画している。

・・・・(記事の転載ここまで)

この記事によると「出版社が書籍の価格(表示価格の一定割合と思われる)を設定し、Googleと利益を分配する。もしそうなら、出版界を挙げて書籍のデジタル化に取り組む時代が来るだろう。」とあります。


この件に関しては、”著作権”の問題を中心に、様々な見方があると思いますが、ここでは少し違った側面から、この問題を取り上げてみます。

それは、”紙資源”という側面からです。

通勤電車の中で読む「本」や「新聞」や「雑誌」は確かに便利ではありますが、紙資源という観点から考えれば大いに問題があります。

「紙の無駄使い」→ 「森林の減少」→ 「CO2の増加 」→ 「環境破壊」 → 「地球温暖化」 → 「異常気象」

近頃世界中で見られる、「異常気象」の原因の一つに「CO2」、つまり「二酸化炭素」が深くかかわっている、と多くの学者が指摘しています。

「CO2排出量の抑制」が重要なことはもちろんですが、「CO2を吸収する」森林の減少も同時に問題となっているからです。

となると、今回のGoogleの計画のように、書籍をどんどんディジタル化したほうが森林保護のためにはよいのでしょうか?

下記は、「日本製紙連合会」のホームページに公表されている資料です。

consumption

「国民一人当たりの紙・板紙消費量」は不思議なことに、「IT先進国」ほど多いことがわかります。

「コンピュータにより、ペーパーレス化が進む」と言われながら、実は紙の消費量は、年々増え続けています。わが国の2005年の紙・板紙の生産量は、20年前(1985年)の約1.5倍に増えています(日本製紙連合会の資料より)。

理屈から行けば、電子化により紙の消費量は減るはずなのですが、なぜか増え続けているのです。「コンピューターが最大の紙食い虫」と言われる所以です。

と言うことで、今回のGoogleの電子書籍の販売計画に関しては、著作権の問題をクリアーできたとしても、諸手を挙げて賛成とまではいかないようです。

グーグルCEO、「ネット検閲を非関税貿易障壁に」と主張

2007.8.30 CNET Japan

検索エンジン業界大手、Googleの最高経営責任者(CEO)は、表現の自由を守るため、インターネットにおける検閲を非関税貿易障壁として認定するよう求めている。

(中略)

Googleで欧州における企業コミュニケーションと広報を担当するディレクター、Rachel Whetstone氏は、同社が中国で自主検閲を実施しながら、一方で言論の自由を促進することに矛盾はないとしている。

「現地の法律に従う必要があるため、中国ではリンクしないよう義務づけられている情報もある。これは言論の自由と相容れないわけではなく、矛盾もない。中国の発展を促す最良の方法は中国と関わりあうことであって、中国を遠ざけることではない。確かにわれわれは中国で情報を削除しているが、削除したことを明確に示している。これを行っている検索エンジンは中国ではわれわれだけだ。中国でサービスを行うことでより多くの情報を提供できるし、削除するのはほんの一部に過ぎない。1%を削除し、99%を提供している。こうした姿勢に異論がある人がいることは承知している」とWhetstone氏は話している。

(後略) ・・・・(記事の転載ここまで)

世界の検索エンジンマーケットで圧倒的なシェアを占めるGoogleが、中国でどのくらいのシェアを持っているかと言うと、下記のとおりです。

「シェアは最大手の地元企業Baiduが43.9%を握り、2位はYahoo! Chinaで21.1%。Googleは3位にとどまりシェアは13.2%となっている」(2006年6月23日のITmedia Newsの記事)

「Baidu」は、漢字で「百度」と書く、中国系企業ですが、シェアで圧倒的大差をつけられている「Google」に焦りでもあったのでしょうか。昨年あたり「Googleは中国政府と裏取引をしたのではないか?」と言う疑惑が持ち上がり、日本国内でも話題になりました。

私は昨年10月10日に「グーグル社長、村上憲朗氏のセミナー」を聞きに行ったのですが、その中で、中国政府とのやりとりに関する質問が出てきて、村上社長の回答は下記のようなものでした。

質問:「中国では中国政府がGoogleに圧力をかけ、中国政府に都合の悪い検索結果は表示させないようGoogleと裏取引をしたという噂が流れていますが、それは真実ですか?もし真実だとしたら一部の権力者の情報統制に加担するという姿勢はGoogleのポリシーに反するのではないですか?」

村上社長:「おっしゃるとおり、中国政府からの要請を受け入れていることは事実です。しかし、それは裏取引というようなものではありません。中国政府では“法〇功”や“天〇〇事件”などいくつかのテーマを違法と認識しているので、さきほどお話した4つのルールの第1番目、犯罪にかかわるサイトに該当すると判断せざるを得ないからです。はっきり言ってこれはGoogleにとって“苦渋の決断”でした。中国では通信の全てを管理しているのは政府なので、”Better than nothing”ということで中国での活動を開始しました。これは“世界中のあらゆる全ての情報を整理する”というGoogleのミッションに反するものであり、本来であればこのように情報を取捨選択するというような僭越な行為など一切やりたくないのですが、犯罪行為や反社会的な行為に加担するわけにはいかないので、ルールを決めてやむを得ず情報の取捨選択を行なっています。」

このときの村上社長の答弁も苦しかったのですが、今回の米国Googleのディレクター、Rachel Whetstone氏の答弁は、もっと苦しいですね。

カナダの団体もグーグルのダブルクリック買収に異議

2007.8.3 CNET Japan

Googleが計画している31億ドルでのDoubleClick買収に反対する新しい団体が出てきた。Canadian Internet Policy & Public Interest Clinic at the University of Ottawa(CIPPIC)という長い名称を持つ団体だ。

・・・・(記事の転載ここまで)

この問題については、今年の4月21日にもこのブログの中で言及していますが、その時は米国の消費者団体やマイクロソフトからの反対でした。今回はそれに加えて、カナダの団体も反対を表明した、ということです。

反対の要旨は、下記です。

「この合併により、Google-DoubleClick は前例のない影響力を持つことになり、この影響力を利用してオンライン広告価格を操作できるようになってしまう。広告主とウェブ発行者が電子商取引市場で露出を増やそうと思ったら、選択肢はほとんど残されておらず、Googleの広告プラットフォームを選択するしかなくなってしまう」

この”DoubleClick”と言う会社は、

インターネット広告配信・管理において世界中で業界標準となっている「DART」製品群を始め、

Eメールマーケティングソフトウェア、

モバイルマーケティングシステム、

ウェブサイト分析システム

を法人向けに提供している会社です。

”Google”のビジョンには、「言語を意識せずにインターネットを使えるようにする」というゴールが明記されており、人工知能分野や自動翻訳技術分野の専門家を多数集めて研究開発にまい進している(「ウェブ進化論」ちくま新書、梅田望夫著)

ということですから、”Google”は、”YouTube”買収で画像市場を守備範囲に加え、今度は”DoubleClick”買収で、電子商取引市場も巻き込み、そしてその次は、世界の「言語」を押さえ、世界ネット情報の完全制覇、という野望を実現させようとしているのでしょうか?

しかし、問題はやはり「言語」だと思いますが、”Google”がこの分野で、「次の一手」に何を打ってくるか、が楽しみです。

ヤフー、「Yahoo!グルメ」で入電数に応じて課金されるシステムを8月から開始

2007.6.15 CNET Japan

ヤフーは6月15日、全国約60万件の飲食店情報を検索できる「Yahoo!グルメ」にて、「コール課金」を8月から開始すると発表した。

・・・・(記事の転載ここまで)

ネット社会における「数の力」がまたひとつ動き出した、という感じです。

今回のケースでは、ユーザーからの入電数に応じて課金されるシステムのようですが、全国60万件の飲食店情報に加えて、「Yahoo!クーポン」をいち早く確立したヤフージャパンならでは力技でしょう。

米国を初めとする全世界のほとんどの国で、Googleに圧倒され、旗色の悪いYahoo!ですが、日本でだけはなぜかまだ検索エンジンの利用頻度では、Yahoo!がGoogleを上回っているようです。

一般大衆にとっては、ポータルサイトとしての魅力は、GoogleよりもYahoo!のほうが上だ、と思われているからでしょう。少なくともビジネスユースではなくてプライベートな情報検索においては。

ヤフージャパンの大株主、ソフトバンクがVodafoneを買収したねらいの一つに、ネットと電話通信網との相乗効果をねらった市場戦略があったわけですが、今後この二つを使ったもっと強烈な連携プレーが飛び出してくる可能性も予感させます。

Googleの「SaaS」(Software as a Service)—アプリケーションやサービスをインターネットを通じてエンドユーザーへと供給する—のように、インターネットの「あちら側」で動いている「力」が、莫大な数の力を得た後に、広告収入だけでなく、課金活動を始める可能性も十分考えられます。

オープンソース化された「翻訳メモリー」のサイトを「1回クリックすると1円課金される」なんて時代が来るのかもしれません。

なにせ、Googleのビジョンには「言語を意識せずにインターネットを使えるようにする」というゴールが明記されており、人工知能分野や機械翻訳技術分野の専門家を多数集め、機械翻訳技術の開発を最重要課題としているそうですから・・・・。

グーグル、検索結果を翻訳表示する新「Google Translate」を公開

2007.5.24 PC online

米グーグルは、異なる言語で書かれたWebサイトを検索して、その結果を翻訳して表示する新機能を公開した。ベータ版として公開している翻訳サービス「Google Translate」の一機能として提供する。

・・・・(記事の転載ここまで)

「翻訳会社」をキーワードにして、”My language” を ”Japanese” に設定して検索してみました。左側に翻訳された日本語(?)のサイト一覧、右側に原文の英語サイト一覧が出てきました。そのなかから適当なサイトと文章を選んで、その翻訳文を原文と比較したものが下記です。試しに同じ英語の原文を「エキサイト翻訳」と「Yahoo! 翻訳」でも機械翻訳してみました。

【原 文】
Use our free tools
Free Website Translation
Wouldn’t it be great if the non-English speaking visitors to your website could translate it with a simple click of the mouse? Well now they can, by simply adding a piece of FREE code to your website. How great is that!

【Google Translate の翻訳結果】
私達の自由な用具を使用しなさい
ウェブサイト翻訳を解放しなさい
それはあなたのウェブサイトへの英語を話さない訪問者がマウスの簡単なかちりと言う音とそれを翻訳できれば大きくないか。 井戸今彼らはあなたのウェブサイトへ自由なコードの部分を単に加えることによって、できる。 大きいそれがいかにか!

【エキサイト翻訳の翻訳結果】
私たちの無料のツールを使用してください。
無料のウェブサイト翻訳
あなたのウェブサイトへの英語を話さない訪問者がマウスの簡単なクリックでそれを翻訳することができるなら、幸いでないでしょうか? さて、今、それらは、単に1つの無料コードをあなたのウェブサイトに追加することによって、そうすることができます。 どれくらいすばらしいかは、それです!

【Yahoo! 翻訳の結果】
我々の無料のツールを使用してください
無料のウェブサイト翻訳
あなたのウェブサイトへの英語を母語としない話す訪問客がマウスの単純なクリックでそれを翻訳することができるならば、それは大きくないでしょうか?かなり現在、単にFREEコードをあなたのウェブサイトに加えることによって、彼らはそうすることができます。なんて、偉人はそれであるでしょう!

次に「相撲」をキーワードに検索し、同じことをしてみました。

【原 文】
Japanese Sumo Wrestling is one of the oldest martial arts in Japan. Sumo wrestlers were a favorite subject on Japanese woodblock prints. In contrast to some of the traditional Japanese art forms like kabuki, which has a heavy stand in today’s world, sumo wrestling is enjoying a rising popularity – comparable to basketball in North America or soccer in Europe.

【Google Translate の翻訳結果】
日本にSumo苦闘することは日本の最も古い武道の1つである。 Sumoのレスリング選手は日本のwoodblockの印刷物の好みの主題だった。 従来の日本の芸術的な表現形式のいくつかと対照をなして今日の世界で重い立場があるkabuki、sumo苦闘すること楽しんでいる北アメリカのバスケットボールかヨーロッパのサッカーと対等な上昇の人気を-好みなさい。

【エキサイト翻訳の翻訳結果】
日本のSumo Wrestlingは日本で最も古い武道の1つです。 関取は日本の木版画での好きな科目でした。 今日の世界の重いスタンドを持っている歌舞伎のようないくつかの伝統的な日本芸術フォームと対照して、相撲は上昇している人気を楽しんでいます–ヨーロッパで北アメリカのバスケットボールかサッカーに匹敵しています。

【Yahoo! 翻訳の結果】
日本の相撲Wrestlingは、日本で最も古い格闘技のうちの1つです。相撲取りは、日本の木版プリントの得意分野でした。歌舞伎(それは、今日の世界で重い姿勢をとります)のような伝統的な日本の芸術形式のいくつかと対照的に、相撲は高まる人気を楽しんでいます – 北アメリカでのバスケットボールまたはヨーロッパでのサッカーに相当する。

今回のGoogleの試みは、素晴らしいのですが、残念なことに「翻訳」そのものがまったく使えません。「エキサイト翻訳」や「Yahoo! 翻訳」の翻訳結果と比べれば、その実力差は一目瞭然です。

もちろん「エキサイト翻訳」と「Yahoo! 翻訳」の翻訳結果をそのまま使うことはできませんが、それにしても「機械翻訳」の実力が、着実にアップしてきていることはわかります。正確さは欠いているものの、なんとなく「言いたいこと」がわかるからです。やはり機械翻訳の今後の行方からは、目が離せそうにありません。

米消費者団体、GoogleのDoubleClick買収反対でFTCに申し立て

2007.4.21 ITmedia News

米国の消費者団体など3団体が4月20日、GoogleによるDoubleClick買収はプライバシー保護の点で懸念があるとして、米連邦取引委員会(FTC)に対して申し立てを行った。

申し立てを行ったのは、米電子プライバシー情報センターと米Center for Digital Democracy(CDD)、米公共利益調査グループの3団体。

3団体はFTCに対し、Googleがさまざまなデータを通じ、インターネットユーザーの行動を記録、分析、追跡することが可能かどうかを調査するよう要求。また、Googleに対して、OECDのガイドラインなどのプライバシー基準を遵守するとの計画を、公式に表明するよう求めるよう主張している。

3団体は、これらの課題が解決されるまでの間は、FTCはこの買収を差し止めるべきだとしている。

・・・・(記事の転載ここまで)

上記では、プライバシー保護の観点から、米国の消費者団体が難色を示しているわけですが、一方マイクロソフト社は、広告市場の独占が生じる、という観点からこの買収劇を非難しています。

マイクロソフト社が、「独占になるからけしからん」と言っているとは、まさに失笑を禁じえませんが、逆に言えば、そのくらい大変な危機感を抱いている、という証拠なのでしょう。

私は2006年9月16日に、「近未来のメディア業界を予想する“EPIC2014”」というタイトルのブログを書いたことがあります。その中で、インターネット技術の急激な発展により2014年までにメディア業界が激変してしまう「近未来の歴史」を描いた話題のネットムービー、”EPIC2014″ を紹介しました。

内容を簡単に紹介すると下記のようになります。

『2008年にGoogleとAmazon.comの合併企業”Googlezon”が登場、サーチエンジン技術と個人の嗜好の解析・推定技術の融合、そして圧倒的な資本力により様々なサービスの統合化を進め、2014年に “EPIC(進化型パーソナライズ情報構築網)”を完成させる。これは無数の情報源から発信されるネット上の情報を自動的に収拾・選別し、パーソナライズされた情報として個々のユーザーに届ける、マスメディア企業を不要とする仕組みであり、Googlezonは情報のマッチング量に連動した広告収入を積み上げ、莫大な収益をあげるビジネスモデルを築く。その過程で20世紀のIT企業の代表・Microsoftは主役の座を追われ、既存マスメディアの代表・New York Timesはインターネットの世界から退出し、ニッチな紙媒体として細々と生き長らえることになる。』

私は、このような動きが必ず起こると確信していましたが、まさに今、Googleが、その方向へ向かって動き出している、と思うと少し恐ろしい気もします。

Googleは機械翻訳を変革する

2007.3.29 ITmedia News

米Googleの将来のビジョンでは、人々は文書を世界の主要言語に瞬時に翻訳できるようになる。その実現を先導するのは言語学の専門家ではなく、機械のロジックだ。

Googleのアプローチは統計的機械翻訳と呼ばれるもので、言語学の専門家が文法ルールと辞書をコンピュータにプログラミングすることを必要としないという点で、従来の機械翻訳の試みとは異なっている。

Googleのアプローチは、人間が既に翻訳して2つの言語のバージョンがある文書を、コンピュータに大量に入力し、そのパターンを認識させ、その蓄積に基づいて翻訳を行わせるというものだ。

・・・・(記事の転載ここまで)

「人間が既に翻訳してある、2つの言語のバージョンがある文書」とは、おそらくTRADOS等の翻訳支援システムを使って作られた、「翻訳メモリー」のことでしょう。また「主な素材は国連と欧州連合(EU)の文書」とあるので、この両組織は翻訳メモリーを公開しているのかもしれません。

翻訳メモリーのオープンソース化とGoogleの検索技術の融合に関しては、私が書いている他のブログのなかで触れています。

→ 翻訳メモリーのWikipediaの出現?

また、Googleの翻訳への取り組みの遅れに関しては、このブログの中でも最近取り上げたばかりです。

→ 言葉の壁とインターネットと将棋ソフト

「Googleが繰り出すサービスはどれも斬新で卓越しているのに、翻訳だけはダメだ」と言ったばかりですが、さすがGoogle、ちゃんと画策中だったのですね。

しかし、この記事の中で、

昨年、長期有給休暇を利用してGoogleのプロジェクトに協力したエディンバラ大学のマイルズ・オズボーン教授は、下記のように語っています。

「チェスの対戦では、コンピュータは人間と互角の勝負をするようになったが、ソフトウェアが人間の専門家の翻訳のレベルに追いつくことはないだろう。また、機械翻訳は、専門家に翻訳を頼むべきものかどうか、を判断するための材料に使えば有益だろう。例えば、日本語の特許文献を機械翻訳にかけて、重要な内容かどうか見極めをつける、といった使い方が考えられる」

まさに地に足の着いた、現実的な考え方ですが、これでは現在の状況と大差ない気もします。

Google社長のセミナーに参加して(その3)

(前回からの続き)

Google八分と中国の情報統制

Googleの検索対象から除外するサイト(いわゆるGoogle八分)の判定のために、下記の4つのルールがあるそうです。

(1) 犯罪にかかわるサイト

麻薬、覚醒剤、武器輸出、児童ポルノ、架空口座、ナチス党関係等々・・・・。

(2) スパムサイト

Googleの検索ロボットをだまそうという意図のあるサイト

(3) 権利侵害を訴えられているサイト

ある人があるサイトに権利侵害(たとえば名誉毀損など)を訴えているサイト。これがGoogleにとって一番悩ましい問題だそうです。基本的には当事者間同士の問題なのですが、日本の法律体系によると、場合によっては検索結果を出したGoogleも裁判にまきこまれる可能性があるとのことです。Googleでは自己責任のもと、ぎりぎりの判断をして、かつその判断結果を公にしているそうです。

(4) AdSenseだましのサイト

ここで前回お話したAdSenseが出てきました。AdSense広告がクリックされたかのようにごまかし、違法に広告料収入を得ようとするサイトを取り締まる、いわゆる「AdSense狩り」を行なっているそうですが、その詳細は明かさないとのことでした。

以上4つのルールがあるそうですが、ここで聴講者から次の質問がでてきました。

質問:「中国では中国政府がGoogleに圧力をかけ、中国政府に都合の悪い検索結果は表示させないようGoogleと裏取引をしたという噂が流れていますが、それは真実ですか?もし真実だとしたら一部の権力者の情報統制に加担するという姿勢はGoogleのポリシーに反するのではないですか?」

村上社長:「おっしゃるとおり、中国政府からの要請を受け入れていることは事実です。しかし、それは裏取引というようなものではありません。中国政府では“法〇功”や“天〇〇事件”などいくつかのテーマを違法と認識しているので、さきほどお話した4つのルールの第1番目、犯罪にかかわるサイトに該当すると判断せざるを得ないからです。はっきり言ってこれはGoogleにとって“苦渋の決断”でした。中国では通信の全てを管理しているのは政府なので、”Better than nothing”ということで中国での活動を開始しました。これは“世界中のあらゆる全ての情報を整理する”というGoogleのミッションに反するものであり、本来であればこのように情報を取捨選択するというような僭越な行為など一切やりたくないのですが、犯罪行為や反社会的な行為に加担するわけにはいかないので、ルールを決めてやむを得ず情報の取捨選択を行なっています。」

以上が村上社長の答弁でした。確かにGoogleにとっては“苦渋の決断”だったのはわかりますが、少々苦しい言い訳ですね。「中国政府の判断に基づく犯罪行為」ではなく「Googleの自主的な判断に基づく犯罪行為」を除外してほしいところです。そしてその基準を公表して世論に判断を仰げばよいのです。世の中の圧倒的多数の人は「覚醒剤」や「武器輸出」や「児童ポルノ」と「天〇〇事件」を同列には考えていないはずですから。一私企業であるGoogleではありますが、世界中のあらゆる情報を操作しうる力を備え、今後ますます増大していく可能性大のGoogleが、結果として民衆側よりも権力側に近いという印象を与えたのは残念でもあり、またすこし恐ろしい気もします。私たちの仕事への影響はもちろんのこと、私たちの日常生活にも影響を及ぼしかねないからです。

(この項、終わり)

Google社長のセミナーに参加して(その2)

(前回からの続き)

AdWordsとAdSense

Googleの収入のほとんどは広告料収入ですが、大きく分けて次の二つがあります。以下の内容はGoogleの村上社長の話の中で簡単に触れられただけなのですが、後の話を理解しやすくするために少し詳しく触れておきます。この広告の仕組みはGoogleの説明サイトを見ても非常に理解しにくいので困りますが、できるだけわかりやく解説したつもりです。

AdWords

Googleで何かのキーワードを入力して検索したとき、検索結果の出たページの上や右に「スポンサー」スペースが現れそこに広告が表示されます。たとえば、あなたが「家庭教師」というキーワードを検索したとします。検索結果のページ上部に数個のスポンサー広告が表示されます。同様にページの右にもいくつかのスポンサー広告が表示されます。各スポンサーはあらかじめ自分でキーワードを決め、Googleに登録しておくのですが、この例でいけば「家庭教師」というキーワードに興味を持っている人達だけが見るわけですから、広告宣伝効果が高いわけです。そしてそのスポンサーのサイトがクリックされることにより料金が発生します。また1回のクリックにいくら支払うかは、スポンサーの入札により決まります。高い値で買えば、より良い位置に表示されるわけです。また、特定の地域で検索している人々に広告を表示するよう設定することも可能です。 たとえば、あなたの会社なりお店から 40 km 以内のオンライン顧客を、掲載の対象とすることもできます。

AdSense

ウェブページ運営者が自分のウェブページを使って「広告料収入」を得ることができます。たとえば「家庭教師」と言うキーワードを検索し、「株式会社家庭教師センター」という会社のサイトが出てきたとします。そしてこのサイトがGoogleとAdSense契約をしているとすると、右はしに「Ads by Gooooogle」のスペースが現れます。そこには「家庭教師」に関連したスポンサー数社分の広告が現れます。ユーザーがそのスポンサーをクリックするといくらかの金額が広告料としてGoogleからウェブページ運営者、つまりこの場合で言えば「株式会社家庭教師センター」へ支払われるという仕組みです。これが「コンテンツ向けAdSense」というサービスです。もうひとつ「検索向けAdSense」というものがあります。まずは自分のサイトにGoogleの検索ボックスを導入し、ユーザーがより簡単に Google の検索エンジンを利用できるようにします。そしてユーザーがその検索ボックスを通じて得た検索結果のページの広告をクリックした場合、その料金が Google からウェブページ運営者、この場合は「株式会社家庭教師センター」へ支払われると言う仕組みです。つまり広告が表示されるページ数が増えるため、より多くのウェブページから収入を得ることができるようになるわけです。

さて、Googleの村上社長によると日本の広告サービス市場は6兆円で、内インターネット広告は2,400億円、AdWordsとAdSenseはわずか800億円なので、他の広告媒体の屋台骨を脅かすようなことは今もこれからもない、と仰っていました。はたしてそうなのでしょうか?

(この項、次回へ続く)

Google社長のセミナーに参加して(その1)

世界中のあらゆる全ての情報を整理する

先週の10月10日にグーグル株式会社代表取締役社長村上憲朗氏のセミナーを聞きに行きました。セミナーの題は「Googleの過去と現在」というもので1時間15分ほどの講演のあと、15分ほどの質疑応答の時間も設けられました。たまたまGoogleによるYouTube買収が発表された直後でもあり、非常に興味深いセミナーとなりました。

Googleのミッションは「世界中のあらゆる全ての情報を整理する」なので「コンテンツや情報を所有・専有する意志はまったくない。あくまでも検索サービスを提供するだけ」と村上社長は強調されておりましたが、それくらい世界中がGoogleを恐れているという証でもあります。

「世界中のあらゆる全ての情報を整理する」わけですから、個人のPCの中身を検索できるよう「Googleデスクトップ検索用ミニロボット」を無料配布したり、企業のファイアーウォールの内側を検索できるよう、Google Miniを販売したりしているとのこと。現在取り組み中の新サービスが、「書籍の検索」で、過去人類が産み出した膨大な量の書籍を、OCRを使ってスキャンしている最中とのこと。ただし著作権の問題があるので本の中身は3ページしか読めないようにしたり、あるいはスポンサーを探して、書籍の端に広告を載せることにより全体を読めるようにしたり、というような様々な取り組みをしているそうです。今回のYouTubeの買収によりGoogleビデオのサービスも今後加速していくでしょう。その他、ブログ、マップ、Earth、ニュース、グループ、グーグルベース等々、目を見張るような無料サービスが次から次へとわれわれに提供されて来ましが、今後Gmailは、やはり相当すごいことになるでしょう。なにせ一人2.7ギガ以上の容量が無料であたえられ、メールをフォルダに仕訳けしたり、メールを捨てたりする必要もなくなるわけですから、これからのGoogleの市場独占力には計り知れない恐ろしさを感じます。

なにせ「世界中のあらゆる全ての情報を整理する」わけですから、インターネットに載り切らない情報も全てインデックス化するのだと大望を抱いています。「もしその人が納得してくれたら、という条件付きではありますが、その人の趣味嗜好に合わせた情報を世界中から集めてその人に提供したい」と村上社長は仰っていました。この話ってどこかで聞いたような気がしますね?そうです、以前私がこのブログで触れた、”GooglezonのEPIC2014”ではないですか。Googlezon(GoogleとAmazonの合併企業)自体は架空企業ではありますが、やはりその思想は形を変え必ず実現していくものだと改めて確信しました。

(この項、次回へ続く)