Microsoft の Yahoo 買収問題を考える

米国マイクロソフトが446億ドル(4兆7,500億円)で米国ヤフーを買収したいと表明しました。この問題は過去に何回か表面化しては消え、表面化しては消え、を繰り返してきたのですが、今回のマイクロソフトの態度表明には、相当な意気込みを感じます。

かねてより私は、「検索エンジンを制する者は21世紀を制す」と言い続けてきたのですが、今回の”事件”は、その言葉を裏づけるような重みを持っています。

膨大なキャッシュを保有する”超優良企業”マイクロソフトが、創業以来続けてきた無借金経営を捨て、多額の借金をしてまで「ヤフーが欲しい」と叫ぶ背景には、いったい何があるのでしょうか?

創業者のビル・ゲイツ氏がいみじくも言い放った「マイクロソフトにとって、創業以来最大の脅威は、IBMではなく Google だ」という言葉に、その全てが凝縮されています。

Googleは、すでに表計算ソフトやワープロをネット上で無料提供するサービスを始めていますが、近い将来、OS(基本ソフト)もアプリケーションソフトもそのほとんどが、タダかタダ同然で世の中へ提供される時代が来るでしょう。現在発売されている、アップルの新しいノートPC”MacBook Air”などは、DVD・CDドライブを捨て、アプリケーションソフトを他のPCから、ワイヤレスでインストールするという新しい発想を採用しています。

これなどは将来、すべてのソフトウェアをWeb上からダウンロードしてインストールする、という発想に近づいているのかもしれません。コンピュータはただの”箱”だけでよい、中身はすべてネット上からダウンロードする、というコンセプトです。OSとアプリケーションソフトを収益の柱としているマイクロソフトにとっては、当然死活問題となります。

それでは、無料サービスを提供するGoogleは、いったいどうやって利益をあげようというのでしょうか?その答えの一つは「広告料収入」であり、もう一つは「マーケティングビジネス」と言えます。

2006年3月、ソフトバンクは社運をかけて、ボーダフォンを1兆7,500億円という膨大な金額で買収しました。ソフトバンクの孫正義社長は、配下に抱えるヤフージャパンの持つ、優良なコンテンツを使って差別化を図れば、勝算あり、と考えたに違いありません。

実際、今から数年以内には、日本の携帯電話の通話料金は全て”無料”になるはずです。”無料”といっても基本料金だけの定額制ということですが、現在のインターネットが24時間使い放題と同じことです。

それでは、通信会社であるソフトバンクはどこで儲けるのでしょうか?これも同じく、一つは「広告料収入」であり、もう一つは「マーケティングビジネス」と言えます。

現在Googleとマイクロソフトは、先を競い合って、世界中の図書館のありとあらゆる本を、スキャナーで読み取り、デジタル化しています。優れたコンテンツをより多く抱え、検索し、整理する能力をもった検索エンジンが世界を制するからです。

検索エンジンはコンピュータの中だけでなく、携帯電話、デジタル家電、カーナビ、放送局、図書館、その他ありとあらゆるところに進出し、情報を検索し、整理をはじめます。

将来、車を運転して見知らぬ土地へ出かけると、通りかかった近くのスーパーの特売情報がカーナビに現れ、ラジオからは私のお気に入りのクラシック音楽が流れて、携帯電話のメールには、私の大好きなイタリア料理を紹介する、最寄のレストランメニューが配信されることでしょう。

知らず知らずのうちに、プライベート情報が提供され、その見返りとして、無料サービスという対価を得ることになるのです。