アメリカの粉飾決算と日本の美点

今から6年以上も前になりますが、2001年12月、アメリカのエンロンが破綻しました。負債総額は3兆7,200億円から4兆8,000億円と言われ、未だはっきりしていません。その8ヶ月後の2002年7月、今度はワールドコムが、米国史上最大の資産(12兆4,000億円)を抱えたまま破綻しました。負債総額は、4兆7,000億円でした。

その後両社とも粉飾決算の実態が次々と明るみに出て、結局、ワールドコムの経営責任者は、懲役25年の実刑判決を受け、エンロンの経営責任者は、判決を受ける前に病死しました。巨大企業のトップに立ったことのある人間にとっては、あまりにも悲しい末路となりました。

現在アメリカでは、上場企業のCEO(最高経営責任者)やCFO(最高財務責任者)は、決算報告書をSEC(証券取引委員会)へ提出する際に「もしこの報告書に粉飾があったら、裁判抜きに26年間の実刑に服する」旨の誓約書にサインをさせられるそうです。現在ニューヨークの隣の州、ニュージャージー州にそのための刑務所が完成しているそうです。現在はまだ空き家だそうですが、そこに収監される”犯罪者”が出てきたら、アメリカ中の経営者が震えあがることでしょう。

これ以外にも、”株主代表訴訟”という足かせがあります。今まさに話題になっている、マイクロソフトによる米国ヤフーの買収問題ですが、ヤフーの行う株価吊り上げの駆け引きが裏目にでれば、「ヤフー取締役会は引き続き役員報酬を得るために、マイクロソフトとの交渉を怠り、保身に走った」と、株主代表訴訟を起こされかねないのです。

巨額の役員報酬を得るアメリカの経営者達は、とかく非難されがちですが、その分責任も非常に重い、というわけでしょうか。私の目から見ると、アメリカという国はなにごとによらず、たいていの場合、「決断が早く、実行も早く、画期的で、過去やしがらみにとらわれない」という美点とともに、「良いも悪いもとにかく極端」というようなイメージが付きまといます。

その点日本という国は、「決断はせず、実行もせず、前例や慣習を重んじ、常に周りの顔色をうかがってから集団で動く」ので、良きにつけ悪しきにつけ”格差”が生まれず、また”格差”を忌み嫌うため、”みんな同じ”という安心感とともに気楽に暮らせる、という”美点”があるようです。

日本列島に日本人だけで暮らしている間は良かったのですが、グローバリゼーションの進む21世紀に、外資による買収を”黒船”と恐れたり、海外からの移民をほとんど受け付けないという”日本列島孤立主義”では、日本そのものが生きていけない、と早く気がついて欲しいものです。