Google社長のセミナーに参加して(その3)

(前回からの続き)

Google八分と中国の情報統制

Googleの検索対象から除外するサイト(いわゆるGoogle八分)の判定のために、下記の4つのルールがあるそうです。

(1) 犯罪にかかわるサイト

麻薬、覚醒剤、武器輸出、児童ポルノ、架空口座、ナチス党関係等々・・・・。

(2) スパムサイト

Googleの検索ロボットをだまそうという意図のあるサイト

(3) 権利侵害を訴えられているサイト

ある人があるサイトに権利侵害(たとえば名誉毀損など)を訴えているサイト。これがGoogleにとって一番悩ましい問題だそうです。基本的には当事者間同士の問題なのですが、日本の法律体系によると、場合によっては検索結果を出したGoogleも裁判にまきこまれる可能性があるとのことです。Googleでは自己責任のもと、ぎりぎりの判断をして、かつその判断結果を公にしているそうです。

(4) AdSenseだましのサイト

ここで前回お話したAdSenseが出てきました。AdSense広告がクリックされたかのようにごまかし、違法に広告料収入を得ようとするサイトを取り締まる、いわゆる「AdSense狩り」を行なっているそうですが、その詳細は明かさないとのことでした。

以上4つのルールがあるそうですが、ここで聴講者から次の質問がでてきました。

質問:「中国では中国政府がGoogleに圧力をかけ、中国政府に都合の悪い検索結果は表示させないようGoogleと裏取引をしたという噂が流れていますが、それは真実ですか?もし真実だとしたら一部の権力者の情報統制に加担するという姿勢はGoogleのポリシーに反するのではないですか?」

村上社長:「おっしゃるとおり、中国政府からの要請を受け入れていることは事実です。しかし、それは裏取引というようなものではありません。中国政府では“法〇功”や“天〇〇事件”などいくつかのテーマを違法と認識しているので、さきほどお話した4つのルールの第1番目、犯罪にかかわるサイトに該当すると判断せざるを得ないからです。はっきり言ってこれはGoogleにとって“苦渋の決断”でした。中国では通信の全てを管理しているのは政府なので、”Better than nothing”ということで中国での活動を開始しました。これは“世界中のあらゆる全ての情報を整理する”というGoogleのミッションに反するものであり、本来であればこのように情報を取捨選択するというような僭越な行為など一切やりたくないのですが、犯罪行為や反社会的な行為に加担するわけにはいかないので、ルールを決めてやむを得ず情報の取捨選択を行なっています。」

以上が村上社長の答弁でした。確かにGoogleにとっては“苦渋の決断”だったのはわかりますが、少々苦しい言い訳ですね。「中国政府の判断に基づく犯罪行為」ではなく「Googleの自主的な判断に基づく犯罪行為」を除外してほしいところです。そしてその基準を公表して世論に判断を仰げばよいのです。世の中の圧倒的多数の人は「覚醒剤」や「武器輸出」や「児童ポルノ」と「天〇〇事件」を同列には考えていないはずですから。一私企業であるGoogleではありますが、世界中のあらゆる情報を操作しうる力を備え、今後ますます増大していく可能性大のGoogleが、結果として民衆側よりも権力側に近いという印象を与えたのは残念でもあり、またすこし恐ろしい気もします。私たちの仕事への影響はもちろんのこと、私たちの日常生活にも影響を及ぼしかねないからです。

(この項、終わり)