電力不足に東西格差の可能性も

日経ビジネス 2012年4月9日号「電力維新」

(以下、記事のなかから抜粋)

SMBC日興証券のエコノミスト、宮前耕也氏の推計によると、原発が全基停止のままの場合、今夏の東日本は最大電力需要に対して7.4%の不足で、西日本は5.1%の不足(下のグラフ参照)。鉱工業生産は全国で1.7%押し下げられる可能性があるという。

2012.4.9 日経ビジネス

問題は他にもある。

その1つは、この夏が予想以上の猛暑となり、節電ではなく昨年3月のような計画停電(一斉停電)となるケース。その場合、メーカーは休日の変更による生産日の変更や作りだめなどの対策が取りにくく、影響が今の予想よりも大きくなるのは必至だ。

2つ目は、東西間に電力供給格差が生じる可能性である。定期検査休止中の原発のうち、既にストレステストが終わっているのは16基。このうち先頭をいく「大飯3,4号機が再稼働となれば、東日本より原発への抵抗感の低い西日本の原発が再稼働へ動く可能性がある」(宮前氏)というのである。

仮に西日本が一部でも原発を再稼働すると、電力不足に東西間格差が生じることになる。となれば、東から西へ生産拠点を移したり、サプライチェーン全体の変更を余儀なくされる企業が出てくる恐れもあり、経済の新たな波乱要因になりかねない。

電力・エネルギー改革は先の話ではなく、喫緊の課題なのだ。

(以上で記事終わり)

今年の夏、東日本から西日本へ電力を求めて企業が移動する可能性もある、ということですが、つい最近まで世界を席巻していた「ジャパニーズカンパニー」が「電力難民」となり、日本中を右往左往する様なんて想像もしたくありません。

20年以上前の話ですが、インドに詳しいある方がこのような話をしてくれました。

「インド人は、インド政府をまったく信用していないので、インド政府が保証するなどという契約書には見向きもしない。しかし、日欧米の有名企業が保証するとなると、突然態度を変えて、ニコニコしながら契約に応じてくる。これはインドに限らず、発展途上国はどこも同じだけどね」と言っていました。

当時日本では、「日本政府が保証してくれるのであれば絶対安心。民間企業の保証だけでは信用できない」という考え方が主流でした。

したがって、この話を聞いて「やっぱり、途上国ってしょうがない国なんだな」と思う日本人も多かったようです。

さて、現在の日本です。

原発問題に関して、政府の公式発表や調査結果を信用する日本人はどれだけいるでしょうか。

「複数の民間シンクタンクによる調査結果ならある程度信用できるが、経産省が実施した調査結果など誰が信用できるか」という雰囲気が日本中に蔓延しているように感じます。

まさに日本は昔の「発展途上国」と同じになってしまったわけです。

今年の夏、日本の電力不足は、尻に火がついた状態なのですが、政府の公式見解そのものに国民が疑心暗鬼を生じているため、迷走してなかなか決まりません。

喫緊のエネルギー政策と中期、長期に分けたエネルギー政策を早く確立してほしいものです。

私が高校生だった1973年、「オイルショック」が勃発しました。

人々はトイレットペーパー探しに狂奔し、狂乱物価と共に多くの企業が倒産しました。

大方のマスコミは「日本は石油の99.9%を輸入に頼っている。もう日本に未来はない」と語っていました。

しかし、あの絶望的な「オイルショック」でさえ、日本人は乗り越えてきたのですから、きっと今回も乗り越えていけると信じています。