アジアから目指す世界一

「日経ビジネス」に「ファーストリテイリング会長兼社長の柳井正氏(下記写真)へのインタビュー記事」が載っていました。日本企業のグローバル展開の重要性を説く思想はとても示唆に富み、興味深い記事だと思います。その一部を抜粋して下記に載せておきます。なお文中の赤字は私がつけたものです。詳細を知りたい方はぜひ「日経ビジネス」を定期購読してください。

2011.05.27 柳井社長

<以下、日経ビジネス 2011.5.30号からの記事の抜粋>

日本の一番の問題は、ずっとピンチだと感じていなかったことでしょう。アジアに追いつかれようとしているのに、いまだに自分たちが上にいると思っている。20年間給料が下がり続けているのに、中流意識に浸かっている。

「もう頑張らなくてもいい」とか「成長しなくてもいい」とか言う人がいますが、信じられません。グローバル経済でそんなことができるはずがない。鎖国をやっていた江戸時代に戻るつりですか。

日本を食べさせていくのは、グローバル化した企業とグローバル化した日本人なんです。日本を支えていくには海外展開しかあり得ません。この思いは震災を経てますます強くなりました。

僕たちはアジアについて勉強しなければなりませんし、「一緒にやっていきましょう」とお願いする立場にある。そうした意識を持っていない人はいまだに多い。日本はアジア各国よりも進んでいると思い込んでいる。上から目線なんです。それはまったくの錯覚で、日本は20年もの間、成長から遠ざかってきました。あと10年もすれば、アジア各国に完全に追いつかれるでしょう。こうした認識を持ったうえでアジア展開にとりかかることが大切です。

自前のグローバル展開を推し進めるため、組織も見直しました。東京をグローバル本社に位置づけ、上海、シンガポール、パリ、ニューヨークの4拠点に地域本社を立ち上げます。理想的な姿としては、本部社員の3分の2を外国人に、日本の店舗の2割を外国人店長に任せ、海外では8割を現地の店長にしたいと思っています。

「僕は国内の店舗は運営できますが、海外はどうも」などと言っている場合ではありません。日本で店長をやっていても、国内市場が縮小していけば、給料は下がってしまう。外国人と、あるいは外国企業と一緒に仕事ができない人は、本当には仕事ができない。

英語は外国人と一緒に仕事をするえでのツールにすぎません。ビジネスの能力はあるのにコミュニケーションできないというのは非常にもったいない。

経営は座学では身につきません。実業を通して、自分でやってみなければ分からない。

日本ブランドはまだまだ強いと思いますが、それでも、今回の原発トラブルは企業のブランディングからすれば最悪の事態です。もっとも、最悪だと思うのは事故そのものというよりも、政府をはじめとした関係者の対応です。今回の原発対応で政官民の癒着、談合体質、隠蔽主義など日本のダメな部分が一気に噴出してしまいました。日本のセールスポイントの1つとして「安心、安全」がありましたが、そんな評価はもう当てはまらないでしょう。

現状を見る限り、日本はとても資本主義の国とは思えません。むしろ官僚社会主義の国といったほうがしっくりきます。税金の使い道を考え、税金を払っている企業や個人を大切にしないと、本当にみんな出ていってしまいます。国に助けてほしいと言いませんが、邪魔だけはしないでほしい。

<以上で記事からの抜粋終わり>

ソフトブレーン創業者の宋文洲氏が彼のメルマガの中で以下のように記述しています。

<日本人は数十年前から中国の政治不安を「心配」してきましたが、中国は未だに安定しています。逆に、日本の政治は未だにリーダーシップが確立できず、総理大臣の名前が覚えられないほど政権が変わります。「政治不安」がもし政治の不安定を意味するならば、結果的にどちらの政治不安が高いだろうか。>

日本のカントリーリスクを真剣に考え、リスクヘッジのために今われわれは何をしなければならいのか考えさせられます。