上海港世界一 コンテナ量、日本の総量超す

2011.8.30 朝日新聞朝刊

上海港が急拡大している。中国経済が好調なことから、コンテナ取扱量はこの6年で倍増。2010年はシンガポールを抜き、貨物取扱量とともに世界一となった。今年上半期も10%以上、伸びており、上海港だけで日本全体のコンテナ取扱量を上回っている。(中略)

中国政府は、2020年までに上海を金融だけでなく海運でも国際的なセンターにする計画で、国のバックアップも大きい。同港の邵小平税関長は「中国は内陸部の市場も大きく、他国の港と需要の規模が違う。今後は国際的ハブ港として貨物の中継機能も強化する」と語った。
(以上で記事終わり)

2011.8.30 朝日1

2011.8.30 朝日2
<上海の沖合に造られた洋山深水港。こうした岸壁が5.6キロにわたって続いている(朝日新聞記事より)>

・・・・(記事の転載ここまで)

長期的視野で将来を見据え、壮大なスケールの国家戦略をスピーディーに実行に移す中国政府の実行力には今更ながら驚かされます。

国際物流の世界は、規格化された「巨大な箱」コンテナの普及で輸送スピードが格段に向上し、コストが劇的に下がりました。これがグローバル化とあいまって世界の物流量を飛躍的に増やす起爆剤にもなりました。最も恩恵を受けたのがアジアの国々です。

確かに急速に経済発展する巨大国家中国ですから、その港も一緒に発展していく、ということには納得がいきます。しかし、発展するアジアの港の中にシンガポールや韓国の釜山港が入り、日本の港がまったく入っていないとは一体どういうことなのでしょうか?

日本の観光客が韓国の空港を国際ハブ空港として利用するように、最近では日本の荷主が地方港からのコンテナを韓国の釜山港で国際航路に積み替えるケースも増えてきました。

なにしろ釜山港の荷役料などは日本より3~4割安い。低料金を背景に、運営会社が日本の自治体や荷主に売り込んできているのです。

365日24時間稼動の釜山港は、コンテナの集荷数で世界第5位となりました。

岸壁には5000~7000本のコンテナを積んだ大型船がズラリと並び、その取り扱い量は日本の主要5港の全ての取扱量を足したものよりも多いのです。

韓国政府は、1990年代後半より、周辺の港から積荷を集めて大型船に積み替える「ハブ港」としての役割を釜山港に求め、莫大な設備投資を集中させてきました。そのおかげで大きく発展し、両隣の中国や日本のほか、アメリカやヨーロッパへも運航しているのです。

それに比べ日本は、どこを日本の「ハブ港」にするかで、政官財および各港の権益者たちのあいだで内輪もめをするだけで、結局なにも決められずにここまで来ました。

阪神大震災の後、神戸港の復興を急ぐため、とにかく迅速に現状復帰がなされました。迅速な対応は、それはそれでよかったのですが、もしあのとき長期的視野を持った政治的リーダーが現れ、「神戸港に超大型コンテナ船を横付けできる岸壁」を建造していたら、現在の神戸港も大きく変わっていたことでしょう。

日本の港がこのまま地盤沈下すれば、日本経済や雇用にとっての悪影響が心配されます。電機メーカーなどはアジア各国の拠点との間で部品や半製品を大量に融通しあっているのです。

物流コストや在庫期間は競争力を左右します。港が高コストで使いにくければ、生産を海外に移す要因ともなります。

産業の空洞化を防ぐためにも、日本の港も運営会社の民営化や統合、効率化を進め、荷役料の引き下げや24時間運用などのサービス向上に一刻も早く取り掛かるべきです。