自由貿易圏「2020年」を前倒し 非関税障壁という魔物

2010年11月11日 日本経済新聞

10日に横浜市で開幕したアジア太平洋経済協力会議(APEC)閣僚会議の共同声明案が明らかになった。域内の経済連携を加速する「アジア太平洋自由貿易圏(FTAAP)」を巡っては2020年目標を前倒しする方向で、目標年次の明記は見送った。世界で経済連携の動きが加速するなか、APEC域内の貿易自由化も数年単位で大幅に前倒しされる可能性が出てきた。
(以上で日経の記事終わり)

2010.11.12 日経(1)

<日本経済新聞朝刊より>

2010.11.12 日経(2)
<日本経済新聞朝刊より>

日本がTPPに加入すれば、アメリカ、オーストラリア、ニュージーランド、シンガポール、ベトナム、ペルー、チリ、マレーシア、ブルネイの9カ国との間の貿易は全て関税が撤廃されることになります。2015年を目処に現在協議が行われているそうです。

また、TPPよりもさらに規模の大きいAPEC(TPP+カナダ、中国、香港、インドネシア、メキシコ、タイ、パプアニューギニア、フィリピン、韓国、ロシア、台湾の合計21カ国)において、自由貿易圏を築くことになれば、巨大な経済圏がアジア太平洋地域に誕生することになります。

その世界最大の自由貿易圏を2020年に実現しようという構想が、さらに時期的に早まる可能性ができたようです。現在横浜のMM21地区で開催されているAPEC閣僚会議の共同声明案で明らかにされました。

一方、現在日本とEUとの貿易協定を見てみると、日本からEUへの輸出は3分の2の物品に対し関税がかけられているのに対し、その逆のEUから日本への輸出に対しては、3分の1の物品にしか関税がかけられていません。

日本はEUとの交渉に負け、だまされているのか?と思いきや現実はその逆のようです。

その正体は「非関税障壁」という代物です。この「非関税障壁」の意味については日経新聞に下記のような記載があります。

「政府が関税以外の方法で国産品と外国産品を区別して輸入を制限する措置。輸入数量制限や輸入課徴金のほか、製品企画の基準・認証制度や輸出入時の検査手続きの厳しさなどがある。日本の「系列取引」など各国特有の社会制度に基づく商慣習や流通構造もその一種だ」

「日本の基準・認証制度は煩雑で非関税障壁となっている」との諸外国からの批判が未だに根強いそうです。

日本政府が意図的に嫌がらせをして国内産業を守っているという側面もあるでしょうが、日本人特有の商慣習や日本人の特異な消費行動などもきっと影響していることでしょう。

そう考えると近い将来APECで21カ国全てが自由貿易圏になっても、日本はなんだかんだと駄々をこねて「非関税障壁」を貫けば国内産業は安泰なのでしょうか?

諸外国にとっては日本特有の商慣習や特異な消費行動のみならず、日本語そのものが非関税障壁なのです。いずれにせよこの自由貿易協定の実現は、わたしたち翻訳業界の人間にとって大変な朗報になることに間違いはありません。

また、これが日本全体にとっての朗報にすべく、今後の政策、国策、国家戦略を間違えないよう政治家や官僚の皆さんには期待したいものです。