世界貿易にブレーキ / 中国貿易 移る軸足

世界貿易にブレーキ

欧州危機がアジア直撃 7~9月伸び1ケタ

欧州債務危機などを背景に、世界貿易量の伸びが鈍化し始めた。輸出と輸入の数量を合算した貿易取引量は7~9月が前年同期比5.2%増にとどまり、最近の10%前後の伸びから落ち込んだ。

欧州危機に伴う信用不安が実態経済に悪影響を与えつつあり、けん引役であるアジア新興国向け輸出も減速しつつある。国際通貨基金(IMF)は2012年にかけて貿易取引が低迷するとみており、世界経済の停滞につながる恐れもある。

2011.12.13 日経

(以上、2011.12.13の日経新聞朝刊より抜粋)

中国貿易 移る軸足

多国間から二国間・地域に
WTO加盟10年輸出額6倍

中国が世界貿易機関(WTO)に加盟してから今月で10年を迎えた。自らの存在感の高まりで多国間の交渉が難しくなるなか、二国間やアジア地域での経済協力へと交渉の軸足は移ってきた。貿易摩擦を抱えながらも順調に翼を広げてきた中国の通商政策に、米国が主導する環太平洋経済連携協定(TPP)がゆさぶりをかけている。

2011.12.13 朝日

米主導のTPPを注視

中国社会科学院国際研究学部長
チャン・ユンリン氏

中国はTPPに非常に注目している。中国抜きで始まったことに加えて、中国が参加するかどうかの態度を決めていない段階で、日本が入ろうとしているからだ。ただ、TPP参加へとアジアの大勢が動けば、中国政府もいずれ対応を考えねばならない。

TPPは日本の参加で規模も質も歴然と変わる。米国との関係を重視した政治的な選択だと思うが、中国や韓国、東南アジア諸国連合との協力を軽視しないでほしい。

アジア太平洋の地域全体を束ねる経済連携に向けては、2本の道がある。一本が米国主導のTPP。もう一本は(米国抜きで)中国も参加する東南アジアと日中韓を軸にしたものだ。どちらの交渉も時間がかかるが、いずれ、この二つを統合しようという動きが出る可能性がある。そのときは米中間の本格的な通商交渉になるだろう。

(以上、2011.12.13の朝日新聞朝刊より抜粋)

私はかねてより、TPPの背後に潜む日米共通の「仮想敵国」は「中国」であると考えてきましたが、この中国のチャン・ユンリン氏が、ここまであからさまに「日本の選択肢には2本の道がある」と言ってのけるとはちょっと驚きです。

この発言からも中国の「あせり」や「いらだち」が垣間見えますが、いずれにせよ独自の軍事力を「持たない」日本は、世界第2位の経済大国・軍事大国である中国と世界第1位の経済大国・軍事大国である米国の間に挟まって、「究極の選択」をせざるをえません。

中国に対する米国のゆさぶりのかっこうの「材料」が日本というわけですが、地政学的にも、米中間に挟まる日本は、米ソ間に挟まっていた冷戦時代同様、「漁夫の利」を得る格好のポジションにあります。

世界各国が、「自国の利益のみを追求」し、“しのぎ”を削る「武器を使わない戦争」のことを「外交」と呼ぶわけですから、その外交で日本は大いに日本の国益を高めていってほしいものです。