日経新聞(2008年11月11日)の紙媒体の「景気指標」に上記の見出しで記事が出ていました。 下記にご紹介します。 
(以下記事) 
米国発の金融危機が実体経済に波及し始めているが、アジアの内需拡大が世界経済悪化の衝撃を和らげるのではないか——。アジアで自信と期待の入り交じった見方が出始めた。日米欧主要国・地域の「景気後退」が現実味を帯びる反面、中国やインド、東南アジアなどで消費や投資など内需が堅調に推移し、世界経済の落ち込みを下支えするというのだ。
「IT(情報技術)バブルがはじけた2000年頃と違い、中国は世界の景気減速(の一部)を補える規模に育った」。仏大手銀行ソシエテ・ジェネラルのアジア通貨債券ストラテジスト、パトリック・ベネット氏は指摘する。 
中国の2007年の名目国内総生産(GDP)は2000年の約3倍弱に拡大。2007年の前年比増加額は約6,220億ドルで、米国の増加額(約6,290億ドル)とほぼ方を並べた。2008年以降、中国が1年間に拡大する経済規模は米国のそれを超え、年々差が広がることは確実とみられる。 
シンガポールのDBS銀行チーフ・エコノミスト、デービッド・カーボン氏も「中国やインド、東南アジアの年間内需創造は米国にほぼ匹敵する」と指摘する。中印の輸出依存度はGDP比4割以下。経済成長の内需依存度は高い。 
外需依存型とみられてきた東南アジア諸国も、一人当たりGDPの拡大と人口増で内需に期待が高まる。たとえばインドネシア。自動車販売は1―9月に前年同期比46%増の46万台と過去最高。人口は過去7年間で2億人から2億2,400万人に増加。マレーシアほぼ一国分が生まれた格好だ。 
もちろん日米欧の景気悪化でアジア経済の減速は避けられないだろう。だがマレーシアやフィリピン、タイなどは公共投資や減税を打ち出すなど金融危機の波及を警戒し始めている。 
アジア新興国市場に着目し、企業はいち早く動き出している。「アジアでの売上高を世界全体の2%から10%に拡大する」(武田薬品工業)。世界経済が低迷するなかで、改めて「市場としてのアジア」に関心が集まっている。 
(記事終わり)
それではこの記事の内容をデータで検証してみましょう。JETRO(日本貿易振興機構)のデータを抜粋して簡略化した表を作り、それをもとに日本の輸出先地域の円グラフを作成してみました。
日本の輸出相手国は、半分近くがアジアだとわかります。
 
2007年 日本の貿易相手 ~その1~  (単位:100万ドル)
|  相手地域 |  輸出 | 輸入 | 収支  | 
| アジア |  343,113 | 267,926  | 75,187  | 
| 北米 |  153,903 | 80,857  | 73,046  | 
| 欧州 |  112,492 | 72,510  | 39,982  | 
| 中南米 |  35,063 | 24,117  | 10,946  | 
| 中東 |  26,184 | 113,824  | -87,640 | 
| 大洋州 |  17,891 | 35,529  | -17,638 | 
| ロシア・CIS |  12,482 | 11,514 | 968  | 
| アフリカ |  11,602 | 14,770  | -3,168 | 
| 世  界 | 712,730 | 621,047 | 91,683 | 
 

さて、それでは貿易相手を下記の6つの国、地域に分けて再分析してましょう。
 
2007年 日本の貿易相手 ~その2~  (単位:100万ドル)
|  相手地域 |  輸出 | 輸入 | 収支  | 
| アジアNIES | 159,581 | 55,541 | 104,040 | 
| 米国 | 143,383 | 70,836 | 72,547 | 
| 欧州 | 112,492 | 72,510 | 39,982 | 
| 中国 | 109,060 | 127,644 | -18,584 | 
| ASEAN4 | 59,085 | 70,791 | -11,706 | 
| その他 | 129,129 | 223,725 | -94,596 | 
| 世  界 | 712,730 | 621,047 | 91,683 | 
 
アジアNIES、ASEAN4、欧州の内訳は下記です。
アジアNIES・・・・・韓国、香港、台湾、シンガポール
ASEAN4・・・・・・・・タイ、マレーシア、フィリピン、インドネシア
欧州・・・・・・・・・・・・ロシアと旧ソ連邦国家を除く全欧州

アジアNIES(韓国、香港、台湾、シンガポール)へ対する輸出は、米国や中国への輸出よりも多いことに驚きます。
それでは、今年2008年に入ってからの日本の貿易はどうでしょうか?同じくJETRO(日本貿易振興機構)のデータを編集して、簡素化した表を作ってみました。
 
2008年1月~9月 日本の貿易 対前年比 増加率
|  相手地域 |  輸出 | 輸入 | 
| ロシア・CIS | 71.3% | 38.9% | 
| 中 東 | 35.1% | 69.5% | 
| 大洋州 | 30.7% | 40.8% | 
| 中南米 | 21.2% | 16.1% | 
| アジア | 20.2% | 18.0% | 
| アフリカ | 19.1% | 57.4% | 
| 欧 州 | 14.5% | 13.0% | 
| 北 米 | 0.8% | 15.3% | 
| 世  界 | 16.8% | 28.6% | 
 
金融危機に揺れる、米国への輸出を除けば日本の輸出は絶好調なことがわかります。
それでは、中国やアジアNIESやASEAN4に対する日本の貿易伸び率はどうなっているでしょうか?
 
2008年1月~9月 日本のアジア貿易 対前年比 増加率
|  相手地域 |  輸出 | 輸入 | 
| 中 国 | 22.6% | 13.3% | 
| ASEAN4 | 21.8% | 23.9% | 
| アジアNIES | 16.1% | 13.1% | 
日本株式会社の最大のお客様、アジア市場は絶好調の内需拡大を続けていることがわかります。米国は自国に信用力があるのをいいことに、「サプブライムローン」を証券化した「詐欺商品」を世界中に売りつけ、現在の金融危機という爆弾を世界中にばら撒きました。ばら撒いた先は、欧州が一番多かったようですが、今や世界中がその「とばっちり」を受けています。 
この金融危機の根は深く、回復には時間がかかるでしょう。しかし、現在の日本は必要以上にその影に脅えている気もします。日本の金融機関のほとんどは健全な財務体質を持ち、製造業は相変わらず高い技術力を堅持しています。 
需要爆発のアジア市場を隣に控え、今や日本企業の多くは新しいビジネスチャンスに遭遇しています。世界経済が大きく変動する時、それはまさに翻訳業界にとって千載一遇のチャンス到来の時期といえるでしょう。