世界一の中小企業(その4)

オイル荷役ポンプで世界シェアの50%以上、シンコー

「シンコーは、タンカーが運んできた原油を陸上の精製施設に汲み上げるのに必要なオイル荷役ポンプで、世界シェアの50%以上を占めるトップメーカー。同社の生産が中止になったり、致命的欠陥商品を送り出すようになったりしたら、グローバルな経済活動に大きな影響が出かねない。中でも世界有数の原油輸入国である日本の経済が、壊滅的な打撃を受けるのは必至だ」(「世界を制した中小企業」黒崎誠著、講談社現代新書)

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<カーゴオイルポンプ (同社のホームページより)>

なんだか、先日ご紹介した自動車部品メーカーの話を思い出します。

地震の被害でリケン(自動車部品メーカー)が、ピストンリングの生産をストップしたら、日本の全自動車メーカー(12社)の生産ラインが一時操業停止となり、12万台もの減産が余儀なくされた、という話です。

この「株式会社シンコー」と言う会社の「概要」を同社のホームページから拾ってきました。

【住 所】  広島市南区大州5丁目7-21

【事業内容】  陸舶用各種ポンプ、蒸気タービン、各種省エネ自家発電プラントの設計・製作

【資本金】   2億円

【従業員】   合計 604名 (男性549名、平均年齢43歳 女性55名 平均年齢33歳)

【売上高】
2000年10月期 130億円
2001年10月期 143億円
2002年10月期 208億円
2003年10月期 192億円
2004年10月期 202億円
2005年10月期 228億円
2006年10月期 246億円

【関連会社】   シンコーマシナリーズヨーロッパ、東洋機械、マスヤ工業

【主要取引先】   国内外の海運、造船、電力、ガス会社 etc

また、同社はつい最近(2007年9月)、経済産業省の「第2回ものづくり日本大賞」で優秀賞を受賞しています。

世界中の原油供給に多大な影響を与えかねない、この「小さな巨人」の力はいったいどこにあるのでしょうか?

1. 徹底的な顧客第一主義

海外展開を始めた当初、南アフリカ近海を航海中の顧客タンカーのポンプに故障が発生した。すぐさまシンコーの修理要員は飛行機を乗り継ぎ、南アフリカへ飛び、そこからヘリコプターをチャーターして、数百キロ離れた洋上のタンカーへ向かい、タンカーが港に入る前に、全てのポンプの修理を終えてしまった。

今では故障の報せがあれば、遅くとも翌日には、地球上のどこにでも技術者を派遣できる体制になっている。(前述の同著より)

2. 技術第一主義

鋳造製品の生産拠点を人件費の安い海外に移転させている企業は多いが、シンコーがライバル各社と逆の経営方針をとっているのは、自社で作ることによって、比較にならないほど高いクオリティの部品が製造できるからだ。

この高品質の部品が、高品質のオイルポンプをつくり出し、強い国際競争力を生み出している。工作機械の使用などの無人化によってコストを引き下げる一方、「手作りでなければできない分野は国内で」とこだわっているのである。(前述の同著より)

世界一の中小企業各社に共通して言えることは、特定の分野で圧倒的な技術力を持ち、その技術力を自前の社員が支えている、ということです。

「技術力」と「他社との差別化」にこだわるのであれば、多くの翻訳会社も、これを見習わなければならなりません。