米の三菱UFJ系銀行、課徴金36億円 資金洗浄見逃す

2007.9.18 asahi.com

米司法省と米銀行監督当局は17日、三菱東京UFJ銀行の米国子会社傘下の銀行「ユニオンバンク・オブ・カリフォルニア(UBOC)」に対して、資金洗浄(マネーロンダリング)にからむ口座とその取引を見逃した疑いで、課徴金と民事制裁金計3160万ドル(約36億5000万円)の支払いを命じた。同行は支払いに応じる方針。

邦銀や邦銀傘下の銀行が資金洗浄がらみで課徴金などを科されるのは初めて。

米司法省によると、UBOCは03年5月~04年4月の間、メキシコの両替商が開設した口座で、大量のコカインの売買で得たとみられる資金を預かるなどしていた疑い。01年9月の米同時多発テロをきっかけに、犯罪組織などにからむ資金洗浄を制限する目的で規制強化された米銀行秘密法に違反した疑いという。

・・・・(記事の転載ここまで)

1987年に起きた「 東芝機械ココム違反事件」が思い出されます。あの時は、東芝の子会社が、共産圏への輸出が禁止されているハイテク機械(潜水艦の部品)をソ連へ売ったことにより、ソ連の潜水艦のノイズが消え、探知が不可能になった、と米国政府から非難されたことから始まりました。

その後、東芝はアメリカ社会から袋叩きにあってしまったのですが、これには後日談があります。「ベルリンの壁が崩壊」した後に、情報が公開され、東芝機械の部品はソ連潜水艦のノイズ消却には、何も役立っていなかったことが明らかにされたからです。

結局「巨額の対米貿易黒字を出す日本企業へのいじめ」がその背景にあったと言われています。

さて、今回の三菱UFJ銀行の「事件」は、麻薬・覚せい剤販売組織の資金を洗浄したという「罪状」です。ターゲットとなる「敵」が「共産圏」から「麻薬組織」や「テロ組織」へと変わりはしましたが、相変わらず日本企業の「平和ボケ」を突かれた格好になります。

2001年の「9.11テロ」後、米国の「対テロ戦略」は激変しました。表の顔はご存知のとおり、アフガニスタンやイラクへの「軍事行動」です。

「裏の顔」は、世界中の資金の流れを把握する情報戦略です。

小規模テロを完全に防ぐことは不可能ですが、中規模から大規模のテロを封じ込める最大の手段は、ブラックマネーの流れを把握することだからです。

「9.11テロ」後、米国はスイスの各銀行に対し、全ての口座の情報公開を迫りました。もしそれに応じなければ、「米国との一切の取引を禁ずる」と脅しました。米国に見放された銀行は、「倒産」せざるをえないからです。

通常であれば、いかに米国であっても、そのような強硬手段をとれば、世界中の非難を浴び、実現できなかったでしょうが、なにせあの「9.11テロ」の直後だっただけに、徹底的な守秘義務を誇るスイスの銀行でさえも、応じざるを得なかったと言われています。

グローバリゼーションが進めば進むほど、このように米国主導の政治、軍事、経済の各戦略に振り回されることになります。

「平和ボケのまま、一生を終えたい」と願う日本人は多いでしょうが、グローバリゼーションを捨てない限り、日本を取り巻く状況がなかなかそうはさせてくれないようです。