国語の調査(その1)

文化庁から、「平成24年度 国語に関する世論調査 の結果の概要」が発表されました。

なかでも「言葉の意味」がなかなか興味深い結果となっています。

それぞれの言葉に対し、「どちらが正しい意味か?」との質問に対する国民の回答結果です。

正解が、不正解が です。

◆ 役不足  例文: 彼には役不足の仕事だ 

(ア) ✖ 本人の力量に対して役目が重すぎること・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・51.0%

(イ)  本人の力量に対して役目が軽すぎること・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・41.6%

【 私の感想 】

年齢別の正解率を見てみると、50歳代の正解が38.1%、不正解が57.9%なのに対し、16歳~19歳は、正解率、不正解率ともに47.3%でした。なぜか50歳代だけが突出して不正解率が高く、つづいて60歳代も不正解率が高かったのです。16歳~19歳の正解率が一番良かったのは、受験生だからでしょうか?

私も50歳代ですが、実は(ア)の意味が正しいと思っていました。なんとなく「力不足」という言葉と混同しがちですが、よくよく考えてみると「力不足」⇒「力が足りない」、「役不足」⇒「役が足りない」ということで、一応理屈にはあっています。

でも実際、この「役不足」という言葉を自分で使ったことはありません。もし言うとしたら「彼にはもっと難しい(高度な)仕事がふさわしい」とでも言うでしょうか。

 流れに棹(さお)さす  例文: その発言は流れに棹さすものだ  

(ア) ✖ 傾向に逆らって,ある事柄の勢いを失わせるような行為をする・・59.4%

(イ)  傾向に乗って,ある事柄の勢いを増すような行為をする・・・・・・・・23.4%

【 私の感想 】

これは全年齢で不正解率が高かったようです。私も不正解でした。「流れに逆らう」という表現は一般的にもよく使われると思うので、それと混同するからでしょうか?

船の棹は、川底を棒で突いて、舟を進めていきます。棹を強く突けば突くだけ、早く進む事が出来るので、(イ)の意味になるのでしょう。

そう考えてみるとなるほどと思いますが、自分で棹をつかって舟を進めたことがないので、この表現も自分自身で使ったことがありません。もし言うとしたら「火に油を注ぐ」という表現を使うでしょうね。

◆ 気が置けない  例文: その人は気が置けない人ですね 

(ア)  相手に対して気配りや遠慮をしなくてよい・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・42.7%

(イ)  相手に対して気配りや遠慮をしなくてはならない・・・・・・・・・・・・・・47.6%

【 私の感想 】

これは私も知っていました。たしか高校の授業で習った気がしますが、ただその時も「なんとなく変な表現だな」と感じた記憶があります。この「気が置けない」は、「油断できない」という意味に受け取られがちですが、本来「気が置ける」とは「気を遣う」「遠慮される」という意味なので、その反対の「気が置けない」は「気遣いや遠慮の必要がない」という意味になるそうです。

やはりこの言葉も自分自身で使ったことはありません。もし言うとしたら「気を遣わずにすむ相手だから」みたいな言い方をするでしょうね。

 潮時  例文: そろそろ潮時だ 

(ア)  ちょうどいい時期・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・60.0%

(イ) ✖ ものごとの終わり・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・36.1%

【 私の感想 】

この言葉はよく耳にします。私自身も使った経験がありますし、もちろん意味も知っていました。「そろそろ潮時じゃないの?」みたいな言い方をしたと思います。

ただ、「そろそろ終わりにしてもいい時期じゃないの?」という時に使われることが多いと思うので、(イ)の意味ととらえた人が3分の1以上いたというのもうなずけます。

 噴飯もの 例文: 彼の発言は噴飯ものだ 

(ア)  ✖ 腹立たしくて仕方ないこと・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・49.0%

(イ)   おかしくてたまらないこと・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・19.7%

【 私の感想 】

私自身この「噴飯もの」という言葉を使ったことはありませんが、聞いたことはあります。しかしそれが「おかしくてたまらないこと」の意味だとは知りませんでした。「噴飯」は、「ひどく腹を立てること」の意味がある「憤慨(ふんがい)」を連想させるから間違える人も多いのでしょうか?正解者が2割弱で、(ア)の意味ととらえた人も半数近くいたわけですから、これはかなりな難問と言えるかもしれません。

「あまりにもおかしくて、食べかけのご飯を噴き出してしまう」から来ているようですが、そう聞けば「なるほど」とうなずけます。