日の丸半導体、再生への最後の選択

2007.5.11 NB online (ドイツ証券:佐藤文昭)

電機業界というのは、1970年代から90年代にかけて日本の一流大学を出たものすごく優秀な人が大量に入社しましたよね。社員のクオリティーとかモチベーションの問題じゃないんです。構造を変えなければどうにもならないんですよ。手遅れにならないうちに。

今はまだ80年代、90年代前半ぐらいまでにやっていたR&D(研究開発)の蓄積があるから技術的な優位性もあります。R&Dというのは10年とか20年後に効いてくるからです。しかし、現在は各社R&Dを削り落としています。マージンを上げるためにはやめざるを得ないんです。10年後は技術的優位性すら失っているかもしれません。

・・・・(記事の転載ここまで)

韓国のサムスン電子では、世界の超一流大学の大学院修了生を破格の待遇で採用し、最先端の研究設備と潤沢な研究資金を与えて研究開発を行わせているそうです。もちろん日本からも、有名大学院の中から、さらにトップクラスの修了生らが多数採用されている、とその筋に詳しい方から聞いたことがあります。

加えて、現在成田空港、羽田空港では、金曜日の夜発、日曜日の深夜着のアジア向け航空チケットが常に満席だそうです。日本企業で”熟練工”だった人たちが、中国・韓国をはじめとするアジア諸国の企業からアドバイザーとして雇われている、とのことです。

”日当10万円”なので、土日で20万円の報酬を受け取れば、飛行機代プラス宿泊代を払っても、”儲け”が出る、とのことです。貴重な技術を持つ日本の熟練工が、日本企業では冷遇され、その技術を生かす場がありません。

その点、現在発展途上の新興国では、そのような重厚長大にかかわる技術者が”ひっぱりだこ”なのだそうです。教える側の日本の熟練工の人たちにとっても、熱意のない日本の若者よりも、目を輝かせて、熱心に耳を傾けるひたむきなアジア各国の青年達に、ついつい熱が入ってしまう、というのもうなずけます。

しかし、こんなことで日本製造業の未来は大丈夫なのでしょうか?

天然資源の”ない”日本国が世界に誇れるものは、”人材資源”だけです。「研究開発」と「技能の継承」に関し、国を挙げて対策を練るべき時期に来ている、とつくづく感じます。

もっとも、国では「中小企業の研究開発促進」と「人材の再雇用の促進」策を打ち出しているようですが、はたしてこれで効果は出てくるでしょうか?