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技術翻訳プロフェッショナル講座 「翻訳の真髄」


25 データ処理装置の中枢部 和文英訳
【問題】次の和文を英訳してください。

さらに、16ビットのマイクロプロセッサの登場により、そのカバーする範囲は一層広がった。CPUやチャネルを形成する複雑なロジックはどんどんマイクロプログラム(ファームウェア)化され、データ処理装置の中枢部は、1チップのLSIプロセッサとLSIメモリに置き換えられる見通しが出てきた。

【解 説】

さらに:
Furthermore, In addition, などと訳す場合が多いですが、前のパラグラフに何が書かれているかによって変わり(いや、変えるべきで)例えば、Now などという副詞がぴったりする場合もあります。実を言うと、この問題は、「マイクロプロセッサ」の続きですので、この Now をここでは使うことにします。このように副詞一つの訳でも色々と考えなければ適訳はできません。まして、語句や文節の訳においてはなおさらです。

・ ~登場:

the appearance (or emergence) of ~, しかし、英文では単語を置くだけでそのものの存在や出現を imply しているので、あえてこのように書かなくとも、例えば、Now the 16-bit microprocessor と書くだけで同じような意味となります。副詞節(句)を表現するとき、名詞を主語にして同じ役目を果たすことが英文には多いのです。逆に英文和訳のときは、文頭に名詞(特に抽象名詞)があったら、これを副詞節(句)のように訳すと、今度は和文としては自然で読みやすくなります。

・ そのカバーする範囲→適用範囲:

the range of application

・ チャネル:

channel、意味としては、情報処理分野では「中央処理装置(CPU)の下請けをする制御装置」と考えて、ほぼ間違いない。

・ マイクロプログラム(ファームウェア)化:

「~化」という表現は、本講座でしばしば取り上げてきました。ここではその考え方を繰り返すことになりますが、こういう表現を求めて辞書を引いてはいけません。意味をよく考え、その上で、自分の知っている語句を使って書くようにしてください。ここでは「~はマイクロプログラムにどんどん( rapidly )取って代わられている」と言いかえれば訳しやすくなります。

ファームウェア( firmware )という語の意味を電波新聞社発行の『マイコン用語辞典』で調べてみると次のようになります。

(1) マイクロプログラムそのものを言う。

(2) マイクロプログラムを記憶した制御用のROM( Read-Only Memory )を言う。

(3) マイクロプログラム方式のコンピュータにおいて、マイクロプログラムを制御用メモリの中に記憶させたものを言う。

(4) ハードウェアとソフトウェアの中間に位置しているものを言う。

・ データ処理装置の中枢部:

「中枢部」は nucleus とか the center, the pivot とか訳せるときもあるでしょうが、ここでは( central )processor という語を使う関係上、そういう概念は既に表せているとの判断から、上記のいずれの語も訳文では使わないことにしました。

data-processing equipment built around a one-chip LSI processor ………. と表現します。

【表 現】

3つとりあげます。

・ そのカバーする範囲は一層広がった:

~have ( has ) further broadened the range of application.

・ CPUやチャネルを形成する複雑なロジックはどんどんマイクロプログラム(ファームウェア)化され・・・・・:

Complex CPU and channel logic functions are rapidly being taken over by microprograms ( firmware ).
(注)CPUとchannelを形容詞として使って、「・・・・を形成する××× 」という意味を表現しました。

・~の見通しが出て来た:

The prospect is in sight for ~

ここで本文に関して少し技術解説を加えておきます。「4-bit processor が発展して 8-bit processor になり、ついで 16-bit (32-bit, 64-bit) processor となって、一段と高性能となりうんぬん」ということは、具体的には何がそんなによくなるのでしょうか?

簡単に言えば、処理速度(処理能力=throughput )が向上するのです。4ビット単位の処理とは、「同時に扱えるデータが4ビットであるので、繰り返せば何ビットも扱える」ということを意味します。要はスピードの問題です。したがって、遅くてもよければ、4-bit processor でほとんどの仕事はできるのです。

[訳 文]
Now the 16-bit microprocessor has further broadened the range of application. Complex CPU and channel logic functions are rapidly being taken over by microprograms (firmware), and the prospect is in sight for data-processing equipment built around a one-chip LSI processor and LSI memory.