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JES History

2006年2月から4月にかけblogで連載したJES Historyの保存版です。

第6回 タイピストと赤ん坊
<2006/3/6>
高品質の翻訳と誠実な仕事ぶりが評価され、顧客からの信頼も日増しに厚くなっていきました。

当時の仕事はほとんどが和文英訳で、当初は手書きの翻訳原稿のまま納品する場合が多かったようです。

父の書く筆記体は流れるように美しく、とても読みやすい字ではありましたが、タイプライターで清書して納品するケースもだんだん増えていったのでしょう。

あるときいつものように外注のタイピストの女性に電話で仕事を依頼したところ、突然「できない」と断られてしまいました。

驚いた父が理由を尋ねると、「赤ん坊の世話が大変でできない」とのことでした。

といっても納期はどんどん迫ってくるし「なんとかやって欲しい」と懇願すると、「それならしかたないので、私がタイプしているあいだ赤ちゃんの面倒を見ていてくれますか?」と言われました。

父も仕方なく川﨑市にある彼女の家へ行き、しばらくのあいだ赤ちゃんの面倒をみて、なんとか納期に間に合わせたそうです。

その時赤ちゃんをあやしながら心に誓ったそうです

「タイプを打てるようになろう」と。

その後すぐにタイプの猛練習が始まり、ブラインドタッチの高速タイピストとなりました。

ところで、当時のタイプライターはキーが重くて、音がうるさく、文字の訂正が大変で、高いスペリング能力が求められました。まさに一打入魂です。

おまけに控えを取るために紙と紙の間に黒いカーボンコピーをはさんでいたのでよけいに大変です。

余談ですが、現在一般的に使われているキーボードの配列は、マニュアルタイプライターのトラブル確率を低くするために考案され、インクに激突する金属部分が同時に重なりあうことが少なくなるよう、うまく配列されてあるそうです。

従ってこのキー配列は機械のためを考え作られたもので、人間工学的にはあまり好ましいものではないそうです。

にもかかわらず現在も使われ続けているのは、やはり先に普及させたもの勝ちということになるのでしょうか?


<マニュアルタイプライター>
こんな感じのタイプライターをよく父が使っていました。

*キー配列に関して京都大学人文科学研究所の専門家の方からご指摘をいただきました。どうやら一般に流布されている情報は正しくないようです。必ずしも「機械のためを考え作られた」のではなく、どうやら企業間での激烈な競争という複雑な歴史を経て現在に至っているようですね。(丸山)