統合型リゾート推進法案(カジノ法案)の行方

「統合型リゾート(IR: Integrated Resort)施設の整備を推進する法案」、いわゆる「カジノ法案」をめぐって、与野党が攻防を繰り広げています。

私は一切ギャンブルをやらない人間ですが、ぜひともこの「カジノ法案」を成立させてもらいたいと願っている人間の一人です。なぜならそれが日本の将来のためになると信じているからです。もちろんこれは日本の翻訳業界にとってもプラスになるでしょうが、別に我田引水でそう主張しているわけではありません。

理由は2つあります。

① やり方によっては、日本のギャンブル依存症患者を減らす可能性がある。

② 日本の国際化を強力に後押しし、訪日外国人を増大させ、日本経済の将来に多大なプラスをもたらす。

まず、①ですが「カジノ法案」反対派の理由のひとつに、「ギャンブル依存症が助長される」という論拠があります。確かに現在の日本は異常にギャンブル依存症の多い国で、WHO(世界保健機構)が2009年に行った調査によると日本には、559万人もの「ギャンブル依存症」の人間がいるとことです。これは諸外国と比べても異常に多い国であるということがわかっています。この点に関しては、私が2013年10月21日に書いたブログにも記載されているのでご参考までにご覧ください。

カジノ市場 伸び盛り マカオ世界一、観光客呼び込む

シンガポールの統合型リゾート、マリーナベイ・サンズの夜景 出典:http://sandsjapan.com/about-ir/singapore-case-study/

シンガポールの統合型リゾート、マリーナベイ・サンズの夜景 出典:http://sandsjapan.com/about-ir/singapore-case-study/

それではなぜ日本にだけそこまで異常に「ギャンブル依存症」患者が多いのでしょうか?

WHO(世界保健機構)も指摘しているように、ギャンブルは麻薬と同じで「依存症」となる危険性が非常に高いため、世界のどの国においてもギャンブル施設は必ず隔離された場所にあります。

しかしながら、日本では、駅前や人通りの多い場所に必ずと言ってよいほどパチンコ屋があり、多数の子供たちや通勤通学の乗降客が毎日その前を通ります。これでは麻薬患者の鼻先に毎日麻薬をぶら下げて歩かせているようなものです。

ただ、日本社会におけるパチンコ問題は非常にセンシティブであり、そう簡単に解決できるような問題ではありません。

歴史問題、民族問題、政治家、警察、官僚、裏社会、東アジア諸国、経済界、芸能界、スポーツ界を巻き込む非常に根深い問題になるので、一朝一夕に解決するわけもありません。

ましてやカジノができれば、一番最初に打撃を被るのは、近隣のパチンコ業界でしょうから、そういった面からもパチンコ業界は黙ってはいないでしょう。

それだけにパチンコ業界関係者をできるだけスムーズにカジノ業界へ引き込みながら、駅前のパチンコ屋の数を減らしてゆき、ゆくゆくは全てのパチンコ屋を隔離された場所へ移行できれば、一石二鳥どころか、三鳥、四鳥とすることができるでしょう。

その実現が日本の社会構造上非常に難しいということは良く理解できますが、一刻も早く「カジノ法案」を成立させ、ぜひともその改革の第一歩を踏み出してほしいと願っております。

さて、②の理由ですが、MICEという言葉をご存知でしょうか。

  • M: Meeting ⇒ 企業、その他の団体が行う会議やセミナーなど
  • I : Incentive Travel ⇒ 企業、その他の行う招待旅行や報奨・研修旅行など
  • C: Convention ⇒ 国際機関・団体、学会等が行う国際会議や学術会議など
  • E: Exhibition/Event ⇒ 展示会・見本市、イベントなど

このMICEにホテルなどの宿泊施設、劇場、スポーツ競技場、遊園地などのレクリエーション施設、ショッピング施設、カジノ施設などを加えて「統合型リゾート」と呼んでいます。

シンガポールの統合型リゾート、マリーナベイ・サンズ 出典:http://sandsjapan.com/about-ir/

シンガポールの統合型リゾート、マリーナベイ・サンズ 出典:http://sandsjapan.com/about-ir/

MICEは、国の国際化のためには欠かせない重要な施設ですが、この施設の運営だけではまずまちがいなく赤字となり、施設そのものを維持することが非常に難しくなります。

家族とともにちょっと豪華なホテルに泊まり、お堅い学術会議のあとにショーやスポーツ観戦を楽しみながら、カジノやショッピングでもお金を落としてくれるからこそMICE施設そのものが維持できるというものです。

それで成功を収めているのが、ラスベガスやシンガポールやマカオということになります。

マカオの統合型リゾート、ギャラクシー・マカオ 出典:http://tabit.jp/archives/29249

マカオの統合型リゾート、ギャラクシー・マカオ
出典:http://tabit.jp/archives/29249

経済立国、金融立国として、アジアのハブになるべくシンガポールは、統合型リゾートをすでに2つも国の中に作っているそうです。

日本の大阪などは、国際会議場すらないとのことでますますグローバリゼーションの波に乗り遅れていってしまうという危機感を持っているようです。

シンガポールに2つならば、日本には4つくらいあってもおかしくないのではないでしょうか?つまり北海道、沖縄、大阪、そして横浜です。

日本経済復活の大きな起爆剤になると思いますが、なにはともあれ日本の場合は、すべてはパチンコ業界がその鍵を握っているわけですから、なんとも心もとない次第です。