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食料の安全性について

フランスのドキュメンタリー映画「モンサントの不自然な食べもの」とアメリカのドキュメンタリー映画「フード・インク “Food, Inc,” 」を観ました。両映画とも公開年は2008年ですが、その内容は全世界に衝撃を与えるものでした。

そこで改めて自分なりに「遺伝子組み換え作物」や「モンサント社」や「家畜用肥育ホルモン」を調べてみました。

遺伝子組み換え作物

遺伝子組み換え作物には「除草剤耐性品種」と「害虫抵抗性品種」およびその両方を組み合わせた「スタック品種」の3種類があります。

◆除草剤耐性品種
アメリカのモンサント社(Monsanto)が開発したラウンドアップ(Roundup)という除草剤を広大な農場に散布すると、雑草などの植物は全て枯れ死しますが、遺伝子を組み換えられた大豆やトウモロコシなどの農作物は育ちます。

これはラウンドアップに耐性のある土中バクテリアの遺伝子をトウモロコシや大豆の遺伝子の中に組み入れているからです。この人為的な操作による遺伝子の変化は、自然交配では起こりえないことと言われています。

◆害虫抵抗性品種
同じくモンサント社により開発されたあるトウモロコシの品種は害虫被害を受けません。ヨーロッパアワノメイガというトウモロコシを食い荒らす蛾の幼虫を殺す細菌 Bt (Bacillus thuringiensis) から取り出した遺伝子物質を含んでいるからです。この人為的な操作による遺伝子の変化もまた、自然交配では起こりえないことと言われています。

「スーパーに行って棚を見渡すと90%の製品に遺伝子組み換えコーンか遺伝子組み換え大豆成分が含まれている。たいていはその両方だ。ケチャップ、チーズ、乾電池、ピーナッツバター、スナック菓子、ドレッシング、ダイエット甘味料、シロップ、ジュース、粉末ジュース、オムツ、鎮痛剤、ファーストフード・・・・」(映画 “Food, Inc.”より)

モンサント社

モンサント社は2018年6月にドイツのバイエル社に買収され「モンサント」の企業名は現在では消滅しましたが、「遺伝子組み換え作物」以外でもいろいろと世間を騒がせています。

◆PCB(ポリ塩化ビフェニール)
「電気器具の冷却剤や潤滑油として使われていたPCBは50年以上にわたりモンサント社の主力商品でした。しかし人体に有害であることが明らかになり、欧米では1980年代初めに製造販売が禁止されました。

2001年、アラバマ州アニストンの住民2万人がモンサント社を相手取り2件の訴訟を起こし、結局モンサント社と子会社のソルシア社は7億ドルを支払うことで和解しました。2002年、ワシントンポスト紙は『モンサント社 環境汚染を数十年間隠ぺい』と報道しました(映画『モンサントの不自然な食べもの』より)」。

日本においてもPCBはその毒性(ダイオキシン、発がん性物質など)により1975年に製造、輸入が禁止されています。

枯葉剤
ベトナム戦争時、アメリカ軍は、猛毒のダイオキシンを含む大量の除草剤(枯葉剤)をベトナムの森にばら撒きました。ジャングルに隠れるベトコンのゲリラに手を焼いたアメリカ軍は、森を枯らして空からゲリラを発見しようと考えたからです。

ベトナム政府の発表によると、これにより300万人のベトナム人が枯葉剤にさらされ、奇形児等の深刻な健康被害に苦しむ人々がいまだに増え続けているそうです。現在では、この猛毒のダイオキシンがガンや重度の遺伝的機能不全を引き起こすことが明らかになっています。

モンサント社はこの枯葉剤を製造していた企業の中の1社です。1984年、アメリカのベトナム帰還兵4万人に集団訴訟を起こされ、モンサントを含む化学メーカー7社が1億8,000万ドルを支払うことで和解が成立しました。

◆データの捏造
1949年、アメリカのウエストバージニア州で、強力な除草剤2,4,5Tを製造するモンサント社の工場で爆発があり、従業員228人に塩素挫創と呼ばれる皮膚の疾患が発症しました。原因は、除草剤を製造する時に生成される、猛毒のダイオキシンでした。

モンサント社は工場爆発事故で、ダイオキシンを浴びた従業員と浴びなかった従業員では、ガン発症率に違いはなかったとする研究結果を裁判所に提出しました。しかし、この研究結果については、1990年代になって、データの捏造があったことが判明しています(映画『モンサントの不自然な食べもの』より)」。

家畜用肥育ホルモンと遺伝子組み換え飼料

アメリカでは、遺伝子組み換え作物を牛、豚、鶏、養殖魚に飼料として与えるばかりでなく、その成長を早めるため肥育ホルモンが使われています。

◆鶏肥育ホルモン
「全米の食肉業界を支配しているのはわずか3~4社。これほど巨大で強大な企業はかつて存在しなかった。たとえばタイソン社は史上最大の精肉会社。養鶏を根底から変えた企業だ。

ヒナは50年前の半分の日数で育つ。だが大きさは2倍。消費者は胸肉を好む。だから胸の大きな鶏を作る」(映画 “Food, Inc.”より)

映画 “Food, Inc.”より

「これは養鶏じゃない。工場で作られる製品と同じよ。ヒナから7週間で2.5キロの成鶏に育つの。骨や内臓は急激な成長に耐えられない。ほとんどの鶏は数歩 歩くと倒れてしまう。自分の体重を支えきれないからよ。

飼料に抗生物質を混ぜるから、当然鶏の体内に入る。細菌は抵抗力を増し、抗生物質が効かなくなる。私は抗生物質のアレルギーになったわ」(キャロル・モリソン氏、米国の大手精肉会社の契約養鶏業者:映画 “Food, Inc.”より)

◆牛肥育ホルモン
「肥育ホルモンを投与した米国産牛は、およそ20カ月齢のメスで400~450キロの枝肉重量があるのに対し、投与しない日本国産牛は29カ月齢くらいまで太らせてやっと450キロ程度になる(米国産牛肉、『肥育ホルモン』の衝撃的な実態:山本謙治氏著)より

誕生から出荷までの期間が約3分の2に縮まるわけですから、牛肉生産者にとってはとてもありがたい話です。ちなみに「枝肉」とは、皮と内臓を取り出し、脊柱の中央に沿って切断されたものだそうです。

しかし、次のような指摘もありました。
「米国産牛と日本国産牛のホルモン残留濃度を計測すると、米国産牛は日本国産牛に対して、赤身で600倍、脂肪で140倍のホルモン残留が検出された」(前出のサイトより)

◆O-157
「遺伝子組み換えトウモロコシで安価な飼料ができたおかげで、現在コーンは家畜飼料の主原料となっている。おまけに良く太る。しかし、牛はもともとコーンを食べるようにはできていない。草を食べる動物だ。

牛の第一胃には、無数のバクテリアがいる。動物は草を消化するように進化した。研究によればコーンの多い飼料を続けると大腸菌が耐酸性を持つようになり、より危険な大腸菌に変わる。コーン飼料によって普通の大腸菌が進化し、突然変異を起こした。そして大腸菌O-157という株が登場した」(アイオワ州立大学の反芻動物栄養学専門家、A・トランクル氏:映画 “Food, Inc.”より)

農林水産省のデータによると2014年の日本の飼料の自給率は27%となっています。そのため73%が輸入飼料ということになりますが、その大部分は、アメリカ、ブラジル、アルゼンチンなどの遺伝子組み換え飼料生産国です。

また、肥育ホルモンについては、やはり農林水産省のHPによれば、日本国内では、承認されていないため使用されていないとのことです。

オランダ農業 驚愕の輸出力に学べ

日経ビジネス 2014年5月12日号

オランダの人口は日本に比べ1割強にすぎず、国土も九州程度の広さしかない。ただ、農業はGDP(国内総生産)の1割を占め、70万人の雇用を生み出す。農産物の輸出額は世界2位の893億ドルに上り、国土が広大なトップ米国を追随する。

2014年5月12日日経ビジネス2

↓ 日本の耕作放棄地は年々拡大している。

2014年5月12日日経ビジネス1

↓ オランダは、世界第2位の農産物輸出大国

2014年5月12日日経ビジネス3

↓ 日本の農業ベンチャーは、 レタスの年間「12毛作」を実現

2014年5月12日日経ビジネス4

(以上で日経ビジネスの記事、終り)

日経ビジネスでは、「背水の農 TPPショック、5大改革で乗り越えろ」と題して、日本の農業へ提言していますが、詳細に関しては「日経ビジネス」最新号をお読みください。

さて、農産物輸出大国オランダが輸出している農産物はどんなものが多いのか、と調べてみたところ、観賞用植物、タバコ、チーズなどが多いようです。また、野菜に関しては、トマト、パプリカ、きゅうりなど、品種を絞り、特化した市場で競争力を保っているようです。

当然ながら工業先進国であるオランダの「農業」は、高度先端技術を駆使した「工業」と言ってもよいほど、昔ながらの農業とはかなり違う「産業」のようです。

高度先端技術を駆使した生産能力、食の安全性に対する配慮、消費者の痒いところに手の届くサービス、という点において日本が他国に負ける訳がないので、農業においても十分勝機はあると考えます。

勝てる農産物を輸出し、稼いだお金で国内の他の農産物へ投資していってもらいたいものです。

現在、日本の野菜の自給率は81%(農林水産省の試算:2010年の品目別自給率)とのことなので、まずは、野菜類の100%超えと食用穀物 59%、粗粒穀物 1%、豆類 8%の徹底的な改善を期待します。

穀物の世界生産が最高に 大豆や小麦、13年度8%増

2013年8月14日 日本経済新聞朝刊

大豆や小麦、トウモロコシといった穀物の世界生産量が2013年度は過去最高となる見込みだ。国際価格も大幅に下がっており、穀物需給の逼迫はひとまず緩和される。円安のあおりで値上がりが続く食用油や大豆製品、飼料などの国内価格も上昇が一服しそうだ。

米農務省の8月の需給予測によると、13年度の世界の穀物生産量は約24億3000万トンと前年比8%増える。三大穀物のトウモロコシと大豆、小麦の生産量はそろって最高を更新する。

(後 略)

2013年8月14日 日経12013年8月14日 日経2

(以上で記事終り)

「世界の人口が増加しても食糧危機はおこならい」という説をとなえる人がいます。

東京大学大学院農学生命科学研究科准教授の川島博之氏です(詳細はこちらをご覧ください)。

そのロジックをかいつまんでご説明すると以下のようになります。

グローバル化により、先進国が発展途上国に進出し、その結果として途上国の農村人口が都市部へ移動する。

近代化、農業の工業化(農業機械の導入、品種改良、化学肥料など)により農業生産性が飛躍的に向上する。

途上国都市部の人々の収入が増え、生活が豊かになると子供たちに高い教育を授けるようになる。

かつて先進国が歩んできたように子供への教育費がかさんでくると自然に子供の数が減っていき、人口増加にブレーキがかかる。

食料危機問題が解決されていく。

というロジックですが、ほかにも下記のようなことにふれています。

現在、全世界の人口増加率は1%強。しかし20世紀後半、全世界の人口増加率は2%程度もあったが、食糧危機は起こらなかった。なぜか?

一部アフリカなどでおこった食糧危機問題は、人口増大、環境問題、農業生産量の不足のどれでもなく、実は政治の混乱が原因だった。

というのが、川島氏のロジックとなります。

話は変わりますが、1993年に日本では、冷夏によりコメ不足おこりました。いわゆる「平成のコメ騒動」です。

このとき日本は急きょ外国からコメを輸入しました。

なかでもタイ政府などはせっかく良いコメを日本向けに選別して輸出してくれたにもかかわらず、日本人は「口に合わない」と言って、食べずに捨てたりしました。

そのため、大量にドブに捨てられたタイ米の映像がテレビのニュースに出て社会問題になったりもしました。

それにより思わぬとばっちりを受けた国があったのです。

世界最貧国でもあったバングラディッシュは、日本がコメを輸入したため、アジア諸国のコメ相場が突然上がり、ところてん式に一番安いコメを輸入していたバングラディッシュに深刻な飢饉をもたらしたということです。

さて、下記のような報道もあります。

「中国に食糧危機の影 急速な都市化、減る農民、輸入急増…」(産経ニュース)

中国に天変地異による飢饉でもおこれば、なにせ13億を超える人口の国ですから、周辺諸国へ与える影響はかなり大きいでしょう。

また、インドもしかりです。

食料問題は軍事やエネルギー問題と同様、非常に大きな国家の安全保障問題のひとつだと思います。

コメ問題にメスを

2013年6月26日 日経ビジネス 2013.6.24号より

本格的な構造改革を怠り、衰退が止まらない日本農業の象徴であるコメ。
TPP参加の有無にかかわらず、守り一辺倒の先に未来はない。
稲作も含め成長産業として再生するには、規制緩和などの政策や農業改革が急務だ。

(中 略)

韓国は米国、欧州連合(EU)などとのFTA(自由貿易協定)に備え総額10兆円規模の農業・農村対策を用意した。農家への直接支払いのほか高齢農家の経営移譲や農業からの撤退促進策などを盛り込み、生産性向上や規模拡大を後押ししている。

ノルウェーも日本では衰退産業とされる漁業で資源管理を計画的に行いつつ、小さな漁船を国が買い取ってスクラップ処理し、大きな船で効率的に魚を取る仕組みへと転換した。

今では世界第2位の水産輸出国に躍り出たノルウェー。水産業者の年収は国民平均の倍近くに達するほど成長産業に生まれ変わっている。

韓国やノルウェーに共通するのは民間の創意工夫に加え目先の損得勘定に左右されない政治の覚悟と国民の理解だ。

(後 略)

2013年6月26日 日経BP

・・・・(記事の転載ここまで)

今回の日経ビジネスでは「農協支配の終焉」と題し、農協の束縛から脱し、活路を海外へ求めている元気な日本の農業従事者の話がいくつも紹介されています。

海外への輸出である程度の成功を収めていながらも、今後ますますの発展を海外に求める農業従事者の話もあれば、農業に積極的にITを導入し、国際競争に勝てる商品を作り上げている企業などが紹介されています。

しかし、日本の農業においてどうしても避けて通れない話があります。それが“コメ”です。

この記事には「多くの農家が関わるコメに政府は手厚い保護政策を続ける。生産量を減らして米価を高くする生産調整(減反)と高関税を維持し、負担を消費者に回してきた。耕作者自らが農地を所有すべきという『耕作者主義』の原則も崩さず、農地への優遇税制や所有・利用規制を継続している」とあります。

そして、それを打開するためには、補助金を見直し、規制を大幅に緩和し、企業による競争原理を導入しなければならないとしています。

今から7~8年ほど前だったと思いますが、テレビのニュースの特集でノルウェーの漁業の話が取り上げられていました。

1980年代前半まで、かつての漁業大国ノルウェーは、漁業従事者の高齢化と後継者不足に悩み、漁業は衰退の一途をたどるばかりでした。

そこでノルウェー政府は1980年代に、古い小さな船を国が買い取り、大型船に入れ替え、かつ徹底的なIT化導入の政策を推し進めまていきました。

そのテレビのニュースによると、ノルウェーの漁船の中は超近代的で、若い船員各自にも個室が与えられ、各部屋にパソコンが完備されていました。

魚を探して網で捕獲し、獲れた魚を種類や大きさ毎に区分けし、港へ運ぶまでのすべてをコンピュータと機械が行うため、漁師さんは魚にはいっさい手を触れません。

漁師の年収は他の職業に比べて倍近い「高収入」であり、ITを駆使した「カッコいい」職業であるため、若者の漁師応募者が殺到し、今やノルウェーでは憧れの職業となっているとのことでした。

同じことを日本の第一次産業(農業、漁業、林業)においてもできないわけはありません。

「小麦」を世界一輸入している国イタリアは、世界一パスタを輸出し、小麦の国内生産量もどんどん増えているそうです。

一方で規制ずくめで輸入を制限している日本のコメは生産量が減るばかりです。

日本の技術で世界に誇れる日本の食文化や食料加工品を海外へどんどん輸出して、世界一の農業輸出大国になってもらいたいものです。

あの小さな国オランダが世界第2位の農業輸出国であるわけですから、できないわけはありません。

食糧非常事態宣言 爆食と凶作の時代を生き抜く

日経ビジネス 2012年8月27日号 特集記事からの抜粋

国家の根幹、それは食にある。
今、日本の食を取り巻く環境には加速度的な変化が訪れている。
隣国では質と量をともなった「爆食」がその勢いを増し、
異常気象に見舞われた生産地からは悲鳴があがる
この危機が、海外からの穀物輸入に依存し、自給率が低迷しながらも、
不作為を繰り返してきた日本という国家の根幹を揺るがそうとしている。
企業が着手し始めた調達体制の見直し、国内農業の抜本改革―。
世界に開かれた変革を躊躇すれば、この国は生き残れない。

2012年8月27日日経BP3

今年2月16日、ある人物が大地を踏んだ。男の名は習近平氏。この秋、中国の次期国家主席に就任する現・国家副主席である。
習副主席はこの地で生産された大豆862トン、金額にして43億ドル(約3400億円弱)相当量を中国に輸入する契約を結んだ。その規模は穀物輸入大国である日本が、年間に調達する大豆の3年分に相当する。

2012年8月28日日経BP2

世界では食糧不足に端を発する暴動、社会情勢不安が後を絶たない。2010年後半のロシア、ウクライナの小麦禁輸は、中近東を直撃し、食糧価格の高騰が「アラブの春」の引き金となった。世界は食糧を巡る覇権争いの時代に突入しようとしている。

2012年8月28日日経BP

・・・・(記事の転載ここまで)

食糧問題に関しては、「ネットワーク地球村」の中の「5分でわかる食糧問題」にわかりやすく書かれていますが、その要旨を下記にまとめてみました。

世界で年間1500万人以上の人が「飢餓」で死んでいる。

世界中の食べ物は足りないのか?

いいえ、穀物は世界中の人が生きていくのに必要な量のおよそ2倍生産されている。

それではなぜ?

牛肉1キロ作るために穀物8キロ、豚肉1キロ作るために穀物4キロ、鶏肉1キロ作るために穀物2キロを消費している。

結果として、世界の 2割足らずの先進国の人間が世界の穀物の半分以上を消費している。

戦後の日本は戦前と比べ肉や卵を食べる量は10倍になり、家畜のえさ用のトウモロコシや大豆98%を輸入している。

世界で取れるマグロのおよそ半分が日本で消費されている。マグロの漁獲を減らさない限り、 20年後には、絶滅するといわれている。

日本の食品の約7割は、世界から輸入したもの。日本人は、その3分の1(1940万トン)を食べずに捨てている。

食糧の廃棄率では世界一の消費大国アメリカを上回り、廃棄量は世界の食料援助総量740万トンをはるかに上回っている。

日本の家庭からでる残飯の総額は、日本全体で年間11兆円。

これは日本の農水産業の生産額とほぼ同額。

さらにその処理費用で、2兆円が使われている。

日本は食糧の 7割以上を輸入する世界一の残飯大国。

では、どうすればよいか?

・まず食べる量を (例えば一割)減らしましょう
・無駄な買い物、肉食、食べ残しを減らしましょう
・国産品、無農薬の農作物を選びましょう
・輸入品や季節はずれの食品 (ハウスの果物、野菜など)はさけましょう

(以上で要約終り)

私は、ジャレド・ダイヤモンド博士の『銃・病原菌・鉄』というDVD(ナショナルジオグラフィック)を持っています。

これは、人類の歴史をひもときながら、「世界に格差が生まれた原因」を追究する3枚組のDVDです。

「なぜ人間は他の動物よりも繁栄することができたのか?」

「なぜ地球上には、地域により大きな文明の格差が生まれたのか?」

なんとその答えの第一は「穀物」だと言うのです。

1万年前から1万5000年前、中近東では小麦の栽培が始まる。同じころアジアでは米の栽培が始まる。農耕民族の始まり。

栄養価の高い穀物を栽培することにより、生活に余裕が生まれ、空いた時間に研究することができるようになり、銅や鉄が開発される。

農業の効率化のために牛や馬などの家畜を飼うようになり、やがて豚やヤギ、ヒツジ、鶏などの家畜を飼い始めて食糧にするようになり、さらに余裕が生まれてくる。

したがって、人類の文明の格差を生んだ原因は、地域の気候によるところが大である。

というものです。

やはり、穀物を制する者は世界を制するのです。

いつか必ず人類は「飢餓」の時代を迎えるでしょうが、その時期をできるかぎり遅らせるようにこれから知恵を絞らねばなりません。

特に日本にとってはとても深刻な問題といえます。

TPP亡国論のウソ

日経ビジネス 2011年11月7日号が「TPP亡国論のウソ」と題して、大特集を組んでいます。

あまりにも量が多いので、ここでは一番の話題となっている「農業」に絞って、考えていきたいと思います。

以下、日経ビジネスの記事を抜粋して私がまとめたものです。

「日本国内のコメ消費量700万トンのうち400万トンが米国から輸入されるようになる」との農水省の試算に対して、東京大学の本間正義教授は下記のように指摘している。

● 米国産米のうち日本人が食べるジャポニカ米は30万程度。日本に向けて増産しても70万トン~100万トン程度だろう。400万トンのコメを輸入することは極めて困難で、700万トンのジャポニカ米など世界のどこにもない。

● 1993年、コメが大不作になった「平成の米騒動」の時には政府がタイ米を260万トンも緊急輸入したが、日本人はほとんど消費しなかった。

● 世界のコメ貿易は2500万トン程度で、700万トンもの需要が新たに加われば価格が急騰するであろうことも無視している。

また、キャノングローバル戦略研究所研究主幹の山下一仁氏は、下記のように強調する。

● 「日中両国のコメの価格差は、1998年の6.5倍から、2010年には1.3倍に縮小した。減反政策を廃止すれば、国産米は9000円台に下落し、日中米価は逆転する」

2011.11.10 コメの輸出

「農家の失業が続出する」という議論に対しては、

● コメ農家の所得のうち、農業収入は8%にすぎず、92%は勤務所得と年金だ。年34万6000円の農業所得がなくなることよりも、勤務先の工場が海外移転してなくなってしまうことのほうが問題だ。

「日本の農業が壊滅する」という議論に対しては、

● 1990年代前半、日本が関税貿易一般協定(GATT)ウルグアイ・ラウンド交渉でコメ市場開放を迫られた時も、「日本の農業が壊滅してしまうと騒いだが、結果はそうはならなかった」(福井俊彦前日銀総裁)。

● そればかりか、ウルグアイ・ラウンド対策費として計上した6兆円もの財政資金は大半がハコモノなどに浪費され、農業の生産性向上にはつながらなかった。「壊滅」は自由化に瀕したときの常套句なのだ。

2011.11.10 コメだけで農家は

一部の農産物を異常なほどの高関税で保護し続けてきたが、

● 野菜はたった3%の関税でも、外国産との競争で生き残ってきた。

● 1977年、米国に輸入解禁を迫られたサクランボは、関税を8.5%にまで引き下げられたものの、外国産との棲み分けが行なわれていると農水省も認めている。

2011.11.10 関税その1

2011.11.10 関税その2

(以上で日経ビジネスの記事の抜粋は終わり)

1991年に牛肉の輸入自由化が行なわれた当時「日本の畜産業は壊滅する」と言われましたが、和牛は常に安定して生産され続けています。

2011.11.10 牛肉輸入量

「TPPに絶対反対!」とハチマキを巻いてシュプレヒコールを挙げる面々をテレビの画面で眺めていると、農業団体、日本医師会、郵政族議員などなど、ほとんどが昭和の時代に代表される既得権益に固執する面々ばかりです。

これだけ世界中がグローバル化により、大きく揺れ動いている最中に、日本だけが内向き思考で殻を閉じ、「開国」をせずに生き残っていけると本気で考えているのでしょうか。

日本は「安全でおいしく、しかも安いコメ」を中国へどんどん輸出して外貨を稼ぎ、コメが不作の年には、輸出分を国内消費に振り向ければいいのです。先進国ならどこもが考えるそのような普通の考え方が、食料安保なのではないでしょうか。

明治維新以降、「開国」や「自由化」重視の判断は、常に「鎖国」や「規制」重視の判断に勝ってきたと私は考えています。

「失われた20年」を「失われた30年」にしないためにも、日本の政治リーダーには賢明な判断と決断を望みます。

日本産牛肉やマグロ、中国で密輸入増加・上海の空港

2007.11.27 NIKKEI NET

中国・上海の空港で日本からの旅行客が不正に持ち込む日本産牛肉やマグロの摘発が増えている。上海出入境検査検疫局によると、今月3日と8日の摘発では牛肉とマグロの合計1490キロを押収、廃棄。輸入を禁じている日本産牛肉や品質基準が厳しいマグロなど中国内の高級食材人気を当て込んだ密輸の拡大を防ぐため、当局が水際対策を加速しているとみられる。

・・・・(記事の転載ここまで)

この記事によると、中国当局は日本産牛肉の密輸を特に深刻に受けとめているそうです。この5ヶ月間で、約3,500キロもの日本産牛肉の密輸が、上海の検疫局によって摘発されているからです。

日本では、中国産食品の安全性がこれだけ騒がれているのにもかかわらず、逆に中国では日本産食品の安全性を疑い、牛肉、まぐろ、りんご、その他多くの農産物に規制をかけています。

私が思うに、中国政府は日本の食品の安全性を疑っているのではなく、日本政府へのけん制と日本の農産物普及による自国農業の衰退を恐れているのでしょう。

なぜならば、こんなに規制(あるいは禁止)があるにもかかわらず、中国国内では日本産食物への需要が非常に強いからです。

日本国内においても高い和牛ですから、中国の物価を考えたら桁外れに高価な肉のはずです。ましてや密輸してまでも食べたいとなると、信じられないような価格で取引されているはずです。

前回のブログでも触れましたが、今夏、日本のおコメ24トンが試験的に中国へ輸出されました。2キロで3,000円(中国のおコメの20倍以上)という超高額にもかかわらず、富裕層があっという間に買いつくしてしまったそうです。

また、日本の静岡県産のメロンが現在上海の経済界で人気が高まっているそうです。1個2万円にもかかわらず、贈答用として珍重され、贈られてくるメロンの数によって、その人の経済界での力がわかる、というような新しい言葉も生まれてきているそうです。なんだか日本のバブル経済最盛期を彷彿させる出来事ではありますが。

それ以外にも、青森県産のりんご、”ふじ”は最近米国へも輸出されるようになり、米国産りんごの5倍から6倍の価格で、飛ぶように売れているそうです。事実、りんごの産地、弘前では、米国農務省動植物検疫官が常駐して”ふじ”の検疫をおこなっているそうです。

また、JA山形によると、現在山形県産の日本酒が台湾向けに急増しているそうです。特に日本酒を冷やして飲む、いわゆる”冷酒”の人気が急騰しているからです。

とにかく、今、日本の農業が”熱い”のです。

以下は農林水産省のHPからの情報です。

●農林水産物・食品の輸出は増加傾向にあり、2006年は3,739億円と5年前より5割増加。

●政府は、2013年までに輸出額を1兆円規模とすることを目標に、輸出促進ロゴマークの作成、総合的な輸出戦略の策定、海外での展示・商談会の開催等を実施。

●日本食、日本食材の魅力を広く効果的に伝えることを目的に「WASHOKU-Try Japan’s Good Food」事業を行っている。

●世界的なブームとなっている日本食の普及を一層推進するため、2007年3月に海外日本食レストラン推奨有識者会議から提言された「日本食レストラン推奨計画」の具体化に着手。

21世紀に最も成長する日本の輸出品は、日本の食品なのかもしれません。

関税撤廃で北海道の打撃は1兆4000億円 日豪EPA交渉

2007.11.14 Brain News Network

(前略)
今年8月に農林水産省が発表した2006年度の食料自給率(熱量に換算したカロリーベース)は、前年度から1ポイント下がり、13年ぶりに40%台を割る39%となった。

内閣府が昨年11月に実施した「食料の供給に関する特別世論調査」では、日本の将来の食料供給について「非常に不安がある」「ある程度不安がある」との回答が合わせて76.7%に達した。

先進国の中で食料自給率が最低水準にある日本の農業は近い将来、未曾有の危機を迎えようとしている。

(後略)・・・・(記事の転載ここまで)

日本の食糧問題に関しては、このブログの中でも何回か触れていますが、今回は日本とオーストラリア、2国間での具体的な貿易摩擦問題をとりあげてみます。

現在、日本がオーストラリアに輸出する自動車や機械類は、0~10%の低関税となっているのに対し、オーストラリアから輸入する農林水産物には、高い関税がかけられています。

たとえば、牛肉は38.5%ですが、なんと小麦は252%、砂糖は379%、雑豆は403%と異常に高くなっています。

オーストラリアは今回のEPA交渉でこれらの「関税撤廃」を求め、日本はそれに抵抗しています。また、農林水産省は、日本の農作物の関税がすべて撤廃されると、食料自給率は12%にまで低下(現在39%)すると試算しています。

現在、先進諸国の中で、日本だけが異常に低い食料自給率(カロリーベース)となっているのにも関わらず、さらにそれを低下させる要因が発生している訳です。

経済活動や学校教育など、大抵の問題において「公平な自由競争の導入」を支持する私ですが、さすがにこの食料問題だけは簡単に「自由競争万歳」とはいきません。

どこの国においても、自国の農業を保護育成し、食糧危機という有事に備えているのですが、耕地面積の狭い日本国において、今すぐ諸外国との競争にさらされれば、ほとんどの農家は破綻せざるを得ないからです。

しかし、今まで日本政府が施してきたバラマキの農業保護政策を続けよ、と言っているわけではありません。やはり競争原理の導入は必要で、日本人の得意とする技術力を駆使して、他国との差別化ができるよう技術革新を推進していく必要があります。また、若い人たちが参加したくなるような魅力的な産業にしなければなりません。

たとえば「コメ」です。今夏、日本のおコメ24トンを試験的に中国へ輸出しました。2キロで3,000円(中国のおコメの20倍以上)という超高額にもかかわらず、富裕層があっという間に買いつくしてしまいました。

日本の「りんご」や「メロン」も高額にもかかわらず、アジアを中心に盛んに輸出されています。中国の富裕層の間で超高級品として人気が高いそうです。

このように質の高い商品を作れば、世界のどこかに需要はあるわけですから、日本の農家も付加価値の高い作物を作りながら、大量生産という面でも、技術革新をしていってもらいたいものです。世界と日本の10年後を見据えて。

また、環境破壊の影響により、現在世界のいたるところで異常気象が発生しています。たとえばオーストラリアの異常干ばつやアメリカの洪水、干ばつ、山火事などは、私たちの記憶に新しいところです。これらの影響が徐々に世界の食物相場にも表れはじめています。

自国民の食料が確保できなくなった時、わざわざ外国へなど輸出してくれるでしょうか?気がついた時にはもう遅いのです。

さらに「環境問題」もさることながら、私たち人類は「世界人口の爆発」という深刻な問題を抱えています。私たちはこの問題に対し、今後どのように対処していけばよいのでしょうか?答えは簡単には見つかりそうにありません。

UNFPA 国連人口基金東京事務所サイトより
population
出典:国連人口部「World Population Prospects: The 2004 Revision」(2005年)、同「The World at Six Billion」(1999)、他 ※世界人口の詳しい最新情報については、国連人口部のウェブサイト(英語)へ。

対日輸出、99・8%が「合格」 中国検疫総局長、食品安全を強調

2007.7.21 FujiSankei Business i.

中国国家品質監督検査検疫総局の李長江局長は20日、中国の輸出食品の安全性に関して記者会見し、日本、欧州連合(EU)向け食品の安全検査合格率が99・8%などと数字を挙げ、「中国製食品の合格率、品質は不断に高まっている」と強調した。

・・・・(記事の転載ここまで)

”ダンボール入り肉まん”が”ねつ造報道”だったかどうかはともかくとしても、あの事件がきっかけとなって、今輸入食品の安全性が問われています。

実は輸入食品だけでなく、日本の”食”そのものが”怪しい”と、もう数十年も前から、さまざまな消費者団体は訴え続けているのです。

既にあの「偽装肉加工販売のミートホープ社」が「24年前から不正な表示や販売をしていた」と認めていますが、それはほんの氷山の一角に過ぎないでしょう。不二家も雪印も加ト吉も・・・・。

しかし、国内業者の話はひとまずさておいて、ここでは今話題になっている「輸入食品」の問題を考えてみます。

1.日本の食糧自給率林水産省のホームページより)
●穀物自給率
1960年 82% → 2004年 28%

●カロリーベースの総合食料自給率
1960年 79% → 2004年 40%

●品目別自給率
・米   1960年 102% → 2004年 95%
・いも類 1960年 100% → 2004年 83%
・大豆  1960年 28% → 2004年 3%
・野菜  1960年 100% → 2004年 80%
・果実  1960年 100% → 2004年 39%
・肉類  1960年 93% → 2004年 55%
・鶏卵  1960年 101% → 2004年 95%
・魚介類 1960年 110% → 2004年 60%

2. 輸入食品は安全なの?輸入食品を考えるより)
・ジャガイモの芽止め剤は1000倍に規制緩和された。不安の残る放射処理(コバルト60など)のものも出回り、後から調べようもない。

・アメリカでは牛肉へも放射線処理が許可。

・穀物などは防虫剤(レルダンなど)を直接ふり混ぜ、輸送され出荷され、そのまま加工食品(豆腐、納豆、味噌、醤油、パンなど)に使われてゆく。

・果物類はポストハーベスト(殺菌剤、防カビ剤)の王様! 真っ黄色でヘタだけは真っ青なレモンや、柑橘類にはOPP、TBZ、DP、イマザリル、2-4Dなどなど…

・ヘタを青く保つためだけに2-4D(枯葉剤)が使われている。

・リンゴ、ダークチェリーなども… 殺菌剤や防カビ剤のプールにつけられ、農薬のシャワーを浴び、しつこくポストハーベストされた上に、殺菌剤や防カビ剤入りのワックスをかけて、簡単には落ちないようにして出荷される…

・バナナも、ポストハーベストされ、輸送されてきたものをさらに青酸ガスで燻蒸し、倉庫で保存。追熟のためもう一度燻蒸して出荷される。

以上が「農林水産省」と「市民グループ」からの情報です。

肉類、酪農食品(牛乳、卵、乳製品等)は、想像より自給率が高いのですが、実は家畜に与える飼料のほとんどは輸入に頼っています。つまり輸入をストップされたら日本の酪農業の大部分は壊滅します。

以前私はいつも不思議に思っていたのですが、大豆の97%は輸入なのに、なぜかスーパーへ行くとほとんど全ての豆腐や納豆は「国産大豆使用」と表示されていました。

これも農林水産省が2006年6月27日に発表した「豆腐・納豆の原料大豆原産地表示に関するガイドライン」により、事態も少しずつ変化してきているようです。

しかし、朝日新聞の報道によると、日本の黒毛豚を外国で育て「国産黒毛豚」と表示したり、外国から輸入した豚を日本の養豚業者で数ヶ月間育て「国産黒毛豚」と表示している例があるそうです。

「国産」の定義をはっきりさせないと、日本の”種”の大豆を中国で栽培し、「国産大豆」と表示しかねません。

運悪く(われわれにとっては運良く)ミートホープや不二家や雪印が槍玉にあげられましたが、これが氷山の一角である以上、少なくとも日本国民は「食の安全に関する真実」を知る権利があるでしょう。

やはりここでもインターネットの情報が決定的に重要な役割を果たし、世の中を変えていくはずです。