ヨーロッパ言語とGoogle翻訳(その5)

次にフィン・ウゴル語派に属するハンガリー語とフィンランド語をGoogle翻訳してみましょう。両言語とも言語の形態論上、トルコ語、モンゴル語、日本語、朝鮮語、その他のアジア言語と同じ膠着語(こうちゃくご)に分類されています。

つまり英語から見れば、ヨーロッパ言語の中では、一番文法的に離れた存在の言語と言えるのかもしれません。

フィン・ウゴル語群
<ハンガリー語 原文①>
Kicsit rosszul érzem magam. Tudna adni valamilyen orvosságot?
(人間訳)
少し気分が悪いです。何か薬をください。
(Google訳 日本語)
私は少し病気を感じます。あなたはどんな薬を持っていますか?
(Google訳 英語)
I feel a bit bad. Can you give me some medicine?

上記は変な日本語ではありますが、なんとか意図は伝わるかもしれません。英語のほうは話者の意図するところはきちんと伝わるでしょう。


<ハンガリー語 原文②>
Szeretném megváltoztatni a foglalás létszámot.
(人間訳)
予約の人数を変更したいのですが。
(Google訳 日本語)
私は私の予約人員を変更したいです。
(Google訳 英語)
I would like to change the booking number.

日本語も英語もなんとか意図するところは伝わるのではないでしょうか。


<ハンガリー語 原文③>
Hol van a bevásárlónegyed ebben a városban?
(人間訳)
この街のショッピング街はどこですか?
(Google訳 日本語)
市内の商店街はどこですか?
(Google訳 英語)
Where is the shopping district in this city?

日本語も英語も意図するところは伝わるでしょう。


<ハンガリー語 原文④>
Elvesztettem a pénztárcámat. Benne volt a hitelkártyám.
(人間訳)
クレジットカードの入った財布をなくしました。
(Google訳 日本語)
私の財布を失くしました。それは私のクレジットカードにありました。
(Google訳 英語)
I lost my wallet. My credit card was in it.

日本語の方は、「財布がクレジットカードの中にあった」と意味が逆になっています。それに対し英語の方は、きちんと訳されています。

<ハンガリー語 原文⑤>
Körülbelül mennyibe kerül a taxi a városközpontig?
(人間訳)
市の中心までタクシー代はいくらくらいですか?
(Google訳 日本語)
市内中心部までどのくらいのタクシーについて?
(Google訳 英語)
About how much does the taxi cost to the city center?

日本語は残念ながら意味不明です。英語の方はかろうじて意味は通じるのではないでしょうか。


<フィンランド語 原文①>
Tämä katu on liukas.
(人間訳)
この通りは滑りやすい。
(Google訳 日本語)
この通りは滑りやすいです。
(Google訳 英語)
This street is slippery.

日本語も英語もきちんと訳されていると思います。


<フィンランド語 原文②>
Poliisi sulki kadun.
(人間訳)
警察は通りを封鎖した。
(Google訳 日本語)
警察は通りを閉じました。
(Google訳 英語)
Police shut the street.

日本語も英語もなんとか話者の意図するところは伝わると思います。


<フィンランド語 原文③>
Uskotko aaveisiin?
(人間訳)
あなたは幽霊の存在を信じますか?
(Google訳 日本語)
あなたは幽霊を信じますか?
(Google訳 英語)
Do you believe in ghosts?

日本語も英語もきちんと訳されていると思います。


<フィンランド語 原文④>
Hän sai kirjan vanhalta opettajaltaan.
(人間訳)
彼(あるいは彼女)は年取った先生から本をもらった。
(彼、彼女という表現はなく、男性も女性もhänと言う)
(Google訳 日本語)
彼は昔の先生から本を受け取りました。
(Google訳 英語)
He got the book from his old teacher.

日本語のほうは「年取った先生」が「昔の先生」になってしまっているところが残念です。英語の方は “his old teacher” が良いのか “an old teacher” が良いのか “the old teacher” が良いのか、この文章だけでは判断がつきませんが、話者の意図するところは伝わるでしょう。


以上、ヨーロッパ言語の中で英語と最も離れていると思われるフィン・ウゴル語派に属するハンガリー語とフィンランド語のGoogle翻訳を試してみましたが、その出来栄えについては、スラヴ語などと比べても特に際立った違いがあるとは感じませんでした。

(この項続く)