History
 2006年2月から4月にかけblogで連載したJES Historyの保存版です。
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 第 1回 技術翻訳のパイオニア
 第 2回 パンナムでのランチタイム
 第 3回 50通の葉書と初仕事(その1)
 第 4回 50通の葉書と初仕事(その2)
 第 5回 6畳間からのスタート
 第 6回 タイピストと赤ん坊
 第 7回 羽田空港へ猛ダッシュ
 第 8回 竹内均先生
 第 9回 仕事の安定と営業活動
 第10回 プロは常に基本に返る
 第11回 将来は確実に見えている
 第12回 散歩と草笛
 第13回 心に空虚
 第14回 黙想ノート(その1)
 第15回 黙想ノート(その2)
 第16回 黙想ノート(その3)
 第17回 米国人捕虜と終戦
 第18回 利益と税金
 第19回 福利厚生、横浜市第一号
 第20回 学問に王道なし
 第21回 スペイン語
 第22回 新製品が大好き!
 第23回 商売と山っ気
 第24回 JFK
 第25回 ニクソン・ショック
 第26回 オイル・ショック
 第27回 父からの手紙(その1)
 第28回 父からの手紙(その2)
 第29回 俺は医者になる!
 第30回 この世に人類が存在する限り・・・
(最終回)

2006/03/10

第10回 プロは常に基本に返る

後年、父が翻訳者の人達に語っていたことを思い出し、いくつか列挙してみます。

【 翻訳は語句の転換ではなく思想の転換である】

「原文がどんなに冗長だとしても、勝手に中身を削ってはならない。逆にどんなに舌足らずであっても、自分の思い込みだけで何かを付け加えてはならない。『原文に忠実な意訳』という二つの相反するテーマを同時に達成しなければならないのである。そのくらい翻訳とは難しい仕事なのだ」

【 プロは常に基本に返る】

「専門学校の卒業式に校長先生が教えてくれたこの言葉が今でも私の座右の銘だ。常に基本が完璧な人のことをプロと呼ぶ。いかなる時も決して基本をおろそかにしてはならない」

【 わからないということがわかるようになれ】

「エンジニアの書く和文原稿には難解なものが多い。ただしそれが悪文だからなのか、それとも自分の技術理解力の不足なのか、が判断できるようになればとりあえずは技術翻訳者としての第一関門に合格だ。その判断もできずに誤訳した原因をすぐに和文原稿のせいにしてしまう翻訳者がいるのは困ったものだ」

【 技術翻訳者は浅く広い技術知識が必要】

「エンジニアはその道の技術で生きているわけだから翻訳者より深い技術知識を持っていて当然。それに対し翻訳者はひとつの深い技術知識よりは、むしろ幅広い技術知識を持たなければいけない。それでは技術翻訳者に求められる技術知識とはどのくらいのレベルなのかというと、執筆者に対し的を射た質問をし、その回答が十分理解できるようなレベルのことである。『なんだ、君はそんな基本的なこともわからずに翻訳しているのか?』と返答されるようでは論外」

【 富士山はなぜ高い?それは裾野が広いから】

「読む、書く、聞く、話す、のうち、翻訳者に対しては『読む』と『書く』の卓越した能力が求められるのは当然である。だからといって『聞く』と『話す』が必要ないわけではない。良い文章には必ず美しいリズムがあるからだ。超一流の翻訳者を目指すのなら一流の『聞く』、『話す』と超一流の『読む』、『書く』能力を持てるよう努力してほしい」



<バイキング>
1968(昭和43)年頃(創業から4年目)。
東急ホテルでバイキング料理を食べたあとでリライターや翻訳者の皆さん達と。
前列右端が父。


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